厚生労働省が毎月発表している賃金、労働時間及び雇用の変動に関する雇用指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
平成28年の毎月勤労統計調査によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は0.7%増となり、5年ぶりに上昇した。
基本給や残業代など現金給与総額(月平均)は前年比0.5%増の31万5372円となり、3年連続のプラスとなった。特別給与は夏季のボーナス増などが寄与し2.0%増の5万5637円だった。パートタイム労働者の時給は1085円と過去最高を更新し、調査を開始した1993年以降で最高の水準となった。外食などで人手不足が続き時給の上昇が続いている。
また、平成28年12月の実質賃金は前年同月比0.4%減となり平成27年12月以来1年ぶりに減少した。雇用所得環境の改善で名目賃金の上昇基調は続いたものの、12月は生鮮食品の価格上昇などで消費者物価の上昇が賃金の伸びを上回った。
厚生労働省は前月に続き賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との見方を据え置いた。
現金給与総額は0.1%増の54万4823円となった。内訳では、基本給にあたる所定内給与は24万487円となり、0.5%増加した。一方、残業代など所定外給与は1.9%減の2万9円、特別給与は0.1%減の28万4327円だった。
実質賃金が5年ぶりに0.7%増加したことは、企業の賃金政策において重要な指針である。名目賃金の増加基調が続く中で、パートタイム労働者の時給が過去最高を更新し、人手不足が影響していることが明らかとなった。人事コンサルタントとしては、基本給の着実な増加を推進しつつ、パートタイム労働者の待遇改善を図ることが求められる。また、特別給与の増加が見られる一方で、所定外給与の減少は働き方改革の影響と考えられる。企業に対しては、非金銭的インセンティブや柔軟な働き方の導入を提案し、労働者のモチベーション向上を図るべきである。特に、消費者物価の上昇が賃金の伸びを上回る局面においては、労働者の生活水準を維持するための総合的な賃金戦略が必要である。人事コンサルティングのテーマとして、持続可能な賃金政策と包括的な労働環境の改善を掲げ、企業の競争力と従業員の満足度を両立させる取り組みを推進するべきである。
(2017年2月6日発表)
2016年11月の物価変動を除いた実質賃金は前年同月に比べて0.2%減少した。11カ月ぶりに前年実績を下回った。10月は横ばいだった。
名目賃金は増加したものの、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が0.4%上昇した。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との見方を示した。
基本給や残業代など名目賃金にあたる現金給与総額は0.2%増の27万4778円だった。
内訳をみると、基本給にあたる所定内給与は24万377円と0.4%増加した。一般労働者は0.3%増、パートタイム労働者は0.2%増加した。
一方、残業代など所定外給与は1.3%減の1万9963円、ボーナスなど特別に支払われた給与は3.4%減の1万4438円だった。
2016年11月の実質賃金が11か月ぶりに前年実績を下回り、所定外給与とボーナスの減少が目立つ一方で、基本給の増加が賃金基調を下支えしている。人事コンサルティングの観点からは、基本給の上昇を維持しつつ、成果に基づく報酬体系を再検討し、インセンティブとボーナスの設計を見直す必要がある。
(2017年1月6日発表)
10月の毎月勤労統計調査(速報値)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月と比べて横ばいとなり、9か月ぶりに増加が止まった。
名目にあたる従業員1人当たりの現金給与総額は26万6802円となり、前年同月比0.1%増加した。増加は3か月ぶり。名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は0.3%増の24万655円となり、4か月連続で増加して名目賃金の増加をけん引した。
内訳をみると一般労働者の所定内給与は0.2%増だった。一般労働者の所定内給与は2年6カ月連続で前年同月を上回っている。パートタイム労働者は0.3%増だった。
業種別では人手不足が深刻といわれる建設業で現金給与総額の増加が目立った。
この時点での人事コンサルタントの役割は、特に変動する経済環境の中で企業が直面する人材確保の課題に対して、効果的な解決策を提案することにある。人事コンサルティングを通じて、特に人手不足が顕著な建設業などの業種での賃金体系の見直しや、人材流動の促進を図ることが重要である。これにより、企業は持続可能な成長を実現し、競争力を維持することが可能となる。
(2016年12月6日発表)
9月の実質賃金は前年同月比で0.9%の増加となり、8か連続のプラスとなった。
厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」と分析する。
基本給や残業代など名目賃金にあたる現金給与総額は0.2%増の26万5325円だった。基本給にあたる所定内給与が24万838円と0.4%増加した一方、残業代など所定外給与は1.3%減の1万8742円、ボーナスなど特別給与が2.9%減の5745円となった。
実質賃金が前年同月比で0.9%増加し、8か月連続でプラスを記録したことは、賃金が緩やかに増加している基調を反映している。しかし、名目賃金の内訳を見ると、基本給の増加が全体の賃金増加を支えている一方で、残業代やボーナスの減少が見られる点は注意が必要である。このような賃金動向に対し、人事コンサルティングでは、基本給のさらなる安定的な増加を図る施策とともに、残業代やボーナスの減少を補完するためのインセンティブ制度の強化が求められる。人事コンサルタントは、企業に対して、賃金制度の見直しや、従業員のモチベーションを高めるための非金銭的な報酬制度の導入を提案し、全体的な報酬パッケージの最適化を図ることが重要となる。
(2016年11月7日発表)
8月の物価変動を除いた実質賃金は前年同月比で0.5%増加した。前年実績を上回るのは7か月連続となるが、伸び率は前の月(1.8%増)から鈍化した。
名目賃金は減少したものの、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が前年同月に比べて0.6%下落し、実質賃金を押し上げた。
厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との見方を示した。
基本給や残業代など名目賃金にあたる現金給与総額は0.1%減の27万1676円だった。
内訳をみると、ボーナスなど特別給与は7.7%減の1万2699円と大幅に下がった。残業代など所定外給与も1.9%減の1万8754円だった。
一方、基本給にあたる所定内給与は0.5%増の24万223円だった。
実質賃金の増加は、物価下落の影響を受けており、名目賃金の減少にもかかわらず購買力が若干向上していることを示している。この状況は、経済全体の不透明感を反映しており、特にボーナスなどの特別給与の大幅な減少は、企業の業績に対する不確実性が高いことを示している。人事コンサルタントは、このような経済環境下で企業が従業員のモチベーションを維持し、効果的な報酬戦略を維持するための支援を提供することが重要である。
(2016年10月7日発表)
7月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比2.0%増加した。伸び率は6月の確報値と同じで、6か月連続で前年を上回った。ボーナスの増加などで名目賃金が増えたほか、消費者物価指数の下落傾向が実質賃金を押し上げている。
名目にあたる従業員1人当たりの現金給与総額は37万3808円となり、前年同月比1.4%増加した。名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は0.4%増の24万1518円だった。ボーナスや通勤費にあたる「特別に支払われた給与」は4.2%増の11万3150円だった。
7月の実質賃金が前年同月比で2.0%増加したことは、消費者物価指数の下落とボーナスの増加が主な要因である。名目賃金も1.4%増加し、特にボーナスや特別支給の増加が顕著であるが、基本給の伸びは0.4%と限定的である。この状況は、物価低下が一時的に実質賃金を押し上げた一方で、長期的な賃金上昇が依然として課題であることを示している。企業においては、ボーナス支給に依存しない安定的な給与体系の強化が求められる。人事コンサルタントとしては、持続可能な賃金上昇を実現するための基本給の見直しや、社員のモチベーションを維持・向上させるための長期的な報酬戦略の導入を提案すべきである。
(2016年9月5日発表)
6月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で1.8%増加した。
増加は5カ月連続となり、伸び率は2010年9月(1.9%増)以来5年9カ月ぶりの高水準だった。5月(確報値)の実質賃金は0.4%増だった。
基本給や残業代など名目賃金にあたる現金給与総額は1.3%増の43万797円だった。基本給にあたる所定内給与は0.1%増の24万1746円、残業代などの所定外給与が0.1%減の1万9031円だった。
厚生労働省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との見方を示した。
人事コンサルタントの視点からは、賃金の緩やかな増加基調を維持するため、所定内給与の伸びをさらに拡大する人事戦略が重要である。企業は基本給の底上げと残業代など所定外給与の最適化を通じて、労働者のモチベーションと生産性を高める必要がある。
(2016年8月5日発表)
4月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で0.6%増加した。これで3カ月連続の増加となった。
名目賃金にあたる現金給与総額は0.3%増の27万4984円だった。現金給与総額のうち基本給にあたる所定内給与は0.2%増の24万3275円、残業代など所定外給与は1.0%増の2万432円、特別に支払われた給与は4.3%増の1万1277円だった。
業種別では電気・ガス業の現金給与総額が4.9%増と比較的高い伸びを示した。娯楽や理髪店などを含む生活関連サービス業は4.6%減少した。
実質賃金の持続的な増加は、従業員の購買力向上と企業の労働市場での魅力を高めるものだ。このような環境では、人事コンサルタントが効果的な報酬戦略を提案し、業種特有の動向を考慮に入れたカスタマイズされた人事コンサルティングを提供することが重要となる。
(2016年6月3日発表)
3月の実質賃金は前年同月比で1.4%増加した。一部企業のボーナスなど特別に支払われた給与の増加や、これまで上昇していた物価が横ばいになったことが押し上げた。
実質賃金は2010年9月以来5年半ぶりの大きな増加幅となった。
名目賃金にあたる現金給与総額は1.4%増の27万8501円だった。現金給与総額のうち基本給にあたる所定内給与は0.4%増の24万446円、残業代などの所定外給与は0.2%減の1万9739円、特別に支払われた給与は19.8%増の1万8316円だった。
3月の実質賃金は前年同月比で1.4%増加し、5年半ぶりの大きな増加幅を記録した。特別に支払われた給与の増加と物価の安定がその要因である。名目賃金の総額も1.4%増加し、特に基本給は0.4%増と堅調であったが、所定外給与は0.2%減少している。人事コンサルタントとして、企業には特別に支払われた給与の増加を賃金構造に反映させ、持続的な給与改善を図ることが求められる。また、所定外給与の減少は労働負荷の適正化を示唆しており、これを機に柔軟な労働時間制度の導入を進めるべきである。
(2016年5月9日発表)
2月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比0.4%増加した。1月の横ばいを挟み、4カ月ぶりに増加した。
基本給や残業代のほか、ボーナスなどを含む特別給与も増加した。賃金の伸びが物価上昇率を上回り、実質賃金の増加につながった。厚労省は賃金動向に関して「基調としては緩やかに増加している」との見方を変えなかった。
名目賃金にあたる2月の現金給与総額は0.9%増の26万2558円だった。内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が0.6%増の23万9123円、残業代などの所定外給与は0.4%増の1万9541円だった。ボーナスなど特別に支払われた給与は3894円で25.7%増加した。
春闘のベースアップも抑えられ傾向にあり、実質賃金は4か月ぶりにプラスとなったが、当面の間は大きくプラスに振れることはなく、良くてゼロパーセント台前半という状況が続きそうだ。人事コンサルティングの関与先でも賃上げの検討が進んでいるが、春闘同様に厳しそうだ。
(2016年4月5日発表)
1月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月より0.4%増加した。プラスは3カ月ぶりとなる。
基本給や残業代は伸び悩んでおり、実質賃金の増加傾向が続くかどうかは不透明だ。実質賃金がプラスだと、給与の伸びが物価上昇のペースを上回っていることを示す。
名目賃金にあたる1月の現金給与総額も前年同月比0.4%増の26万9725円となった。内訳をみると、ボーナスなど特別に支払われた給与は1万3114円と7.1%増加した。一方で、残業代などの所定外給与は1.3%減の1万9302円だった。また、基本給にあたる所定内給与も0.1%増の23万7309円と伸びは鈍かった。
平成28年1月の実質賃金が前年同月比で0.4%増加したことは、給与の伸びが物価上昇を上回ったことを示しているである。しかし、基本給や残業代の伸び悩みが続いており、実質賃金の増加が持続するかは不透明である。人事コンサルタントとしては、企業が従業員のモチベーションを維持しつつ、持続可能な賃金体系を構築することが求められる。経済状況を踏まえた柔軟な賃金戦略と、賞与の有効活用が重要となる。
(2016年3月4日発表)
平成27年12月の毎月勤労統計調査によると、現金給与総額から物価変動の影響を除いた実質賃金指数は前年同月比0.1%減となり、2カ月連続で減少した。
従業員1人当たり平均の現金給与総額(名目賃金)は0.1%増の54万4993円だった。基本給などの所定内給与は0.7%増の24万38円だった。特別給与は0.4%減の28万4647円だった。パートタイム労働者の比率が上昇していることや前の年から調査対象を入れ替えたことが影響した。
同時に発表された平成27年通年の実質賃金は0.9%減となり、4年連続の減少となった。年間でも物価の上昇が名目賃金の伸びを上回った。
単月、平成27年通年ともに名目賃金の上昇が物価の伸びに追いついていないことが示された。価値観の多様化が進んでいることから、そろそろ経済成長から生活の質への発想の転換が必要なのではないだろうか。
(2016年2月8日発表)
昨年11月の現金給与総額から物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比0.4%減となり、5カ月ぶりに減少した。
一方で基本給や残業代などは増えており、厚生労働省は「名目賃金は緩やかな増加基調」にあるとみている。
従業員1人当たり平均の現金給与総額(名目賃金)は横ばいの27万4108円だった。平成27年10月まで4カ月連続で増加していたが、11月は前年並みにとどまった。 特別給与は8.6%減の1万4097円だった。
一方、基本給や家族手当にあたる所定内給与は0.5%増の23万9818円となり、9カ月連続で増加した。残業代など所定外給与は1.1%増の2万193円だった。
名目賃金が横ばいにとどまった一方で、消費者物価指数がプラスになったことにより、実質賃金はマイナスとなった。賞与などの特別給与が大幅に減少したが響いたが、賃金が物価の上昇に追いついていない状況を示す内容となった。
(2016年1月8日発表)
10月現金給与総額から物価変動の影響を除いた実質賃金指数は0.4%増となった。残業代などの各項目が伸びて4カ月連続で増加した。
従業員1人当たり平均の現金給与総額(名目賃金)は前年同月比0.7%増の26万6309円だった。実質賃金と同じく4週連続で増加した。
基本給や家族手当にあたる所定内給与は0.1%増の23万9640円だった。ベースアップにより8カ月連続で増加しているが、伸び率は緩やかだ。
ボーナスにあたる特別給与は23.9%増の6810円だった。残業代など所定外給与は1.2%増の1万9859円だった。
厚生労働省は「賃金は名目、実質ともに伸びており、各項目でも増えている」とし「賃金は緩やかに増加している」としている。
実質賃金指数が0.4%増となったとはいえ、実質賃金は平成22年の80.2%に過ぎず、実質賃金が低迷していた昨年比でのわずかな増加を示しているに過ぎない。このペースでは5年前の水準に戻すのに50年かかる計算だ。
(2015年12月4日発表)
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