労働力調査(2021年)
総務省が毎月発表する日本の就業状況、失業者、失業率に関する雇用指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
2021年12月分
Summary
2021年12月の完全失業率(季節調整値)は2.7%となり、前月から0.1ポイント低下した。
完全失業者数(同)は186万人で、前月比6万人減少した。うち勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は6万人増加、「自発的な離職」は8万人減少だった。
就業者数(同)は6673万人となり、前月から49万人増加した。49万人の増加幅は、1986年1月以来の高い増加幅となった。また、宿泊業・飲食サービス業の就業者数は、382万人となり11月から10万人増加した。
併せて発表された2021年平均の完全失業率は、前年比横ばいの2.8%だった。就業者数は、6667万人となり、2年連続で減少した。内訳では、新型コロナの影響で、宿泊業、飲食サービス業の就業者数は、369万人となり比較可能な2002年以降で最も少なかった。
Comment
新型コロナの感染拡大から2年が経過したが、その影響が依然として続いている。今後、オミクロン株による感染者の増加が労働市場にどの程度影響を与えるのか、引き続き注視していく必要がある。こうした状況下で人事コンサルタントとしてポストコロナの企業の人事戦略や採用戦略にどのような助言をすべきなのかを常に思案している。
(2022年2月1日発表)
2021年11月分
Summary
11月の完全失業率(季節調整値)は2.8%となり、前月から0.1ポイント悪化した。
男性の失業率は3.0%となり、前月から0.2ポイント上昇した。女性は2.6%となり、前月から0.1ポイント上昇した。
就業者数(季節調整値)は6624万人で前月と同数だった。
完全失業者数(同)は192万人となり、前月から10万人増加した。内訳では「自発的な離職(自己都合)」は6万人増加、「新たに求職」は1万人増加、「非自発的な離職」は前月と同数だった。自発的な離職が増加した背景について、総務省ではコロナ感染者数の落ち着きがあるとした。
11月の新規求人数(原数値)は前年同月比12.3%増だった。これを産業別でみると「製造業」が同38.0%増、「宿泊業、飲食サービス業」が同23.3%増、「情報通信業」が同19.5%増、「教育、学習支援業」が同19.4%増となった。
Comment
11月の完全失業率が2.8%に上昇し、特に自発的な離職が増加している点は、労働者がより良い雇用機会を求めて動いていることを示唆している。一方で、新規求人数は製造業や宿泊業、情報通信業で大幅に増加しており、労働市場全体が回復基調にあることも確認できる。人事コンサルタントとしては、自発的な離職傾向を踏まえ、企業の魅力向上を図るための採用戦略の強化が必要となる。
(2021年12月28日発表)
2021年10月分
Summary
10月の完全失業率(季節調整値)は2.7%となり、前月から0.1ポイント低下した。
完全失業者数(季節調整値)は前月から7万人減少して182万人となり、2か月連続で減少した。このうち自己都合による「自発的な離職」は1万人増加、雇い主や事業都合による「非自発的な離職」は6万人減少した。「新たに求職」は1万人増加した。
就業者数は前月から24万人減少して6624万人となった。非労働力人口は32万人増加して4215万人だった。
完全失業率を男女別にみると、男性が前月から0.1ポイント低下して2.8%、女性は0.1ポイント低下して2.5%だった。
休業者数の実数値は164万人となり、前月の208万人から減少した。宿泊業・飲食サービス業で減少傾向がみられた。
Comment
完全失業率の低下と自発的な離職の増加は、労働市場が安定してきている兆しであるが、就業者数の減少と非労働力人口の増加は、市場にまだ不確実性が残っていることを示している。人事コンサルタントは、企業がこれらの変動する市場環境に適応し、人材の確保と雇用の質を向上させるための戦略的な人事コンサルティングを提供することが重要である。特に、自発的な離職の増加に対しては、従業員のエンゲージメントと定着策の強化が求められる。
(2021年11月30日発表)
2021年9月分
Summary
9月の完全失業率(季節調整値)は2.8%となり、前月から横ばいだった。
完全失業者数(季節調整値)は前月比2万人減の189万人となり、2か月ぶりに低下した。うち自己都合による「自発的な離職」は5万人減少し、雇い主や事業都合による「非自発的な離職」は2万人増加した。「新たに求職」は1万人減少した。
就業者数は28万人減少して6648万人となった。非労働力人口は4183万人となり、17万人増加した。
完全失業率を男女別にみると、男性が前月から0.2ポイント低下の2.9%、女性は0.1ポイント上昇の2.6%だった。
休業者数の実数値は208万人となり、前月の248万人から減少した。引き続き、休業者数の大半を宿泊業・飲食サービス業が占める。
同時に発表された7~9月期の完全失業率(原数値)は2.8%となり、前年同期比で0.2ポイント低下した。
Comment
9月の労働力調査結果は、人事コンサルタントとして注視すべき点が多い。完全失業率が2.8%で横ばいである中、自己都合離職者が5万人減少し、非自発的離職者が2万人増加している。就業者数は28万人減少し、非労働力人口は17万人増加していることから、雇用の不安定さが浮き彫りとなっている。特に、宿泊業や飲食サービス業での休業者数の高止まりは、業界特有の課題を反映している。人事コンサルティングにおいては、企業が柔軟な雇用戦略を策定し、労働市場の変動に対応することについての助言・提案が重要となる。
(2021年10月29日発表)
2021年8月分
Summary
8月の完全失業率(季節調整値)は2.8%となり、前月から横ばいとなった。前月まで2か月連続で低下していた。
完全失業者数(季節調整値)は前月比1万人増の191万人となり、3か月ぶりに上昇した。このうち自己都合による「自発的な離職」は4万人増、雇い主や事業都合による「非自発的な離職」は5万人減少した。「新たに求職」は1万人増加した。
就業者数は32万人減の6676万人となった。非労働力人口は4166万人と32万人増加した。
完全失業率を男女別にみると、男性が前月から横ばいの3.1%、女性は0.1ポイント上昇の2.5%だった。
休業者数の実数値は248万人と前月の212万人から増加した。宿泊業・飲食サービス業を中心に増加した。休業者には自営業者で仕事を休み始めてから30日未満の人や、従業員などで給料の支払いを受けている人などが含まれる。
Comment
完全失業率が2.8%で横ばいとなり、労働市場の停滞を示している。自発的離職者の増加と非自発的離職者の減少は、労働者が新たな機会を模索していることを反映している。特に宿泊業・飲食サービス業での休業者増加が目立ち、経済の不安定さを浮き彫りにしている。人事コンサルティングの視点からは、企業に柔軟な労働環境と持続可能な雇用戦略の導入を提案し、労働者の安心感と満足度を高めることが急務となっている。
(2021年10月1日発表)
2021年7月分
Summary
7月の完全失業率(季節調整値)は2.8%となり、前月から0.1ポイント改善した。男性の失業率は3.1%と前月と同率。女性は2.4%と前月から0.3ポイント低下した。
就業者数(実数)は6711万人となり、前年同月に比べて56万人増加し、4か月連続で増加した。
産業別では「卸売業、小売業」が前年同月に比べ63万人増加した。コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストアなどが含まれており、コロナの影響によって家で食事することが増えたことなどが反映されたとみられている。このほか「学術研究、専門・技術サービス業」が23万人増加した。一方、「教育、学習支援業」は前年同月比で19万人減少した。「宿泊業、飲食サービス業」は2か月連続で増加したものの、状況は引き続き厳しい。
完全失業者数(実数)は191万人となり、前年同月比6万人減少し、18か月ぶりの減少となった。求職理由別では「勤め先や事業の都合による離職」が1万人増加、「自発的な離職(自己都合)」は3万人の減少、「新たに求職」が1万人の減少となった。
Comment
完全失業率は低下傾向にあるようだが、新型コロナウイルスの感染者数が増加しており、先行きは不透明なままだ。また、就業者も増加しているものの、業種によって濃淡がみられる。人事コンサルティング会社としては新型コロナウイルスの感染状況が不透明な中でも、今のうちに人事制度を刷新して来たるべき時に備える企業が存在することは心強い。
(2021年7月30日発表)
2021年6月分
Summary
6月の完全失業率(季節調整値)は2.9%となり、前月から0.1ポイント改善した。
男性の失業率は3.1%となり、前月から0.1ポイント低下した。女性は2.7%となり、前月から横ばいだった。年齢別では15-24歳が4.5%と最も高く、65歳以上が2.1%と最も低かった。
就業者数(実数)は6692万人となり、前年同月比22万人増加し、3か月連続増加となったが、コロナ前の2019年との比較では未だ55万人低い水準にある。
宿泊業、飲食サービス業が18か月ぶりに増加し、卸売業、小売業も前年同月比で49万人増加するなど、これまで下押しされてきた産業で就業者数が増加した。
完全失業者数(実数)は206万人となり、前年同月比で11万人増加し、17カ月連続で増加した。求職理由別では「勤め先や事業の都合による離職」が2万人減少、「自発的な離職(自己都合)」は5万人の増加となった。「新たに求職」は3万人増加した。
総務省は「新型コロナウイルスの影響で厳しい雇用情勢が続いている」としている。
Comment
完全失業率のわずかな改善が見られるものの、新型コロナウイルスの影響による厳しい雇用環境が続いていることが明らかである。このような状況の中で、人事コンサルタントは組織の持続可能な人材戦略を設計する上で、重要な役割を担っている。人事コンサルティングにおいては、特に宿泊業や飲食サービス業などの回復傾向にある産業への積極的な支援と、非自発的離職の減少、自発的離職の増加に対する対策が必要となる。
(2021年7月30日発表)
2021年5月分
Summary
5月の完全失業率(季節調整値)は3.0%となり、前月から0.2ポイント上昇し、2か月連続で悪化した。
完全失業者(原数値)は211万人となり、前年同月比13万人増加し、16か月連続の増加となった。勤め先や事業の都合による離職が8万人増加し、自発的な離職(自己都合)は6万人の増加となった。
男性の失業率は3.2%となり、前月と同水準。だった。女性は2.7%となり、前月から0.4ポイント上昇した。もともと就業者としてカウントされていた人が離職し、非労働力人口になることなく職を探しているという状況が女性の方に出た可能性があるという。
就業者数(同)は6667万人で同11万人増加した。宿泊・飲食サービス業で8万人、運輸・郵便業で14万人それぞれ減少した。一方、医療・福祉は51万人増加した。
休業者数(実数値)は212万人となり、4月から13万人増加した。緊急事態宣言の対象地域が拡大したことで、宿泊・飲食サービス業の休業者が増えたとみられている。
Comment
完全失業率が3.0%に上昇し、2か月連続で悪化したことは、労働市場の厳しさを反映している。特に、事業都合や自己都合による離職の増加が顕著であり、失業者数が16か月連続で増加している点が懸念される。男性の失業率は横ばいである一方、女性の失業率が0.4ポイント上昇し、職探しを続ける女性が増えていることが示されている。この状況下での人事コンサルティングでは、特に女性労働者の就業支援と、宿泊・飲食サービス業や運輸・郵便業での雇用対策が重要となる。人事コンサルタントとしては、柔軟な働き方の導入や再就職支援プログラムの充実を提案し、労働者の再雇用を促進するとともに、企業の人材確保を支援することが求められる。
(2021年6月29日発表)
2021年4月分
Summary
4月の完全失業率(季節調整値)は2.8%となり、前月から0.2ポイント上昇した。上昇は昨年10月以来で6か月ぶりとなる。
完全失業者数は209万人で前年同月に比べ20万人の増加となり、15か月連続の増加となった。求職理由別に前年同月と比べると,「勤め先や事業の都合による離職」が10万人増加、 「自発的な離職(自己都合)」が4万人の増加だった。
4月の就業者数(原数値)は6657万人となり、前年同月に比べ29万人増加し13か月ぶりの増加となったが、去年4月に新型コロナウイルスの影響で就業者数が7年4か月ぶりに減少に転じたことが要因となっていて、コロナ前の2019年同月から51万人減少した。
総務省は「依然として、新型コロナウイルスの影響がみられ、雇用情勢が改善傾向にあるかはまだ判断が難しい」としている。
Comment
完全失業率が2.8%に上昇し、前年同月比で完全失業者数が20万人増加したことは、企業の人事戦略において深刻な課題を浮き彫りにしている。特に「勤め先や事業の都合による離職」が10万人増加しており、企業の経営環境が依然として不安定であることを示している。人事コンサルタントとしては、雇用安定化策の強化が求められる。具体的には、リモートワークの推進や柔軟な勤務形態の導入、スキルアップや再教育プログラムの提供を通じて、従業員のキャリア継続を支援することが重要である。また、自発的な離職の増加も見逃せない点であり、従業員満足度向上のために、職場環境の改善や福利厚生の充実を図る必要がある。さらに、コロナ前の雇用水準への回復が見通せない現状を踏まえ、長期的な視点での人材育成と企業のレジリエンス強化をテーマとした人事コンサルティングを推進すべきである。
(2021年5月28日発表)
2021年3月分
Summary
3月の完全失業率(季節調整値)は2.6%となり、前月比0.3ポイント低下した。
完全失業者数(同)は180万人となり、23万人減少した。うち勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は13万人減少、「自発的な離職」は3万人減少だった。
就業者数(同)は6684万人と前月から13万人減少し、非労働力人口(同)は4181万人で24万人増加した。
休業者は220万人となり、前年同月比29万人の減少となった。コロナの影響が出る2019年3月比2万人の増加にとどまり、大きく変化はしていない。
総務省は就業者数の減少や非労働力人口の増加を踏まえ3月の失業率の低下で雇用情勢が改善したとまで言うことは難しく、今後、緊急事態宣言の影響を注視していく必要があるとしている。
2020年度平均の完全失業率は2.9%となり、2009年度以来11年ぶりに上昇した。
Comment
3月の完全失業率は2.6%と前月比で低下したが、就業者数の減少や非労働力人口の増加から、労働市場の回復を単純に評価するのは難しい。特に「非自発的な離職」が大幅に減少した一方で、全体の雇用情勢が安定しているわけではなく、緊急事態宣言の影響が今後の雇用に与えるリスクは依然として高い。2020年度平均の失業率が2.9%に達したことからも、企業は長期的な不確実性に備えた人材戦略を再考する必要がある。人事コンサルティングでは、現状の不安定さを踏まえた柔軟な雇用管理や、労働者の再スキルアップを支援する施策が求められる。特に、非労働力人口の増加に対しては、潜在労働力の活用を促進するための再教育や職業訓練プログラムの強化が重要である。企業は今後も変化する経済状況に対応し、持続可能な人材戦略を構築すべきである。
(2021年4月30日発表)
2021年2月分
Summary
2月の完全失業率(季節調整値)は2.9%となり、前月から横ばいだった。
雇用者のうち正社員は26万人増えて9か月連続で増加した一方、非正規は107万人減少し、12カ月連続で減少した。
産業別の就業者をみると、宿泊・飲食サービス業が46万人、製造業が24万人それぞれ減少した。教育・学習支援業(25万人増)や医療・福祉(24万人増)などは増加した。
新型コロナに関連した解雇・雇い止めにあった人数(見込みを含む)は3月下旬時点で9万8千人を超えた。
完全失業者数(同)は前月から横ばいの203万人となり、勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は3万人増加、「自発的な離職」は3万人減少した。
就業者数(同)は6697万人となり、3万人増加した。
Comment
完全失業率は2.9%と横ばいであるが、雇用の質には大きな変化が見られる。正社員は26万人増加し、9か月連続の増加を示した一方、非正規雇用は107万人減少し、12か月連続で減少している。産業別では、宿泊・飲食サービス業や製造業での就業者数が減少し、教育・学習支援業や医療・福祉での増加が顕著である。新型コロナの影響により、解雇や雇い止めにあった人数が9万8千人を超えたことも深刻な問題である。人事コンサルタントとして、社員の成長分野への再配置やスキルアップの支援を通じて、安定した雇用環境の確保を目指すべきである。また、非自発的な離職が増加していることから、社員のモチベーションを維持するためのメンタルヘルスケアやキャリアパスの充実も不可欠である。
(2021年3月30日発表)
2021年1月分
Summary
1月の完全失業率(季節調整値)は前月から0.1ポイント低下して2.9%となった。
完全失業者数(同)は7万人減少して203万人となった。勤め先などの都合による「非自発的な離職」は1万人減少、自己都合による「自発的な離職」は横ばい、「新たに求職」は5万人の増加だった。
全体の就業者数(同)は11万人増加して6694万人となり、2020年12月の1万人減少から増加に転じた。雇用者数(同)は10万人増加して5989万人だった。非労働力人口(同)は6万人減少して4167万人だった。
男性の完全失業率(同)は3.2%となり、前月から横ばいだった。女性の完全失業率(同)は2.6%となり、0.2ポイント低下した。年齢別に見ると、男性も女性も15~24歳で最も失業率が高かった。
休業者の実数値は244万人となり、2020年12月の202万人から増加し、前年同月と比べても50万人増加した。休業者には自営業者で仕事を休みはじめてから30日未満の人や、従業員などで給料の支払いを受けている人などを含む。
Comment
1月の完全失業率は完全失業者数の減少が寄与して前月から低下したものの、首都圏の緊急事態宣言は未だ解除されておらず、再延長ということにでもなれば日本経済への打撃は大きく、完全失業率が再び上昇する可能性もある。同時に、休業者の増加と日本の将来を担う若年層の完全失業率が高いことも懸念材料だ。
(2021年3月2日発表)