雇用統計(2022年)
米労働省から毎月発表される米国の雇用統計データに人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
2022年12月分
Summary
12月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比22万3000人の増加となり、市場予想を上回った。前月は25万6000人増(速報値26万3000人増)に下方修正された。
12月の失業率は3.5%に低下し、市場予想を下回り50年ぶり低水準に並んだ。前月は3.6%(速報値3.7%)に下方修正された。
平均時給は前月比0.3%増となり、前年同月比では4.6%増加した。
雇用の伸びはヘルスケアや社会扶助、娯楽・ホスピタリティー、建設などの分野が主導した。
Comment
12月の米国の雇用統計は市場予想を上回る結果となり、特にヘルスケアや社会扶助、娯楽・ホスピタリティー、建設分野の雇用増加が目立つ。これは、人事コンサルタントにとって、組織の戦略的な人材計画と適応力の強化が求められる状況である。また、失業率が50年ぶりの低水準に低下したことは、市場の競争が激化していることを示しており、人事コンサルティングにおいては、より戦略的な人材獲得と保持が重要であると言える。
(2023年1月6日発表)
2022年11月分
Summary
11月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比26万3000人増となり、市場予想を上回った。前月は28万4000人増(速報値26万1000人増)に上方修正された。
失業率は3.7%となり、前月から横ばいとなった。
平均時給は前月比0.6%増となり、市場予想の2倍の伸びを示し、今年1月以来の大きな増加率となった。10月分も0.5%増(速報値0.4%増)に上方修正された。
11月の雇用者数は娯楽・ホスピタリティーやヘルスケア、政府部門などで特に増加した。一方、小売りや運輸・倉庫などでは雇用が減少した。
労働参加率は62.1%に若干低下し、4か月ぶりの低水準となった。25歳から54歳までの労働参加率が3か月連続で低下した。女性の参加率低下が目立った。
Comment
11月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が市場予想を上回り、娯楽・ホスピタリティーやヘルスケア、政府部門での雇用増が顕著であった。一方で、小売りや運輸・倉庫部門では減少が見られ、労働参加率の低下が課題として浮上している。特に25歳から54歳の女性の参加率低下が目立つ。人事コンサルタントとして、企業には多様な雇用機会の提供と柔軟な働き方の導入を提案したい。特に、女性の労働参加を促進するために、リモートワークやフレックスタイムの導入、キャリア継続支援プログラムの拡充が求められる。
(2022年12月2日発表)
2022年10月分
Summary
10月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比26万1000人増となり、市場予想を上回った。前月は31万5000人増(速報値26万3000人増)に上方修正された。
10月の失業率は3.7%(前月3.5%)に上昇し、市場予想を上回った。
10月は比較的幅広い業種で雇用が増加した。特に医療やプロフェッショナル・ビジネスサービス、製造業などで伸びが目立った。
平均時給は前月比0.4%増となり、前月(0.3%増)から伸びが加速した。前年同月比では4.7%増加した。
10月の労働参加率は62.2%となり、前月(62.3%)から若干低下した。
Comment
10月の非農業部門雇用者数は26万1000人増加し、幅広い業種での成長が見られた。特に医療、プロフェッショナル・ビジネスサービス、製造業の伸びが顕著である。人事コンサルタントとして、コンサルティングを通じて、これら成長分野での人材獲得戦略や給与の適切な見直しを進めることが重要である。
(2022年11月4日発表)
2022年9月分
Summary
非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比26万3000人増加した。
失業率は3.5%に低下し、約50年ぶり低水準となった。
雇用は娯楽・ホスピタリティーやヘルスケアの分野を中心に比較的広範なベースで伸びた。一方、運輸・倉庫や金融では減少した。
平均時給は前月比0.3%増加した。前年同月比では5%増となり、前月からはやや伸びが鈍化したが、依然として高い伸びを示した。
労働参加率は62.3%にわずかに低下した。25-54歳の同参加率も下げた。
政府関連を除く民間雇用者数は前月比28万8000人増となり、前月から伸びがやや加速した。9月は州や自治体の教育関連の雇用が減少し、全体の雇用者数の伸びを抑えた面もある。
Comment
9月のデータは、人事コンサルティングにおいて重要な示唆を与える。市場と産業の変化に応じた柔軟な人材戦略が企業の成長と競争力を支える鍵である。人事コンサルタントは、労働市場の動向を洞察し、業種特有の課題に対応するための戦略的なアプローチを企業に提供する役割を果たしている。このアプローチにより、企業は経済の波に乗り、持続可能な発展を目指すことが可能となる。
(2022年10月7日発表)
2022年8月分
Summary
8月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比31万5000人増加となり、市場予想を上回った。前月は52万6000人増(速報値52万8000人増)に下方修正された。
8月の失業率は3.7%となり、6か月ぶりの高水準となった。ただ、8月は労働参加率が上昇しており、これが賃金の前月比の伸びを一段と鈍化させる可能性がある。
労働参加率は62.4%に上昇し、2020年3月以来の高水準となった。平均時給は前月比0.3%増加(前月は0.5%増)した。前年同月比では5.2%伸びた。
雇用の伸びは、プロフェッショナル・ビジネスサービスやヘルスケア、小売りなどで特に目立った。一方、娯楽・ホスピタリティーは、2020年12月に雇用が減少して以来の小幅な伸びとなった。
週平均労働時間は34.5時間と、わずかに減少した。
Comment
8月の米国雇用統計は、人事コンサルタントとして重要な洞察を提供する。このデータから、労働市場のダイナミクスが明らかになり、人事コンサルティングの専門知識を活かす機会が増えることが示されている。特に、プロフェッショナル・ビジネスサービスやヘルスケア、小売り部門での雇用の伸びは、これらの業界に特化した人事戦略を必要としている。人事コンサルタントは、変化する労働市場のニーズに対応し、企業が持続可能な成長を遂げるための戦略的アドバイスを提供する役割を担っている。
(2022年9月2日発表)
2022年7月分
Summary
7月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比52万8000人増加となり、市場予想を上回った。前月は39万8000人増(速報値37万2000人増)に上方修正された。
7月の失業率は前月の3.6%から3.5%に低下した。
7月は幅広い分野で雇用が増加した。レジャー・接客が9万6000人増となり、伸びを主導した。うち大半がレストランやバーでの雇用だった。しかし、同部門の雇用は依然2020年2月の水準を120万人下回っている。専門職・企業サービスは8万9000人増、ヘルスケアは7万人増だった。政府も5万7000人増加したほか、建設業は3万2000人増、製造は3万人増だった。
平均時給も前月比0.5%増となり、市場予想を上回る伸びとなった。6月は0.4%増(速報値0.3%増)に上方修正された。7月は前年同月比では5.2%増(市場予想4.9%増)だった。
労働参加率は62.1%となり、今年に入って最低水準に低下した。10代の低下が目立った一方、25~54歳では上昇した。
Comment
サービス業の雇用の回復基調が確認されたものの、依然として2020年2月の水準を下回っている。このような状況において、人事コンサルタントとしては、特定業種における人材需要の急増に対応する戦略が必要である。人事コンサルティングの視点からは、企業は賃金の競争力を高め、柔軟な労働条件を提供することで、優秀な人材を引き付けるべきである。
(2022年8月5日発表)
2022年6月分
Summary
6月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比37万2000人の増加となり、市場予想を上回った。前月は38万4000人増(速報値39万人増)に下方修正された。
6月の失業率は3.6%となり、前月から横ばいとなった。
6月はビジネスサービスや娯楽・ホスピタリティー、ヘルスケアを中心に、広範囲で雇用が伸びた。一方、金融はこの1年で最も低い伸びだった。
労働参加率は62.2%に低下(5月は62.3%)した。予想外の低下は、大量の求人件数があるにもかかわらず採用が進まない状況や労働者不足といった雇用主側の見方を裏付ける。25歳から54歳までの労働者層の参加率は82.3%となり、4か月ぶり低水準となった。非労働力人口は50万人ほど増え、今年に入ってからの最高水準となった。
平均時給は前月比0.3%増となった。5月は0.4%増(速報値0.3%増)に上方修正された。6月は前年同月比では5.1%増となり、市場予想を上回った。前月は5.3%増(速報値5.2%増)に上方修正された。
Comment
6月の非農業部門雇用者数は、市場予想を上回る増加を記録し、特にビジネスサービス、娯楽・ホスピタリティー、ヘルスケア分野での雇用が顕著に伸びた。しかし、労働参加率の低下は、労働者不足と採用難を背景に企業にとって重大な課題となっている。人事コンサルタントとして、企業には労働力確保のための戦略的な対応が必要である。特に、柔軟な雇用形態の導入や、非労働力人口の再参入を促進するリスキリングプログラムの導入が有効である。労働市場の変動に対応するための包括的なタレントマネジメントが、今後ますます重要となるであろう。
(2022年7月8日発表)
2022年5月分
Summary
5月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比39万人の増加となり、市場予想を上回った。前月は43万6000人増(速報値42万8000人増)に上方修正された。
5月の失業率は3.6%だった。
平均時給は前月比で0.3%増加となり、市場予想を下回った。4月も0.3%増だった。前年同月比では5.2%増加し、4月の5.5%増加からペースを落とした。
5月の雇用増は娯楽・ホスピタリティー、ビジネスサービス、教育・ヘルスケアでの着実な人員確保がけん引した。一方、小売業は6万700人減少した。
建設業の雇用はこの3か月で最大の3万6000人の増加となった。しかしローン金利の上昇で住宅需要が減速しており、同業界の雇用はいずれ伸び悩むリスクがある。
労働参加率は62.3%に上昇した。25歳から54歳までの労働者層の参加率は82.6%となり、コロナ禍での最高を記録した。手頃な保育施設の確保が難しい状況や早期引退の増加もあり、コロナ禍で多くの働き手が労働市場から去り、労働参加率全体の回復ペースは鈍い。
Comment
米非農業部門雇用者数は市場予想を上回り、着実な経済回復を示している。娯楽・ホスピタリティー、ビジネスサービス、教育・ヘルスケア分野での人員確保が顕著であるが、小売業の減少や住宅需要の減速は懸念材料である。人事コンサルタントとしては、変動する市場環境に迅速に対応する戦略の構築が重要である。特に労働参加率の回復が遅れていることから、人事コンサルティングにおいて柔軟な労働条件やサポート体制の整備が求められる。
(2022年6月3日発表)
2022年4月分
Summary
非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比43万1000人増となった。2月は75万人増(速報値67万8000人増)に上方修正された。
4月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比42万8000人の増加となった。3月は42万8000人増(速報値43万1000人増)に下方修正された。
失業率は3.6%となり、前月から横ばいとなった。平均時給は前月比0.3%増となり、市場予想を下回った。
就業者と求職者を合わせた労働力人口の生産年齢人口に占める割合である労働参加率は62.2%に低下し、3か月ぶりの低水準となった。「プライムエイジ」と呼ばれる25-54歳の働き盛り層の参加率は小幅低下となった。
就業をやめ、再就職の意思なく労働力人口から外れた人の数は、新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)になった直後の急増期以来、初めて500万人を突破した。
雇用者数は娯楽・ホスピタリティー、製造業、運輸・倉庫を中心に幅広い分野で伸びた。
Comment
人事コンサルティングにおいては、労働参加率の低下に対応するため、再就職支援とスキルアッププログラムの強化が重要である。特に、娯楽・ホスピタリティー分野での人材確保と定着を図り、適切な報酬体系を提供することが求められる。企業は、パンデミックの影響で労働市場から離脱した人々を再び職場に引き戻すための施策を導入すべきである。柔軟な働き方の推進と多様な人材の活用が、持続可能な成長の鍵となる。
(2022年5月6日発表)
2022年3月分
Summary
非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比43万1000人増となった。2月は75万人増(速報値67万8000人増)に上方修正された。
失業率は3.6%(前月3.8%)に低下し、コロナ禍前の低水準に近づいた。
平均時給は前月比0.4%増加した。前年同月比では5.6%増となり、2020年5月以来の大きな伸びとなった。ただインフレ率が1980年代前半以来の高水準と、賃金上昇を上回るペースで加速しているため、多くの労働者は実質的な収入減に見舞われており、消費需要が抑制され始めている。
労働参加率は62.4%となり、前月に比べてわずかに上昇した。「プライムエイジ」と呼ばれる25-54歳の働き盛り層の参加率は2年ぶりの高水準となった。特にプライムエイジの女性では、前月比の伸びが2020年6月以来の大きさを記録した。
Comment
人事コンサルティングとして企業に提案すべきは、まずインフレ対策を踏まえた賃金調整と福利厚生の充実である。特に実質賃金の低下により、従業員の購買力を維持するための対策が急務である。また、労働参加率が上昇しているプライムエイジ層に焦点を当て、特に女性の働きやすい環境を整備することで、さらなる労働力の確保を図るべきである。リモートワークやフレックスタイムの導入、キャリア開発プログラムの充実がこれに寄与するだろう。さらに、企業はインフレと経済環境の変化に柔軟に対応できる人材戦略を構築し、持続可能な成長を実現するための支援を提供することが重要である。人事コンサルタントは、これらの施策を通じて企業の安定と成長を支援する役割を果たすべきである。
(2022年4月1日発表)
2022年2月分
Summary
2月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比67万8000人増となり、昨年7月以来の大幅な伸びとなった。
家計調査に基づく失業率は前月の4.0%から3.8%に低下した。
急速な景気の持ち直しを背景に、雇用者数の伸びは昨年5月以降、毎月40万人超となった。
平均時給は前月比ほぼ横ばい、前年同月比では5.1%増となり、前月から伸びが鈍化した。週平均労働時間は34.7時間に増加した。
労働参加率は62.3%となり、小幅上昇となった。25-54歳の同参加率は2020年3月以来の高水準となった。ただし、育児関連の問題や早期退職などの要因で米労働力人口は減少している。コロナ禍前の全体の同参加率は現行水準より約1ポイント高かった。
2月は外食やヘルスケアなど、コロナ禍の影響を最も大きく受けてきたセクターの一部で雇用が堅調に伸びた。専門職・ビジネスサービスでも増加。建設業の雇用は昨年3月以来の大幅増となった。
Comment
2月の非農業部門雇用者数は、昨年7月以来の大幅な増加を記録し、失業率も3.8%に低下するなど、米国経済の急速な回復を反映している。特に外食、ヘルスケア、建設業での雇用増が目立ち、労働参加率もわずかに上昇した。しかし、労働力人口は依然としてコロナ禍前の水準に戻っていない。人事コンサルタントとして、企業にはこの回復基調を活かし、今後の人材確保と定着戦略を強化することが重要である。特に、育児や早期退職による労働力不足に対応するため、働きやすさを重視した柔軟な勤務体制の導入や、労働参加率の向上を目指す施策が求められる。また、給与の伸びが鈍化していることから、報酬以外の福利厚生やキャリアパスの明確化など、総合的なエンゲージメント向上策も重要である。
(2022年3月4日発表)
2022年1月分
Summary
1月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比46万7000人増加し、市場予想を大幅に上回った。昨年12月と11月も両月合わせて70万9000人上方修正された。
失業率は4%(前月3.9%)に上昇した。
労働参加率は、最新の人口推計を反映させた調整後ベースで62.2%に上昇した。反映させない調整前ベースでは61.9%と前月から変わらずとなった。
平均時給は前月比0.7%増となり、2020年12月以来の大きな増加率となった。前年同月比では5.7%増となり、いずれも市場予想を上回る伸びとなった。
1月は幅広い分野で雇用の伸びが見られた。特に増えたのは娯楽・ホスピタリティーの分野で15万1000人増となった。このほか運輸・倉庫、小売り、プロフェッショナル・ビジネスサービスでも堅調な伸びとなった。
Comment
1月の非農業部門雇用者数は市場予想を大幅に上回り、娯楽・ホスピタリティーを中心に幅広い分野で堅調な伸びを示した。特に、運輸・倉庫やプロフェッショナル・ビジネスサービスでの雇用増が目立ち、経済全体の回復基調が確認できる。一方、失業率が4%に上昇したことは、依然として労働市場に不均衡が存在することを示唆している。人事コンサルタントとして、企業には、この不均衡に対応するための戦略的な人材管理を提案したい。特に、報酬の大幅な増加が見られる中で、給与水準の適正化とともに、福利厚生やキャリアパスの強化が重要である。また、労働参加率の上昇を促進するために、柔軟な働き方の提供や、リモートワーク環境の整備が求められる。
(2022年2月4日発表)