その他の雇用指標

国内の賃金やボーナス、採用等についての調査結果に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。

平成29年就労条件総合調査:厚生労働省

Summary

2016年の有給取得率は49.4%だった。過去の調査を見ると、最も高かったのは1993年の56.1%だった。2000年以降は50%を下回る水準で推移している。

業界別では「宿泊・飲食サービス」(32.8%)が最も低く、人手不足が深刻化している「建設」「卸売業・小売業」「生活関連サービス・娯楽」「教育・学習支援」などが30%台で低迷している。

日本の有給取得率はエクスペディア・ジャパンの調査では世界30カ国の中で2年連続の最下位となっている。

取得率は、ブラジル、仏国、スペイン、オーストリア、香港が最も高く(いずれも100%)、次いでメキシコ(86%)、米国(80%)、インド、イタリア(いずれも75%)、と続いた。

政府は2020年までに有給取得率を70%に引き上げる目標を掲げており、5日以上の有給消化を企業に義務付ける法案提出の検討や、広報活動に力を入れるとしている。

Comment

厚生労働省は「日本企業に有給を積極的に取得する文化がなく、上司や同僚が働いている中では休みづらいという人が多い」と分析しているが、人手不足や残業時間規制の影響もあり、より有給休暇を取りにくい環境になっていると考えられる。2020年までに有給取得率を70%に引き上げる政府目標達成のハードルはますます高いものとなっている。人事コンサルタントの視点からはまずは生産性の向上が必要不可欠だと考えている。

(2017年12月27発表)

平成28年賃金構造基本統計調査:厚生労働省

Summary

フルタイムで働く女性の所定内給与の平均が前年より1.1%増加して24万4600円となり、過去最高を更新した。男女間の賃金格差は2年ぶりに、正社員と非正社員の賃金格差も2年連続で、それぞれ過去最小を更新した。

従業員10人以上が働く全国約5万事業所で昨年6月に支給された給与のうち、主に基本給にあたる所定内給与の金額をまとめた。

フルタイム労働者(非正社員を含む)の所定内給与(月額)の平均は、前年から横ばいの30万4千円となった。男性が前年と同水準の33万5200円だったのに対し、女性は3年連続で過去最高を更新した。男性の給与を100とすると女性は73.0となり、過去最少となった。

課長級・部長級を合わせた役職者に占める女性の割合が過去最高の9.3%となり、女性の給与の平均を押し上げた。

雇用形態別では、正社員が前年比0.2%増の32万1700円、非正社員は3.3%増の21万1800円だった。正社員を100とすると非正社員は65.8となり、賃金格差は過去最小となった。正社員の給与が伸び悩む一方、人手不足などの影響で賃金水準が低い女性や非正社員の給与が伸びたことで格差が縮まっている。

Comment

正社員と非正社員の賃金格差は過去最少となったが、なお格差は大きい。また、調査には賞与を含んでおらず、年収では格差はさらに広がると考えられる。政府は不合理な待遇差をなくす「同一労働同一賃金」を掲げ、昨年末に指針案をまとめたが、これによりどれだけ格差が改善されるのかはかは不透明だ。

(2017年2月22発表)

2016年年末賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況:経団連

Summary

大企業が支給する冬のボーナスの第1次集計によると、平均妥結額は92万7892円と前年に比べて0.84%(7707円)増加した。4年連続の増加で、第1次集計の段階では過去最高となった。食品や製紙業界が昨年の好業績を反映して大きく増加した。

経団連が東証1部上場で従業員500人以上の大企業、71社分を集計した。第1次集計の対象には夏と冬のボーナスを春季労使交渉で同時に決める企業が多く、2016年3月期決算の実績を反映しやすい。

増額は6業種、減額が5業種だった。ボーナスが最も多かったのが自動車で99万266円と前年に比べて1.01%増加した。食品と紙・パルプはそれぞれ8.91%、3.21%増加した。

一方、造船は83万338円と前年に比べて3.85%減少した。非鉄・金属も前年を下回った。

Comment

前年より増加したものの、プラス幅は昨年(3.13%)から大幅に鈍化している。さらに製造業を中心にボーナスを業績と連動させる企業が多いが、2017年3月期決算では減益を予想する企業も多くなっており、今後もボーナスが増え続けるかは不透明な状況だ。

(2016年11月4日発表)

平成28年版厚生労働白書:厚生労働省

Summary

60歳以上の人の6割以上が、65歳を超えても仕事をしたいと考えていることがわかった。高齢者の就労に対し、国が取り組むべき施策をきいたところ、企業が高齢者を雇いやすくする施策や希望者全員が65歳まで働けるしくみづくりなどが挙がった。

白書のタイトルは「人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える」で、高齢化に直面する日本の現状や課題をまとめた。日本の65歳以上の人口は2015年に26.7%となった。高齢化は今後も進み、2060年には65歳以上の割合が39.9%になる見通しで、人口の2.5人に1人が高齢者という計算になる。

白書は高齢者の就労意欲の高さを指摘。60歳以上を対象にした調査では65.9%が65歳を超えても仕事がしたいと考えていることがわかった。

一方、70歳以上が働ける制度がある企業(従業員31人以上)は、2015年時点で全体の約2割にとどまる。高齢者の就労にあたって国が取り組むべき施策をきくと「企業が65歳以上の人を雇用するインセンティブづくり」と答えた人が39.1%と最も多かった。白書は高齢者が安心して働けるよう高齢者の就業機会の確保が必要だとした。

Comment

超高齢化社会を目前にして不足する労働力を補うために、高齢者と女性の積極的活用は至上命題となっている。人事コンサルタントとしては、働く意欲を持つ高齢者を積極的に活用する仕組み作りが必要だと考えている。

(2016年10月4日発表)

2015年民間給与実態統計調査:国税庁

Summary

民間企業で働く人が2015年に得た平均給与は420万円となり、2014年を1.3%(5万4千円)上回った。増加は3年連続となる。

雇用形態別では、正規労働者が1.5%増の485万円、派遣社員ら非正規労働者が0.5%増の171万円で、金額には約2.8倍の差があった。業種別では「電気・ガス・熱供給・水道業」が715万円でトップ。「金融・保険業」が639万円で続いた。最低は「宿泊・飲食サービス業」の236万円だった。

一年を通じて勤務した給与所得者数は4794万人と2014年比で0.8%増加し、過去最多だった。男性は0.9%増の2831万人、女性は0.6%増の1963万人。平均給与は男性が521万円、女性が276万円だった。

年間給与額が800万円超の給与所得者は426万人で全体の8.8%だったが、所得税額は5兆5千億円強と全体の6割を占めた。

Comment

雇用情勢の改善により、民間企業で働く人の昨年の給与は増加した。ただし、正規と非正規の格差は2.8倍、業種間の格差は3.0倍となり、働き方や業種による給与格差が浮き彫りとなった。それにしても正規と非正規の格差よりも、実は業種間の格差の方が大きいのだ。

(2016年9月28日発表)

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