全米雇用報告

ADP(オートマティック・データ・プロセッシング)から毎月発表される米国の雇用に関する指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。

2024年9月分

Summary

10月の米民間雇用者数は23万3000人の増加となり、市場予想を上回った。9月は15万9000人増(速報値14万3000人増)に上方修正された。

10月は教育・医療サービス、貿易・運輸の分野で特に大きく伸びた。雇用が減少したのは製造業のみだった。

9月から10月にかけては米南東部に2つのハリケーンが襲来したほか、ボーイングで数千人の従業員がストライキを実施した。そうした状況下でも米国の労働市場が健全な状態を維持したことを示唆している。

賃金の増加ペースは鈍化し、2021年以来の低い伸びとなった。転職した人の賃金は前年同月比6.2%増、同じ職にとどまった人の賃金は4.6%増だった。雇用者数は、地域別では南部が最も大きく増加。事業主の規模別では、従業員が500人以上の企業で最も伸びた。

Comment

10月の米民間雇用は予想を上回る23万3000人の増加を記録し、特に教育・医療サービスおよび貿易・運輸分野が牽引したことが注目に値する。南東部のハリケーンやボーイングのストライキといった困難にもかかわらず、労働市場が安定している点は、米国経済の底堅さを示している。一方で賃金の伸びが鈍化しており、人材確保の面で新たな工夫が必要である。人事コンサルタントとしては、賃金以外の魅力を高めた採用戦略を提案すべきである。特に南部や大規模企業での雇用増加を踏まえ、各地域や企業規模に応じた人材開発プランの策定や福利厚生の充実が重要である。

(2024年10月30日発表)

2024年9月分

Summary

9月のADP全国雇用報告によると、米国の民間部門の雇用は14.3万人増加した。これは、過去5か月間の雇用増加の鈍化からの回復を示しており、唯一の情報部門を除いて、すべての産業で雇用が増加した。特に製造業は、4月以来の雇用増加となり、建設業や天然資源・鉱業などの生産部門で顕著な増加が見られた。

産業別では、サービス提供部門が10.1万人の増加を記録し、特にレジャー・ホスピタリティ業が3.4万人増加した。その他のサービス業、教育・医療サービス、金融活動、専門職・ビジネスサービスもそれぞれ増加している。一方で、情報部門は1万人の雇用減少となった。

賃金の伸びは若干鈍化しており、雇用継続者の賃金は前年比4.7%増加し、転職者の賃金は6.6%の増加にとどまった。特に転職者の賃金増加率の鈍化が顕著であり、前月の7.3%から低下している。

Comment

9月の民間部門での雇用増加は14.3万人となり、特に製造業や建設業での回復が注目される。一方、情報部門での雇用減少や賃金増加率の鈍化が見られる点は、労働市場の不安定さを示している。人事コンサルタントとしては、賃金の伸びが鈍化している今こそ、企業が賃金以外の福利厚生やキャリアパスの提供を強化し、従業員のモチベーション維持を図ることを提案する必要がある。また、サービス業や製造業での需要に応じた採用計画の最適化や、特に賃金上昇率が鈍化する転職者市場におけるタレントアクイジション戦略の再構築が重要だ。

(2024年10月2日発表)

2024年8月分

Summary

8月の米国の民間部門の雇用は99,000件増加した。

雇用の増加は、特に建設業や金融活動、教育・医療サービスで顕著であり、それぞれ27,000件、18,000件、29,000件の増加が見られた。一方、製造業や専門職・ビジネスサービス部門では減少が見られ、それぞれ8,000件、16,000件の減少となった。

地域別では、南部が55,000件の増加で最大の伸びを示し、西部が20,000件、北東部が24,000件の増加となった。中小企業(従業員1~49人)では9,000件の減少があったが、中規模企業(50~499人)では68,000件、大企業(500人以上)では42,000件の増加が確認された。

また、賃金の上昇は安定しており、雇用を維持した労働者の賃金は前年比4.8%増、転職者の賃金は7.3%増であった。

Comment

人事コンサルタントとして注目すべきは、地域と業界、企業規模による違いである。建設業や医療サービスでの雇用の増加は、これらの分野での労働需要が高まっていることを示唆しており、これに対する採用戦略の強化が必要である。一方、製造業や専門職分野での減少傾向に対しては、人材の再配置やスキル再教育のプログラムが不可欠となる。また、中小企業での減少を踏まえ、賃金上昇率を活用した競争力向上策や、リテンション戦略を見直すことが重要である。

(2024年9月5日発表)

2024年7月分

Summary

7月の民間部門の雇用は12万2000人の増加となり、市場予想を下回った。6月は当初の15万人から15万5000人に修正された。

業種別では、サービス業が8万5000人増加し、特に貿易・運輸・公益事業が6万1000人増加しました。一方、製造業は4000人減少しました。地域別では、南部が5万5000人増加し、中でも南大西洋地域が3万2000人増加しました。

規模別では、中規模企業(50-499人)が7万人増加し、特に50-249人の企業で5万5000人増加しました。小規模企業(1-19人)は1万5000人増加しましたが、20-49人の企業は2万2000人減少しました。

賃金については、仕事に留まる従業員の年間賃金上昇率が4.8%と3年ぶりの低水準となり、特に転職者の賃金上昇率は7.2%に減速しました。業種別では、建設業が5.3%、教育・医療サービスが5.2%の賃金上昇を示した。

Comment

人事コンサルタントとしては、賃金上昇が鈍化していることを踏まえ、従業員のモチベーション向上策が求められる。特に転職者の賃金上昇が鈍化しているため、企業内でのキャリアパスの明確化やスキルアップの機会提供を通じて、従業員のエンゲージメントを高めることが重要である。

(2024年7月3日発表)

2024年6月分

Summary

6月の米民間雇用者数は15万人の増加となり、市場予想を下回った。5月は15万7000人増(速報値15万2000人増)に上方修正された。

財生産部門では建設業が2万7000人増加、サービス部門では娯楽・ホスピタリティが6万3000人、プロフェショナルサービスが2万5000人増加したのが目立った。

一方、天然資源・鉱業と製造業、情報サービスは雇用が減少した。

転職した人の賃金は前年比7.7%上昇となり、3か月連続で伸びが鈍化した。同じ職にとどまった人の賃金は前年比4.9%上昇で、2021年半ば以来の小幅な伸びだった。

Comment

業種間での雇用状況の不均衡が浮き彫りになった。また、転職者と同職にとどまる者の賃金伸び率の鈍化は、労働市場の全体的な賃金上昇圧力の低下を示している。人事コンサルティングでは、こうしたデータを基に企業の人材戦略を見直し、特に成長分野への人材配置や、労働者のスキルアップ支援を強化することが求められる。人事コンサルタントは、経済情勢に対応した柔軟な人材マネジメントを提案し、企業の競争力向上に貢献する必要がある。

(2024年7月3日発表)

2024年5月分

Summary

5月の米民間雇用者数は15万2000人増加となり、市場予想を下回り、今年1月以降で最も低い増加となった。4月は18万8000人増(速報値19万2000人増)に下方修正された。

製造業は2万人減と、昨年7月以来の大幅な減少となった。専門職およびビジネスサービスも過去1年余りで最も多くの雇用を削減した。鉱業と情報産業の雇用も減少し、娯楽およびホスピタリティーの雇用は昨年11月以降で最も低い伸びにとどまった。

転職した人の賃金は前年比7.8%上昇となり、2か月連続で伸びが鈍化した。同じ職にとどまった人の賃金は前年比5%上昇となり、2021年以来の低い伸びに並んだ。

Comment

5月のADP全米雇用報告は、米経済の減速を示唆している。民間雇用者数の増加が市場予想を下回り、製造業や専門職、ビジネスサービスでの雇用減少が目立つ。賃金の伸びが鈍化しており、インフレの影響と企業の慎重な採用姿勢が反映されている。人事コンサルティングの視点から、企業は労働市場の不確実性に対応しつつ、柔軟な雇用戦略の採用と賃金政策見直しの必要がある。

(2024年6月5日発表)

2024年4月分

Summary

4月の米民間雇用者数は19万2000人の増加となり、市場予想を上回った。3月は20万8000人増(速報値18万4000人増)に上方修正された。

4月の人員採用は広範囲で見られた。特に娯楽・ホスピタリティーや建設業で雇用が大きく増えた。唯一、情報産業では雇用が減少した。地域別では南部が最も力強い伸びを示した。

一方、賃金上昇率は4月に鈍化した。転職した人の賃金は前年比9.3%上昇となり、3月に比べて1ポイント近く鈍化した。同じ職にとどまった人の賃金は前年比5.0%上昇となり、3月とほぼ同じ伸びだった。

Comment

4月の米民間雇用者数が増加し、特に娯楽・ホスピタリティーや建設業で雇用が増加した一方、情報産業では減少した。賃金上昇率の鈍化が見られ、転職者の賃金上昇率が低下している。人事コンサルタントは業界ごとの雇用動向と賃金トレンドを綿密に分析し、適切な人材戦略を策定・提案する必要がある。

(2024年5月1日発表)

2024年3月分

Summary

3月の米民間雇用者数は18万4000人増加の増加となり、市場予想を上回った。2月は15万5000人増(速報値14万人増)に上方修正された。

雇用創出は広がりを見せており、特に娯楽・ホスピタリティーや建設、貿易・運輸で顕著に増加した。地域別でも全ての地域で増加し、南部が特に大きく増えた。

転職した人の賃金は前年比10%上昇に加速し、昨年7月以来の大幅増となった。

Comment

米民間企業の雇用者数は予想を上回り、昨年7月以来の大幅増となった。雇用増加は広がりを見せ、一部では賃金の伸びが加速するなど労働力の堅調な需要を示す内容となった。こうした状況下で米国の人事コンサルティング会社や人事コンサルタントが企業にどのようなアドバイスを提供しているのかは興味深い。

(2024年4月4日発表)

2024年2月分

Summary

2月の米民間雇用者数は14万人の増加となり、市場予想を下回った。1月は11万1000人増(速報値10万7000人増)に上方修正された。

転職した人の賃金の伸びは、2022年11月以来、初めて加速した。一方、同じ職にとどまった人の賃金は2021年8月以来の低い伸びとなった。

雇用の増加は娯楽・ホスピタリティーや建設、貿易・運輸がけん引した。雇用は地域や企業規模を問わず増加した。

Comment

2月の米民間雇用者数は緩やかなペースで増加し、全ての産業で労働需要が底堅いことを示す内容となった。転職者の賃金の伸びが再加速する中で、既に在籍している従業員の賃金との整合性を取るために、自分だったら人事コンサルタントとしてどのようなアドバイスを企業に提供だろうかと思案する。

(2024年3月6日発表)

2024年1月分

Summary

1月の米民間雇用者数は10万7000人の増加となり、市場予想を大幅に下回った。

昨年12月は15万8000人増(速報値16万4000人増)に下方修正された。

1月は情報セクターを除く全ての業種で雇用が増加したが、最も増加したのは娯楽・ホスピタリティーの2万8000人だった。このほか、貿易・輸送・公共事業が2万3000人、建設業が2万2000人の増加となった。

1月に転職した人の賃金は7.2%上昇となり、2021年5月以来の低い伸びとなった。同じ職にとどまった人の賃金も伸びが鈍化した。

Comment

1月の米民間企業の雇用者数は伸びが市場予想を下回り、労働市場が徐々に冷え込んでいる状況を反映した内容となった。

(2024年1月31日発表)