2025年7月分
Summary
7月の米民間部門の雇用者数は10万4,000人増加した。6月は3万3000人減から2万3000人減に上方修正された。
業種別では、サービス業が主導し、特に娯楽・接客業で4万6,000人、金融業で2万8,000人の増加が目立った。一方、教育・医療サービスでは3万8,000人の減少が見られ、年初からの累計でも純減となっている。
地域別では、西部で7万5,000人、南部で4万3,000人の雇用増が確認された。規模別では、大企業と中規模企業がそれぞれ4万6,000人増、小企業は1万2,000人増となった。
賃金動向については、転職せずに同職場にとどまった労働者の年収は前年比4.4%増、転職者は7.0%増と、いずれも前月と同水準を維持している。
Comment
人事コンサルタントとしては、業種・地域・企業規模に応じた多層的な人材戦略の構築を提案すべきである。まず、教育・医療サービス分野では、需要に見合った人材供給体制の強化と職場魅力の再構築が急務である。また、大・中規模企業が採用を主導する状況下で、小規模企業に対しては競争力ある報酬体系や柔軟な就業制度を通じた人材確保策の支援が求められる。加えて、人事コンサルティングの視点から、消費者需要の安定を背景に雇用姿勢が改善する中、企業に今こそ人的資本への投資を強化し、中長期的な成長を支える人材育成と定着戦略の実行が必要であることを訴えかける必要がある。
(2025年7月30日発表)
2025年6月分
Summary
6月の民間雇用者数は3万3000人の減となり、予想外の減少となった。減少は2023年3月以来、2年3か月ぶりとなる。5月は3万7000人増から2万9000人増に下方修正された。
業種別では、専門・ビジネスサービス業で5万6,000人、教育・医療サービスで5万2,000人の雇用減が主因である。一方、製造業や娯楽・接客業などでは雇用増が見られた。
業規模別では、小規模企業が4万7,000人の減少、中規模企業が1万5,000人減であったのに対し、大企業は3万人の雇用増を記録した。
賃金動向では、転職しなかった労働者の年収は前年比4.4%増、転職者では6.8%増であり、いずれも堅調な水準を維持している。
ADPのチーフエコノミストによれば、解雇は依然として稀であるものの、採用意欲や退職者補充の鈍化が雇用減少の背景にあるという。
Comment
6月の米民間雇用者数は3万3000人減となり、予想外の減少に転じた。賃金上昇は転職者6.8%、定着者4.4%と堅調であるが、経済の先行き不透明感から採用意欲や退職者の補充が鈍化し、労働市場の停滞感が強まりつつある。
人事コンサルタントとしては、特に人材供給が停滞する小規模・中規模企業に向け、柔軟な採用戦略と魅力ある人事制度の再構築を提案すべきである。今後は単なる採用拡大ではなく、既存人材のスキルアップとキャリア形成を軸にした人材維持戦略が不可欠となる。また、雇用の二極化が進行する中で、大企業の雇用安定の影に隠れた構造的課題を見極め、中長期的な人的資本投資の方向性を明確にすることが、企業競争力を維持するうえで重要となる。
(2025年7月2日発表)
2025年5月分
Summary
5月の米民間部門の雇用者数は3万7,000人増加したが、雇用の伸びは2023年3月以来の最低水準となった。4月は6万2000人増から6万人増に下方修正された。
産業別では、雇用者増はサービス部門では、娯楽・ホスピタリティーや金融業が牽引し、同部門は3万6千人増加した。一方、財生産部門では建設業が6,000人増と堅調だったものの、製造業や鉱業では減少した。
地域別では、西部が最も雇用を伸ばし3万7,000人増、東北部は1万9,000人減少した。企業規模別では、中規模企業(従業員数50~249人)が5万1,000人増と牽引した。
賃金動向では、転職者の年収増加率は前年同月比7.0%、転職せず同じ職場にとどまった者は4.5%の上昇で、前月から大きな変化はなかった。
Comment
5月の民間部門の雇用者数が2023年3月以来の低水準となった。産業別では娯楽・ホスピタリティーや金融業が堅調である一方、製造業・鉱業の雇用減少が全体の伸びを抑制した。賃金面では、転職者が7.0%、職場定着者が4.5%の増加を維持しており、雇用鈍化の中でも報酬は堅調に推移している。
人事コンサルタントとしては、企業に対し「選択と集中」の観点から人材戦略を再構築することを提案すべきである。とりわけ、成長が見られる業種や地域、企業規模に応じて、即戦力人材の確保や職場環境の最適化を図る必要がある。製造業や鉱業のように減速が顕著な分野では、業務効率化と人材のスキル転換を通じた再配置策が有効である。また、賃金水準が維持されている今こそ、給与以外の魅力(柔軟な勤務体系、キャリア開発機会など)を強化し、長期的な人材定着を目指す戦略の導入が急務である。
(2025年6月4日発表)
2025年4月分
Summary
4月の米国民間部門の雇用者数は前月比62,000人の増加となり、市場予想を下回った。3月は14万7000人増(速報値15万5000人増)に下方修正された。
産業別では、財生産部門が26,000人増となり、内訳は天然資源・鉱業6,000人増、建設16,000人増、製造4,000人増だった。サービス提供部門は34,000人増となり、貿易・輸送・公益21,000人、金融活動20,000人、レジャー・ホスピタリティ27,000人が増加した一方、情報産業は8,000人減、専門・ビジネスサービスは2,000人減、教育・医療サービスは23,000人減となった。
事業規模別では、中規模企業が40,000人増、大規模企業が12,000人増、小規模企業が11,000人増であった。
賃金は全体で前年同月比4.5%増加し、職場定着者の賃金上昇率は4.5%で、前月からわずかに減速した。転職者の賃金上昇率は6.9%で、前月の6.7%から加速した。業種別の職場定着者の賃金上昇率は、建設4.7%、教育・医療サービス4.7%、レジャー・ホスピタリティ4.7%だった。
Comment
米国の労働市場の拡大ペースが鈍化している。産業別では、財生産部門やサービス提供部門の一部で増加が見られた一方、情報産業、専門・ビジネスサービス、教育・医療サービスでの減少が目立ち、産業間のばらつきが拡大している。賃金動向では転職者の賃金上昇が加速する一方、職場定着者の賃金上昇率はわずかに減速し、雇用市場の競争軸が賃金以外の要素にも広がりつつあることが示唆される。
人事コンサルタントとしては、企業に対し、産業・規模ごとに異なる労働市場の動向に応じた柔軟な人事戦略を提案する必要がある。人材獲得が続く建設、金融、レジャー・ホスピタリティ分野では、競争力ある報酬体系に加え、キャリアパスの明示や職場環境の改善による魅力付けが重要である。一方、雇用減少が見られる情報、専門・ビジネスサービス、教育・医療分野では、既存人材のリテンションとスキルアップ支援を強化し、人材流出を防ぐ取り組みが急務である。また、賃金上昇の持続性を見極めつつ、非金銭的報酬や柔軟な働き方の導入によるエンゲージメント向上策を重視することが、長期的な競争力維持につながるだろう。
(2025年4月30日発表)
2025年3月分
Summary
3月の米国民間部門の雇用は前月比15万5000人増加し、市場予想を上回った。前月は8万4000人増(速報値7万7000人増)に上方修正された。
業種別では、製造業が2万1000人増と2か月連続で堅調であった一方、建設業の増加は6000人にとどまり、天然資源分野では3000人の減少が見られた。サービス業では13万2000人の雇用増となり、特に金融活動(3万8000人増)と専門・ビジネスサービス(5万7000人増)が全体をけん引した。
企業規模別には、小規模事業所(1~49人)で5万2000人、中規模(50~499人)で4万3000人、大規模(500人以上)で5万9000人の雇用がそれぞれ増加した。
賃金に関しては、前年同月比で定着労働者の賃金は4.6%上昇し、転職者は6.5%の上昇となった。ただし、転職者の賃金プレミアムは1.9ポイントとなり、2024年9月以来の最低水準であった。業種別では、製造業4.8%、金融業5.3%、教育・医療サービス4.7%などが顕著であった。企業規模別では、従業員500人以上の大企業での上昇率が4.9%と高かった。
Comment
3月の米民間部門雇用者数は15万5000人増と市場予想を上回り、特に金融活動や専門・ビジネスサービスが雇用の伸びを牽引した。製造業も2か月連続で堅調な伸びを示す一方、建設業や天然資源分野では伸び悩みが見られた。企業規模別では大・中・小規模企業全てで雇用が増加しており、広範な回復傾向がうかがえる。賃金面では、定着労働者で4.6%、転職者で6.5%の上昇が見られたが、転職プレミアムは1.9ポイントと2024年9月以来の低水準となり、転職市場の過熱感はやや後退している。人事コンサルタントとしては、特に金融やビジネスサービス分野での人材確保に向けた競争力ある報酬制度の設計が重要となる。転職プレミアムの縮小は、労働者の職場選択が報酬以外の要素(柔軟な働き方、職場文化、成長機会)へシフトしている兆しでもあり、企業はこれらの要素を強化する必要がある。
(2025年4月2日発表)
2025年2月分
Summary
2月の米民間雇用者数は7万7000人増となり、市場予想を大幅に下回った。1月は18万6000人増(速報値18万3000人増)に上方修正された。
産業別では、貿易や運輸、公益(3万3000人減)、教育、ヘルスケア(2万8000人減)、専門・ビジネスサービス(2万7000人減)などサービス部門での雇用減少が目立った。財生産部門の雇用は建設業が2万6000人増となるなど4万2000人増となり、2022年10月以来の大幅な伸びを示した。
事業の規模別では、20人未満の小企業のみが減少となり、小規模企業の雇用が減少傾向にあることが示された。
賃金の伸びは前月とほぼ同様だった。転職した労働者の賃金は6.7%上昇した。同じ職にとどまった労働者の賃金は4.7%上昇した。
Comment
2月の米民間雇用者数は昨年7月以来の小幅な伸びにとどまった。労働需要の鈍化と整合する結果となった。人事コンサルタントとしては、サービス業の雇用減少に対応し、企業が労働力の最適化を図るための施策を提案すべきである。特に、小規模企業に対しては、競争力のある報酬制度や、スキル開発・研修の強化を通じた人材定着戦略の構築が必要となる。一方、建設業など成長分野では、労働力確保を迅速に進めるための採用プロセスの効率化や、外国人労働者の活用など、長期的な人材戦略の再構築が求められる。また、賃金上昇が継続する中で、企業は給与以外の福利厚生やキャリア成長機会の提供を強化し、従業員のモチベーション向上と離職防止に努める必要がある。
(2025年3月5日発表)
2025年1月分
Summary
1月の米民間雇用者数は前月比183,000人増加し、市場予想を上回り雇用の伸びは堅調であった。昨年12月は17万6000人増(速報値は12万2000人増)に上方修正された。年収の中央値は前年同月比4.7%増加し、安定した賃金上昇が続いている。
雇用を業種別に見ると、貿易・運輸・公共事業が5万600人増、レジャー・ホスピタリティが5万4000人増となる一方、専門・ビジネスサービスは1万4000人増、製造業では1万3000人減となるなど雇用の伸びが鈍化した。
企業規模別の賃金増加率では、中規模・大規模企業(従業員50人以上)が5.0%以上、小規模企業(49人以下)が2.9%だった。
Comment
1月の米民間雇用者数は18万3000人増と堅調な伸びを示し、特に消費者向けサービス産業が雇用拡大を牽引した。一方で、製造業は1万3000人減少し、ビジネスサービスの伸びも鈍化しており、産業間での雇用格差が拡大している点が注目される。企業規模別では中規模企業が最も多くの雇用を創出した。賃金は前年同月比4.7%増加し、転職者の賃金は6.8%の伸びを記録しているものの、小規模企業では2.9%にとどまり、規模による格差が浮き彫りとなった。人事コンサルタントとしては、製造業や小規模企業における採用難を考慮し、労働力確保のための戦略的なアプローチを提案すべきである。具体的には、製造業においては自動化やスキル開発プログラムを活用し、労働生産性を向上させる施策が求められる。また、賃金上昇率の低い小規模企業では、給与以外のインセンティブ(リモートワークの導入、福利厚生の拡充)を強化し、人材の流出を防ぐことが重要である。さらに、レジャー・ホスピタリティ業界の成長を活かし、求職者の流動性を高めるためのキャリア支援や労働市場のマッチング強化が必要となる。
(2025年2月5日発表)