全米雇用報告(2022年)
ADP(オートマティック・データ・プロセッシング)から毎月発表される米国の雇用に関する指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
2022年12月分
Summary
12月の米民間雇用者数は23万5000人増となり、市場予想を上回った。前月は18万2000人増(速報値12万7000人増)に上方修正された。
雇用の伸びは従業員が500人未満の企業に集中しており、500人以上の大企業では15万1000人減となり、減少幅は2020年4月以来最大となった。
業種別では財生産部門では建設業、サービス部門では娯楽・ホスピタリティー、教育・医療サービス、プロフェッショナル・ビジネスサービスで増加が目立った。
また、賃金上昇ペースは12月に急減速したことが示された。仕事を変えた人は賃金が前年比で15.2%上昇となり、過去10か月で最も低い伸びとなった。同じ仕事にとどまった人では、賃金の伸び率の中央値は7.3%となり、11月(7.6%)から鈍化した。
Comment
12月のADP全米雇用報告は、市場予想を上回る増加を記録し、特に中小企業での雇用増が顕著であることから、人事コンサルタントはこれらの規模の企業に焦点を当てた支援が重要である。大企業の雇用が大幅に減少している現状では、大企業向けの人事戦略も再考する必要があり、特に建設業や教育・医療サービスなど成長が見られる業種における人材管理の最適化が求められる。
(2023年1月5日発表)
2022年11月分
Summary
11月の米民間雇用者数は市場予想を大幅に下回る12万7000人の増加となり、2021年1月以来の低い伸びとなった。
転職しなかった雇用者の賃金は、前年同月比で7.6%増加した。伸びは2か月連続で鈍化し、労働者側の交渉力が衰え始めている可能性が示された。
雇用者数の増加は娯楽・ホスピタリティー分野で22万4000人の増加となり、最も顕著だった。一方で製造業では10万人減少した。
企業の規模別では、従業員500人以上の大企業が6万8000人減少、中堅企業が24万6000人増加、従業員50人未満の小規模企業が5万1000人の減少となった。
Comment
上記データは人事コンサルタントにとって重要な示唆を含んでいる。労働市場の鈍化と労働者側の交渉力の低下は、企業にとって戦略的な人事管理の見直しを迫るものである。娯楽・ホスピタリティー業界での雇用増加が目立つ一方で、製造業の大幅な減少は業種特有の課題に対する適切な対応を求める。人事コンサルティングは、これらのデータを基に、企業が効果的な人材確保、育成、および適応戦略を展開するための支援を提供する必要がある。
(2022年11月30日発表)
2022年10月分
Summary
10月の米民間雇用者数は23万9000人増加し、市場予想を大幅に上回った。前月は19万2000人増(速報値20万8000人増)に下方修正された。
娯楽・ホスピタリティーで21万人増加したほか、貿易・運輸・公益事業でも8万400人の雇用が増えた。一方、情報、製造業、金融サービスでは減少した。
規模別では、大規模企業が4000人減少、中規模企業が21万8000人増加、小規模始業では2万5000人増加した。
転職で得た報酬の伸びは前年比で15.2%増となり、減速傾向が続き、労働者の交渉力が落ち始めている可能性を示した。同じ職を維持した場合の伸びは中央値で7.7%増だった。
Comment
特に娯楽・ホスピタリティー業界や貿易・運輸・公益事業の雇用増加が顕著であることから、人事コンサルタントとして、これらの業界における雇用動向を分析し、適切な人材確保と人材配置に関する助言や提案を行う必要がある。また、転職時の報酬の伸びが減速していることは、労働市場における労働者の交渉力の変化を示しており、人事コンサルティングを行う上での重要な指標となる。
(2022年11月2日発表)
2022年9月分
Summary
9月の米国の民間雇用者数は20万8000人増加した。前月は18万5000人増(速報値13万2000人増)に上方修正された。
鉱業は1万6000人の減少となり、製造業は1万3000人減少した。貿易・運輸・公益は14万70000増加して民間雇用者数の伸びの4分の3近くを占めた。金融業は1万6000人減少し、2020年12月以来の低水準となった。
統計では賃金の伸びに関する新たな情報も示され、転職した人の給与は1年前から15.7%増加した。職を変えなかった人の賃金の伸びは7.8%だが、増加率は少なくとも2年ぶりの大きさだった。職を変えなかった人の賃金増は大企業が中心だった。
規模別では、大企業(500人以上)が6万人増加、中堅企業(50~499人)が9万人増加、小企業(50人未満)が5万8000人増加した。
Comment
人事コンサルタントとしての視点からは、特に貿易・運輸・公益部門での顕著な雇用増加が重要な示唆を与える。これは、この分野の拡大が継続的な経済回復のキーファクターであることを示しており、企業は人事戦略を適切に調整することが求められる。一方、鉱業や製造業の雇用減少は、これらの産業に特化した人事コンサルティングの介入が必要であることを示唆している。
(2022年10月5日発表)
2022年8月分
Summary
8月の米民間雇用者数は13万2000人の増加となり、マイナスだった2021年1月以来の低い伸びとなった。
業種別で雇用が特に増加したのは、娯楽・ホスピタリティー(9万6000人増)と貿易・運輸・公益(5万3000人増)、建設(2万1000人増)だった。一方、金融(2万人減)、専門・ビジネスサービス(1万4000人減)、教育・ヘルスサービス(1万5000人減)では減少した。
規模別では50人~249人の中規模企業が7万4000人増、20人~49人の小規模企業が7万2000人増、500人以上の大企業が5万4000人増とそれぞれ増加した。
転職した人の賃金は前年同月比で16.1%増加し、転職しなかった人の伸び(7.6%増)の2倍を超えた。業種別では娯楽・ホスピタリティーと貿易・運輸・公益で、賃金の伸びが特に大きかった。
Comment
転職者の賃金増加率が16.1%と高水準にあることは人材の流動性が高まりつつある兆候である。こうした状況下、人事コンサルタントは、企業が優秀な人材を引き留めるための戦略的な賃金設定と職場環境の改善を提案する必要がある。また、人事コンサルティングの観点から、異業種間の賃金差を分析し、各業界に応じた人材確保のための具体的な施策を立案することが求められる。
(2022年8月31日発表)
※統計手法更新のため、2022年6月分、7月分の全米雇用報告は休止。
2022年5月分
Summary
5月の米民間雇用者数は12万8000人の増加にとどまり、市場予想を大幅に下回った。前月は20万2000人増(速報値24万7000人増)に下方修正された。
サービス部門の雇用者数は10万4000人増加した。教育・健康サービスが4万600人増加した。娯楽・ホスピタリティーは1万7000人の増加にとどまり、2020年12月以降で最も少ない増加にとどまった。
財生産部門の雇用は2万4000人増加。製造業が2万2000人増加した一方、建設業は2000人減少した。
企業の規模別では、従業員数50人未満の小規模企業の雇用者数が9万1000人減少した。一方、中規模企業と大規模企業では計21万9000人増加した。従業員数20人未満の企業での雇用は4か月連続マイナスとなり、2019年以降で最長の減少局面となった。
Comment
5月の全米雇用報告では、市場予想を大幅に下回る12万8000人増にとどまり、人事コンサルタントとして注視すべき兆候が見られる。特に小規模企業で雇用が9万1000人減少したことから、小規模企業の経営環境が厳しさを増していることを伺い知ることができる。対照的に中規模・大規模企業での雇用は増加していることから、人事コンサルティングにおいては中小企業向けの効果的な人材戦略が求められる。
(2022年6月2日発表)
2022年4月分
Summary
4月の米民間雇用者数は24万7000人の増加となり、市場予想を下回った。前月は47万9000人増(速報値45万5000人増)に上方修正された。
サービス部門の雇用者数は20万2000人増加した。娯楽・ホスピタリティー分野が7万7000人、専門職・ビジネスサービスが5万人増加した。
財生産部門は4万6000人増加した。製造業が2万5000人、建設業が1万6000人増加した。
企業の規模別では、従業員数500人以上の大企業では32万1000人増加し雇用の堅調な伸びが見られたが、50人未満の小規模企業は12万人減少となり、過去2年で最も大きな減少幅となった。
Comment
4月の米民間雇用者数は、コロナ禍での回復局面で最も低い伸びにとどまった。サービス部門や製造業での増加が目立つ一方、小規模企業の雇用減少が深刻である。特に、従業員50人未満の企業での大幅な雇用減は、競争環境の激化や経済的な不確実性に直面していることを示唆する。人事コンサルタントとしては、小規模企業の競争力強化が重要な課題であり、採用の効率化や、柔軟な労働環境の提供が不可欠である。また、サービス業や製造業においては、今後の成長を支えるための人材育成と、長期的なキャリアパスの構築が求められる。
(2022年5月4日発表)
2022年3月分
Summary
3月の米民間雇用者数は45万5000人増加した。前月は48万6000人増(速報値47万5000人増)に上方修正された。
サービス部門の雇用者数は37万7000人増加した。娯楽・ホスピタリティー分野で16万1000人、教育・ヘルスケア分野で7万2000人、専門・ビジネスサービス分野で6万1000人増加した。
財生産部門の雇用は7万9000人増加した。製造業で5万4000人、建設業で1万5000人増加した。
企業の規模別では、従業員数50人未満の小規模企業の雇用者数は9万人、中堅企業では18万8000人、大規模企業では17万7000人増加した。
Comment
雇用者数はサービス部門の増加が顕著で、特に娯楽・ホスピタリティー、教育・ヘルスケア、専門・ビジネスサービスでの雇用増加が目立った。また、財生産部門でも製造業と建設業が伸びた。企業規模別では、中小企業から大規模企業まで広範囲で雇用が増加している。人事コンサルタントとしては、これらのデータを基に、成長分野における効果的な採用戦略や、各企業規模に応じた人事コンサルティングが求められる。特に中堅企業の成長を支援するための、柔軟で持続可能な人材管理が重要である。
(2022年3月30日発表)
2022年2月分
Summary
2月の民間部門雇用者数は47万5000人増となり、市場予想を大幅に上回った。1月の雇用者数は50万9000人増へと、当初発表の30万1000人減からプラスに上方修正された。
財生産部門の雇用者は5万7000人増加した。製造業は3万人、建設業は2万6000人それぞれ増加した。
サービス部門の雇用者は41万7000人増加した。娯楽・ホスピタリティー分野が17万人増加したほか、貿易・運輸・公益事業分野が9万8000人、プロフェッショナル・ビジネスサービス分野は7万2000人それぞれ増加した。
企業の規模別では、大規模企業では55万2000人、中規模企業では1万8000人それぞれ増加したが、従業員50人未満の小規模企業では9万6000人の雇用が失われた。
Comment
2月の米民間部門雇用者数は市場予想を大幅に上回り。特にサービス部門の雇用増は顕著であり、娯楽・ホスピタリティー分野が17万人増加したことが目立つ。一方、小規模企業では雇用が減少しており、9万6000人の雇用が失われたことが課題である。人事コンサルティングにおいては、企業の規模別の異なるニーズに対応した戦略が求められる。大規模企業の採用強化に対しては、スキルアップやキャリアパスの明確化が重要である。中小企業には、効率的な人材採用と育成、労働環境の改善が必要である。また、パンデミック後の労働市場の変動に対応するための柔軟な人材戦略を提案し、持続可能な成長を支援すべきである。人事コンサルタントとして、これらのデータを基に企業の多様なニーズに応える包括的なアプローチが求められる。
(2022年3月2日発表)
2022年1月分
Summary
1月の米民間雇用者数は30万1000人の減少となり、市場予想を大幅に下回った。前月は77万6000人増(速報値80万7000人増)に下方修正された。
サービス部門の雇用者数は27万4000人減少し、2020年4月以来の大幅な落ち込み。特に娯楽・ホスピタリティー分野が大幅に(15万4000人)減少した。
財生産部門の雇用は2万7000人減少した。建設業は1万人、製造業は2万1000人減少した。
企業の規模別では、従業員数50人未満の小規模企業で14万4000人、中規模企業で5万9000人、大規模企業では9万8000人の雇用が失われた。
Comment
こうした状況下、人事コンサルティングとして企業に提案すべきことは多岐にわたる。まず、雇用が特に減少した業界において、リストラされた従業員の再就職支援とスキル再訓練を強化することが必要である。また、企業は雇用安定化策を講じ、従業員の不安を軽減することが重要である。中小企業においては、リモートワークの推進や柔軟な労働時間制度の導入が求められる。人事コンサルタントは、これらの施策を通じて企業が持続可能な成長を実現できるよう支援するべきである。
(2022年2月2日発表)