毎月勤労統計(2021年)

厚生労働省が毎月発表している賃金、労働時間及び雇用の変動に関する雇用指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。

2021年12月分

Summary

2021年12月の実質賃金は前年比2.2%減と4か月連続で低下し、2020年5月以来の大幅なマイナスとなった。

12月の現金給与総額は前年比0.2%減少して54万6580円となり、10か月ぶりに減少した。ボーナスなど特別に支払われた給与は前年比0.9%減少して28万1569円となり、3か月ぶりにマイナスに転じた。

現金給与総額は、一般労働者では前年比0.2%増加して74万9358円、パートタイム労働者は同0.9%増加して11万2236円となった。パートタイム労働者比率が31.90%となり、前月と比べ0.38ポイント上昇したことも現金給与総額の前年比を下押しした。

所定内給与は前年比0.2%増加して24万5991円、所定外給与は同4.8%増加して1万9020円だった。

2021年暦年では、現金給与総額が前年比0.3%増加、所定内給与が同0.3%増加、所定外給与は同3.8%増加、特別に支払われた給与は同0.7%減少となった。

Comment

実質賃金の継続的な低下は従業員の購買力を削ぎ、士気にも影響を及ぼす可能性がある。このような状況下では、人事コンサルタントは労働市場の動向に即した報酬戦略を策定し、従業員の満足度を保つための施策を提案することが求められる。

(2022年2月8日発表)

2021年11月分

Summary

2021年11月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比1.6%減少し、3か月連続の減少となった。

前月まで8か月連続で増加していた名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は、前年同月比横ばいの28万0398円だった。基本給にあたる所定内給与は0.3%増加、ボーナスなど特別に支払われた給与は7.9%減少、残業代などの所定外給与は2.7%増加した。

パートタイム労働者比率は31.87%となり、前年同月比0.35ポイント上昇して8か月連続の上昇となった。時間あたり給与は同1.4%増の1223円だった。

Comment

2021年11月の実質賃金が前年同月比で1.6%減少し、3か月連続で減少したことは、賃金全体の停滞と物価上昇の影響を示している。パートタイム労働者の比率が上昇し、時間あたり給与も増加しているため、人事戦略には柔軟な報酬制度と多様な雇用形態に対応したインセンティブ設計が求められる。人事コンサルタントは、生産性の向上と持続可能な給与戦略を導くために、従業員の働き方に応じた適切な報酬システムを構築する必要がある。

(2022年1月7日発表)

2021年10月分

Summary

10月の実質賃金は前年比0.7%低下し、2か月連続でマイナスとなった。

現金給与総額は前年比0.2%増の27万1023円となり、8か月連続で増加した。一般労働者は同0.8%増の35万0338円となったが、パートタイム労働者は同1.8%減の9万7435円にとどまった。所定内給与は前年比0.2%減の24万6793円、所定外給与は同1.8%増の1万8024円だった。

現金給与総額の産業別伸び率では、前月と同様に「鉱業・採石等」が同11.5%増の高い伸びをみせているが、それ以外は「飲食サービス」の同3.0%増、「不動産・物品賃貸」の同2.6%増、「建設」と「卸・小売」の各同2.1%増と低い伸びにとどまっている。「教育・学習支援」の同2.4%減など、16産業のうち5産業でマイナスだった。

Comment

人事コンサルタントの視点から、企業は賃金の伸びを実質的な購買力の向上につなげるため、パートタイム労働者の待遇改善を考える必要がある。また、産業ごとの給与伸び率のばらつきに対応するため、労働市場のトレンドを先読みした人事コンサルティングの役割が重要となる。

(2021年12月6日発表)

2021年9月分

Summary

9月の1人当たりの現金給与総額は27万0019円となり、前年同月比0.2%増加した。前年同月比プラスは7か月連続となる。所定内給与は0.1%増の24万5835円にとどまる一方で、残業代などを示す所定外給与が4.4%(1万7441円)増加した。

一般労働者は前年同月比同0.8%増加した一方、パートタイム労働者では同1.8%減少した。

物価変動の影響を除く実質賃金は0.6%減だった。

夏季賞与は支給した事業所の1人当たり平均が38万268円と前年に比べて0.8%減少した。前年比マイナスは2年ぶり。飲食サービス業や生活関連サービス業が前年を大きく下回った。医療・福祉も3.2%減少だった。

Comment

所定外給与の増加は、残業が増えている可能性を示唆しており、労働市場の需要と供給のバランスに変動があることを反映している。人事コンサルタントは、このような状況に対応するために、企業が人材のエンゲージメントを維持し、労働効率を向上させるための戦略的な人事コンサルティングを提供することが重要である。また、特定の業界での賃金の減少傾向に対しては、業界特有の課題に対処するためのカスタマイズされた人事戦略の策定が求められる。

(2021年11月9日発表)

2021年8月分

Summary

8月の実質賃金は前年同月比0.2%上昇して2か月連続でプラスとなった。

8月の1人当たり現金給与総額は27万4987円となり、前年同月比で0.7%増加し、6か月連続で前年を上回った。基本給など所定内給与が0.2%増加して24万4437円、残業代などを指す所定外給与が6.5%増加して1万7784円となった。ボーナスなど特別に支払われた給与は2.0%増加して1万2766円だった。

就業形態別では正規労働者が1.4%増加して35万6287円だった。一方、パートタイム労働者は、今年は夏休みを短縮した学校が減った影響で「教育・学習支援業」の分野が全体を押し下げ、1.7%減少して9万5912円だった。

Comment

このような状況下では、人事コンサルタントが各種労働形態に応じた適切な給与設定や待遇改善の提案を行い、市場の変化に対応する柔軟な人事戦略の導入の重要性が高まっている。

(2021年10月8日発表)

2021年7月分

Summary

7月の現金給与総額は37万2757円となり、前年同月比1%増加し、5か月連続で前年同月比プラスとなった。このうち、残業代などの所定外給与は1万8199円となり、去年7月より12.2%増加した。特別に支払われた給与も前年比0.8%増の10万7287円となり、2か月ぶりに上昇した。ただ、所定外給与を業種別にみると、新型コロナウイルスの影響を大きく受けている「宿泊・飲食サービス業」は22%減少している。

 

厚生労働省は「新型コロナウイルスの影響を受けた去年7月と比較するとプラスになったが、感染拡大前の水準には戻っていない。飲食業などは残業代の減少が続いている」としている。

物価の変動分を反映した実質賃金は、去年7月を0.7%上回った。

Comment

7月の賃金データは、新型コロナウイルスの影響が依然として色濃く残る状況を反映している。現金給与総額は前年同月比で増加し、特別給与や所定外給与の回復が見られる一方で、宿泊・飲食サービス業では所定外給与が22%減少するなど、業種間での回復速度には大きな差が存在する。これは、特にパンデミックの影響を受けやすい業界において、労働者の待遇改善が進んでいないことを示している。人事コンサルタントとしては、業界ごとの賃金動向を精査し、特に回復が遅れている業界に対しては、柔軟な労働条件の設定や、適切な賃金補償制度の導入を提案することが重要である。また、全体的な賃金構造を見直し、感染拡大前の水準に近づけるための長期的な戦略を策定する必要がある。

(2021年9月7日発表)

2021年6月分

Summary

6月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比0.4%減少となった。

名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は、前年同月比0.1%減の44万2148円となり、4か月ぶりに減少に転じた。6月に支給の多い、ボーナスなど特別に支払われた給与が2.3%減少したことが全体を下押しした。

産業別では飲食サービス業等、映画館や遊園地など娯楽施設を含む生活関連サービス等、航空・鉄道を含む運輸業・郵便業などで減少幅が大きかった。

基本給にあたる所定内給与は0.3%増、残業代などの所定外給与は18.3%増だった。所定外給与は残業時間が大幅に減少していた前年同月の反動が出た。

パートタイム労働者比率は30.70%となり、前年同月比0.03ポイント上昇した。時間あたり給与は同1.8%減の1211円だった。パート労働時間の伸びが給与の伸びを上回った。

Comment

実質賃金が0.4%減少し、名目賃金も4か月ぶりに減少に転じた。ボーナスの減少が全体を下押しする一方、所定外給与の大幅増加は前年の低基準による反動である。人事コンサルタントとして、企業はこうした変動を踏まえ、人事コンサルティングを通じて柔軟な賃金制度や労働時間管理を導入し、持続可能な労働環境を整備することが重要である。

(2021年8月6日発表)

2021年5月分

Summary

5月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で2.0%増加し、4か月連続の増加となった。

名目賃金にあたる1人当たりの現金給与総額は、前年同月比1.9%増の27万3777円となり、3か月連続で増加した。増加率は2018年6月(2.8%増)以来の高水準だった。うち基本給にあたる所定内給与は0.8%増、ボーナスなど特別に支払われた給与は1.0%増、残業代などの所定外給与は20.7%増だった。残業時間は大幅に減少していた前年同月の反動で大幅増となった。

パートタイム労働者比率は30.67%となり、前年同月比0.43ポイント上昇した。時間あたり給与は同4.2%減の1230円だった。パート労働時間の伸びが給与の伸びを上回った。

Comment

実質賃金が前年同月比で2.0%増加し、4か月連続で増加したことは、労働者の購買力が回復していることを示している。名目賃金の増加が続き、特に残業代などの所定外給与が大幅に増加したことが全体の賃金増加に寄与している。このような状況下において、人事コンサルティングでは、パートタイム労働者を含む全ての労働者のモチベーションを維持し、企業の生産性向上を図るための包括的な賃金政策や労働環境の改善が求められる。人事コンサルタントは、企業に対し、公平で透明性のある評価制度や柔軟な働き方を推進し、全ての従業員が働きやすい職場環境を整備するためのアドバイスを提供する必要がある。

(2021年7月6日発表)

2021年4月分

Summary

4月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比2.1%増加した。増加は3カ月連続で、増加率はリーマン・ショックによる賃金減の反動が出た2010年7月(2.4%増)以来、10年9か月ぶりの大きさだった。

名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比1.6%増の27万9135円だった。増加は13か月ぶりの増加となった前月から2か月連続で、増加率は2018年11月(1.7%増)以来の高水準となった。基本給にあたる所定内給与は0.9%増、ボーナスなど特別に支払われた給与は8.5%増、残業代などの所定外給与は6.4%増だった。

パートタイム労働者比率は30.73%となり、前年同月比0.18ポイント上昇した。上昇は15か月ぶりで、時間あたり給与は同1.1%減の1213円だった。パート労働時間の伸びが給与の伸びを上回った。

Comment

実質賃金が前年同月比2.1%増加し、10年9か月ぶりの大きな増加率を記録したことは、企業の人事戦略において大きな転換点である。名目賃金の増加やボーナス、残業代の上昇は、企業が労働者の貢献に報いる姿勢を示しているが、パートタイム労働者比率の上昇と時間あたり給与の減少は、一部労働者の生活水準に影響を及ぼす可能性がある。人事コンサルタントとしては、全従業員の生活の質を向上させるために、パートタイム労働者の給与体系の見直しや、キャリアパスの明確化を提案すべきである。同時に人事コンサルティングのテーマとして、持続可能な賃金政策と労働環境の改善を掲げ、企業の競争力強化を目指すべきである。

(2021年6月8日発表)

2021年3月分

Summary

3月の1人当たりの現金給与総額は前年同月比0.2%増加して28万2164円となった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で減少傾向が続いていたが、2020年2月以来13か月ぶりに上昇に転じた。

就業形態別では正社員など一般労働者が0.3%減の36万5804円、パートタイム労働者が0.8%減の9万6350円となり、いずれも前年を下回った。

消費者物価指数の下落により、現金給与総額から物価の影響を除いた実質賃金は0.5%増となった。

基本給を示す所定内給与は0.8%増加して24万5691円となった。残業代などの所定外給与は6.2%減少して1万8113円、ボーナスなどの特別に支払われた給与は0.3%減少して1万8360円となった。

1人あたりの総実労働時間は137.6時間となり、0.4%増加した。労働時間の増加は昨年10月以来5か月ぶり。所定内が0.6%増加した一方、所定外は1.9%減少した。

Comment

製造業や小売業、運輸業での賃金減少が見られ、これはCOVID-19の影響による経済活動の停滞を反映している。人事コンサルタントとして企業に提案すべきは、賃金の見直しと同時に、従業員のスキルアップ支援や柔軟な労働環境の提供である。特に、所定外給与の減少が労働時間の短縮を示唆しており、労働者のモチベーションを維持するためには、非金銭的なインセンティブや福利厚生の充実が求められる。企業は持続可能な成長のために、労働環境の改善と従業員のエンゲージメント向上に注力する必要がある。

(2021年5月7日発表)

2021年2月分

Summary

2月の名目賃金に当たる現金給与総額は26万5972円となり、前年同月比0.2%減少した。新型コロナウイルスの感染拡大が鮮明になって以降、11か月連続で前年を下回った。消費者物価は下落しており、現金給与総額から物価変動の影響を差し引いた実質賃金は0.2%増となり、12か月ぶりにプラスとなった。

基本給を示す所定内給与は24万4055円となり、0.4%増加した。残業代などの所定外給与が1万7577円となり、9.3%減少した。ボーナスなど特別に支払われた給与が4340円となり、1.0%減少した。

産業別の現金給与総額では飲食サービス業が前年比5.2%減少となり、下げ幅が大きかった。電気・ガス業は3.5%増加、不動産・物品賃貸業は2.6%増加となった。

Comment

2月の賃金データは、新型コロナウイルスの影響が長引く中での労働市場の厳しい現実を反映している。名目賃金は11か月連続で前年同月比マイナスとなり、特に飲食サービス業での給与減少が顕著である。一方で、消費者物価の下落により実質賃金は12か月ぶりにプラスへと転じたが、この改善は限定的である。企業にとっては、業界ごとの給与動向に応じたきめ細やかな対応が必要であり、特に低迷する業界では、賃金補償や雇用維持のための支援策が求められる。人事コンサルタントとしては、従業員の生活安定を図るため、業界特有の課題に対応した賃金政策や福利厚生の強化を提案すると共に、感染拡大後の回復を見据えた長期的な人事戦略の構築を支援すべきである。

(2021年4月6日発表)

2021年1月分

Summary

1月の1人当たりの現金給与総額は27万2972円となり、前年同月比で0.8%減少した。新型コロナウイルスの感染拡大が鮮明になった2020年4月以降、10か月連続で前年を下回った。

基本給を示す所定内給与は24万3238円となり、0.3%増加した。残業代などの所定外給与が1万7673円(6.6%減)、ボーナスなど特別に支払われた給与が1万2061円(12.7%減)だった。

産業別の現金給与総額では飲食サービス業(前年比7.6%減)や金融業・保険業(同6.2%減)の下げ幅が大きかった。不動産・物品賃貸業(同2.4%増)や教育・学習支援業(同3.5%増)は増加した。

1月の実質賃金は前年比0.1%減となり、11か月連続のマイナスとなった。

パートタイム労働者の比率は31.29%と前年同月から0.53ポイント低下した。

Comment

1月の賃金データは、新型コロナウイルスの影響が続く中で、労働市場における不均衡が深刻化していることを示している。現金給与総額は前年同月比で減少し、特に飲食サービス業や金融業・保険業での賃金低下が顕著である一方、不動産・物品賃貸業や教育・学習支援業では増加が見られる。実質賃金も11か月連続でマイナスとなり、パートタイム労働者の比率が減少していることは、雇用の安定性に対する懸念を高める。企業は、産業ごとの賃金動向や労働者のニーズを踏まえた柔軟な対応が求められる。人事コンサルタントとしては、特に影響を受けた業界に対する賃金補償や再雇用支援の強化を提案し、全体の雇用安定に向けた包括的な人事戦略を策定する必要がある。

(2021年3月9日発表)