毎月勤労統計(2020年)

厚生労働省が毎月発表している賃金、労働時間及び雇用の変動に関する雇用指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。

2020年12月分

Summary

2020年12月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比1.9%減少した。

名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比3.2%減の54万6607円だった。内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が0.1%減、ボーナスなど特別に支払われた給与は5.4%減、残業代など所定外給与は8.9%減だった。ボーナスなど特別に支払われた給与はパート労働者では同23.4%増と2桁増だったが、一般労働者が同6.0%減だった。業種別では運輸・郵便、飲食サービス、生活関連サービスなどの落ち込みが大きかった。

コロナ禍による企業業績低迷で所定外労働時間が前年比7.6%減と大幅に短縮、残業代など所定外給与も同8.9%減の1万8084円だった。

2020年通年では、現金給与総額は前年比1.2%減の31万8299円だった。所定内給与は同0.2%増と増えたものの、所定外給与が同12.1%減と大きく減少した。 実質賃金は同1.2%減だった。減少率は、消費税を8%に増税した2014年(2.8%減)以来の大きさとなった。

Comment

実質賃金が前年同月比で1.9%の減少を記録し、現金給与総額も3.2%減の54万6607円となったのは、新型コロナウイルスの影響下での企業の業績低迷がその背景にある。特に、残業代が8.9%減少し、所定外労働時間も7.6%の大幅な短縮が見られたことから、非正規雇用が大きく影響を受けている。このような状況において、人事コンサルタントには企業の人事戦略を見直し、従業員の安定した収入を保障し、モチベーションを維持するための支援策を提案することが求められる。

(2021年2月9日発表)

2020年11月分

Summary

2020年11月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比1.1%減少した。これで実質賃金の減少は9か月連続となった。

名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は27万9095円となり、前年同月比2.2%減少した。これで減少は8か月連続となった。内訳をみると、賞与など特別に支払われた給与が22.9%減少し、減少幅は2019年2月以来1年9か月ぶりの大きさとなった。厚生労働省は、新型コロナの影響で「企業は賞与を減額したり、支払いを遅らせたりしたようだ」とした。

残業代など所定外給与は10.3%減少し、減少は15か月連続となった。一方、基本給にあたる所定内給与は0.1%増加の24万5779円だった。

パートタイム労働者の時間あたり給与は2.2%増加して1205円だった。パートタイム労働者の比率は前年同月から0.10ポイント低い31.62%となり、低下は10か月連続となった。新型コロナの影響でパートタイムの新規採用者数が減ったり、契約の更新を見送ったりした可能性が高い。

Comment

実質賃金が9か月連続で減少し、名目賃金も8か月連続で減少している。特に賞与の減少幅が大きく、新型コロナの影響による企業の賞与削減や支払い遅延がその要因とされる。所定外給与も15か月連続で減少しており、企業の経済活動が停滞している現状が反映されている。パートタイム労働者の比率も低下し、新規採用の抑制が見られる。人事コンサルタントとしては、賞与や所定外給与の適正な見直しとともに、基本給を含めた報酬体系の再構築が必要だ。また、労働者の士気を維持するため、柔軟な労働環境と多様な雇用形態に対応した戦略的な人事施策が求められる。

(2021年1月7日発表)

2020年10月分

Summary

10月の1人当たりの現金給与総額は27万95円となり、前年同月比で0.8%減少した。7か月連続の減少でコロナ禍による賃金の下落が続いている。残業代などを示す所定外給与が1万7749円となり、11.7%減少したことが影響した。

所定内給与は24万6838円となり、0.3%増加して2か月連続で増加した。一方、所定外給与は14か月連続で減少した。

一人あたりの総実労働時間は140・9時間となり、0.2%増加した。所定内は1.2%増加し、所定外は11.1%減少した。

パートタイム労働者の比率は31.15%となり、前年同月から0.34ポイント低下した。正社員に比べ、パートタイム労働者の雇用環境は厳しさを増している。

Comment

所定外給与は残業規制の導入で新型コロナの感染拡大前から下落基調にあったが、感染が拡大した4月以降はテレワークを採用する企業が増加し、残業時間の減少幅が拡大した。人事コンサルタントとしてはテレワークがどの程度普及していくのかその推移を注視する必要がある。

(2020年12月8日発表)

2020年9月分

Summary

9月の1人当たりの現金給与総額は26万9503円となり、前年同月比0.9%減少し、新型コロナウイルスの感染拡大が鮮明になった。

所定内給与は24万5881円となり、0.2%増加した。テレワークの採用などで残業時間が減少した企業が増加して残業時間が減少したことが現金給与総額を押し下げた。

1人当たりの総実労働時間は136.1時間となり、1.5%減少した。総実労働時間は所定内が0.6%減少し、所定外が12.5%減少した。

パートタイム労働者の比率は30.98%となり、前年同月から0.52ポイント低下した。

Comment

2020年9月の現金給与総額は前年同月比0.9%減少し、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が鮮明となっている。所定内給与のわずかな増加にもかかわらず、テレワークの普及や残業時間の減少が総実労働時間を1.5%押し下げ、給与減少を招いた。人事コンサルタントの視点からは、企業は新しい労働形態に適応し、柔軟な発想で労働者の生産性向上とパートタイム労働者の比率変動に対応する戦略を整える必要がある。

(2020年11月6日発表)

2020年8月分

Summary

8月の1人当たりの現金給与総額は27万3263円と前年同月比で1.3%減少した。新型コロナウイルスが本格的に感染拡大した4月から5か月連続で減少した。

残業代などを示す所定外給与が1万6617円と14.0%減少したことが影響した。所定内給与は0.1%減して24万4547円となった。労働時間は所定内が4.3%、所定外が13.1%とそれぞれ減少した。

現金給与総額から物価変動の影響を差し引いた実質賃金は1.4%の減少だった。

現金給与総額を産業別でみると、飲食サービスが6.2%減と下げ幅が最も大きかった。製造業は3.5%減少した。一方、情報通信業は1.5%、不動産・物品賃貸業は4.6%増加した。

パートタイム労働者の雇用環境も一段と厳しさを増している。現金給与総額は9万7447円で1.9%の減少となった。所定外給与は17.5%の減少だった。パートタイム労働者が全体に占める比率は30.8%ととなり、前年同月から0.67ポイント低下した。

Comment

新型コロナウイルスの影響で続く現金給与総額の減少は、特に所定外給与の大幅な減少が顕著であり、労働市場全体の収縮を示している。このような状況で、人事コンサルタントは企業が経済的不確実性に対応し、従業員の生活水準とモチベーションを保持するための給与戦略の見直しを提案することが重要である。また、産業別の給与変動に注目し、特に打撃を受けている産業に対しては、具体的な支援策を人事コンサルティングで提供する必要がある。一方で、情報通信業や不動産・物品賃貸業での給与増加は、これらの産業が新たな雇用機会を生み出している可能性を示している。

(2020年10月9日発表)

2020年7月分

Summary

7月の実質賃金は前年比1.6%減となり、5か月連続で低下した。

名目賃金にあたる現金給与総額は前年比1.3%減の36万9551円だった。ボーナスなどの特別に支払われた給与は同2.4%減の10万6608円だった。

基本給にあたる所定内給与は前年比0.3%減の24万6626円となり、残業代などを示す所定外給与は1万6317円となり、前年同月比で16.6%減少した。

日本の景気後退局面ではパートタイム労働者から正社員へと順番に雇用不安が広がる傾向がある。パートタイム労働者の比率は30.67%と前年同月から0.77ポイント低下した。

Comment

実質賃金が前年比1.6%減少し、名目賃金も1.3%減少したことは、新型コロナウイルスによる経済停滞を反映している。特に所定外給与の16.6%減少は、企業活動の縮小と労働時間の短縮を示している。景気後退の中で、パートタイム労働者から正社員へと雇用不安が広がる傾向が見られる。人事コンサルタントとして、企業がこのような厳しい環境下で従業員の安心感を維持し、適切な雇用維持策を講じることが重要である。

(2020年9月8日発表)

2020年6月分

Summary

6月の残業代などを示す所定外給与は1万4752円となり、前年同月比24.6%の減少となった。比較可能な2013年1月以降では5月に次いで2番目の大きな下げ幅となった。

6月の下げ幅は5月(25.8%減、速報値)とほぼ同じで、1年前の水準を大きく下回る傾向が続いた。新型コロナウイルスの感染拡大のあおりで残業時間にあたる所定外労働時間は6月に23.9%減少し、働く時間の短縮で賃金が減少した。

所定内給与も含めた現金給与総額は44万3875円となり、1.7%減少した。所定内の給与は前年と同水準で、所定外給与が大幅に落ち込んだ影響が大きい。

6月は多くの企業がボーナス(賞与)を支払う。賞与など「特別に支払われた給与」は18万1780円となり、2.4%減少した。

実質賃金は前年比1.9%減少し、4か月連続で減少した。パートタイム労働者の比率は30.51%となり、0.80ポイント低下した。

Comment

6月の賃金データは、新型コロナウイルスの影響が労働市場に大きな打撃を与えていることを鮮明にしている。特に残業代を示す所定外給与が前年同月比で24.6%減少し、労働時間の大幅な短縮が賃金の低下に直結していることがわかる。これにより、実質賃金も1.9%減少し、家計への負担が増大している。また、ボーナスの減少やパートタイム労働者の比率低下も、雇用環境の不安定化を示している。企業は、コロナ禍における賃金補償策や柔軟な労働時間管理を再考する必要がある。人事コンサルタントとしては、従業員のモチベーション維持と生活安定を図るため、成果に応じた報酬制度の導入や、コロナ禍に対応した労働条件の見直しを提案し、企業の持続可能な成長を支援する施策を推進すべきである。また、パートタイム労働者の処遇改善も急務であり、包括的な人事戦略の再構築が求められる。

(2020年8月7日発表)

2020年5月分

Summary

5月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比2.1%減少し、減少率は2015年6月以来、5年ぶりの水準となった。

名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は26万9341円となり、2.1%減少した。内訳をみると残業代など所定外給与は25.8%減少し、前月に続き減少率は比較可能な2013年1月以降で最大となった。所定外労働時間は29.7減少した。

基本給にあたる所定内給与は0.2%上昇した。一方、ボーナスなど特別に支払われた給与は11.3%減少した。

パートタイム労働者の時間当たり給与は10.2%増加して1281円だった。パートタイム労働者比率は1.07ポイント低下の30.07%で、2015年5月以来の低水準となった。

Comment

実質賃金が前年同月比2.1%減少し、5年ぶりの大幅な減少となったことは、コロナ禍による経済活動の停滞が労働者の収入に深刻な影響を与えたことを示している。基本給はわずかに上昇したものの、ボーナスの減少が全体の賃金減少の要因となっている。また、パートタイム労働者の比率低下と時間当たり給与の増加は、労働市場の変動を反映している。このような状況下での人事コンサルティングでは、企業が労働者の生活安定を支えるための柔軟な労働時間管理や効果的な賃金制度の導入が求められる。人事コンサルタントとして、企業に対し短期的な経済変動に対応できる賃金政策や、長期的な労働者のキャリア形成を支援する施策を提案することが重要となる。

(2020年7月7日発表)

2020年4月分

Summary

4月の毎月勤労統計調査によると、残業代などを示す所定外給与は1万7984円となり、前年同月比で12.2%減少した。比較可能な2013年1月以来で最も大きな減少となった。所定内の給与は前年と同水準で、現金給与総額は0.6%減の27万5022円だった。

物価変動の影響を除いた実質賃金は0.7%減だった。

残業など所定外の労働時間は9時間となり、18.9%減少した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、働く時間が少なくなり給与が減る傾向が浮き彫りになった。

パートタイム労働者が全体に占める比率は30.54%となり、前年同月に比べ0.55ポイント低下した。パートタイム労働者の1人当たりの総実労働時間は76.6時間となり、9.9%減少した。比較可能な2013年1月以来で、最大の減少幅となった。一般労働者の総実労働時間が2.6%減少したのに比べ減少幅が大きくなった。

Comment

所定外給与が前年同月比で12.2%減少し、2013年1月以来最大の減少幅を記録したことは、企業にとっては警鐘である。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、残業時間が減少し、従業員の給与が削減されたことが明らかになった。人事コンサルタントとしては、労働時間の短縮に伴う給与の減少を補完するために、柔軟な働き方の導入や在宅勤務の促進を提案するべきである。また、パートタイム労働者の実労働時間の大幅な減少は、労働市場の不安定さを反映しており、安定的な収入源を提供するための再教育プログラムやスキルアップの機会を強化することが求められる。人事コンサルティングのテーマとして、ポストコロナ時代の働き方改革と労働者の生活保障を掲げ、企業の持続可能な成長を支援する施策を推進すべきである。

(2020年6月9日発表)

2020年3月分

Summary

3月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比0.3%減少した。

名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は28万1812円と同0.1%増加したものの、増加率が消費者物価指数の伸びを下回った。

内訳では、基本給にあたる所定内給与が0.7%増加した一方で、残業代などの所定外給与は4.1%減少、ボーナスなど特別に支払われた給与は3.0%減少した。

パートタイム労働者比率は0.49ポイント低下して31.27%だった。時間あたり給与は2.8%増加して1185円だった。

Comment

平均現金給与総額の減少は、特に残業代の減少によるものであり、企業活動が制限されていることが直接的な要因である。所定内給与のわずかな増加は見られるものの、全体的な給与減少を補うには不十分であった。実労働時間の減少は、製造業やサービス業で顕著であり、企業の雇用戦略に対する再考が求められる。人事コンサルタントとしては、柔軟な労働時間管理の導入やリモートワークの促進が必要である。また、雇用者数の増加率の鈍化を踏まえ、新規採用の戦略を再評価し、スキルギャップの解消を目指すことが重要である。

(2020年5月8日発表)

2020年2月分

Summary

2月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比0.5%増加した。基本給や賞与の増加が寄与した。

名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は1.0%増の26万7175円だった。内訳では基本給にあたる所定内給与が0.8%増、ボーナスなど特別に支払われた給与は21.5%増だった。一方、残業代などの所定外給与は1.2%減だった。

パートタイム労働者比率は0.31ポイント低い31.58%だった。低下は2017年9月以来2年5か月ぶりとなる。時間あたり給与は2.8%増の1189円だった。

Comment

企業は新型コロナウイルス感染症拡大の影響でパートの新規採用を抑えている可能性がある。3月以降は外出自粛要請の影響もあり全般的に企業活動も縮小していることから、今後の推移を注視する必要がありそうだ。今年も賃上げの季節を迎えたが、弊社の人事コンサルティングの関与先でも動きは少し鈍いようだ・

(2020年4月7日発表)

2020年1月分

Summary

1月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比0.7%増加となった。

名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は27万6520円となり、前年同月比で1.5%増加した。内訳では、基本給にあたる所定内給与は1.4%増加、ボーナスなど特別に支払われた給与は10.4%増加した。一方で、残業代など所定外給与は1.8%減少した。

パートタイム労働者の時間あたり給与は2.8%増加して1198円だった。パートタイム労働者比率は0.06ポイント上昇の31.87%だった。

Comment

1月の賃金データは、全体的にプラスの傾向が見られるものの、依然として不均衡な状況を示している。実質賃金が前年同月比で0.7%増加し、名目賃金も1.5%増加したことは、経済全体の底堅さを示す一方で、残業代が減少している点は懸念材料である。特別に支払われた給与の10.4%増加やパートタイム労働者の賃金上昇は、従業員への報酬が改善されていることを示すが、労働時間の短縮やパートタイム労働者比率の上昇は、雇用形態の変化とその影響を示唆している。人事コンサルタントとしては、パートタイム労働者の処遇改善に加え、所定外労働時間の管理強化と、基本給のさらなる底上げを図る賃金政策を提案することが求められる。また、ボーナス支給に依存しない安定した給与体系の構築を進め、従業員の生活の安定と企業の持続的成長を両立させる戦略を打ち出すべきである。

(2020年3月6日発表)