雇用統計(2021年)
米労働省から毎月発表される米国の雇用統計データに人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
2021年12月分
Summary
12月の非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比19万9000人増となり、市場予想を大幅に下回った。前月は24万9000人増(速報値21万人増)に上方修正された。
失業率は3.9%に低下し、市場予想を上回る低下となり、2020年2月以来の4%割れとなった。
労働参加率は61.9%で前月と変わらずとなった。
平均時給は予想を上回る伸びを示し、前月比0.6%増加した。前年同月比では4.7%増加した。
12月に雇用の伸びが目立ったのは、娯楽・ホスピタリティー分野で5万3000人増加した。専門職・ビジネスサービスも増加した一方で、小売業では減少した。
製造業と建設業はいずれも堅調な雇用増加を示した。
Comment
人事コンサルタントは、労働市場のダイナミクスを理解し、企業が変動に対応できるような柔軟な人材戦略の構築が求められる。特に娯楽・ホスピタリティーと専門職・ビジネスサービスの伸びは注目に値し、小売業の減少は戦略的な再配置を促す必要がある。人事コンサルティングでは、これらの業界動向を踏まえた独自の人材育成と獲得策の提案が重要となる。
(2022年1月7日発表)
2021年11月分
Summary
11月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比21万人の増加となり、市場予想を大幅に下回った。前月は54万6000人増(速報値53万1000人増)に上方修正された。
失業率は前月の4.6%から4.2%に低下し、市場予想を上回る低下となった。
労働参加率は61.8%に小幅上昇となった。
業種別では小売業が2万400人減少、州・地方政府の教育部門は1万2600人減少となった。政府全体では2万5000人減少となり、4か月連続で減少した。レジャー・接客業の雇用は振るわず、2万3000人の増加にとどまった。前月は17万人増加した。専門職・企業サービスの雇用者数は9万人増加した。運輸・倉庫業は約5万人増加、建設業は3万1000人増加した。製造業の雇用者数も3万1000人増加した。
平均時給は前年同月比4.8%増加した。週平均労働時間は34.8時間だった。
Comment
11月のデータから、人事コンサルティングの重要性が際立つ。パンデミックによる不確実性の中で、業種に応じた戦略的な人材管理が企業の持続可能な成長には不可欠である。人事コンサルタントは、変化する労働市場のニーズに対応し、適切な人材確保と配置を支援する役割を負っている。
(2021年12月3日発表)
2021年10月分
Summary
10月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比53万1000人増となり、市場予想を上回った。前月は31万2000人増(速報値19万4000人増)に上方修正された。
10月の失業率は前月の4.8%から4.6%に低下した。労働参加率は前月から横ばいだった。
娯楽・ホスピタリティーの雇用が16万4000人増加し、専門職・ビジネスサービス、運輸・倉庫などでも大幅に増えた。人材派遣の雇用は2月以来で最大の伸びとなった。
製造業の雇用は6万人増加して2020年6月以来の大きな伸びとなった。自動車メーカーでの雇用急増を反映した。
一方、州・地方政府の教育関連雇用は減少し、政府機関全体の雇用を押し下げた。
平均時給は前年同月比で4.9%増となり、今年2月以来の大幅な伸びとなった。
週平均労働時間は34.7時間となり、前月の34.8時間から減少した。
Comment
10月の米国労働省の雇用統計は、市場予想を上回る非農業部門の雇用増加を示し、失業率の低下とともに娯楽・ホスピタリティーや専門職・ビジネスサービス、運輸・倉庫業界での大幅な増加が見られた。この状況は、人事コンサルタントにとって、これらの急成長セクターに特化した人材確保と育成戦略を提案する絶好の機会である。また、自動車産業の雇用急増も注目すべきポイントであり、業界特有の需要に応じた人事コンサルティングが求められる。
(2021年11月5日発表)
2021年9月分
Summary
9月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比19万4000人増となり、市場予想を大幅に下回り、今年これまでで最も少ない増加幅となった。前月は36万6000人増(速報値23万5000人増)に上方修正された。
失業率は先月の5.2%から4.8%に低下した。
労働参加率は0.1ポイント低下して61.6%となった。21歳以上の女性のほか、黒人男性の労働参加率が低下した。
民間部門雇用者数は予想を下回る31万7000人増で、4月以来の小幅な伸びとなった。娯楽・ホスピタリティーの雇用は前月から改善したものの、伸びは今年中盤までと比べると著しく鈍化している。建設業の雇用も増加したほか、流通業の雇用も持ち直した。政府機関全体の雇用者数は前月比12万3000人減となり、11か月ぶりの大幅なマイナスとなった。
9月の平均時給は前月比0.6%増となり、4月以来の大きな伸び。企業がより高い賃金を提示して労働者を引き付けようとしている状況を浮き彫りにした。
週平均労働時間は34.8時間となり、4か月ぶりの高水準となった。
Comment
人事コンサルタントとしては、娯楽・ホスピタリティー分野の伸び鈍化や政府部門での減少に注視しつつ、労働市場全体の動向を理解する必要がある。人事コンサルティングの観点では、企業が高い賃金を提示する傾向を活かし、優秀な人材の確保に向けた柔軟な給与戦略や、週平均労働時間の高水準を考慮した効率的な労働力配置が求められる。
(2021年10月8日発表)
2021年8月分
Summary
8月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月から23万5000人の増加となり、市場予想を大幅に下回った。前月は105万3000人増(速報値94万3000人増)に上方修正された。
8月の失業率は前月の5.4%から5.2%に低下した。
娯楽・ホスピタリティー業界の雇用者数は前月比横ばいとなり、レストラン・バーの雇用者が4万2000人減少した。小売業、建設業、政府機関、ヘルスケア関連の雇用も減少した。一方で、製造業の雇用者数は自動車工場での大幅増を反映して3万7000人増加した。雇用者数はコロナ禍前の水準をなお530万人下回っている。労働参加率は前月と変わらずの61.7%となった。
平均時給は前月比で0.6%増加し、市場予想の倍の伸びとなったが、これは低賃金労働者の多い業界での雇用者数減少といった同月の雇用構成を反映したものとみられる。週平均労働時間は前月と変わらずの34.7時間だった。
Comment
8月の雇用統計は、人事コンサルタントとして注目すべき重要な点を示している。特に娯楽・ホスピタリティー業界の雇用が横ばいであることや、レストラン・バーの雇用が減少したことは、COVID-19の影響が依然として強く、業界特有の課題が存在することを示しています。このような不確実性の高い市場環境において、企業は柔軟かつ効果的な人事戦略を構築する必要がある。人事コンサルティングの役割は、変化に迅速に対応し、企業が適応しながら持続可能な成長を遂げられるよう支援することにある。
(2021年9月3日発表)
2021年7月分
Summary
米国の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比94万3000人増加となり、市場予想を上回った。前月は93万8000人増(速報値85万人増)に上方修正された。
7月の失業率は前月の5.9%から5.4%へと予想以上に低下した。
経済活動の再開を受け、特に娯楽・ホスピタリティー業界で労働需要が年初から急増している。一方、雇用者数はコロナ禍前の水準をなお570万人下回っており、新型コロナのデルタ変異株感染拡大が雇用増にとってリスクとなっている。
27週間以上職に就いていない長期失業者は56万人減となり、過去最大の減少となった。
州・地方政府の教育関連雇用が季節調整後で22万700人増加し、全体を押し上げた。春季の雇用水準が低かったため、季節調整の結果、7月の数値が膨らんだ。
民間部門の雇用者数は70万3000人増加した。38万人増加した娯楽・ホスピタリティーがけん引役となった。7月の雇用増加数のおよそ3分の2を州・地方政府の教育関連と娯楽・ホスピタリティーが占めた。同時にヘルスケアサービスや運輸・倉庫、製造業などでも雇用が伸びた。
Comment
7月の非農業部門雇用者数は市場予想を上回り、特に娯楽・ホスピタリティー業界や州・地方政府の教育関連での雇用増が顕著であった。失業率も5.4%に低下し、経済活動の再開による労働需要の急増がうかがえる。しかし、コロナ禍前の雇用水準には依然として達しておらず、デルタ変異株の感染拡大が今後の雇用増に対するリスクとして懸念される。人事コンサルタントとして、企業には柔軟な採用戦略の導入を提案すべきである。特に、急増する労働需要に対応するため、迅速な採用プロセスやリモートワーク環境の整備が重要である。また、長期失業者が減少している今、企業はリスキリングプログラムを活用し、潜在的な人材を積極的に取り込む戦略を検討するべきである。
(2021年8月6日発表)
2021年6月分
Summary
6月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比85万人増加し、市場予想を大きく上回った。前月は58万3000人増(速報値55万9000人増)に上方修正された。
失業率は前月の5.8%から5.9%に上昇した。自主的に離職する人や職探しをする人が増えたことが失業率上昇に繋がった。
労働参加率は前月から横ばいの61.6%だったが、新型コロナウイルス禍前の水準を依然大きく下回っている。
6月の平均時給は前月比0.3%増加した。娯楽・ホスピタリティー業界の非管理職の平均時給は同2.3%増加した。コロナ禍からの回復に時間がかかっている同業界の雇用は34万3000人増加した。
雇用の増加は比較的広範にわたり、ビジネスサービスなどでも増加した。一方、建設業は3か月連続で減少した。製造業の雇用は予想を下回る伸びにとどまった。
米雇用者数はコロナ禍前の水準をなお676万人下回っており、労働市場の完全な回復には程遠いことが浮き彫りになった。
Comment
こうした状況下で、人事コンサルタントとしては、企業が人材流動性に対応し、効果的な採用と定着戦略を強化する必要があると考える。人事コンサルティングの視点から、特に成長業界での賃金改善と労働環境の整備が急務であり、労働参加率の向上を目指した柔軟な働き方の導入が求められる。
(2021年7月2日発表)
2021年5月分
Summary
5月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比55万9000人の増加となり、市場予想を下回った。前月は27万8000人増(速報値26万6000人増)に上方修正された。
失業率は前月の6.1%から5.8%に低下した。
業種別では、飲食店が18万6000人増と大幅な伸びを示した。ヘルスケアと教育分野での増加も目立った。ただ、全体の雇用者数は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前と比べると、なお760万人少ない。
27週間以上職に就いていない長期失業者の数は5月に43万1000人減となり、2011年以降で最も大きく減少した。パンデミック初期に仕事を失った人たちがようやく職を得つつあることが示された。
労働参加率は61.6%となり、前月の61.7%から低下した。依然としてパンデミック前の水準(63.3%)を大きく下回っている。
平均時給は前月比0.5%増の30.33ドルとなった。
Comment
米非農業部門雇用者数の増加は市場予想を下回ったものの、失業率は低下し、特に飲食店やヘルスケア、教育分野での雇用増が目立った。パンデミックからの回復期において、長期失業者の減少は歓迎されるが、依然としてパンデミック前の水準には戻っていない。人事コンサルタントとしては、魅力的な労働条件や働きやすい環境の整備が求められる。
(2021年6月4日発表)
2021年4月分
Summary
4月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比26万6000人増となり、市場予想を大幅に下回った。前月は77万人増(速報値91万6000人増)に下方修正された。
失業率は6.1%となり、前月から0.1%上昇した。
娯楽・ホスピタリティーの分野では雇用の伸びが加速したが、人材派遣業や運輸、倉庫業の雇用は急減した。
平均時給は前月比0.7%増の30.17ドルとなった。米労働省はコロナ禍からの回復に伴う労働力需要の増加で賃金に上昇圧力が加わった可能性があると説明している。週平均労働時間は増加し、2006年のデータ開始後の最高水準に並んだ。
労働参加率は61.7%となり、前月の61.5%から上昇した。ワクチン接種が進み、多くの小売店やレストラン、娯楽施設の営業再開につながったことが要因となった。
Comment
人事コンサルティングでは、成長分野の人材確保と定着策の強化が不可欠である。企業は適切な報酬体系を整え、従業員のスキルアップを促進すべきである。また、柔軟な人材配置戦略を導入し、多様な人材の活用を推進することで、持続可能な成長を支援することが求められる。
(2021年5月7日発表)
2021年3月分
Summary
3月の非農業部門雇用者数が前月から91万6000人の増加となり、市場予想を上回った。2月の雇用者数は当初発表の37万9000人増加から46万8000人増加へ上方改定された。
3月は全ての業種で雇用者数が増加したほか、労働参加率も上昇した。失業率は6.0%となり、2月の6.2%から低下した。しかし、コロナ禍に伴う「雇用されているが休職中」の人の扱いが引き続きデータのゆがみとなっている。こうした影響を除くと失業率は6.4%だった。
雇用の伸びを主導したのはレジャー・接客業で28万人増加した。レストランやバーなどの飲食業が増加分の3分の2を占めた。建設は11万人増加となり、寒波の影響による2月の落ち込みから持ち直した。製造業も5万3000人増加した。
また、約34万7000人が労働市場に復帰した。これに伴い、労働参加率は61.5%となり、前月の61.4%から上昇した。人口に対する雇用の比率も57.8%と、57.6%から上昇した。
時間当たり賃金は前月比0.1%減少、前年同月比4.2%増加だった。
Comment
このような状況下、人事コンサルティングとして企業に提案すべきことは以下の通りである。まず、レジャー・接客業や建設業のように回復が顕著な業種においては、迅速な人材確保とスキル向上のための研修プログラムの強化が必要である。また、労働市場に復帰する労働者の増加を踏まえ、労働環境の改善や柔軟な働き方の導入が求められる。特にリモートワークやフレックスタイム制度の導入は、労働参加率のさらなる向上に寄与するだろう。さらに、時間当たり賃金の減少に対応するため、給与体系の見直しや福利厚生の充実を図り、従業員のモチベーションを高める施策が重要である。
(2021年4月2日発表)
2021年2月分
Summary
2月の非農業部門雇用者数は前月比37万9000人増となり、市場予想を大幅に上回る伸びとなった。1月の雇用者数は16万6000人増だった。2020年12月は8か月ぶりにマイナスとなっていた。
もっとも、仕事が半年以上見つからない人はなお400万人を超えるなど、回復への道のりは険しい。連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は前日、雇用情勢を楽観視しながらも、年内に完全雇用へ到達する公算は「極めて小さい」と強調した。
失業率は6.2%となり、1月の6.3%から低下した。職探しをあきらめた人や正社員を希望しながらパートタイムで就業している人などを加えたより広義の失業率は、前月から変わらずの11.1%だった。
業種別の雇用者数は、飲食が28万6000人増加し、雇用全体の伸びの大半を占めた。娯楽・接客に加え、将来の雇用を占う上で参考になる人材派遣業も底堅い。小売りは4万1000人増加、製造業も2万1000人増加した。一方、建設は6万1000人減少した。
労働参加率は61.4%となり、横ばいだった。前年同月の63.3%からは低下し、女性の離脱が目立った。2月の時間当たり平均賃金は前月比0.2%増となった。寒波の影響で、労働時間は週平均34.6時間となり、前月の34.9時間から減少した。
Comment
2月の非農業部門雇用者数は市場予想を大幅に上回り、飲食業を中心に堅調な回復を見せた。しかし、失業率が6.2%に低下したものの、長期失業者が依然として多く、労働市場の完全回復には時間がかかる見通しである。パウエルFRB議長が指摘するように、年内の完全雇用達成は難しいと予測されるため、人事コンサルタントとしては、企業に対して持続的な採用戦略を推奨する必要がある。特に、人材派遣業や小売業、製造業のような底堅い業界において、柔軟な雇用形態の活用とスキルアップ支援が重要である。また、女性の労働市場からの離脱が顕著な中、企業には働きやすい環境の整備やリモートワークの推進が求められる。
(2021年3月5日発表)
2021年1月分
Summary
1月の米国の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月から4万9000人の増加となり、市場予想を下回った。前月は22万7000人減(速報値14万人減)に下方修正された。
失業率は前月の6.7%から6.3%に低下し、市場予想を下回ったが、これは労働市場から退出した人が増加したことが背景にある。
民間雇用者数はわずか6000人増にとどまった。小売りや運輸・倉庫、娯楽・ホスピタリティーでの雇用削減が響いた。
一方で明るい材料もあり、労働時間が増えたほか、人材派遣サービスでの雇用は3か月ぶりの大幅増となった。これは今後数か月の採用増加につながる可能性がある。
週平均労働時間は35時間(前月34.7時間)となり、2006年のデータ集計以降で最高水準となった。平均時給は前月比0.2%増となり、前年同月比では5.4%増加した。
失業者のほぼ40%が27週間以上にわたって職探しをしている長期失業者となっている。1月の長期失業者は400万人を若干上回る水準で、前月からほぼ変わらずとなった。
Comment
1月の米国の非農業部門雇用者数はわずか4万9000人の増加にとどまり、市場予想を下回った。失業率は6.3%に低下したが、これは労働市場から退出した人々が増えた結果であり、回復の脆弱さを示している。特に、小売りや運輸・倉庫、娯楽・ホスピタリティーでの雇用減が目立ち、依然として経済全体が不安定な状況にある。一方で、週平均労働時間の増加や人材派遣サービスでの雇用増加は、今後の採用増につながる可能性があり、明るい材料と言える。人事コンサルタントとして、企業にはこの不確実な時期に備えた柔軟な人材戦略が求められる。特に、リスキリングやアップスキリングを通じて、長期失業者の再雇用を促進する取り組みが重要である。また、労働市場から退出した人々を再び労働市場に引き戻すため、柔軟な働き方やリモートワーク環境の整備が不可欠である。
(2021年2月5日発表)