米求人・労働移動状況(2020年)

米労働省から毎月発表される米国の求人・採用・解雇など雇用全般に関する調査結果に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。

2020年12月分

Summary

2020年12月の米求人件数は665万件増加し、市場予想を上回った。前月は657万件(速報値653万件)に上方修正された。

自発的離職者は329万人に増加した。これに伴い離職率は2.3%となり、昨年2月以来の高水準となった。

解雇者と自発的離職者の合計であるセパレーションは546万人となり、前月の552万人から減少した。

求人件数が最も少なかったのは宿泊・飲食サービスと建設、非耐久財製造、州・地方政府だった。また宿泊・飲食サービスと建設、ヘルスケアでは自発的離職が増加した。

雇用された労働者(再雇用を含む)は554万人となり、前月の594万人から減少した。12月は南部をはじめとする3地域で求人件数が増加したが、中西部では減少した。

Comment

12月の米求人件数の増加と自発的離職者の増加は、労働市場の不確実性と労働者のキャリア転換志向を示唆している。人事コンサルタントとしては、企業に対して労働者のエンゲージメント向上策の強化を提案するべきである。特に宿泊・飲食業や建設業などでの自発的離職の増加に対しては、職場環境の改善やキャリアパスの明確化が求められる。また、地域ごとの求人件数の変動を踏まえ、地域に応じた採用戦略の最適化が必要である。これにより、労働市場の変動に対応しつつ、優秀な人材の確保が可能となる。

(2021年2月9日発表)

2020年11月分

Summary

2020年11月の非農業部門の求人件数(季節調整済み)は652万7000件となり、前月から10万5000件減少した。求人率は4.4%で前月から0.1ポイント低下した。

労働市場の回復ペースは鈍化した。分野別では耐久財製造、情報、教育サービスなどの求人が減少した。

採用数は597万9000件となり、前月から6万7000件増加したが、採用率は4.2%で前月から横ばいだった。

一方、解雇者数は197万1000人となり、前月から29万5000人増加し、解雇率は前月から0.2ポイント上昇して1.4%となった。新型コロナウイルスの感染再拡大の影響で、再び解雇が増えている。経済規制や消費者の巣ごもりで宿泊・飲食サービス分野の解雇が26万3000人となったほか、コロナ関連の歳出増で財政が逼迫している州政府・自治体も2万1000人を解雇した。

自発的離職者数は前月から6000人増加して315万6000人となり、自発的離職率は2.2%で前月から横ばいだった。

Comment

11月は新型コロナウイルスの感染再拡大により労働市場の回復が鈍化し、解雇が増加する厳しい状況が見られた。人事コンサルティングの視点では、宿泊・飲食サービスや州政府・自治体などが大きな影響を受けているため、これらの分野に特化した柔軟な人材配置や人事戦略の見直しに関する助言・提案が求められる。企業は採用に慎重さが必要である一方、既存の従業員のスキル開発やリテンション戦略の強化により、困難な経済環境に適応しつつ組織の持続可能性を高めることが重要である。

(2021年1月12日発表)

2020年10月分

Summary

10月の米国の求人件数(季節調整済み、速報値)は665万2000件となり、前月から15万8000件増加した。求人率は4.5%で前月から0.1ポイント上昇した。

分野別では医療ケアや州・自治体の教育関連の求人が増加した。

採用数は581万2000件となり、前月から7万4000件減少した。分野別では卸売りや連邦政府の採用が減少した。採用率は4.1%で前月から0.1ポイント低下した。

解雇者数は168万人となり、前月から24万3000人増加し、解雇率も1.2%と前月から0.2ポイント上昇した。

自発的離職者数は309万2000人となり、前月から1万8000人増加したが、自発的離職率は前月から横ばいの2.2%だった。

Comment

このような市場状況は人事コンサルティングの重要性を強調している。人事コンサルタントは、これらのデータを基に、企業が労働市場の変動に適切に対応し、戦略的な人材管理を行うための支援を提供する必要がある。これには、採用戦略の見直し、労働者の保持戦略の強化、そして解雇リスクの管理が含まれる。

(2020年12月9日発表)

2020年9月分

Summary

9月の求人件数は前月から8万4000件増加して643万6000件となり、市場予想を下回った。

採用件数も減少しており、新型コロナウイルスの感染急拡大を前に、労働市場がすでに失速していたことが示された。

求人率は4.3%となり、前月から横ばいだった。レイオフ件数は20万件減少して133万3000件となった。

採用件数は8万1000件減少して587万1000件となった。国勢調査が終了に向かう中、政府部門で25万6000件減少した。自発的な離職件数は17万9000件増加して301万8000件となった。

Comment

新型コロナウイルスの感染拡大が労働市場に与える影響が顕著になっている。特に政府部門での大幅な採用減少が影響を示しており、採用全体も減少している。これらの動向は、企業にとって困難な状況を反映しており、人事コンサルティングはこれまで以上に重要な役割を担っている。自発的な離職の増加は、労働者の間での不安定さが増していることを示しており、人事コンサルタントは企業がこの変化に適応し、戦略的な人材確保とリテンションを図るためのアドバイスを提供する必要がある。

(2020年11月10日発表)

2020年8月分

Summary

8月の非農業部門の求人件数(季節調整済み)は、649万3000件となり、前月から20万4000件減少した。減少は4か月ぶりとなり、新型コロナウイルスの感染が再び広がりつつある中西部を中心に求人が減少した。前月は670万件(速報値662万件)に上方修正された。

求人は建設業、小売業、医療ケアなどが減少した一方、製造や食品サービス、政府では増加した。

8月の失業者数は1355万人となり、求人件数の2倍以上の人が職を求めており、雇用回復の道のりは遠い。

採用数は591万9000件となり、前月から1万6000件増加した。

解雇者数は147万3000人となり、前月から27万2000人減少した。3月には7.6%に達していた解雇率は1.0%まで低下した。自発的離職者数は279万3000人となり、前月から13万9000人減少し、自発的離職率は2.0%だった。

Comment

人事コンサルティングの視点から、製造や食品サービス、政府部門での求人増加を活用し、労働力の再配置とスキルアップを促進することが重要である。また、失業者数が求人件数の2倍以上となっているため、効果的な再訓練プログラムと雇用機会の創出が急務である

(2020年10月6日発表)

2020年7月分

Summary

7月の非農業部門の求人件数(季節調整済み)は661万8000件となり、前月から61万7000件増加した。

求人率は4.5%となり、前月から0.3ポイント上昇した。消費の持ち直しを受け小売業が17万2000件増加したほか、医療ケア、建設業も大きく増加した。

一方、採用数は578万7000件となり、前月から118万3000件減少した。採用率は4.1%となり、前月から1.0ポイント低下した。新型コロナウイルスへの感染懸念や保育所閉鎖による育児の問題、追加の失業保険給付などが労働者の職場復帰を妨げたとみられる。

解雇者数は172万1000人、解雇率は1.2%となり、コロナ前の水準に戻った。

これに対し、自発的離職者数は294万9000人となり、前月から34万4000人増加し、3か月連続の増加となった。自発的離職率は2.1%となり、前月から0.2ポイント上昇した。

Comment

求人件数は消費の持ち直しを受け小売業や医療ケア、建設業での求人増加が目立った。一方、採用数は減少し、採用率も低下した。新型コロナウイルス感染への懸念や保育所閉鎖、追加の失業保険給付が労働者の職場復帰を妨げていることが影響している。解雇率はコロナ前の水準に戻ったが、自発的離職者数は増加し、離職率も上昇した。人事コンサルタントとしては、この状況を踏まえ、労働者の職場復帰を促す柔軟な労働条件やリモートワークの導入、育児支援策の強化が重要である。また、採用戦略の見直しと既存社員の定着率向上に向けた施策が求められる。人事コンサルティングの視点からは、企業の労働環境改善と魅力的な職場づくりが不可欠である。

(2020年9月9日発表)

2020年6月分

Summary

6月の雇非農業部門の求人件数(季節調整済み)は588万9000件となり、前月から51万8000件増加した。新型コロナウイルス禍で大きく落ち込んだ4月以来、2か月連続で増加した。

求人率は4.1%となり、前月から0.2ポイント上昇した。外出規制などの緩和を受け、宿泊・飲食産業、芸術・娯楽産業などの分野が85万5000件となり、前月から23万3000件増加した。

ただ、求人件数全体ではコロナ危機前の2月の水準(700万4000件)にはほど遠い。

一方、6月の採用数は669万6000件だった。前月より50万3000件減少したが、前月に続いて統計開始以来2番目の高水準となった。一時解雇されていた労働者の再雇用が進んだ。採用率は4.9%で前月から低下した。

解雇者数は188万5000人となり、3か月連続の減少でコロナ危機前の水準に近づいた。解雇率では横ばいの1.4%だった。

自発的離職者数は259万8000人となり、2か月連続で増加した。自発的離職率は1.9%となり、前月から0.3ポイント上昇した。

Comment

こうした状況を踏まえ、人事コンサルティングにおいては以下の点に注力すべきである。まず、採用戦略の再構築が急務である。特に、雇用プロセスのデジタル化やリモートワークの定着化に対応した採用手法を導入することが重要である。また、企業のエンゲージメント向上を図るため、柔軟な働き方の提供や、従業員の健康管理とウェルビーイングの推進が求められる。さらに、自発的離職の増加に対応し、キャリアパスの明確化やスキルアップの機会提供を強化することも重要である。人事コンサルタントとして、これらの施策を通じて企業が持続的な成長を実現できるよう支援することが求められる。

(2020年8月10日発表)

2020年5月分

Summary

5月の求人件数は40万1000件増の540万件となった。求人率は前月の3.7%から3.9%に上昇した。

求人は宿泊、食品サービス、小売、建設業で増加。地域別では、他よりも早く経済活動が再開された南部の増加が顕著だった。ただ現在、新型ウイルス感染拡大は南部で最も深刻化している。求人は情報関連産業のほか、連邦政府、教育サービスで減少した。

新型コロナウイルス禍で滞っていた経済活動が再開したことを受け、採用件数が2000年の統計開始以来最多を記録したほか、レイオフ件数も減少した。

採用件数は240万件増の650万件となり、2000年の統計開始以降で最多となった。採用率も前月の3.1%から4.9%に急上昇し、最高を更新した。業種別では宿泊や食品サービス関連の伸びが目立ったほか、医療、建設関連なども増加した。

レイオフ・解雇件数は前月の770万件から180万件に大幅に減少した。レイオフ・解雇率も前月の5.9%から1.4%に改善した。

自発的な離職件数は19万件増の210万件となった。自発的な離職率は1.6%となり、9年ぶりの低水準となった4月の1.4%から上昇した。

Comment

5月の米国雇用市場は、経済活動再開に伴い求人件数と採用件数が急増し、特に宿泊・食品サービス業や建設業で顕著であった。これは、新型コロナウイルス禍の影響で停滞していた雇用需要が一気に回復したことを示している。しかし、南部では感染拡大が深刻化しており、リスク管理の重要性が増している。人事コンサルタントとしては、企業に対して感染防止策の強化とともに、迅速な人材配置やフレキシブルな労働環境の構築を提案するべきである。また、情報関連産業や教育サービスでの求人減少に対応し、長期的なスキルアップ戦略やリスキリングプログラムの導入を支援することが重要である。

(2020年7月7日発表)

2020年4月分

Summary

4月の求人件数は500万件となり、前月から96万5000件減少し、2014年12月以来の低水準となった。求人率は3.7%となり、前月の3.8%から低下し、2017年1月以来の低水準となった。

採用件数は350万件となり、160万件減少、採用率は3.4%から2.7%に低下し、ともに過去最低を更新した。

4月のレイオフ・解雇件数は770万件となり、前月から380万件減少した。それでも、過去2番目に高い水準にとどまったほか、求人件数と採用件数はともに減少が継続した。

レイオフ・解雇率は5.9%となり、過去最悪だった7.6%からは改善した。

自発的な離職件数は178万6000件となり、前月の278万9000件から減少した。自発的な離職率は1.4%となり、前月の1.8%から低下した。

Comment

4月の米国労働市場は、新型コロナウイルスの影響で求人件数が2014年以来の低水準となり、採用件数も過去最低を記録した。レイオフ・解雇件数は高止まりし、自発的離職も減少傾向にある。人事コンサルタントとして、企業には非常時の人材マネジメント戦略の再構築を提案すべきである。具体的には、リモートワークの恒常化や柔軟な勤務形態の導入を通じて、労働者の安全と生産性を両立させる取り組みが求められる。また、採用活動の停滞に対しては、オンライン面接やデジタルオンボーディングの活用を促進し、優秀な人材の確保を継続することが重要である。これらの人事コンサルティングを通じて、企業は不確実な経済環境下でも持続可能な成長を目指すべきである。

(2020年6月9日発表)

2020年3月分

Summary

3月のレイオフ・解雇件数は950万件増の1140万件となり、集計を開始した2000年以降で最高水準となった。レイオフ・解雇件数は、宿泊・食品サービス業が最も多く410万件、小売業は90万8000件だった。レイオフ・解雇率は7.5%と過去最高。2月は1.2%だった。

自発的な離職件数は65万4000件減の278万件となり、2015年9月以来の低水準だった。自発的な離職率も1.8%となり、2月の2.3%から低下して2014年12月以来の低水準だった。

求人件数は81万3000件減の619万件となり、2017年5月以来の低水準となった。宿泊・食品サービス業や製造業での減少が目立った。求人率は3.9%となり、2月の4.4%から低下した。

採用件数は65万8000件減の520万件だった。採用率は2月の3.8%から3.4%に低下した。

Comment

人事コンサルタントとして、企業はこの厳しい状況に対して迅速な対応が求められる。特に、宿泊・食品サービス業や製造業においては、短期的な雇用調整と長期的な労働力の再構築が必要である。また、従業員のエンゲージメントを維持し、離職を防ぐためのメンタルヘルスサポートや柔軟な勤務体制の導入が急務である。さらに、人事コンサルティングのテーマとして、パンデミック後の経済回復を見据えた戦略的な人材育成とリーダーシップ開発が重要である。これにより、企業は不確実な環境下でも持続的な成長を実現することが可能となるであろう。

(2020年5月14日発表)

2020年2月分

Summary

2月の求人件数は前月から13万件減少して688万2000件となった。

求人率は4.3%となり、1月の4.4%から低下した。内訳では、不動産やレンタル・リース、情報などの落ち込みが目立つ一方、娯楽・接客サービスは約93万件、宿泊・飲食は約78万件、小売りは約73万件の求人があった。

採用件数は590万件とほぼ変わらずで、採用率は3.9%だった。

Comment

2月の米国雇用市場は、求人件数が減少傾向にあり、不動産や情報業界での落ち込みが特に顕著であった。一方で、娯楽・接客サービスや宿泊・飲食、小売業では引き続き高い求人需要が見られた。この状況を踏まえ、人事コンサルタントとしては、業界ごとの求人動向に応じた採用戦略の最適化を提案するべきである。不動産や情報業界では、景気の不透明感を踏まえ、リスキリングや社内異動の活用を検討すべきである。一方、求人需要の高い業界では、迅速かつ効果的な採用プロセスの構築が求められる。また、全体的な採用率がほぼ横ばいであることから、企業は今後の経済不確実性に対応し、柔軟な人材計画と労働者のエンゲージメント向上策を強化する必要がある。

(2020年4月7日発表)

2020年1月分

Summary

1月の求人件数は696万件となり、前月から増加し、市場予想を大幅に上回った。前月は655万件に上方修正(速報値642万件)された。

求人は金融・保険分野や連邦政府で大きく伸びた。

自発的離職率は2.3%となり、前月と同水準だった。解雇率は1.1%で0.1ポイント低下した。

雇用された労働者は580万人だった

Comment

1月の米国求人件数の増加は、市場の活況を示し、人事コンサルタントには適切な人材確保の戦略を策定するチャンスがある。特に金融・保険分野や連邦政府での求人増加は顕著であり、これらの分野における適切な人材の配置が必要だ。自発的離職率や解雇率の低下も、安定した労働市場を示しているが、人事コンサルティングは引き続き、労働者のニーズを満たし、企業の成長を支援するための戦略を追求する必要がある。

(2020年3月17日発表)