毎月勤労統計(2023年)

厚生労働省が毎月発表している賃金、労働時間及び雇用の変動に関する雇用指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。

2023年12月分

Summary

12月の実質賃金は前年同月比1.9%減となり、前月の2.5%減から改善した。マイナスは21か月連続となった。

名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は1.0%増となり、24か月連続で増加。賃金の基調を把握する上で注目される所定内給与は1.6%増となり、7か月ぶりの高い伸びとなった。賞与など特別に支払われた給与は0.5%増加した。

2023年の実質賃金は前年比2.5%減少となった。2年連続で減少した。マイナス幅は1.0%減だった2022年からさらに大きくなった。2020年を100とした指数で見ると97.1となり、唯一100を下回った2022年からさらに低下し、比較可能な1990年以降で最も低かった。

Comment

実質賃金は前年同月比1.9%減と21か月連続で減少しているが、前月の2.5%減から改善の兆しが見られる。名目賃金は1.0%増加し、所定内給与も1.6%増と7か月ぶりの高い伸びを示した。しかし、年間を通じて実質賃金は2.5%減少し、1990年以降で最低水準となった。企業は物価上昇に対応しきれておらず、持続的な賃上げが求められる。人事コンサルティングの観点からは、インフレ対応策として、従業員の生活水準を維持・向上させるための戦略的な賃金制度改革が求められる。

(2024年2月6日発表)

2023年11月分

Summary

11月の1人あたりの賃金は物価を考慮した実質で前年同月比3.0%減少した。マイナスは20か月連続となる。実質賃金のマイナス幅は10月の2.3%減から0.7ポイント拡大した。

名目賃金を示す1人あたりの現金給与総額は前年同月比で0.2%増の28万8741円だった。2022年1月から23か月連続のプラスとなった。現金給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は1.2%増となり、7か月連続で1%台の伸びになった。

就業形態別では、正社員等の一般労働者は0.3%増の37万7001円、パートタイム労働者は2.5%増の10万4253円だった。

Comment

物価上昇が実質賃金の減少を加速させ、経済の不透明感が高まる中、人事コンサルティングの観点では企業にとって給与体系や福利厚生の見直しが急務である。名目賃金が微増しているものの、労働者の購買力向上を図る施策が求められる。

(2024年1月10日発表)

2023年10月分

Summary

10月の実質賃金は前年同月比2.3%減少した。実質賃金のマイナス幅は9月の2.4%減から0.1ポイント縮小した。

名目賃金となる1人あたりの現金給与総額は前年同月比で1.5%増の27万9172円だった。2022年1月から22か月連続のプラスとなっている。現金給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は1.4%増となり、6か月連続で1%台の伸びに高まった。

就業形態別で見ると、正社員ら一般労働者は1.6%増の36万3226円、パートタイム労働者は3.2%増の10万3132円だった。業種別では情報通信業が5.1%増、金融業・保険業が4.9%増と高い伸びを示した。

Comment

10月の実質賃金が前年同月比で2.3%減少したことは、依然として物価上昇の圧力が強いことを示している。名目賃金は増加しているものの、物価上昇を吸収しきれていない現状では、特に実質賃金の減少が家計の購買力に影響を及ぼしている。企業においては、労働者の生活を守るために、賃金体系の見直しと、特に物価に応じた柔軟な賃金調整の仕組みを導入する必要がある。人事コンサルティングの観点からは、各業界ごとの賃金動向を踏まえた賃金戦略の最適化や、非正規労働者の待遇改善を含めた総合的な人事戦略の再構築を提案すべきである。

(2023年12月8日発表)

2023年9月分

Summary

9月の実質賃金は前年同月比2.4%の減少となった。マイナス幅は前月(改定値2.8%減)から縮小したが、市場予想よりも大きかった。

名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は1.2%増加の27万9304円となり、21か月連続の増加となった。基本給に当たる所定内給与は1.5%増加となり、前月から増加幅が拡大した。  

実質賃金の算出に用いる持ち家の帰属家賃を除く消費者物価指数の前年比上昇率は9月に3.6%と高い伸びを維持したことが影響した。

Comment

名目賃金の増加にもかかわらず、実質賃金が2.4%の減少を記録したことは、消費者物価の上昇が労働者の購買力に与える影響が大きいことを示している。この経済環境において、人事コンサルタントは企業の持続可能な人事戦略を設計する重要な役割を担っている。人事コンサルティングで基本給の適正な調整や福利厚生の充実を通じて、従業員の満足度と生産性の向上を図る必要がある。

(2023年11月7日発表)

2023年8月分

Summary

8月の実質賃金は前年同月比で2.5%減少した。これでマイナスは17か月連続となり、7月より減少幅は0.2ポイント縮んだが、物価高に賃金の伸びが追いつかない状況が続いている。

名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は、一般労働者で前年同月比1.2%増の36万6845円だった。パートタイム労働者は同2.9%増の10万3312円だった。基本給に当たる所定内給与は1.6%増で、賃上げの効果を映しつつある。

現金給与総額を業種別にみると、鉱業・採石業が前年同月比で17.4%減と落ち込んだ。金融・保険業や不動産業などは6%近く上昇した。残業代など所定外給与は1.0%増の1万8619円となった。賞与など特別に支払われた給与は5.4%減の1万2618円だった。

Comment

基本給の増加が見られる一方、特別に支払われた給与の減少が全体の伸びを抑えている。業種別の賃金格差が顕著であるため、人事コンサルティングでは各業種の特性を踏まえた人事戦略が重要であり、適正な賃金水準やインセンティブ制度の強化が人事コンサルタントの主要な課題である。

(2023年10月6日発表)

2023年7月分

Summary

7月の1人当たりの賃金は物価を考慮した実質で前年同月比2.5%減少だった。マイナスは16か月連続となり、減少幅は6月の1.6%から拡大した。

名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は、前年同月比1.3%増の38万656円だった。このうちボーナスなど特別に支払われた給与は10万8536円で0.6%増加した。現金給与総額を就業形態別にみると、正社員ら一般労働者は50万8283円、パートタイム労働者は10万7704円でいずれも1.7%増加した。

名目賃金のうち基本給に当たる所定内給与は1.6%増となり、5月以降1%台の増加が続いている。

Comment

物価高騰の中で名目賃金の増加が実質賃金の減少に追いつかない現状は深刻である。この状況下での人事コンサルティングでは、労働者のモチベーション維持と企業の持続可能な成長の両立を図る施策が求められる。人事コンサルタントとしては、労働環境の改善や賃金体系の見直しを提案し、企業と従業員の双方にとって最適な解決策を提供することが重要である。

(2023年9月8日発表)

2023年6月分

Summary

6月実質賃金は前年同月比1.6%減となり、15か月連続の前年割れとなり、マイナス幅は前月の0.9%減から拡大した。

名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は2.3%増の46万2040円となり、18か月連続で増加したものの、伸び率は市場予想を下回った。所定内給与は1.4%増、ボーナスなど「特別に支払われた給与」は3.5%増だった。

Comment

実質賃金は前年同月比1.6%減少し、マイナス幅が拡大している一方、名目賃金は2.3%増加したが市場予想には届かなかった。所定内給与とボーナスの増加はポジティブな動きであるが、物価上昇を上回る名目賃金の改善が必要である。人事コンサルタントとして、企業には持続的な賃上げとともに、インフレ対応の報酬制度の見直しを提案すべきである。また、従業員のエンゲージメントを高める施策を強化し、労働生産性の向上を目指すことが重要である。

(2023年8月8日発表)

2023年5月分

Summary

5月の1人あたりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比1.2%減少した。マイナスは14か月連続となったが、所定内給与が28年ぶりの伸び幅となり、実質賃金の減少幅は4月の3.2%から縮小した。

所定内給与は25万2132円となり、前年同月比1.8%増加して1995年2月以来の増加幅となった。名目にあたる現金給与総額は前年同月比2.5%増の28万3868円だった。所定内給与の伸びが押し上げた。

現金給与総額を就業形態別に見ると、正社員など一般労働者は前年同月比3.0%増の36万8417円、パートタイム労働者は3.6%増の10万2303円だった。

Comment

所定内給与が28年ぶりの伸び幅を記録していることは、企業が例年よりも高率の賃上げを行っていることを示している。この状況下では、人事コンサルタントは企業が労働市場での競争力を保ち、従業員のモチベーションを高めるための報酬戦略の最適化を提案することが重要である。

(2023年7月7日発表)

2023年4月分

Summary

4月の実質賃金は前年同月比3.0%減となり、市場予想に反して前月からマイナス幅が拡大した。

名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は同1.0%増の28万5176円となり、16か月連続のプラスとなったが、伸び率は前月(1.3%増)から鈍化した。名目賃金のうち基本給を含む所定内給与は1.1%増となり、前月(0.5%増)を上回った。一方、時間外手当などの所定外給与は0.3%減となり、2021年3月(5.0%減)以来のマイナスに転じた。所定外労働時間が1.9%減少した。

Comment

4月の実質賃金の減少は企業にとっては重大な課題である。人事コンサルタントとしては、賃金構造の見直しと労働時間管理の効率化が重要なテーマとなる。基本給の増加が続く一方で、所定外給与が減少し始めた背景には、働き方改革の影響や労働生産性の課題が潜んでいる可能性がある。今後、企業は従業員のエンゲージメントを高めるために、柔軟な労働環境の提供や適切なインセンティブ設計を強化すべきである。

(2023年6月6日発表)

2023年3月分

Summary

3月の1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比2.9%減となった。減少は12か月連続となり、減少幅は2月から横ばいだった。

名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は29万1081円となり、前年同月に比べて0.8%増加した。前年同月を上回るのは15か月連続で、伸び幅は前月から横ばいだった。基本給にあたる所定内給与は0.5%増、残業代など所定外給与は1.1%増となった。賞与など特別に支払われた給与は4.6%増だった。

現金給与総額を就業形態別でみると、正社員など一般労働者は1.3%増、パートタイム労働者は2.1%増だった。産業別では運輸業・郵便業、宿泊業・飲食サービス業などサービス関連の伸びが目立った。

Comment

物価変動を考慮した実質賃金の減少と名目賃金の増加が交錯する中、企業は人材の定着と採用競争力を高めるため、効果的な報酬戦略の策定が求められている。特にサービス業での賃金上昇は、人材確保の鍵となる。人事コンサルタントは、給与体系の最適化やモチベーション向上策を提供することにより、企業の成長を下支えする必要がある。

(2023年5月9日発表)

2023年2月分

Summary

2月の1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比2.6%減少した。下落率は8年8か月ぶりの大きさだった1月よりも縮まった。実質賃金の算出で用いる物価は前年同月比3.9%の上昇となり、1月から1.2ポイント縮小した。

名目賃金に相当する1人当たりの現金給与総額は1.1%増の27万1851円となり、14か月連続で前年同月を上回った。基本給にあたる所定内給与は1.1%増となり、残業代などの所定外給与は1.7%増加した。

就業形態別に現金給与総額を見ると、正社員など一般労働者は1.3%増の35万3050円、パートタイム労働者は3.9%増の9万9030円だった。

Comment

2月の実質賃金は前年同月比で2.6%減少し、依然として家計の購買力に厳しい状況が続いている。物価上昇の影響が続く中で、名目賃金の増加が十分とは言えない。特に、正社員とパートタイム労働者の間で賃金増加率に差が見られることは注視すべき点である。企業にとっては、賃金体系の見直しや、インフレに対応した柔軟な賃金調整策が不可欠である。また、人事コンサルティングの観点からは、従業員のエンゲージメントを維持するために、非正規労働者の待遇改善や、成果に基づく賃金制度の導入を提案し、全従業員のモチベーション向上を図るべきである。

(2023年4月7日発表)

2023年1月分

Summary

1月の実質賃金は前年比4.1%下落し、2014年5月以来8年8か月ぶりのマイナス幅となった。

労働者1人当たり平均の名目賃金を示す1月の現金給与総額は前年比0.8%増の27万6857円だった。昨年12月の同4.1%増からプラス幅が大幅に縮小した。

ボーナスなど特別に支払われた給与が、12月の前年比6.5%増から1月は同1.7%減に転じた。所定内給与の伸びも12月の前年比1.4%増から1月は同0.8%増に、所定外給与も12月は同2.9%増だったが1月は同1.1%増にとどまった。

Comment

1月の毎月勤労統計は、実質賃金が前年比4.1%下落し、名目賃金の伸びが鈍化している。これは、インフレとボーナス減少が労働者の購買力に影響を与えていることを示している。人事コンサルティングの視点から、企業は賃金だけでなく、総合的な福利厚生や労働環境の改善を通じて従業員の満足度と生産性を向上させる必要がある。長期的な競争力を維持するためには、持続可能な人材戦略の再構築が不可欠である。

(2023年3月7日発表)