全米雇用報告(2020年)
ADP(オートマティック・データ・プロセッシング)から毎月発表される米国の雇用に関する指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
2020年12月分
Summary
2020年12月の民間部門雇用者数は12万3000人減少した。減少したのは昨年4月以来初めてとなる。11月は30万4000人増と、当初の30万7000人増からやや下方修正された。
12月はほぼ全ての部門で雇用が減少した。財生産部門は1万8000人減少した。このうち製造業は2万1000人減少した。サービス部門は10万5000人減少した。このうち。娯楽・ホスピタリティー分野が5万8000人、貿易・輸送・公益分野が5万人それぞれ減少した。
企業の規模別では、小規模企業が1万3000人減、大企業が14万7000人減となった。一方、中規模企業は3万7000人増加した。
Comment
12月の米国民間部門雇用者数は、パンデミックの影響が色濃く反映された結果となり、4月以来初めての雇用減少が見られた。特にサービス部門での減少が顕著であり、娯楽・ホスピタリティー分野や貿易・輸送・公益分野での雇用喪失が目立つ。また、製造業でも雇用が減少し、経済全体の回復に陰りが見られる。特に大企業での大幅な雇用減少が懸念される一方で、中規模企業が雇用を増加させている点は注目に値する。人事コンサルタントには、この厳しい経済環境下での企業のレジリエンス強化策の提案が求められる。特に影響を受けた業界では、雇用維持のための短期的な対策と、長期的な成長戦略を組み合わせたアプローチが求められる。
(2021年1月6日発表)
2020年11月分
Summary
11月の米民間雇用者数は前月比30万7000人の増加となり、今年7月以来の低い伸びにとどまり市場予想を下回った。前月は40万4000人増(速報値36万5000人増)に上方修正された。
サービス部門の雇用は27万6000人増加した。娯楽・ホスピタリティー分野が9万500人増加、教育・ヘルスケア分野が6万9000人増加し、伸びが目立った。
財生産部門は3万1000人増加した。このうち建設業が2万2000人増加した。
事業所の規模別では、従業員数50-499人の中規模企業で13万9000人増加し、大企業が5万8000人、小規模企業で11万人それぞれ増加した。
Comment
11月のデータは、人事コンサルティングにおいて重要な洞察を提供する。人事コンサルタントは、これらの変動を理解し、企業が適応するための戦略を練る必要があり、特にパンデミックの影響を受けて変化する労働市場において、適切な人材戦略の設計と実行が求められる。
(2020年12月2日発表)
2020年10月分
Summary
10月の米国の民間雇用者数は前月比36万5000人増加となり、市場予想を大幅に下回った。前月は75万3000人増(速報値74万9000人増)に上方修正された。
サービス部門の雇用は34万8000人増加にとどまった。貿易・輸送・公益分野(5万3000人増)、教育・ヘルスケア分野(7万9000人増)などの減速が影響した。
財生産部門の雇用は1万7000人増となり、3か月ぶりの小幅な伸びにとどまった。製造業(7000人増)と建設業(7000人増)の鈍化が影響した。
規模別では、中規模企業が13万5000人増加、大企業では11万6000人増加、小規模企業は11万4000人増加した。
Comment
米民間雇用者数は36万5000人増加し、市場予想を大幅に下回った。このような状況下において、人事コンサルタントとしては、企業が持続的な雇用拡大を目指すための戦略的アプローチが求められる。人事コンサルティングの観点から、特に成長が鈍化している分野における効果的な人材配置と人材育成が不可欠であり、これが企業の競争力強化に繋がると考える。
(2020年11月4日発表)
2020年9月分
Summary
9月の米民間雇用者数は前月から74万9000人増加し、市場予想を上回った。前月は48万1000人増(速報値42万8000人増)に上方修正された。
分野別では、財生産部門の雇用が19万6000人増加した。製造業が13万人、建設業は6万人それぞれ増加した。
サービス部門の雇用は55万2000人増加した。貿易・輸送・公益分野が18万6000人、娯楽・ホスピタリティー分野が9万2000人、教育・ヘルスケア分野が9万人それぞれ増加した。
規模別では、小規模企業が19万2000人、中規模企業が25万9000人、大企業が29万7000人増加した。
Comment
9月の米国民間雇用者数の大幅な増加は、経済回復が着実に進展していることを示している。この状況下で人事コンサルタントとして注視すべきは、サービス部門、特に貿易・輸送・公益や娯楽・ホスピタリティー分野の顕著な雇用増加である。これらの業界はパンデミックの影響を大きく受けたが、今後のさらなる需要増加が見込まれるため、人材確保と育成に重点を置いた戦略が求められる。また、企業規模別の雇用増加も均衡しており、全ての規模の企業において労働力の確保が課題となる。これに対し、柔軟な雇用モデルの導入やリスキリングプログラムの強化が不可欠である。
(2020年9月30日発表)
2020年8月分
Summary
8月の米民間雇用者数は前月比42万8000人増加となり、市場予想を下回った。前月は21万2000人増(速報値16万7000人増)に上方修正された。
部門別では、サービス部門の雇用は38万9000人増加した。娯楽・ホスピタリティーサービスが12万9000人増加、教育・医療サービスが10万人増加した。
財生産部門の雇用は4万人増加した。建設業が2万8000人増加、製造業が9000人増加した。
規模別では、500人以上の大企業で29万8000人、中堅企業で7万9000人、小規模企業では5万2000人それぞれ増加した。
Comment
米民間雇用者数は市場予想を下回ったものの、サービス部門を中心に雇用は増加傾向にあった。特に娯楽・ホスピタリティーサービスや教育・医療サービスの回復が目立つ。人事コンサルタントとしては、この不確実な時期において企業の柔軟な人材管理と適切なリソース配分が求められる。人事コンサルティングの視点からは、変動する市場ニーズに迅速に対応できる戦略の構築が重要である。
(2020年9月2日発表)
2020年7月分
Summary
7月の米民間雇用者数は前月比16万7000人の増加となり、市場予想を大幅に下回った。前月分は速報値の237万人増から431万人増に上方修正された。
分野別では、サービス部門の雇用は16万6000人増、財生産部門は1000人増となった。プロフェッショナル・ビジネスサービスが5万8000人、医療・教育サービスが4万6000人増加した。5月、6月に大幅に増加した娯楽・ホスピタリティーは3万8000人増と増加幅が減速した。
規模別では、従業員50人未満の小規模企業で6万3000人増、中規模企業は2万5000人減、大企業は12万9000人増だった。
Comment
企業は柔軟な雇用戦略を採用し、変動する市場環境に迅速に対応する必要がある。規模別に見ると、大企業での雇用増が顕著であり、逆に中規模企業の雇用減少が目立つため、中規模企業向けの人事コンサルティングを強化し、これら企業が直面する特有の課題に対処することが急務である。人事コンサルタントとして、各企業の規模と業種に応じたカスタマイズされた人材戦略を提案し、持続可能な成長を支援することが求められる。
(2020年8月5日発表)
2020年6月分
Summary
6月の米民間雇用者数は前月から236万9000人の増加となり、市場予想を下回った。
5月は276万人の減少(速報値)から307万人の増加に大幅に上方修正された。
部門別では、財生産部門は45万7000人増加した。建設が39万4000人、製造業は8万80000人増加した。
サービス部門の雇用は191万2000人増加した。娯楽・ホスピタリティーサービスが96万1000人、貿易・交通サービスが28万8000人、教育・医療サービスが28万3000人、それぞれ増加した。
規模別では、従業員50人未満の小規模企業で93万7000人増加、中規模企業は55万9000人増加、大企業は87万3000人増加した。
Comment
人事コンサルタントとしては、特にサービス部門と財生産部門の顕著な雇用増加に注目する。特に娯楽・ホスピタリティーサービス分野での雇用の大幅な回復は、業界の迅速な適応と革新を示しており、企業はこの変化を受けて柔軟な労働力管理と人事戦略を進化させる必要がある。また、規模別の雇用増加を見ると、小規模から大企業まで幅広く改善が見られ、全企業が包括的な人事コンサルティングによるサポートを必要としている。
(2020年7月1日発表)
2020年5月分
Summary
5月の米国の民間雇用者数は前月比276万人減となり、市場予想より小幅な減少にとどまった。前月は1960万人減に上方修正された。
雇用の減少は小規模事業者でより緩やかだった。小規模事業者の多くは、政府の給与保証プログラムの支援を受けた。従業員50人未満の企業は43万5000人減少、中規模企業は72万2000人減少、大企業は160万人減少だった。
業種別では、パンデミックの影響を特に大きく受けたサービス部門の雇用が197万人の減少となり、貿易・輸送・公益事業サービスでは82万6千人減少した。財生産部門は79万4000人の減少となり、製造業では71万9000人減少した。
Comment
5月の米国民間雇用者数の大幅な減少は、パンデミックによる深刻な経済打撃を反映しているが、市場予想を上回る減少幅でなかったことは一部の回復力を示している。特に小規模事業者が政府の給与保証プログラムの支援を受け、雇用減少が抑えられた点に注目すべきである。人事コンサルタントとしては、こうした政府支援の効果を最大限に引き出すため、企業に対して戦略的な人材管理のアドバイスが求められる。特にパンデミックの影響が顕著なサービス部門においては、柔軟な労働力再配置やリスキリングの導入が不可欠である。また、製造業など財生産部門では、今後の需要回復を見越し、持続可能な労働力確保の戦略が求められる。
(2020年6月3日発表)
2020年4月分
Summary
4月の米民間雇用者数前月から2020万人となり、2002年の統計開始後で最大の落ち込みを記録した。3月は14万9000人減(速報値2万7000人減)に下方修正された。
4月はサービス部門の雇用が1600万人減、財生産部門は420万人減となった。小売りを含む商業・運輸・公益は340万人、建設が250万人近く、製造業は約170万人それぞれ減少した。
規模別では、大企業で900万人、従業員50人未満の小規模企業で600万人、中規模企業で530万人の雇用が失われた。
ADP民間雇用者数がこれまでに最も大きく落ち込んだのは、前回リセッション(景気後退)期にあたる2009年2月に記録した83万5000人減少だった。
Comment
このような未曾有の雇用減少に対して、人事コンサルタントとして企業に提案すべきことは、緊急時対応と回復戦略の両面を強化することである。まず、迅速なリストラ対応とメンタルヘルスケアの提供が急務である。さらに、従業員の再配置とスキル再訓練を支援し、労働市場への迅速な復帰を促進することが求められる。特にサービス部門や商業部門においては、デジタルスキルの向上やリモートワーク環境の整備が重要である。人事コンサルタントは、これらの対策を通じて企業が持続可能な成長を実現し、経済の早期回復を支援する役割を果たすべきである。
(2020年5月6日発表)
2020年3月分
Summary
3月の全米雇用報告は、民間部門雇用者数が2万7000人減となった。減少は2017年9月以来2年半ぶり。
3月は財生産部門の雇用者数が9000人減少した。内訳では建設業が1万6000人減少した。製造業は6000人、天然資源・鉱業は1000人増加した。
サービス部門は1万8000人減少した。内訳では、教育・医療サービスが4万8000人増加した一方で、貿易・交通サービスが3万7000人、娯楽・ホスピタリティーサービス1万1000人減少した。
規模別では、従業員500人以上の大規模企業が5万6000人増加、50人以上499人以下の中規模企業が7000人増加、49人以下の小規模企業が9万人の減少となった。
Comment
3月の米国民間雇用者数が減少に転じたことは、パンデミックの初期段階で経済に与えた深刻な影響を物語っている。特に小規模企業での大幅な雇用減少が顕著であり、人事コンサルタントとしては、中小企業が直面する人材管理の課題に対し、迅速かつ柔軟な支援策を提案する必要がある。サービス部門全体では減少が見られるものの、教育・医療サービスが増加した点に注目すべきであり、このセクターへのリソースシフトを促進することで、他業界からの労働力再配置を支援する戦略が有効である。
(2020年4月1日発表)
2020年2月分
Summary
2月の米国の民間雇用者数は18万3000人の増加となり、市場予想を上回った。1月は20万9000人増(速報値29万1000人増)に下方修正された。
2月は財生産部門の雇用者数が1万1000人増加した。内訳では建設業が1万8000人増加した。一方で、製造業は4000人減少、天然資源・鉱業は3000人減少した。
サービス部門は17万2000人増加した。内訳では、教育・医療サービスが4万6000人増加、娯楽・ホスピタリティーサービス4万4000人増加、プロフェッショナル・ビジネスサービスは3万8000人増加した。
規模別では、従業員500人以上の大規模企業が13万3000人増加、50人以上499人以下の中規模企業が2万6000人増加、49人以下の小規模企業が2万4000人の増加となった。
Comment
教育・医療サービスやプロフェッショナル・ビジネスサービスの需要増加は、これらの分野での労働力の専門性と柔軟性が重要となることを示している。人事コンサルタントとしては、今後の成長セクターにおける人材開発や、スキルマッチングの向上が組織の競争力を左右する重要な要素であることを企業に提案すべきである。さらに、中小規模企業については、採用戦略だけでなく既存の人材育成や定着策にも焦点を当て、総合的な組織力を強化する必要があるだろう。
(2020年3月4日発表)
2020年1月分
Summary
1月の米国の民間雇用者数は29万1000人の増加となり、市場予想を大幅に上回った。12月は19万9000人増に下方修正された(速報値20万2000人増)。
12月は財生産部門の雇用者数が5万4000人増加した。内訳では建設業が4万7000人増、製造業は7000人増だった。一方で天然資源・鉱業は2000人減少した。
サービス部門は23万7000人増加した。サービス業の雇用は2016年2月以来の大幅な伸びとなった。内訳では、娯楽・ホスピタリティーサービス9万6000人増、教育・医療サービスが7万人増、プロフェッショナル・ビジネスサービスは4万9000人増だった。
規模別では、従業員500人以上の大規模企業が6万9000人増加、50人以上499人以下の中規模企業が12万8000人増加、49人以下の小規模企業が9万4000人の増加となった。
Comment
1月のADP全米雇用報告は市場予想を大幅に上回り、特にサービス業の雇用増加が2016年以来の高水準を記録した。この状況から、人事コンサルタントは各企業規模や業種に応じた人材戦略の見直しを推奨するべきである。大規模企業、中規模企業、小規模企業全てで雇用が増加していることは、市場の活性化が進んでいる証であり、人事コンサルティングの役割が一層重要になる。
(2020年2月5日発表)