一般職業紹介状況(2021年)
厚生労働省が毎月発表している公共職業安定所(ハローワーク)における求人、求職、就職の状況をとりまとめた求人倍率などの雇用指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
2021年12月分
Summary
2021年12月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.01ポイント上昇して1.16倍となった。
新規求人数(原数値)は、前年同月に比べ12.2%増加した。半導体製造関連などで求人活動の活発化が継続したことから、製造業は34.6%増となり、引き続き大幅に伸びた。在宅勤務の増加を背景に住宅需要が堅調に推移したことなどもあり、建設業は7.1%増となった。情報通信業などもプラスとなった。
雇用の先行指標とされる新規求人倍率(季節調整値)は2.30倍となり、前月に比べ0.17ポイント上昇した。コロナ禍前の2019年12月(2.49倍)以来の高水準となった。正社員の有効求人倍率(同)は前月比0.01ポイント低下して0.86倍だった。
併せて発表された2021年平均の有効求人倍率は、前年比0.05ポイント低下の1.13倍だった。
Comment
人事コンサルタントの視点からは、成長産業での採用戦略を強化しつつ、正社員としての安定雇用を望む人材を効果的に惹きつけるために、柔軟な報酬体系やキャリア開発プログラムの整備が必要になる。即戦力と見込まれる人材に対しては魅力的な報酬制度を用意し、同時に潜在的な才能を引き出すための研修やキャリアアップの機会を提供することで、企業の持続的成長を支援することが重要だ。
(2022年2月1日発表)
2021年11月分
Summary
11月の有効求人倍率(季節調整値)は1.15倍となり、前月と同水準となった。
有効求人数が前月に比べて1.0%、有効求職者数が0.9%、それぞれ増加した。
11月の新規求人数(原数値)は前年同月比12.3%増だった。前年同月比で12.3%増加し、前年同月を8か月連続で上回った。一方で、2019年11月比では11.7%減少となり、感染拡大前の水準には回復していない。
産業別でみると「製造業」が同38.0%増、「宿泊業、飲食サービス業」が同23.3%増、「情報通信業」が同19.5%増、「教育、学習支援業」が同19.4%増となった。
Comment
11月の有効求人倍率は1.15倍と前月と同水準を維持し、有効求人数と求職者数がともに増加したことは、雇用市場の活性化を示している。しかし、コロナ前の2019年11月と比較すると、新規求人数は依然として低水準にあり、完全な回復には至っていない。特に「製造業」や「宿泊業、飲食サービス業」で顕著な求人増加が見られるが、これは経済再開とともに急増した需要への対応であり、今後の持続可能性が課題である。人事コンサルタントとしては、企業がコロナ後の不確実性に対応するために、柔軟な雇用戦略と人材開発計画を進めるべきだと考えている。
(2021年12月28日発表)
2021年10月分
Summary
10月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.01ポイント低下して1.15倍となった。
新規求人数(原数値)は前年同月比8.7%増加した。半導体製造関連などで求人活動が活発化する動きが続き、製造業は35.9%増加したほか、教育・学習支援業や情報通信業も2桁増となった。宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業もプラスとなった。
雇用の先行指標とされる新規求人倍率(季節調整値)は2.08倍となり、前月から0.02ポイント低下した。正社員の有効求人倍率(同)は前月から0.02ポイント低下して0.89倍となった。
Comment
有効求人倍率のわずかな低下にも関わらず、新規求人が増加している。この状況は、経済の部分的な回復と市場の需給関係の変動を示しており、人事コンサルタントはこれを重要な機会と捉えるべきである。人事コンサルティングの専門知識を活用して、特に成長を遂げている製造業や情報通信業などにおいて、効率的な人材確保戦略を提案し、企業の持続可能な成長を支援することが求められる。
(2021年11月30日発表)
2021年9月分
Summary
9月の有効求人倍率(季節調整値)は1.16倍となり、前月から0.02ポイント上昇した。
新規求人(原数値)は前年同月比6.6%増加した。産業別では製造業が32.4%増加し、建設業が5.7%増加した。新型コロナウイルスの影響で時短営業などを強いられた宿泊・飲食サービス業は7.5%減少した。
コロナ禍前の2019年9月と比べても製造業は3.0%の減少にとどまり、建設業は12.0%増加した。宿泊・飲食サービス業は37.3%減だったが、8月と比べると改善している。
新規求職申し込み件数(季節調整値)は前月と比べ4.8%減少した。9月は緊急事態宣言が月末で全面解除されるなど感染者数が減少傾向にあり、厚労省は「10月以降に求人が増えることを期待し、一部で求職活動を控える人もいた」としている。
就業地別の有効求人倍率をみると、最高は福井県の1.98倍、最低は沖縄県の0.80倍だった。コロナ感染者が多かった東京都は0.91倍、神奈川県は0.95倍、大阪府は0.93倍など1倍を下回った。
Comment
有効求人倍率のわずかな上昇と新規求人の増加は、労働市場の回復の兆しを示している。特に製造業と建設業での求人増加は、これらの業界における活動の正常化が進んでいることを示している。一方で、宿泊・飲食サービス業は依然として厳しい状況にあるが、前月に比べて改善している。人事コンサルタントは、これらのデータを基に、企業が適切な人材を確保し、業界特有の課題に対応するための戦略的な人事コンサルティングを提供することが重要である。また、感染症の影響による不確実性が求職者の行動に影響を与えていることも考慮する必要があるだろう。
(2021年10月29日発表)
2021年8月分
Summary
8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.14倍となり、前月を0.01ポイント下回った。低下は4か月ぶり。
8月の有効求人数(222万人)は前の月から1.2%増加したが、有効求職者数(194万人)の伸びが2.2%と上回ったため、有効求人倍率が低下した。
景気の先行指標となる新規求人数は前年同月比で10%増加した。産業別にみると、宿泊・飲食サービス業は12.3%増と3か月ぶりに増加に転じたほか、製造業や情報通信業などで増加した。
雇用の先行指標とされる新規求人倍率(季節調整値)は1.97倍と、前月に比べ0.01ポイント低下した。正社員の有効求人倍率(同)は前月比0.02ポイント減の0.92倍だった。
Comment
8月の有効求人倍率が1.14倍に低下し、4か月ぶりの下降を示した背景には、有効求職者数の伸びが求人数の増加を上回ったことがある。しかし、新規求人数が前年同月比で10%増加し、特に宿泊・飲食サービス業が12.3%増と回復傾向にある点は注目に値する。このような市場動向を踏まえ、人事コンサルティングの観点からは、各産業の特性に応じた適切な採用戦略策定が重要である。特に正社員の求人倍率の低下は、雇用の質に関する慎重な検討を必要とする。人事コンサルタントは、このようなデータを基に戦略的なアドバイスを提供することで、企業の持続可能な成長を支援する役割を担う必要がある。
(2021年10月1日発表)
2021年7月分
Summary
7月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.02ポイント上昇の1.15倍となった。有効求人数が1.5%増加した一方、有効求職者が0.5%減少したことが影響した。
新規求人数(原数値)は、前年同月比8.3%増加した。ただ、感染が拡大する前の一昨年7月からは22.7%減少している。製造業が40.8%、運輸業・郵便業が10.6%増加した一方、宿泊業・飲食サービス業や教育、学習支援業が減少した。
雇用の先行指標とされる新規求人倍率(季節調整値)は1.98倍となり、前月から0.10ポイント低下した。正社員の有効求人倍率(同)は前月から横ばいの0.94倍だった。
都道府県の有効求人倍率を就業地別でみると最も高いのは福井県で1.95倍、次いで秋田県1.70倍、島根県1.69倍となった。一方、最も低かったのは沖縄県で0.84倍、次いで東京都0.91倍、大阪府0.94倍となった。
Comment
7月の有効求人倍率が1.15倍となり、前月比で0.02ポイント上昇したことは、経済が徐々に回復している兆しである。ただし、感染拡大前の水準には依然として及ばないことから、コロナ禍の影響が続いている状況にある。特に製造業と運輸業・郵便業の増加は物流と生産活動の復活を示している一方で、宿泊業・飲食サービス業や教育業の減少は、依然として厳しい状況を反映しているである。人事コンサルタントとしては、地域別の求人倍率の差異を考慮し、企業が適切な人材確保戦略を立案できるよう支援することが重要である。
(2021年8月31日発表)
2021年6月分
Summary
6月の有効求人倍率(同)は1.13倍となり、前月から0.04ポイント上昇した。有効求人数が前月から横ばいだったのに対し、有効求職者数が前月比3.6%減少したことで、相対的に有効求人倍率が上がった。
産業別では宿泊・飲食サービス業の厳しさが目立った。新規求人は前年同月比で10.6%減少し、主要産業で唯一マイナスとなった。2020年6月も感染拡大の影響で求人は減少傾向だったため、製造業(同39.3%増)や運輸・郵便業(同10.5%増)など反動増となった業種が多い。
地域差も大きく、就業地別の有効求人倍率は最高の福井県が1.88倍、最低の沖縄県は0.88倍で、1ポイント分の差が出た。沖縄のほか東京都と神奈川県、大阪府が1倍を下回った。
Comment
6月の有効求人倍率は1.13倍となり、雇用市場に明るい兆しが見える一方で、業界間や地域間の差が大きい点が浮き彫りとなった。特に宿泊・飲食サービス業の低迷が目立ち、地域別では沖縄や大都市圏での求人難が顕著である。このような状況下において、人事コンサルタントには柔軟な採用戦略の提案が求められる。同時に、特定業種や地域に対する精緻な分析と対策提案が求められる。
(2021年7月30日発表)
2021年5月分
Summary
5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.09倍となり、前月と同水準だった。
月間有効求人数(季節調整値)は前月に比べて0.3%減少し、有効求職者数(同)は0.4%減少となった。
景気の先行指標となる新規求人(原数値)は前年同月比で7.7%増加した。ただ新型コロナ前の2019年同月と比べると26.9%減少した。特に「製造業」「卸売業、小売業」「宿泊業、飲食サービス業」などで求人の回復が弱い。
就業地別の有効求人倍率は、最高の福井県が1.81倍、最低の沖縄県が0.83倍だった。緊急事態宣言が続いていた東京都や大阪府では1倍を割り込んでいる。
5月の新規求職申込件数(同)は同11.7%減とやや大きく減少した。緊急事態宣言等による先行き不透明感や、新型コロナ変異株流行などで外出を手控える動きが出たことなどが影響したとみられている。
Comment
5月の雇用データは、依然として厳しい状況を示している。新規求人が前年同月比で増加しているものの、2019年同月と比べると大幅に減少しており、コロナ前の水準には程遠い。特に製造業、卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業などの求人回復が遅れている。このような環境下で、人事コンサルタントとして企業に提案すべきは、雇用の安定化と従業員のスキルアップに向けた施策である。特に、柔軟な労働環境の整備や、リスキリング、アップスキリングのプログラムを推進することが重要である。また、地域ごとの雇用状況の格差にも留意し、地域特性に応じた人材採用戦略を策定する必要がある。東京都や大阪府のように緊急事態宣言が続く地域では、テレワークの導入や従業員のメンタルヘルスケアの強化が求められる。さらに、先行き不透明な状況を踏まえたリスク管理と、柔軟な人材マネジメントが企業の持続的な成長を支える鍵となる。
(2021年6月29日発表)
2021年4月分
Summary
4月の有効求人倍率(同)は1.09倍となり、前月から0.01ポイント低下した。
有効求人は前月から1.4%増加し、働く意欲のある有効求職者数は2.6%増加した。求職者の伸びが求人を上回り、2か月ぶりに悪化した。
景気の先行指標となる新規求人数(原数値)は前年同月比で15.2%増加した。増加に転じるのは2019年12月以来となる。ただし、増加したのは昨年4月、1回目の緊急事態宣言で大きく落ち込んだ反動が大きく、2年前と比べると2割減で、コロナの影響が続いている。
産業別では宿泊・飲食サービス業で厳しい状況が続いていることから、就業者数は前年比20万人減、2年前と比べて66万人減となり、新規求人数も前年比2.9%増にとどまった。就業者数は医療・福祉の伸びが大きく、37万人増だった。
地域によるばらつきも大きい。就業地別の有効求人倍率は、最高の福井県が1.84倍、最低の沖縄県は0.78倍だった。コロナの感染が再拡大する都市部では、東京都や大阪府で1倍を割り込んでいる。
Comment
4月の有効求人倍率は1.09倍と前月からわずかに低下し、求人市場が再び悪化したことが示された。求職者数が増加し、求人の伸びを上回ったことが要因である。新規求人数の増加は前年同月比で15.2%に達したが、これは2020年4月の第1回緊急事態宣言の影響を受けた反動であり、依然としてコロナ前の水準には遠く及ばない。特に宿泊・飲食サービス業での求人は厳しく、回復の遅れが目立つ。地域による有効求人倍率のばらつきも大きく、都市部では感染再拡大の影響で求人倍率が低下している。人事コンサルタントとしては、コロナ禍における雇用の不均衡に対応するため、地域別や業種別に特化した採用戦略を策定する必要がある。特に、宿泊・飲食業界においては、短期的な雇用安定策の提案が求められる。また、医療・福祉分野の就業者増加を背景に、これらの成長産業における人材確保や育成支援が重要なテーマとなる。
2021年3月分
Summary
3月の有効求人倍率(季節調整値)は1.10倍となり、前月から0.01ポイント上昇した。
有効求人数は前月から1.6%増加した。緊急事態宣言の解除を見越した求人が3月に増加した。
有効求職者数は0.4%増加した。収入減を補てんするためにダブルワークを希望する人や、休業長期化に伴って自己都合で退職し転職しようとする人が目立った。
新規求人数(原数値)は前年同月比0.7%減だった。人手不足の傾向にある建設業が16.3%増、製造業が8.5%増となった。一方でコロナの影響が残る生活関連サービス業・娯楽業が14.8%減、卸売業・小売業が12.6%減などとなった。
2020年度平均の有効求人倍率は、2019年度から0.45ポイント低下し1.10倍で、2014年度(1.11倍)以来6年ぶりの低水準だった。低下幅はオイルショックの影響が出た74年度以来46年ぶりの大きさだった。
Comment
3月の有効求人倍率は1.10倍と前月より若干上昇したものの、新規求人数は前年同月比で減少している。この時期の特徴として、緊急事態宣言の解除を見越した求人増加と、収入減を補うためのダブルワーク希望者や転職希望者の増加が挙げられる。人事コンサルタントとして注目すべきは、建設業や製造業における求人増加と、生活関連サービス業や卸売業・小売業での求人減少である。これに対応するため、企業には柔軟な労働力調整と従業員のスキル再教育が必要である。また、求職者のニーズを的確に把握し、適切な職場環境の提供を通じて、雇用の質の向上を図ることが求められる。人事コンサルティングにおいては、経済状況を反映した戦略的なアプローチが不可欠であり、企業の持続可能な成長を支援するための包括的なソリューションを提供することが重要である。
(2021年4月30日発表)
2021年2月分
Summary
2月の有効求人倍率(同)は1月の1.10倍から1.09倍となり、5カ月ぶりに低下した。新規求人倍率(季節調整値)は1.88倍となり、前月を0.15ポイント下回った。
正社員有効求人倍率(季節調整値)は0.82倍となり、前月を0.03ポイント上回った。有効求人(季節調整値)は前月に比べ1.5%減となり、有効求職者(同)は0.3%減となった。
2月の新規求人(原数値)は前年同月比14.6%減となった。産業別では、建設業(10.0%増)が増加し、宿泊業,飲食サービス業(41.0%減)、情報通信業(23.2%減)、卸売業、小売業(23.2%減)、生活関連サービス業,娯楽業(23.2%減)、運輸業,郵便業(21.0%減)などで減少した。
Comment
緊急事態宣言の発出は地域が限定的であったためか地域によるばらつきは大きく、就業地別の有効求人倍率は最高の福井県が1.64倍、最低の沖縄県が0.75倍だった。東京都や大阪府は昨夏以降、1倍を切った状態が続いており、先行き不透明な状況が続いている。
(2021年3月30日発表)
2021年1月分
Summary
1月の有効求人倍率は1.10倍となり、前月から0.05ポイント上昇した。
全国のハローワークにある企業からの求人「有効求人数」が1月は211万2352人となり、前年同月より45万4173人(17.7%減少)した。このうち、1月に出された企業からの新規求人は78万6404人となり、前年同月より10万2727人(11.6%減少)して13か月連続で前年同月より減少した。
新規求人の減少を産業別で見ると、宿泊業・飲食サービス業は37.5%、生活関連サービス業・娯楽業は26.2%、卸売業・小売業は17.2%だった。
一方で、仕事を探すためのハローワークへの新規の申し込みは39万2255件となり、前年同月比で9.8%減少し、3か月連続で前年同月比減少した。
都道府県の有効求人倍率を就業地別でみると、最も高いのは福井県で1.64倍、次いで香川県で1.44倍、島根県で1.42倍、などとなっている。一方、最も低かったのは、沖縄県で0.77倍、神奈川県で0.89倍、東京都で0.91倍などとなっている。
厚生労働省では「緊急事態宣言が出されて仕事を探す人も減ったため有効求人倍率は上昇したが求人の減少傾向は続いていて先行きは不透明だ」としている。
Comment
緊急事態宣言が出されて仕事を探す人が減少したことにより有効求人倍率は上昇したものの、新型コロナウイルス感染症の影響で求人の減少傾向は続いており先行き不透明な状況が続いている。こうした特異な環境以下においても顧客企業が安定的な経営を維持できるように我々人事コンサルタントは縁の下の力持ちになれるよう精進したいものだ。
(2021年3月2日発表)