米求人・労働移動状況(2021年)
米労働省から毎月発表される米国の求人・採用・解雇など雇用全般に関する調査結果に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
2021年12月分
Summary
12月の米求人件数は1090万件に増加し、市場予想を上回った。前月は1080万件に上方修正された。
離職率は2.9%となった。前月は3%と過去最高を記録していた。自発的離職者数は前月に記録した過去最多から小幅に減少した。
求人件数は宿泊・食品サービス、情報業界、州・地方政府、教育で増加。金融・保険、卸売りでは減少した。
雇用された労働者は専門職とビジネスサービスで大きく減少し630万人に減少した。採用率は4.2%にやや低下し、4か月ぶりの低下となった。レイオフと解雇は120万人とほぼ変わらずだった。
Comment
12月のデータは、人事コンサルティングの観点から見ると、市場の需給バランスの変動に対応するために、企業がどのように戦略を調整すべきか示唆している。自発的離職者数の小幅減少は、労働市場の動向と従業員の意向を理解するための重要な指標となる。人事コンサルタントはこれらの情報を基に、企業が効果的な人材獲得と保持策を展開し、組織の強化と成長を支援するための戦略的なアドバイスを提供する役割を担っている。
(2022年2月1日発表)
2021年11月分
Summary
11月の非農業部門の求人件数(季節調整済み)は1056万件に減少し、市場予想を下回った。前月は1109万件に上方修正された。
自発的離職者数が450万人となり、過去最高を記録した。離職率は3%に上昇し、統計開始(2000年)以来の過去最高に並んだ。
娯楽・ホスピタリティー業だけで過去最多の100万人が離職するなど自発的離職者数はこれまでになく多く、雇用者が人材引き留めに苦慮していることを示した。一方で雇用された労働者は670万人に増加し、雇用者が欠員の補充で進展を見せたことを示した。レイオフと解雇は前月並みだった。
求人件数は宿泊・食品サービス、建設、非耐久財製造で減少した。地域別では南部と中西部での減少が顕著だった。
Comment
11月は求人件数の減少と過去最高の自発的離職者数が報告され、経済の回復基調の中で労働市場が不安定化している。人事コンサルティングの観点からは、娯楽・ホスピタリティー業の人材引き留めと補充に特化した戦略が重要である。企業は人材獲得と定着を支援するために、給与や福利厚生の見直し、柔軟な勤務体系の提供を強化し、雇用条件の改善を図る必要がある。
(2022年1月4日発表)
2021年10月分
Summary
10月の非農業部門の求人件数(季節調整済み)は1103万3000件となり、前月から43万1000件増加した。求人件数は7月に次ぐ過去2番目の高水準となった。
求人率は前月から0.2ポイント上昇の6.9%となり、こちらも7月に次ぐ過去2番目の水準となった。
10月は新型コロナウイルスの新規感染者数が減ったため、宿泊・飲食サービスの求人件数が25万4000件増加し、非耐久財製造業が4万5000件増加、教育サービスが4万2000件増加した。
ただ、企業が実際に採用できた数は646万4000人となり、前月から8万2000人減少した。採用率は4.4%で前月から横ばいだった。
一方、自発的離職者数は415万7000人となり、過去最高だった前月からは20万5000人減少したものの、依然高水準を維持している。
Comment
求人件数は7月に次ぐ過去2番目の多さで、5か月連続で1000万件を超えた。一方、採用数は減っており、求人数と採用数の差は過去最高に達し、雇用のミスマッチが広がっていることを示した。人事コンサルタントの立場からはこのミスマッチを解消して採用をスムーズに進めるために必要な助言や工夫をタイムリーに顧客に提供することが必要になる。
(2021年12月8日発表)
2021年9月分
Summary
9月の非農業部門の自発的離職者数(季節調整済み)は前月比16万4000人増加して443万4000人となり、過去最高を更新した。
自発的離職率も3.0%となり、過去最高を更新した。自発的離職の増加は広範囲に及んだ。ホテルや飲食店、娯楽施設を含む「レジャー・ホスピタリティー」分野で98万7000人が離職し、自発的離職率が6.4%に達したほか、「小売業」が68万5000人(同4.4%)、「医療ケア」が58万9000人(同2.9%)など、対面勤務で賃金が低い分野で離職が著しかった。しかし「専門・ビジネスサービス」も70万6000人(同3.3%)と高水準だった。
一方、求人件数は、前月比19万1000件減少して1043万8000件だった。2か月連続の減少となったが、1000万件台を4か月連続で超えており、需要は依然として極めて強い状態が続いている。
分野別では、経済再開後の求人増をけん引していた「レジャー・ホスピタリティー」と「小売業」の求人が減少した。夏場のコロナ感染再拡大で一時的に労働需要が減少した可能性がある。一方、物流の目詰まり解消と年末商戦に備えて人手確保に動いている「輸送・倉庫・公益」は求人が増加した。
採用数は645万9000人となり、前月から3万8000人減少したが、採用率は4.4%で前月と変わらなかった。
Comment
低技能・低賃金の分野は、もともと自発的離職率が高いが、夏以降、新型コロナウイルスの感染再拡大と賃金上昇を背景に一段と高まっている。また、人事コンサルタントの視点からは、求人数と採用数の差は、前月から15万人ほど縮まったが依然として400万人近くあり、深刻な労働需給のミスマッチが続いていると見られる。
(2021年11月12日発表)
2021年8月分
Summary
8月の米求人件数は1044万件に減少し、市場予想を下回った。前月は1110万件に上方修正された。
製造業者から飲食店まで幅広い分野の事業者が人員確保に取り組んでいるが、根強い新型コロナ懸念や学校再開後の不安定な状況、高い貯蓄水準を背景に、労働参加率は低いままとなっている。9月の雇用統計によれば労働参加率は低下して61.6%だった。
8月は失業者1人当たりの求人件数が1.2件だった。ヘルスケア、宿泊・フードサービス、州・自治体の教育関連で求人数が減少した。
雇用された労働者は全体で630万人に減少した。宿泊・フードサービスや教育の分野での落ち込みを反映した。採用率は4.3%に低下した。
レイオフと解雇は減少したが、離職率は過去最高の2.9%となった。
Comment
米国の求人件数は市場予想を下回り、1044万件に減少した。これは、新型コロナウイルスの懸念や学校の再開後の不安定な状況、高い貯蓄水準が労働参加率に影響を与えていることを示している。このような環境下では、人事コンサルタントは企業が適切な人材を確保し、効率的に管理するための戦略的な人事コンサルティングの提供が不可欠である。離職率が過去最高の2.9%に達していることは、労働者の動向や意向を理解し、それに応じた対策を講じることが求められている。
(2021年10月12日発表)
2021年7月分
Summary
7月の米国の求人件数は1090万件に増加し、市場予想を上回った。前月は1020万件に上方修正された。求人件数はヘルスケア・社会支援のほか、金融・保険、宿泊・食品サービスの分野で大きく増加した。
7月は全体の求人件数が雇用された労働者を430万件上回り、その差は2000年の統計開始以来の最大となった。
自発的離職者は400万人に増加した。離職率は過去最高付近の2.7%で前月と同率となった。
雇用された労働者は全体で670万人に減少した。小売りや製造業などでの減少が目立った。採用率は4.5%に低下した。
Comment
人事コンサルタントとしては、企業が人材確保の競争に勝つための戦略的アプローチが重要である。求人件数が雇用者数を大幅に上回っていることは、労働市場の逼迫を示しており、特に高需要分野での人材獲得が難しいことを意味する。自発的離職者が400万人に増加し、離職率が過去最高付近の2.7%であることは、労働者がより良い条件を求めて積極的に転職している現状を反映している。人事コンサルティングの視点から、企業は競争力のある賃金設定、柔軟な労働環境、キャリア成長の機会を提供し、従業員の定着を図るべきである。
(2021年9月8日発表)
2021年6月分
Summary
6月の米国の求人件数は1010万件に増加し、市場予想を大幅に上回り、過去最高を記録した。前月は950万件に上方修正された。
今後数か月には連邦政府の失業保険給付上乗せの終了や学校の再開を背景に、労働力の供給が増える見通しとなっている。
6月は全体の求人件数が雇用された労働者を340万件上回った。前月はその差が2000年の統計開始以来の最大だった。自発的離職者は390万人に増加し、離職率は2.7%に上昇した。
求人件数は幅広い業種で増えたが、専門職・ビジネスサービスや小売り、宿泊・食品サービスでの増加が特に顕著だった。
雇用された労働者は全体で670万人に増加し、採用率は4.6%に上昇した。採用の増加は小売りや州・自治体教育機関、耐久財製造で目立った。レイオフと解雇は前月から横ばいだった。
Comment
旅行や外食といったサービスへの需要の急回復で、雇用主は幅広い職種の欠員を埋めようと奔走しているが、人材の供給は今もブレーキが掛かった状態にある。育児や根強い健康面の懸念、手厚い失業保険給付などを背景に、一部は労働力人口から外れたままとなっている。人事コンサルタントには、経済活動が盛り返す中で雇用主が十分な人手の確保について苦戦している状況を好転させる打ち手が求められる。
(2021年8月9日発表)
2021年5月分
Summary
5月の米国の求人件数は920万9000件に増加した。前月は919万3000件に下方修正された。
労働市場の心理を占う上で参考になる自発的離職者は360万40000人に減少したが、依然高い水準にとどまった。離職率は2.5%に低下した。離職はほぼ全業種で減少した一方、外食やホテルではわずかに増加した。
雇用された労働者は全体で592万7000人となり、前月の601万2000人から減少した。建設業や政府機関などで減少が目立った。
全体の求人件数は雇用された労働者を328万件上回り、その差は2000年の統計開始以来の最大となった。
Comment
米国求人件数は920万9000件に増加し、雇用市場の需要が高いことを示している。自発的離職者は減少したが、依然として高水準を維持しており、離職率は2.5%に低下した。雇用された労働者数は減少し、求人件数との差が統計開始以来最大となった。人事コンサルタントとしては、この求人増加と離職者数の動向を踏まえ、効果的な人材確保戦略と定着率向上の施策が急務である。特に需要が高い業界では、競争力のある給与と福利厚生の見直しが必要である。
(2021年7月7日発表)
2021年4月分
Summary
4月の米求人件数は930万件に増加して市場予想を大幅に上回り、過去最高を更新した。前月は830万件(速報値812万件)に上方修正された。
求人件数の増加は広範な業界・業種に及んだ。自発的離職者は400万人に増加し、離職率は2.7%に上昇した。別の働き口が見つかるとの確信が労働者の間で強まっていることを示した。
求人件数は雇用された労働者を320万件上回り、その差は過去最大となった。人材確保はここ数か月で一段と大きな課題となっており、半数に上る州は人々に職探しを促す取り組みとして、連邦政府の失業保険給付上乗せを早期に打ち切る計画を示している。一方で雇用主は、人材を獲得するためにボーナスの支給や賃上げ、健康保険など福利厚生の充実に動いている。
コロナ禍で最も打撃が大きかった宿泊・食品サービスでは、求人が34万9000件増加して過去最大の伸びとなり、4月の増加分の35%を占めた。同業界で雇用された労働者は23万2000人増加した。製造業では求人件数が過去最高となったが、雇用された労働者の数は減少した。小売り、卸売りなども過去最高の求人件数を記録した。
Comment
4月の米求人件数は930万件と過去最高を更新し、広範な業界で求人が増加したことが示されている。一方、自発的離職者数も増加し、労働者の間での転職意欲が高まっている。このような労働市場の状況下で、人事コンサルタントとして企業に提案すべきは、人材確保に向けた積極的な対策の導入である。特に、宿泊・食品サービス業界では求人が大幅に増加しているが、競争が激化しているため、採用戦略の強化が急務である。企業は、ボーナス支給や賃上げ、福利厚生の充実を通じて、労働者の魅力的な雇用条件を提供し、他社との差別化を図るべきである。また、製造業や小売り、卸売り業界でも求人件数が過去最高を記録している一方で、雇用が追いついていない現状が見受けられる。これらの分野では、効果的な採用プロセスの改善と、潜在的な労働者に対する積極的なリーチアウトが必要である。
(2021年6月8日発表)
2021年3月分
Summary
3月の求人件数は前月比59万7000件増の812万3000件となり、2000年12月の統計開始以降で最高を記録した。
求人件数の内訳は、宿泊・飲食サービスが18万5000件増加、州・地方政府の教育分野で15万5000件増加、芸術・娯楽・レクリエーションは8万1000人増加した。このほか製造業、貿易、運輸、公益、金融でも増加したが、医療や社会支援では減少した。
3月の求人件数1件に対する失業者の割合は1.2人だった。コロナ禍以前は0.82人だった。
求人率は2月の5.0%から5.3%に上昇した。
採用件数は600万件となり、前月の580万件から増加した。州・地方政府の教育分野が増加したほか、教育サービス、鉱業、木材でも増加した。採用率は4.2%と2月の4.0%から上昇した。
レイオフ件数は150万件となり、前月の170万件から減少し過去最低となった。レイオフ率は1.0%となり、2月の1.2%から低下した。自発的な離職件数は2月の340万件から350万件に増加した。
Comment
この状況を踏まえ、人事コンサルティングにおいては、企業に対し次のような戦略を提案すべきである。まず、急増する求人件数に対応するため、効率的な採用プロセスの構築が急務である。特に、デジタル採用ツールの導入や、リモート面接の普及を推進することで、迅速かつ効果的な人材確保が可能となる。また、医療や社会支援分野での求人減少に対応するため、特定分野へのリソース集中と専門人材の育成が必要である。自発的離職件数の増加に対しては、従業員エンゲージメントの向上とリテンション施策の強化が求められる。具体的には、柔軟な働き方の提供、キャリアパスの明確化、従業員のウェルビーイング向上を図るプログラムの導入が効果的である。
(2021年5月11日発表)
2021年2月分
Summary
2月の非農業部門の求人件数(季節調整済み)は736万7000件となり、前月から26万8000件増加した。2か月連続の増加となり、2019年1月以来2年1か月ぶりの高水準となった。
求人率は4.9%となり、前月から0.2ポイント上昇した。分野別では、医療ケアの23万3000件増加に加え、レストランなどの営業再開を受け、宿泊・飲食サービスが10万4000件増加し、芸術・娯楽・レクリエーションも5万6000件増加した。
採用数も573万8000件となり、前月から27万3000件増加した。宿泊・飲食サービスが22万件増加した。採用率は4.0%となり、0.2ポイント上昇した。
解雇者数は177万5000人となり、前月から5万1000人増加したが、解雇率は1.2%で変化がなかった。自発的離職者数は335万7000人となり、5万1000人増加した。
Comment
人事コンサルタントとして、企業は急増する求人に対して迅速かつ効果的な採用戦略を構築する必要がある。また、採用率も上昇しているが、解雇者数と自発的離職者数も増加していることから、従業員の満足度や職場環境の改善が不可欠である。特に宿泊・飲食サービス分野では、採用と従業員保持のために柔軟な勤務体制やキャリア開発プログラムの導入が求められる。さらに、人事コンサルティングのテーマとして、経済の変動に対応するためのリスク管理と持続可能な労働力戦略の策定が重要である。これにより、企業は変動する市場環境の中で競争力を維持し、安定した成長を実現することが可能となるであろう。
(2021年4月6日発表)
2021年1月分
Summary
非農業部門の求人件数(季節調整済み)は、691万7000件となり、前月から16万5000件増加した。
求人率は4.6%となり、前月から0.1ポイント上昇した。分野別では、学校再開に併せて州・自治体の教育分野(5万6000件増)、教育サービス分野(2万1000件増)などの求人が増加したほか、鉱業・林業(1万件増)も回復した。
採用数は530万1000件となり、前月から11万件減少した。小売業(8万6000件減)や製造業(4万7000件減)などの減少が目立った。一方、芸術・娯楽・レクリエーション(5万9000件増)は上向いた。採用率は3.7%で前月から0.1ポイント低下した。
解雇者数は前月から13万6000人減少して168万7000人となり、解雇率は1.2%だった。自発的離職者数は9万6000人減少して331万1000人となり、自発的離職率は2.3%となった。
Comment
1月の非農業部門の求人件数は691万7000件と前月から増加し、特に教育分野や鉱業・林業での回復が目立った。しかし、採用数は減少し、小売業や製造業での採用減が顕著である。このような状況下で、人事コンサルタントとして企業に提案すべきは、採用プロセスの改善と、特定分野へのリソース集中である。特に、学校再開に伴う教育分野での求人増加を背景に、必要な人材を迅速に確保するための効果的な採用戦略の導入が求められる。一方で、採用が減少した小売業や製造業では、人材の確保と定着を図るため、働き方の柔軟性を高める取り組みが必要である。また、自発的離職率が低下していることから、従業員のモチベーションを維持し、定着率を高める施策が重要である。
(2021年3月11日発表)