毎月勤労統計

厚生労働省が毎月発表している賃金、労働時間及び雇用の変動に関する雇用指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。

2025年1月分

Summary

1月の実質賃金は前年比1.8%減なりと3か月ぶりに減少に転じた。名目賃金の伸びを物価の上昇が上回ったためで、前月の0.3%増から一転してマイナスとなった。

労働者1人当たりの平均名目賃金を示す現金給与総額は、同2.8%増の29万5505円となり、前月の4.4%増から伸びは縮小したものの、37か月連続のプラスとなった。特にパートタイム労働者の上昇率(4.5%増)が高かった。

一方で、消費者物価指数は同4.7%と前月の4.2%から上昇率が拡大し、2023年1月(5.1%上昇)以来の高さとなった。キャベツなど生鮮食料品の価格高騰やコメ価格の高止まり、電機・ガス料金激変緩和措置の終了による前年比の反動が出た。

現金給与総額のうち、賃上げのベアを反映する所定内給与(基本給)は3.1%増で、32年3か月ぶりの高い伸び率を記録した。

総実労働時間 は128.6時間で前年同月比0.1%減となった。所定内労働時間は前年同月比で変化はなかったが、所定外労働時間が前年同月比で1.0%減少した。

Comment

1月の実質賃金は前年比1.8%減と3か月ぶりに減少し、名目賃金の増加を物価上昇が上回る状況が続いている。特に、消費者物価指数が4.7%上昇し、食品やエネルギー価格の影響が顕著に表れている。名目賃金は2.8%増と引き続き上昇しているものの、伸び率は前月より縮小し、実質的な購買力の低下が懸念される。 人事コンサルタントとしては、企業に対し、賃金戦略の見直しとともに、従業員の生活支援策を強化する必要がある。基本給(所定内給与)は3.1%増と32年ぶりの高い伸びを示しており、持続的な賃上げを実現するためには、生産性向上を伴う業務改革や報酬体系の最適化が不可欠である。コンサルティングを通じ、企業が持続的な成長を実現できるよう、総合的な報酬・労務管理戦略を支援していくことが求められる。

(2025年3月10日発表)

2024年12月分

Summary

12月の実質賃金は前年同月比0.6%の上昇となり、2か月連続のプラスとなった。規模30人以上の事業所では181.0で0.9%の増加を記録し、4か月連続での上昇となった。しかし、消費者物価指数は前年同月比4.2%上昇しており、依然としてインフレの影響が続いている。

名目賃金は引き続き増加傾向にあり、現金給与総額は619,580円で前年同月比4.8%増加し、36か月連続で上昇している。規模30人以上の事業所では743,195円で、5.1%の増加となり、27年11か月ぶりの高い伸びを記録した。きまって支給される給与は285,662円で2.5%増加し、38か月連続でのプラスとなった。所定内給与は265,303円で2.7%増加し、32年1か月ぶりの高水準となった。

一般労働者の現金給与総額は838,606円で4.9%増加し、45か月連続の上昇となった。所定内給与も336,077円で2.6%増加し、47か月連続でプラスとなっている。一方、パートタイム労働者の時間当たり給与(所定内給与)は1,380円で4.9%増加し、42か月連続で上昇している。

Comment

12月の実質賃金は2か月連続で上昇し、名目賃金も力強い伸びを示している。特に、所定内給与が32年ぶりの高水準となり、パートタイム労働者の時間当たり給与も4.9%増加するなど、賃上げの動きは広範囲に及んでいる。しかし、消費者物価指数が4.2%上昇しており、依然としてインフレの影響が賃金の実質的な購買力を圧迫している点には注意が必要である。人事コンサルタントとしては、企業に対し、単なる賃上げにとどまらず、従業員の実質的な生活向上につながる報酬制度の見直しを提案すべきである。例えば、物価上昇を考慮した賞与・インセンティブの設計や、生活コストを抑える福利厚生の充実が求められる。また、パートタイム労働者の賃金上昇が続いていることから、多様な人材の活用戦略やキャリアパスの明確化を通じて、定着率向上を図る施策も重要である。人事コンサルティングを通じ、企業が持続的に競争力を強化できるような賃金・雇用戦略の策定を支援することが不可欠である。

(2025年2月5日発表)

2024年11月分

Summary

1月の名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金が前年同月より0.3%減少した。物価上昇に賃金の伸びが追いつかず4か月連続のマイナスとなった。

名目賃金を示す現金給与総額は30万5832円で3.0%増えたものの、消費者物価指数の伸び率が3.4%と上回った。11月はコメや野菜など食品の価格上昇が目立ったほか、政府による電気・ガス代の補助が縮小したことが影響した。

実質賃金は2022年4月以降、夏季賞与の押し上げ効果があった2024年6月と7月を除いてマイナスが続いている。 現金給与総額のうち基本給を中心とする「所定内給与」は2.7%の増加と32年ぶりの高い伸びだった。企業の賃上げや最低賃金の引き上げの効果が出ている。一部企業では冬季賞与の支払いが始まったとみられ「特別に支払われた給与」も7.9%増加した。

働き方ごとに見た現金給与総額は、正社員を中心とするフルタイム労働者が3.0%増の39万2121円、パートタイム労働者が4.4%増の11万2109円だった。パートタイム労働者の時給換算した所定内給与は4.7%増の1371円だった。

Comment

実質賃金が複数月にわたりマイナス推移している背景には、名目賃金の上昇が物価上昇率に追いつけていない構造的課題があるということができる。所定内給与の伸び率が高水準に達したものの、消費者物価の上昇圧力が依然として強く、労働者の実質的な購買力が低下していることが懸念材料である。こうした状況下で企業が競争力を維持するには、人事コンサルティングを通じた中長期的な賃金戦略の見直しと、時短勤務や柔軟な報酬制度など多様な働き方を組み合わせた施策が不可欠である。人事コンサルタントは、企業ごとの財務状況や業界特性を踏まえて総合的に報酬を設計し、インフレ環境下における優秀な人材確保および従業員エンゲージメント向上を支援すべきである。

(2025年1月9日発表)

2024年10月分

Summary

10月の名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で横ばいだった。電気・ガス代の補助再開で物価の伸びが鈍化した上、最低賃金の引き上げによる賃上げが広がり3か月ぶりにマイナスから脱却した。

10月の消費者物価指数の伸び率は2.6%だった。名目賃金を示す現金給与総額は29万3401円で、2.6%増だった。実質賃金は5月まで26か月連続でマイナスが続いた後、6〜7月は賞与の押し上げによりプラスに転じた。賞与の効果が薄れた8月からは再びマイナスになっていた。

10月の現金給与総額の内訳を見ると、基本給を中心とする「所定内給与」は2.7%増加し、31年11か月ぶりの高い伸びだった。企業の賃上げが進んでいるほか、10月以降に最低賃金が上がった効果が出た。最低賃金の引き上げ幅は全国平均で51円と過去最大だった。賞与など「特別に支払われた給与」は1.7%のマイナスだった。

働き方ごとに見た現金給与総額は、正社員を中心とするフルタイム労働者が2.6%増の37万4654円、パートタイム労働者が3.3%増の10万9806円だった。パートタイム労働者について時給換算した所定内給与は4.2%増の1356円だった。

Comment

10月の実質賃金が前年同月比で横ばいに転じたのは、最低賃金の過去最大の引き上げと物価上昇の鈍化がその要因となっている。一方で、賞与の減少や総実労働時間の短縮が、名目賃金の上昇を実質的な購買力向上につなげることを妨げている。基本給を中心とした所定内給与の伸びが堅調なことは賃上げの成果であるが、賞与への依存が薄れた中で、引き続き労働環境の改善と収入の安定化が求められる。人事コンサルティングにおいては、最低賃金引き上げに伴うコスト増に対応しながら、従業員のモチベーション維持と企業競争力の両立を支援する施策が必要である。特に、正社員・パートタイム労働者それぞれのニーズに応じた柔軟な給与体系の見直しや、パートタイム労働者の時給向上を活かした職場定着施策が有効である。

(2024年12月6日発表)

2024年9月分

Summary

9月の実質賃金は前年比0.1%減と2か月連続でマイナスとなった。8月と比べて物価上昇率が低下し、賃上げ効果で所定内給与の伸びが加速したものの、残業時間の減少で所定外給与がマイナスに転じたのが響いた。

労働者1人当たりの平均名目賃金を示す現金給与総額は前年比2.8%増の29万2551円となり、33か月連続でプラスとなった。伸び率は8月と横ばいだった。

春闘・賃上げを反映して、所定内給与が2.6%増の26万4194円、ボーナスなど特別に支払われた給与が16.1%増の9193円と好調だった。消費者物価指数も8月の3.5%から9月は2.9%に低下した。

一方、所定外給与は8月の1.7%増から9月は0.4%減の1万9164円に低下した。カレンダー要因による残業時間の減少が主な理由と厚労省ではみている。

Comment

9月の実質賃金が前年比0.1%減少した背景には、物価上昇が和らいだものの、所定外給与(残業代など)の減少が影響している。賃上げやボーナスの増加により、名目賃金は堅調に推移しているが、残業時間の減少が総賃金に響き、実質的な購買力の回復には至っていない。このような状況下では、従業員の働きがいを高めるための非金銭的な報酬施策に関する人事コンサルティングが求められる。特に、所定外給与に依存しない安定した収入確保を目的に、基本給のさらなる底上げや業績連動型報酬の導入が効果的である。また、残業時間削減を推進しつつ、生産性向上や業務効率化を図る支援を通じ、労働環境の改善を企業に提案すべきである。これにより、長期的な雇用安定と従業員の満足度向上を図る戦略が重要である。

(2024年11月7日発表)

2024年8月分

Summary

8月の名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月から0.6%減少し、3か月ぶりにマイナスに転じた。賞与による伸びの効果が前月より縮まったほか、物価の上昇幅が拡大したことが響いた。

実質賃金は5月まで過去最長の26カ月連続マイナスを記録した。賞与が給与総額に占める割合が大きい6〜7月は、賞与の伸びが好調だったことからプラスを記録したが、8月はその影響が一巡したことから再びマイナスとなった。

名目賃金を示す1人あたりの現金給与総額は3.0%増の29万6588円となり、32か月連続で増加した。現金給与総額のうち、賞与などの「特別に支払われた給与」は2.7%増の1万2951円となり、前月の伸び幅(6.6%)より縮小した。

現金給与総額の内訳をみると、基本給を中心とする「所定内給与」が3.0%増の26万4038円で、31年10か月ぶりの高い伸び率だった。

Comment

8月の実質賃金が前年同月比0.6%減少し、再びマイナスに転じたことは、物価上昇の圧力が賃金の購買力を削いでいる現状を示している。賞与の伸びが一巡したことや、残業時間の減少も影響し、総労働時間の減少幅が実質賃金の減少を上回っている。しかし、時間あたりの実質賃金がプラスとなっているのは、春闘の賃上げが効いているとみられる。人事コンサルティングにおいては、基本給の堅実な上昇が続く中で、企業に対して持続的な賃金改善と生産性向上策のバランスを取る提案が求められる。また、インフレ環境下での従業員の生活支援策や、賞与の支給基準の見直しも重要なテーマとなると考えられる。

(2024年10月8日発表)

2024年7月分

Summary

7月の実質賃金は前年同月から0.4%増加した。プラスは2か月連続となるが、7月の実質賃金のプラス幅は前月から0.7ポイント縮小した。夏の賞与など「特別に支払われた給与」の伸び率が大きかったことが寄与した。

名目賃金を示す1人あたりの現金給与総額は3.6%増の40万3490円となり、2年7か月連続で増加した。伸び率は7月の消費者物価の上昇率(3.2%、持ち家の家賃相当分を除く総合指数)を上回った。現金給与総額のうち特別に支払われた給与は6.2%多い11万8807円だった。

現金給与総額の内訳では、基本給を中心とする「所定内給与」が前年同月比2.7%増の26万5093円となった。ベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた賃上げ率が平均5%を超えた24年の春季労使交渉(春闘)の結果が反映されて伸び率は31年8か月ぶりの大きさとなった。所定内給与に残業代や休日手当などを加えた「きまって支給する給与」は2.5%増の28万4683円だった。

Comment

7月の実質賃金は前年同月比で0.4%増加し、名目賃金も3.6%の伸びを示したが、物価上昇が依然として大きな懸念材料である。特に、夏の賞与が実質賃金増加の主因であり、賞与の影響が減少する8月以降は、物価高が続く限り実質賃金の改善が難しい状況が予測される。人事コンサルティングにおいては、賃金水準だけでなく、従業員の購買力や生活コストを考慮した総合的な報酬戦略の策定が必要である。また、ベースアップの効果が明確に現れている今、企業は賃金体系の見直しとともに、社員のモチベーションを維持するために非金銭的報酬(ワークライフバランスの改善やキャリア開発機会)の強化も検討すべきである。

(2024年9月5日発表)

2024年6月分

Summary

6月の名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月より1.1%増加した。賞与など「特別に支払われた給与」が大きく伸びたことにより、2年3か月ぶりに実質賃金の増減率がプラスに転じた。

名目賃金を示す1人あたりの現金給与総額は4.5%増の49万8884円だった。増加は2年6か月連続となる。6月の消費者物価指数は3.3%上昇したが、名目賃金がそれを上回って伸びた。

現金給与総額の内訳をみると、夏の賞与などを含む「特別に支払われた給与」が7.6%増の21万4542円と大きく伸びた。基本給を示す所定内給与は2.3%増の26万4859円だった。増加は2年8か月連続で、伸び率は29年8か月ぶりの高い水準だった。所定内給与の高い伸びは春闘を反映したものだが、6月の基本給の上昇率は物価上昇になお追いついていない。

Comment

6月の実質賃金が2年3か月ぶりに増加へ転じたのは、名目賃金の上昇が物価上昇を上回ったことによる。特に「特別に支払われた給与」が大きく貢献しているが、所定内給与の上昇が物価上昇に追いついていない点が重要な課題である。企業においては、持続可能な賃金上昇とインフレ対策を両立させることが求められる。人事コンサルタントとしては、企業に給与構造の見直しやインフレ連動型の賃金制度の導入などを提案し、従業員の購買力の維持・向上を促す必要がある。

(2024年8月6日発表)

2024年5月分

Summary

5月の基本給にあたる所定内給与は前年同月比2.5%増加した。賃上げが進んだことで、伸び率は31年4か月ぶりの高さだった。実質賃金は過去最長の26か月連続マイナスだったが、下落幅は縮まりつつある。

5月の基本給は26万3539円だった。伸び率は4月から0.7ポイント上昇し、1993年1月以来の高水準となった。基本給に各種手当などを加えた現金給与総額(名目賃金)は29万7151円で前年同月比1.9%増加した。春期労使交渉(春闘)では2023年の賃上げ率が3%台、24年は5%台と続き、賃上げの動きが反映されつつある。パートタイム労働者の時間当たり給与は1328円で前年同月比4.0%増となった。2023年6月以降、前年同月比の増加率は常に3%を超えている。

物価変動を考慮した実質賃金は1.4%減だった。物価上昇に給与の伸びが追いつかない状況が続くが、マイナス幅は縮小しつつある。就業形態別の現金給与総額は、正社員ら一般労働者が2.1%増の37万8803円、パートタイム労働者が3.2%増の10万8511円だった。

Comment

5月のデータは、賃上げの進展が見られる一方で、物価上昇の影響が依然として大きいことを示している。基本給やパートタイム労働者の時給が高水準を維持し、名目賃金は上昇しているものの、実質賃金は26か月連続でマイナスであり、企業にとっては従業員の購買力維持が課題である。人事コンサルティングの視点からは、企業はインフレの影響を考慮し、基本給のみならず手当や福利厚生を拡充することで、実質的な報酬水準を上げる工夫が必要である。また、パートタイム労働者の待遇改善に引き続き注力し、柔軟な労働環境の整備を進めることで、多様な人材の定着と活用を促進することが重要である。

(2024年6月5日発表)

2024年4月分

Summary

4月の基本給にあたる所定内給与は前年同月比2.3%増えた。企業の賃上げが広がり、伸び率は29年6か月ぶりの高水準となった。実質賃金は過去最長の25か月連続マイナスだった。

4月の基本給は26万4503円だった。伸び率は3月から0.6ポイント上昇し、1994年10月以来の高水準となった。

基本給に各種手当などを加えた現金給与総額(名目賃金)は29万6884円と2.1%増えた。伸び率は3月から1.1ポイント拡大し、10か月ぶりの高水準だった。

実質賃金は0.7%減となった。3月の2.1%減から改善したものの、依然マイナスが続いた。算出時の指標となる持ち家の家賃換算分を除く消費者物価指数は2.9%上昇だった。物価の高騰に賃金上昇が追い付かない状況が続いている。

Comment

基本給の2.3%増加は、企業の積極的な賃上げ策と経済の底堅さを示しているが、実質賃金の25カ月連続マイナスは、物価上昇が賃金増を上回る厳しい現実を浮き彫りにしている。特に、光熱費やガソリン価格の上昇がさらなる負担となることが予想される。人事コンサルタントとしては、企業が持続可能な成長を図るために、賃金だけではなく、生産性向上や福利厚生についてのコンサルティングを強化する必要がありそうだ。

(2024年6月5日発表)

2024年3月分

Summary

3月の1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比2.5%減だった。実質賃金の減少幅は2月のマイナス1.8%から拡大し、24か月連続のマイナスはリーマン・ショック前後を超えて、比較可能な1991年以降の記録で過去最長を更新した。

名目賃金を示す1人あたりの現金給与総額は増加が続き、3月は前年同月比0.6%増の30万1193円だった。伸び幅は2月から0.8ポイント低下した。基本給にあたる所定内給与は1.7%増、残業代など所定外給与は1.5%減だった。賞与など特別に支払われた給与は9.4%減だった。

1人当たりの総実労働時間は2.7%減の136.2時間だった。一般労働者は2.6%減の161.2時間、パートタイム労働者は2.0%減の79.7時間だった。

現金給与総額を産業別で見ると、金融・保険業、生活関連サービス業、情報通信業の伸びが目立った半面、飲食サービス業等が前年同月比で大きく減少した。

Comment

賃金の伸びが物価上昇に追いつかない状況が続いている。働き方改革の影響により、所定外給与や労働時間の減少が賃金伸びを抑えた一方、産業ごとの賃金格差も明確になった。人事コンサルティングでは、柔軟な労働時間管理やリスキリングプログラムの導入など、生産性を高める人事戦略を強化する必要がある。

(2024年5月9日発表)

2024年2月分

Summary

2月の1人あたりの賃金は物価を考慮した実質で前年同月から1.3%減少した。実質賃金の減少率は1月の1.1%から拡大した。23か月連続のマイナスはリーマン・ショック前後の2007年9月〜09年7月以来で、比較可能な1991年以降の過去最長に並んだ。

名目賃金を示す1人あたりの現金給与総額は上昇が続き、2月は1.8%増の28万2265円なり、26か月連続でプラスとなった。実質賃金を算出する際の指標となる物価の上昇率が1月から0.8ポイント拡大し、賃金を目減りさせた。現金給与総額のうち、基本給に当たる所定内給与は2.2%増加した。

就業形態別では正社員ら一般労働者が2%増の36万616円、パートタイム労働者が3.1%増の10万5268円だった。

Comment

2月の実質賃金が前年同月比1.3%減少し、23か月連続のマイナスとなった。この状況下で、人事コンサルタントとして顧客企業に対し、物価上昇の影響を考慮して基本給の上昇をベースとした賃金の見直しを勧めているが、特に中小企業を取り巻く環境には厳しいものがあり、そう簡単に実現できる話しではない。

(2024年4月8日発表)

2024年1月分

Summary

1月の実質で前年同月比0.6%減少した。これでマイナスは22か月連続となった。

名目賃金を示す1人あたりの現金給与総額は前年同月比2%増の28万2270円だった。2022年1月から25か月連続のプラスとなっている。現金給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は1.4%増となり、9か月連続1%台の伸びになった。

就業形態別で見ると、正社員ら一般労働者は2.3%増の36万9239円、パートタイム労働者は2.2%増の10万1358円だった。業種別では電気・ガス業が9.6%増と高い伸びを示したほか、情報通信業が4.8%増、金融業・保険業が4.7%増だった。

Comment

1月の実質賃金は前年同月比0.6%減となり、22か月連続のマイナスが続いている。名目賃金は上昇しているものの、物価上昇の影響で実質的な購買力は依然として低下傾向にある。この状況は、企業の人材確保戦略に影響を及ぼし、給与水準のさらなる引き上げや福利厚生の充実が求められることを示唆している。人事コンサルタントとしては、企業に対し、単なる給与の引き上げだけでなく、インセンティブ制度の見直しやキャリアパスの明確化を含めた総合的な報酬戦略の策定を提案すべきである。また、成長産業である情報通信業や金融・保険業などの給与上昇傾向を踏まえ、異業種間の人材流動を見据えた人材確保策も重要となる。人事コンサルティングを通じ、企業の競争力強化につながる持続可能な人材戦略の実現を支援することが不可欠である。

(2024年3月7日発表)