2025年4月分
Summary
4月の名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金が前年同月比1.8%減少した。物価上昇に賃金の伸びが追いつかず、4か月連続のマイナスとなった。
名目賃金を示す1人あたりの現金給与総額は30万2453円となり、2.3%増加した。基本給にあたる所定内給与は2.2%のプラスだった。所定内給与の伸びは3月(確報)から0.8ポイント拡大し3か月ぶりに2%台を回復した。
実質賃金の計算に使う消費者物価指数(持ち家の家賃換算分を除く総合)の上昇率は4.1%だった。名目賃金の伸びを上回り、結果として実質賃金が下がった。
4月はコメ類が前年同月比98.4%上昇し、過去最大の伸びとなった。アルコール大手各社が4月に酒類の価格を引き上げ、ビールが4.6%、ビール風アルコール飲料が5.6%上昇したことも影響した。
総実労働時間は1.2%減の139.7時間だった。就業形態別では一般労働者が1.1%減の166.2時間、パートタイム労働者が1.3%減の81.0時間だった。
Comment
4月の名目賃金は2.3%の増加、所定内給与も2.2%増と一定の伸びを見せたものの、消費者物価指数の4.1%上昇に賃金の上昇が追いつかず、実質的な購買力は低下している。コメや酒類など生活必需品・嗜好品の価格上昇が家計を直撃し、消費者心理や労働者の生活満足度に影響を及ぼしている点は深刻である。
人事コンサルタントとしては、企業に対し、物価高騰下での実質的な生活支援を含む報酬制度の見直しを提案すべきである。特に、所定内給与の着実な引き上げに加え、インフレ調整手当や福利厚生の充実を通じた非金銭的報酬の強化が求められる。また、労働時間が減少傾向にある中で、限られた時間で高い生産性を発揮できる職場環境の整備、具体的には業務プロセスの見直しや人材の最適配置も急務である。人事コンサルティングを通じて、企業が物価変動に対応しながら持続可能な人材戦略を構築できるよう支援することが不可欠である。
(2025年6月5日発表)
2025年3月分
Summary
3月の実質賃金は、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で調整した現金給与総額の実質指数は85.7で前年同月比2.1%減、同指数(総合)では87.2で1.5%減となり、いずれも3か月連続でマイナスとなった。
名目賃金(一人平均)は、現金給与総額が30万8,572円で前年同月比2.1%増となり、39か月連続での増加であった。きまって支給する給与は28万2,579円(1.2%増)、所定内給与は26万2,896円(1.3%増)、特別に支払われた給与は2万5,993円(13.9%増)であった。
一般労働者の現金給与総額は39万9,394円(2.7%増)、所定内給与は33万5,505円(1.8%増)だった。パートタイム労働者の時間当たり給与は1,375円で、3.8%の増加となった。
Comment
3月の実質賃金は前年同月比で最大2.1%の減少となり、3か月連続のマイナスを記録した。名目賃金は2.1%増と39か月連続で上昇しているが、依然として物価上昇を上回るには至っておらず、実質的な生活水準の改善にはつながっていない。
人事コンサルタントとしては、企業に対し、物価高を踏まえた総報酬設計の再構築を提案する必要がある。特に、基本給を中心とした所定内給与の底上げによる安定的な生活基盤の支援が求められる。また、一般労働者とパートタイム労働者の賃金増加傾向を的確に捉え、それぞれに応じたインセンティブやキャリア支援施策の導入が求められる。
(2025年5月9日発表)
2025年2月分
Summary
2月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で1.2%減少し、2カ月連続の減少となった。
名目賃金を示す1人あたりの現金給与総額は28万9562円となり、伸び率は3.1%だった。実質賃金の計算に用いる消費者物価指数の上昇率は4.3%となり、名目賃金の伸びを上回った。コメや生鮮食品の値上がりや、政府がガソリン価格の高騰を抑える激変緩和措置を縮小したことが響いた。
現金給与総額のうち基本給にあたる所定内給与は1.6%の増加にとどまり、2024年1月以来、1年1か月ぶりの低水準だった。全体の3割を占めるパート労働者の比率が高まり、伸びを抑えた。
総実労働時間は前年同月比で2.5%減少して131.2時間だった。就業形態別では一般労働者が2.1%減の156.1時間、パートタイム労働者が2.2%減の77.1時間だった。
Comment
2月の実質賃金は前年比1.2%減となり、2か月連続でマイナスを記録した。名目賃金の増加率を物価上昇が上回る状況が続き、特に消費者物価指数が4.3%と高水準を維持する中で、実質的な購買力の低下が顕著となっている。基本給(所定内給与)の伸び率も1.6%にとどまり、パートタイム労働者比率の上昇が全体の賃金伸長を抑制している点は、企業の報酬戦略に再考を促す材料である。人事コンサルタントとしては、企業に対し、実質賃金の維持・向上を目的とした包括的な報酬設計の見直しを提案する必要がある。特に、生活コスト上昇に対応する可変的な報酬制度や、パートを含む全就業形態における処遇改善が求められる。また、実労働時間が減少する中、労働生産性をいかに高めるかが企業の競争力に直結する課題であり、業務プロセスの見直しやDX推進による生産性向上支援が重要である。人事コンサルティングを通じて、物価高時代における持続可能な人材マネジメントの実現を支援することが必要となる。
(2025年4月7日発表)
2025年1月分
Summary
1月の実質賃金は前年比1.8%減なりと3か月ぶりに減少に転じた。名目賃金の伸びを物価の上昇が上回ったためで、前月の0.3%増から一転してマイナスとなった。
労働者1人当たりの平均名目賃金を示す現金給与総額は、同2.8%増の29万5505円となり、前月の4.4%増から伸びは縮小したものの、37か月連続のプラスとなった。特にパートタイム労働者の上昇率(4.5%増)が高かった。
一方で、消費者物価指数は同4.7%と前月の4.2%から上昇率が拡大し、2023年1月(5.1%上昇)以来の高さとなった。キャベツなど生鮮食料品の価格高騰やコメ価格の高止まり、電機・ガス料金激変緩和措置の終了による前年比の反動が出た。
現金給与総額のうち、賃上げのベアを反映する所定内給与(基本給)は3.1%増で、32年3か月ぶりの高い伸び率を記録した。
総実労働時間 は128.6時間で前年同月比0.1%減となった。所定内労働時間は前年同月比で変化はなかったが、所定外労働時間が前年同月比で1.0%減少した。
Comment
1月の実質賃金は前年比1.8%減と3か月ぶりに減少し、名目賃金の増加を物価上昇が上回る状況が続いている。特に、消費者物価指数が4.7%上昇し、食品やエネルギー価格の影響が顕著に表れている。名目賃金は2.8%増と引き続き上昇しているものの、伸び率は前月より縮小し、実質的な購買力の低下が懸念される。 人事コンサルタントとしては、企業に対し、賃金戦略の見直しとともに、従業員の生活支援策の強化を提案する必要がある。基本給(所定内給与)は3.1%増と32年ぶりの高い伸びを示しており、持続的な賃上げを実現するためには、生産性向上を伴う業務改革や報酬体系の最適化が不可欠となる。人事サルティングを通じて、企業が持続的な成長を実現できるよう、総合的な報酬・労務管理戦略を支援していく必要がある。
(2025年3月10日発表)