雇用統計(2023年)
米労働省から毎月発表される米国の雇用統計データに人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
2023年12月分
Summary
12月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比21万6000人の増加となり、市場予想を上回った。前月は17万3000人増(速報値19万9000人増)に下方修正された。
12月の失業率は3.7%となり、前月から横ばいとなった。
平均時給は前月比0.4%の増加となり、市場予想を上回った。
雇用者数が特に増加した部門は医療や政府、建設、娯楽・ホスピタリティーなどだった。雇用が増えた業種と減少した業種との比率を示す雇用DIは上昇した。
労働参加率が0.3ポイント低下の62.5%となり、約3年ぶりの大幅な低下となった。
Comment
12月の非農業部門雇用者数は市場予想を上回り、医療や政府、建設、娯楽・ホスピタリティー部門での雇用増が顕著であった。これは、依然として堅調な労働市場を示しているが、一方で労働参加率の低下は懸念材料である。人事コンサルタントとして、企業には人材確保戦略の強化を提案すべきである。特に、医療やホスピタリティー業界のような人材需要が高まる分野では、柔軟な働き方の導入やスキル向上を支援するプログラムが有効であろう。
(2024年1月5日発表)
2023年11月分
Summary
11月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比19万9000人増となり、市場予想を上回った。
失業率は3.7%(前月3.9%)に低下し、市場予想を上回る低下となった。
全米自動車労組のストライキ終結に伴い製造業分野の雇用が上向いたことに加えて、医療や娯楽・ホスピタリティー、政府部門が全体の伸びをけん引した。
平均時給は前月比0.4%増となり、今年最大の伸び率に並んだ。
労働参加率は62.8%に上昇した。男性の参加率上昇が全体を押し上げた。25歳から54歳までの労働参加率は変わらずだった。
Comment
11月のデータは、人事コンサルティングにおいて、労働市場の回復力と業種ごとの雇用動向を把握し、対応する戦略を策定するための重要な洞察を提供する。人事コンサルタントは、これらのデータを基に、企業が適切な人材を確保し、効果的な人材管理を行うためのアドバイスを提供する必要があり、その役割は経済全体の持続的な成長を支えるものである。
(2023年12月8日発表)
2023年10月分
Summary
10月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比15万人の増加となり、市場予想を下回った。前月は29万7000人増(速報値33万6000人増)に下方修正された。
10月の失業率は3.9%となり、前月から0.1ポイント上昇した。
業種別ではヘルスケアと社会扶助、政府部門が雇用の伸びをけん引したが、その他の業種は低い伸びまたはマイナスとなった。製造業の雇用は3万5000人の減少となった。
平均時給は前月比0.2%上昇した。前年同月比では4.1%上昇となり、2021年半ば以降で最も小幅な伸びとなった。
Comment
10月の雇用統計は、ヘルスケア・社会扶助と政府部門の堅調な伸びが際立つ一方、他の業種での伸びが鈍化し、製造業の減少が見られた。人事コンサルタントは、コンサルティングを通じて企業の採用戦略を柔軟に調整し、成長分野での人材獲得や既存人材の再配置を進める必要がある。
(2023年11月3日発表)
2023年9月分
Summary
9月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比33万6000人の増加となり、市場予想を大幅に上回った。前月は22万7000人増(速報値18万7000人増)に上方修正された。
9月の失業率は3.8%となり、前月から横ばいとなった。
雇用は比較的幅広い分野で伸び、娯楽・ホスピタリティー、ヘルスケア、専門職・ビジネスサービスで特に増えた。政府部門も増加した。
平均時給は前月比0.2%上昇し、前月と同じ伸び率となった。前年同月比では4.2%上昇となり、2021年半ば以来の低い伸びにとどまった。週平均労働時間は34.4時間と前月とから横ばいとなった。
Comment
こうした状況を踏まえて、人事コンサルタントとして、企業には多様な業種における人材需要の高まりを踏まえた採用計画の見直しを提案したい。特に、報酬面での競争力強化が必要であり、柔軟な報酬体系の導入や、職場環境の改善を通じた社員のエンゲージメント向上が求められる。また、従業員の生産性を維持するため、長時間労働の防止や業務効率化の施策も重要である。
(2023年10月6日発表)
2023年8月分
Summary
8月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比18万7000人の増加となり、市場予想を上回った。前月は15万7000人増(速報値18万7000人増)に下方修正された。
8月の失業率は3.8%に上昇し、市場予想3.5%を上回った。
労働参加率は3月以降初めて上昇して62.8%となり、2020年2月以来の高水準になった。
平均時給は前月比0.2%上昇となり、昨年初め以来の低い伸びにとどまった。
8月の雇用者数の増加は、ヘルスケア、娯楽・ホスピタリティー、建設業にけん引され、広範囲に及んだ。製造業の雇用者数は昨年10月以来の大幅増となり、機械や金属加工の雇用増を反映した。
Comment
8月の米国労働省の雇用統計は、市場予想を上回る増加を示し、特にヘルスケア、娯楽・ホスピタリティー、建設業、製造業が成長をけん引した。これらのデータは、人事コンサルタントにとって、業界特有の人材需要に応じた戦略的人事コンサルティングの重要性を強調する。効果的な人材確保と育成プログラムの提案が、企業の持続可能な成長を支援するために求められる。
(2023年9月1日発表)
2023年7月分
Summary
7月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は、前月比18万7000人増加となり、市場予想を下回った。前月は18万5000人増(速報値20万9000人増)に下方修正された。
7月の失業率は3.5%に低下した。
平均時給は前月比で0.4%増加、前年同月比で4.4%増加し、いずれも市場予想を上回った。労働力が不足したコロナ禍の数年を経て労働需給のバランスは改善が続いており、賃金の伸びは減速の兆候を示している。
Comment
企業はこの新しい経済環境に適応するために、戦略的な人事コンサルティングを必要としている。これには、労働力のスキルマッチングの改善、効率的な人材獲得の戦略、および従業員の満足度と保持率を高めるための施策が含まれる。人事コンサルタントは、これらの課題に対応し、企業が持続的な成長を遂げるための具体的なソリューションを提供する責任がある。
(2023年8月4日発表)
2023年6月分
Summary
6月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比20万9000人の増加となり、市場予想を下回って2020年末以来の小幅な増加となった。前月は30万6000人増(速報値33万9000人増)に下方修正された。
6月失業率は3.6%に低下した。
雇用の伸びは医療や政府、建設といった分野で特に目立った。一方、小売りや運輸・倉庫では雇用が減少した。5月と4月は雇用者数の増加幅が2か月合わせて11万人下方修正された。
平均時給は3か月連続で前月比0.4%増となった。前年同月比では4.4%増加した。週平均労働時間は若干伸びた。
労働参加率は62.6%となり、前月から横ばいだった。25-54歳の年齢層では21年ぶり高水準に上昇した。
Comment
こうした状況下で、人事コンサルタントとしては、特定分野での人材需要と供給のミスマッチに対処する必要性が高まっていると考える。企業は人事コンサルティングを活用して、柔軟な雇用戦略の採用と賃金調整を行い、特に需要が高まる分野での人材確保と育成を強化すべきである。
(2023年7月7日発表)
2023年5月分
Summary
5月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比33万9000人増となり、市場予想を大幅に上回った。前月は29万4000人増(速報値25万3000人増)に上方修正された。
失業率は3.7%に上昇し、市場予想を上回る上昇となった。平均時給は前月比0.3%増となり、伸びが鈍化した。
5月は広範囲の業種で雇用が増加。特に専門職・ビジネスサービスや政府部門、ヘルスケアでの伸びが目立った。
労働参加率は62.6%で前月から横ばいだった。25-54歳の労働参加率は上昇し、2007年以来の高水準となった。女性の労働参加率が上昇した。
週平均労働時間は34.3時間に若干減少し、2020年4月以来の低水準となった。
Comment
米国の雇用統計が市場予想を大幅に上回る結果となり、特に専門職やビジネスサービスの雇用増加が顕著だった。人事コンサルタントは、これを踏まえて組織の成長戦略に合わせた人材確保と育成プランを提案することが重要となる。また、女性の労働参加率の上昇は多様性の促進にも繋がるため、これを支援する方策を考える必要がある。
(2023年6月2日発表)
2023年4月分
Summary
4月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比25万3000人の増加となり、市場予想を大幅に上回った。前月は16万5000人増(速報値23万6000人増)に下方修正された。
4月の失業率は3.4%に低下し、再び数十年ぶりの低水準となった。
平均時給は前月比0.5%増となり、前月の0.3%増から伸びが加速した。
雇用は幅広い分野で増加した。ヘルスケアや専門職・ビジネスサービス、娯楽・ホスピタリティーでの伸びが特に目立った。
週平均労働時間は前月と同じ34.4時間となり、2020年4月以来の低水準に並んだ。
Comment
米非農業部門雇用者数は市場予想を大幅に上回り、失業率も数十年ぶりの低水準となった。特にヘルスケアや専門職・ビジネスサービス、娯楽・ホスピタリティーでの雇用増が顕著である。人事コンサルティングの視点から、企業は人材確保の競争が激化する中、魅力的な報酬パッケージや柔軟な勤務制度の導入が必要である。企業には労働市場の変動に迅速に対応し、長期的な人材育成戦略を構築することが求められる。
(2023年5月5日発表)
2023年3月分
Summary
3月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比23万6000人増となり、市場予想を若干上回った。前月は32万6000人増(速報値31万1000人増)に上方修正された。
失業率は3.5%となり、前月から0.1ポイント低下した。
平均時給は前年同月比4.2%増となり、2021年6月以来の低い伸びとなった。
労働参加率は若干上昇して62.6%となり、3年ぶりの高水準となった。
雇用は娯楽・ホスピタリティーや医療など、これまで労働力不足に悩まされてきた一部セクターでの伸びが大きかった。一方、小売りと人材派遣の分野では雇用者は減少した。
週平均労働時間は34.4時間に減少し、2020月以来の低水準となった。
Comment
人事コンサルタントは、企業に対する労働力不足に対応するための戦略の提案が重要となる。特に、娯楽・ホスピタリティーや医療分野での人材確保と定着策を強化すべきである。企業は競争力を維持するために、適切な報酬と労働条件の改善に努める必要がある。
(2023年4月7日発表)
2023年2月分
Summary
2月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比31万1000人の増加となり、市場予想を上回った。前月は50万4000人増(速報値51万7000人増)に下方修正された。
2月の失業率は前月の3.4%から3.6%に上昇した。
平均時給は前月比0.2%増となり、前年同月比で4.6%の増加となった。前月比ベースでは過去1年で最低の伸びにとどまった。ただ、米労働者の大半を占める生産部門・非管理職の賃金は前月比0.5%増と過去3か月で最大の伸びとなった。
雇用の増加は娯楽・ホスピタリティー、小売り、政府機関、医療などで目立った。一方、多くのテクノロジー分野を含む情報産業や運輸・倉庫では雇用が減少した。
労働参加率は62.5%に上昇し、2020年3月以来の高水準となった。25-54歳の年齢層では83.1%に上昇した。
Comment
このような状況下で人事コンサルタントとして企業に提案すべきは、まず、成長が顕著な業界での人材確保と育成を強化することである。娯楽・ホスピタリティーや医療分野においては、魅力的なキャリアパスと福利厚生の充実が求められる。また、情報産業や運輸・倉庫業界においては、雇用減少に対応した労働力の再配置とスキルアップが重要である。さらに、賃金の伸びが鈍化する中での従業員満足度向上策や、労働参加率の上昇を維持するための働きやすい職場環境の整備が必要である。人事コンサルタントは、これらの施策を通じて企業が持続可能な成長を実現し、安定した雇用環境を提供できるよう支援するべきである。
(2023年3月10日発表)
2023年1月分
Summary
1月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比51万7000人の増加となり、市場予想を大幅に上回った。前月は26万人増(速報値22万3000人増)に上方修正された。
失業率は3.4%に低下し、1969年5月以来の低水準となった。
平均時給は前月比0.3%増、前年同月比では4.4%増加した。
雇用はセクターを超えて幅広く増加した。娯楽・ホスピタリティーや専門職・ビジネスサービス、医療で特に増加した。
労働参加率は62.4%に上昇し、25歳から54歳までの労働参加率も上昇した。
Comment
1月の非農業部門雇用者数は、市場予想を大幅に上回る増加を見せ、失業率は歴史的低水準の3.4%に低下した。特に娯楽・ホスピタリティー、専門職・ビジネスサービス、医療分野での雇用増が顕著であり、労働参加率も上昇したことから、労働市場の活発さがうかがえる。人事コンサルタントとして、企業にはこの好調な雇用環境を活かし、積極的な人材採用と育成戦略を提案すべきである。特に、優秀な人材の確保に向けた多角的な採用チャネルの開拓や、キャリア開発支援による定着率向上が重要である。また、低失業率が続く中での競争優位性を確保するため、報酬体系の見直しや、柔軟な働き方の提供による働きやすさの向上も求められる。
(2023年2月3日発表)