米求人・労働移動状況(2022年)

米労働省から毎月発表される米国の求人・採用・解雇など雇用全般に関する調査結果に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。

2022年12月分

Summary

2022年12月の求人件数は1101万件となり、市場予想を上回って5か月ぶりの高水準となった。前月は1044万件(速報値1046万件)に下方修正された。

求人件数は小売業や建設業でも増加した。一方、多くのテクノロジーの職種を含む情報セクターの求人は減少した。

失業者1人に対する求人件数は1.9件となり、過去最高に近い水準となった。前月は1.7件だった。

全雇用者に占める自発的離職者の割合である離職率は前月と同じ2.7%となった。自発的離職者は約410万人だった。

Comment

12月のデータは、特定の産業における技術進化と市場需要の変化を反映しており、人事コンサルティングの重要性を強調している。自発的離職者数が約410万人と高水準を維持していることは、労働者が自信を持って職場を選び、キャリアの自主性を追求していることを示している。このような市場環境下では、人事コンサルタントは企業が人材を引きつけ、維持し、発展させるための戦略的なアプローチを提案し、導入する必要がある。

(2023年2月1日発表)

2022年11月分

Summary

11月の求人件数は前月から5万4000件減少して1045万8000件となり、市場予想を上回った。10月の求人件数は1033万4000件から1051万2000件へと上方改定された。

業種別の求人件数は、専門・ビジネスサービスが21万2000件、非耐久財製造業が3万9000件、それぞれ増加した。一方、金融・保険は7万5000件減少した、連邦政府は4万4000件の減少だった。

求人率は前月から横ばいの6.4%となったが、昨年3月のピーク時の水準を0.9%ポイント下回った。

採用件数は605万5000件となり、10月の611万1000件から減少した。医療・社会扶助分野では7万4000件増加した。

Comment

11月の米国求人件数は市場予想を上回り、専門・ビジネスサービスおよび非耐久財製造業での増加が目立つ。これは、人事コンサルタントにとって、これらの業界に特化した人材確保と採用戦略の重要性を示している。一方で、金融・保険および連邦政府の求人減少は市場の変化に対する迅速な対応が求められる。人事コンサルティングは、業界別の動向を踏まえた効果的な人材計画を支援し、採用件数の減少にも対応するために企業の人材戦略を見直すことが必要である。米国の労働市場の逼迫状況が改めて示されたことにより、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ抑制に向け、予想されている以上の金利引き上げを行う可能性がある。

(2023年1月4日発表)

2022年10月分

Summary

10月の求人件数は前月比35万3000件減の1033万4000件となった。前月は1068万7000件(速報値1071万7000件)に下方修正された。

失業者1人当たりの求人件数は1.85件から1.7件に減少したが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の約1.2件をなお大きく上回っている。

業種別の求人件数は、教育を除く州・地方政府が10万1000件、非耐久財製造業が9万5000件、連邦政府が6万1000件、それぞれ減少した。一方、その他のサービス業では7万6000件、金融・保険業で7万件増加した。

自発的な離職件数も約400万件となり、9月の410万件から減少した。自発的な離職率は2.7%から2.6%に低下した。レイオフ・解雇件数は130万件から140万件に増加した。

Comment

10月の米国求人件数の減少は、市場の調整期間を示しているが、求人件数はパンデミック前の水準を依然として上回っている。人事コンサルタントは、業種別の動向を精密に分析し、特定業界での求人増加に注目すべきである。金融・保険業やその他のサービス業の求人増は、これらの分野でのキャリア機会が拡大していることを示しており、適切な人材配置とスキルマッチングが重要である。

(2022年11月30日発表)

2022年9月分

Summary

9月の米国の求人件数は1072万件となり、市場予想を大幅に上回った。前月は1028万件(速報値1005万3000件)に上方修正された。

失業者1人に対する求人件数は1.9件となり、前月の1.7件から増加した。

9月は宿泊・飲食業の求人件数が前月から21万5000件増加、医療・福祉は11万5000件、運送・倉庫業は11万1000件増加した。

離職者数は約410万人となり、前月から若干減少した。全雇用者に占める自発的離職者の割合である離職率は2.7%となり、前月から横ばいとなった。

Comment

米国の求人件数が市場予想を上回ったことは、労働市場の活況を示している。この状況は、人事コンサルタントにとって、各業界に特化した戦略的な人事コンサルティングの提供が重要であることを強調している。失業者1人に対する求人件数の増加や、自発的離職者の割合が横ばいであることからも、企業が人材を確保し維持するための適切な施策が必要であることが示されている。

(2022年11月1日発表)

2022年8月分

Summary

8月の求人件数は前月比111万7000件減少して1005万3000件となり、市場予想を下回った。前月は1117万件(速報値1123万9000件)に下方修正された。約110万件の減少幅は2020年4月以来の大きさとなる。

求人件数は依然かなり高水準にあるものの、失業者1人に対する求人件数は約1.7件となり、前月の約2件から減少。昨年11月以来の低水準となった。

求人件数の減少が目立ったのは、ヘルスケアやその他サービスなどだった。

離職者数は約420万人となり、前月から小幅に増加した。全雇用者に占める自発的離職者の割合である離職率は前月と同じ2.7%だった。レイオフの件数はなお歴史的な低水準にあるものの、2021年3月以来の水準に増加した。

Comment

人事コンサルタントとしては、このような市場動向を踏まえ、企業が人材確保と維持のための戦略を再検討する必要がある。人事コンサルティングの視点から、企業は競争力のある賃金と福利厚生を提供し、労働環境の改善を通じて自発的離職者の減少を目指すべきである。また、レイオフの増加傾向を考慮し、効果的な人員配置と再訓練プログラムを導入することが重要である。

(2022年10月4日発表)

2022年7月分

Summary

7月の求人件数は前月比19万9000件増の1123万9000件となり、市場予想を上回った。前月は1104万件(速報値1069万8000件)に上方修正された。

7月は失業者1人に対する求人件数が約2件で、6月の1.9件から増加した。

離職者数は約420万人となり、前月から小幅に減少した。全雇用者に占める自発的離職者の割合である離職率は小幅に低下して2.7%となり、ここ1年余りで最も低い水準となった。レイオフの件数はほぼ変わらず、雇用者数は小幅減少となった。

求人件数の増加が目立ったのは小売業や運輸・倉庫・公益事業だった。運輸・倉庫・公益で8万1000件増加。芸術・娯楽・レクリエーションでは5万3000件増え、連邦政府では4万7000件、州・地方政府の教育部門では4万2000件それぞれ増加した。一方、耐久財製造業では4万7000件減少した。

Comment

米求人件数は7月に予想以上に増加し、前月の数字も大幅に上方修正された。限られた労働力を雇用主が奪い合う状況の中、労働市場の逼迫が続いていることが示された。労働需給の不均衡は堅調な賃金上昇をもたらし、金融当局のインフレ抑制への取り組みを難解なものにしている。こうした状況下での採用戦略に関する人事コンサルティング会社、人事コンサルタントの顧客企業に対する助言は重要だ。

(2022年8月30日発表)

2022年6月分

Summary

6月の求人件数は前月比60万5000件減の1069万8000件となり、2020年4月以来の大幅な減少となった。前月は1130万3000件(速報値1125万4000件)に上方修正された。

6月は失業者1人に対する求人件数が約1.8件となり、5月比でわずかに減少した。求人件数の減少が目立ったのは小売業や卸売業のほか、州および地方自治体の教育だった。建設業も減少した。

離職者数は約420万人となり、前月とほぼ同水準だった。全雇用者に占める自発的離職者の割合である離職率は前月と同じ2.8%となった。レイオフの件数はわずかに減少し、雇用者数もわずかに減少した。

Comment

米求人件数は2020年4月以来の大幅な減少を記録した。一方、離職率は2.8%で前月と同水準にとどまった。人事コンサルタントとしては、この求人減少を受けて、企業の採用戦略の見直しと効率化が求められる。特に減少が顕著な業界では、内部人材の育成やリスキリングに焦点を当てる必要がある。また、離職率の安定を活かし、社員の定着率向上に向けた施策を強化することが重要である。人事コンサルティングの視点からは、経済環境の変化に迅速に対応し、持続可能な人材戦略を構築することが求められる。

(2022年8月2日発表)

2022年5月分

Summary

5月の求人件数は42万7000件減少して1130万件となった。求人件数は過去最高の1190万件を記録した3月から2か月連続で減少した。

業種別では、専門・ビジネスサービスが32万5000件減。耐久財製造が13万8000件、非耐久財製造が7万件それぞれ減少した。一方、貿易・運輸・公益、娯楽・サービス、医療などで増加した。

求人率は6.9%となり、4月の7.2%から低下した。採用件数は650万件でほぼ変わらなかった。失業者一人当たりの求人件数は1.9件となり、労働市場が切迫していることが浮き彫りとなった。

自発的な離職件数は引き続き高水準を維持し、5月は約430万件と4月からほぼ横ばいとなった。レイオフ・解雇件数は140万件と7万7000件増加したものの、低水準を維持した。

Comment

この状況を踏まえ、人事コンサルティングにおいては、企業に対して以下の戦略を提案すべきである。自発的な離職件数が引き続き高水準であることから、企業は従業員エンゲージメントを強化する施策を導入する必要がある。例えば、柔軟な勤務形態の提供や、キャリアパスの明確化、従業員のウェルビーイング向上を図るプログラムの実施が効果的である。さらに、レイオフや解雇件数の増加に対しては、従業員の再配置や再雇用を促進するための内部ジョブマーケットの整備が求められる。

(2022年7月6日発表)

2022年4月分

Summary

4月の米求人件数は前月から45万5000件減少して1140万件となった。前月は1185万5000件(速報値1154万9000件)に上方修正された。

離職者数は約440万人となり、前月とほぼ同程度だった。全雇用者に占める自発的離職者の割合を示す離職率は2.9%となり、前月と同水準だった。

失業者1人に対する求人件数は約1.9件となり、3月から若干減少した。米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が今週のイベントで言及するなど、この指標には金融当局者も注目している。

業種別ではヘルスケア・社会支援や小売り、宿泊・飲食サービスで減少した。運輸・倉庫・公益や製造業では増加した。

Comment

人事コンサルティングの観点からは、ヘルスケア・小売り・宿泊などの分野で減少する求人需要に適応した人材戦略を練り直すとともに、製造業や運輸分野の成長機会を生かすための柔軟な採用方針に関する助言・提案が重要となる。安定した離職率を維持しつつ、従業員の定着とキャリア成長のサポートを強化することで、各企業が変化する経済状況に対処しやすくなる。

(2022年6月1日発表)

2022年3月分

Summary

3月の米求人件数は前月から20万5000件増加して1154万9000件となり、過去最高を更新した。前月は1134万4000件(速報値1126万6000件)に上方修正された。

自発的離職者は450万人となり、データが残る2000年以降で最高を記録した。自発的離職者の全雇用者に占める割合を示す離職率はわずかに上昇し3%となった。

求人件数は小売りや耐久財製造分野を中心に増加した。一方、運輸や倉庫、公益事業、州および地方自治体の教育、宿泊・食品サービスの分野では減少した。

自発的離職者数は専門職や企業サービス、建設の分野で増加した。

雇用された労働者は670万人となり、前月からほぼ変わらずとなった。産業別ではレジャーおよびホスピタリティー分野が伸びた。

Comment

3月の米求人件数は過去最高を更新し、1154万9000件に達したが、自発的離職者数も450万人と2000年以降で最高を記録した。この動向は、雇用市場が活況を呈する一方で、従業員の流動性が高まっていることを示している。特に小売りや耐久財製造分野での求人増加が目立つが、運輸や倉庫、宿泊・食品サービスなどでは減少が見られる。人事コンサルタントとして、企業は人材確保のために柔軟な採用戦略と魅力的な職場環境の整備が求められる。また、離職率の上昇を踏まえ、従業員エンゲージメントの強化が急務である。特に、専門職や企業サービス、建設分野での離職者増加に対応し、キャリア開発やスキル向上の支援を強化することが重要である。

(2022年5月3日発表)

2022年2月分

Summary

2月の非農業部門の求人件数(季節調整済み)は前月から1万7000件減少して1126万6000件となった。前月からわずかに減少したものの過去3番目の高水準となった。一方、自発的離職者数は435万2000人となり、依然として歴史的な高水準圏内で大量離職が続いた。

求人件数を分野別でみると、新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の流行が落ち着いたのを受けて芸術・娯楽・レクリエーションが3万2000件増加したほか、教育サービス分野も2万6000件増加した。

求人率は7.0%で前月から変わらなかった。求人率は、雇用者数と求人数の合計に対する求人数の割合で、これが高いほど企業が埋めようとしている空席の職が多いことを示す。分野別で求人率が高かったのは宿泊・飲食サービス(10.2%)、医療ケア(9.0%)、専門・ビジネスサービス(8.7%)などだった。

採用件数は668万9000人となり、前月から26万3000人増加した。採用率は4.4%となり、前月から0.1ポイント上昇した。自発的離職者数は前月から9万4000人増加して離職率は2.9%となり、0.1ポイント上昇した。

Comment

2月の米国非農業部門の求人件数は、前月から減少したものの依然として過去3番目の高水準を維持し、労働市場の堅調さを示している。一方、自発的離職者数が歴史的に高水準であることから、いわゆる「大退職」が続いている状況である。特に芸術・娯楽・レクリエーションや教育サービス分野での求人増加が見られ、新型コロナウイルスの影響が緩和される中でこれらの業界が回復基調にあることが示唆されている。このような環境下で、人事コンサルタントとして企業に提案すべきは、特に離職率が高い業界において、優秀な人材の確保と定着を図るための戦略的アプローチである。具体的には、柔軟な勤務形態の導入や魅力的なキャリアパスの提供が求められる。また、求人率が高い宿泊・飲食サービスや医療ケア、専門・ビジネスサービス分野では、採用プロセスの効率化とともに、報酬や福利厚生の競争力強化が重要となる。

(2022年3月29日発表)

2022年1月分

Summary

1月の非農業部門の求人件数(季節調整済み)は1126万3000件となり、前月から18万5000件減少した。昨年12月は1144万8000件に上方修正され、過去最高となった。

求人件数は昨年12月に次ぐ過去2番目となり、7か月連続で1000万件を超えた。求人率は前月から0.1ポイント減少して7.0%だった。1月は新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染者数が急増し、宿泊・飲食サービスの求人件数は28万8000件減少した。一方で耐久財製造業が8万5000件増加したほか、建設業も2万1000件増加した。

企業の採用者数は645万7000人となり、前月から7000人増加した。採用率は4.3%となり、前月から横ばいだった。昨年12月には求人数と採用数の差が過去最大を更新したが、差が縮小した。

自発的離職者数は425万2000人となり、前月から15万1000人減少した。離職率は2.8%だった。

Comment

1月の米国非農業部門の求人件数は1126万3000件と、前月から減少したものの過去2番目の高水準を維持し、引き続き労働市場の強さを示している。特に、新型コロナウイルスのオミクロン型の影響が顕著に現れ、宿泊・飲食サービスの求人件数が大幅に減少する一方、耐久財製造業や建設業では求人が増加している。このような状況下で、人事コンサルタントとして企業に提案すべきは、業界別の労働需要の変動に即した柔軟な人材戦略の導入である。特に、宿泊・飲食サービス業界では、労働力の確保と離職率の低減を図るための魅力的な報酬パッケージや職場環境の改善が急務である。

(2022年3月9日発表)