米求人・労働移動状況(2023年)
米労働省から毎月発表される米国の求人・採用・解雇など雇用全般に関する調査結果に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
2023年12月分
Summary
12月の米求人件数は902万6000件に増加し、市場予想を上回った。前月は892万5000件(速報値879万件)に上方修正された。
求人件数が増えた一方、離職者数は340万人とほぼ3年ぶり低水準に減少した。
部門別で見ると、プロフェッショナル・ビジネスサービスが4か月ぶりの大幅な伸びとなった。このほか教育、医療サービス、製造業でも求人が増加した。
レイオフは全体的な水準は落ち着いた状態が続いているが、運輸・倉庫では増加し、2020年6月以来の高水準となった。
Comment
12月の求人件数は市場予想を上回り、特にプロフェッショナル・ビジネスサービス、教育、医療サービス、製造業などでの求人増加が顕著であった。一方で、離職者数は低水準にとどまり、労働市場の安定が続いていることを示している。この状況下で、人事コンサルタントとして企業に提案すべきは、引き続き成長分野への人材確保と、優秀な人材の定着を重視した戦略の強化である。特に、求人件数が増加している業種では、競争が激化する可能性が高いため、報酬やキャリアパスの整備、スキルアップ支援の強化が求められる。
(2024年1月31日発表)
2023年11月分
Summary
昨年11月の米求人件数は879万件に減少し、市場予想を下回った。前月は885万2000件(速報値873万3000件)に上方修正された。
採用は2020年4月以来の低水準。レイオフは小幅に減少した。
部門別でみると、求人件数は運輸・倉庫、政府、ビジネスサービス、娯楽・ホスピタリティーなどで減少した。
自発的離職者の割合である離職率は、2020年9月以来の低水準となった。
Comment
11月の米求人件数は市場予想を下回り、運輸・倉庫、政府、ビジネスサービス、娯楽・ホスピタリティなどの部門で顕著に減少した。また、採用が2020年4月以来の低水準に達し、労働市場の勢いがやや弱まっていることが示されている。このような状況において、人事コンサルタントとして提案すべきは、雇用環境の変化に柔軟に対応するための労働力管理の強化である。企業は、採用難を背景に現有の人材を最大限に活用し、スキルアップや再教育プログラムの導入を進めるべきである。
(2024年1月3日発表)
2023年10月分
Summary
10月の米求人件数は873万3000件に減少し、市場予想を大幅に下回った。前月は935万件(速報値955万3000件)に下方修正された。
求人件数の減少は広範に及び、ヘルスケアや金融、宿泊・食品サービスで目立った。
自発的離職者の割合である離職率は4か月連続で2.3%となり、2021年1月以来の低水準が続いた。
失業者1人に対する求人件数は1.3件となり、2021年半ば以来の水準に低下した。
Comment
求人件数が大幅に減少し、市場予想を下回ったことは重要な指標である。人事コンサルタントは離職率の低水準が続いている中で、労働市場の動向を理解し、人事コンサルティングを通じて適切な人材確保と維持を図るための具体的な提案とともに雇用の質と効率を高めるための戦略的アドバイスを提供し、企業の持続可能な成長に寄与する重要な役割を担っている。
(2023年12月5日発表)
2023年9月分
Summary
9月の米求人件数は955万件に増加し、市場予想を上回った。前月は950万件(速報値961万件)に下方修正された。
宿泊・飲食サービスでの急増が全体を押し上げた。求人は宿泊・飲食サービス以外では小売りでも伸びた。採用ペースは建設や金融、輸送、倉庫で低下した。
採用はわずかに増加し、レイオフは減少した。自発的離職者の割合である離職率は3か月連続で2.3%となり、2021年1月以来の低水準を維持した。
Comment
9月は求人件数が市場予想を上回り、宿泊・飲食サービスの急増が際立つ結果となった。人事コンサルタントとしては、コンサルティングを通じてこの分野の人材需要に対応し、戦略的な採用計画の提案が重要となる。採用ペースが鈍化した業界では、既存の人材の育成や定着に注力し、効果的な人材活用を図ることが求められる。
(2023年11月1日発表)
2023年8月分
Summary
8月の米国の求人件数は961万件に増加し、市場予想を上回った。前月は892万件(速報値882万7000件)に上方修正された。
自発的離職者の割合である離職率は前月と同じ2.3%となった。離職者の減少は、現状では別の仕事を見つける能力に対して自信が薄れていることを示している。
求人件数の増加は、専門職およびビジネスサービス業で50万人余り増加し、金融・保険、教育、非耐久財製造業でも伸びたことを反映している。
採用は3か月ぶりに増加したが、今年初めの水準をなお下回っている。採用増加は、宿泊・飲食サービス業の加速を反映している。
Comment
8月の米国求人件数は市場予想を上回り、特に専門職やビジネスサービス業での大幅な増加が見られた。この動向は、人事コンサルタントにとって、業界別の採用ニーズと労働市場の変動を把握し、適切な人材確保策を企業に提供する重要な指標である。人事コンサルティングを通じて、雇用機会の増加に対応して、企業の成長を支える戦略的な人材計画を策定する必要がある。
(2023年10月3日発表)
2023年7月分
Summary
7月の米求人件数は882万7000件に減少し、市場予想を大幅に下回った。前月は916万5000件(速報値958万2000件)に下方修正された。求人件数は過去7か月で6回目の減少となった。
自発的離職者の割合である離職率は2.3%に低下し、2021年1月以来の低水準となった。
7月はプロフェッショナル・ビジネスサービスや医療、政府部門での減少が特に目立った。
採用は2021年1月以来の低水準に落ち込んだ。直近2か月間では合わせて45万8000件減少となり、2020年末以来の大きな減少幅となった。
Comment
7月の米求人件数は減少し、この2年余りで最も低い水準となった。労働需要が鈍化しつつあることを示す新たな材料となった。ここまで労働需要の過熱から採用に奔走してきた企業の人事担当者も一息付ける状況になったと言える。人事コンサルタントも採用から既存社員のモチベーションや生産性の向上に目を向けるタイミングになっていると思われる。
(2023年8月29日発表)
2023年6月分
Summary
6月の米求人件数(季節調整値)は958万2000件に減少した。前月は961万6000件(速報値982万4000件)に下方修正された。
採用は2021年2月以来の低水準に落ち込んだ。一方でレイオフも小幅に減少し、昨年12月以来の少なさとなった。
6月の求人件数は製造業など財生産セクターを中心に減少した。一方でヘルスケアや娯楽などサービスセクターの一部では増加した。
自発的離職者の割合である離職率は2.4%に低下し、2021年2月以来の低水準となった。
Comment
人事コンサルタントは業種特有の需給バランスと市場の変動を理解し、それに基づいた適切な人材確保戦略を提案することが求められる。特に自発的離職率の低下は、労働市場における不安定感や変化への適応が進んでいることを示しており、企業はこれに対応するための戦略的なアプローチを検討する必要がある。
(2023年8月2日発表)
2023年5月分
Summary
5月の米求人件数は980万件となり、前月から減少した。前月は1030万件(速報値1010万件)に上方修正された。減少幅はここ3か月で最大となったが、求人件数はなお新型コロナウイルス流行前の水準を上回っており、人材確保が難しい状況が続いている。
職種別では、ヘルスケア・社会補助の減少が目立った。金融・保険など他のサービスの求人件数も減少した。
レイオフは年初来の低水準となる一方、採用は増えた。
自発的離職者の割合である離職率は2.6%となり、昨年8月以来の大幅上昇となった。
Comment
求人件数は依然としてコロナ禍前の水準を上回っている。このような状況下で、人事コンサルタントとしては、人材確保の難しさに対応するための戦略的なアプローチが求められる。自発的離職率の上昇は、労働者の流動性が高まっていることを示しており、企業が競争力のある賃金設定と職場環境の改善を通じて優秀な人材を引き留める策を講じる必要がある。
(2023年7月6日発表)
2023年4月分
Summary
4月の米求人件数は1010万3000件に増加し、市場予想を大幅に上回った。前月は974万5000件(速報値959万件)に上方修正された。
求人件数は小売業やヘルスケア、運輸・倉庫を中心に増加した。一方、宿泊関連や外食産業、ビジネスサービス、製造業では減少した。採用はわずかに増加した。
レイオフは建設業や娯楽、ホスピタリティーを中心に減少した。全雇用者に占める自発的離職者の割合である離職率は2.4%となり、この2年間で最低の水準となった。自発的離職者は約380万人だった。主にヘルスケアやビジネスサービスで減少した。
Comment
人事コンサルタントとしては、特に求人の増加が見られる分野において効果的な採用戦略を構築することが重要である。また、離職率の低下を受けて、従業員の定着率を高めるための働きかけが求められる。各業界の動向を注視し、柔軟かつ適応力のある人材管理が不可欠である。
(2023年5月31日発表)
2023年3月分
Summary
3月の米求人件数は959万件に減少し、市場予想を下回って2年ぶりの低水準となった。前月は997万4000件(速報値993万1000件)に上方修正された。
レイオフ数は建設業や宿泊関連、外食産業、ヘルスケアを中心に増加し、2020年12月以来の高水準となった。
全雇用者に占める自発的離職者の割合である離職率は2.5%に小幅低下し、2年ぶり低水準に並んだ。自発的離職者は約390万人となり、主に宿泊や外食産業で減少した。
失業者1人に対する求人件数は1.6件に小幅減少し、2021年10月以来の低水準となった。
Comment
こうした状況を踏まえ、人事コンサルティングにおいては、企業に対し再配置戦略や採用効率の向上を提案すべきである。デジタル採用ツールの活用やリモートワークの普及に対応した採用戦略を導入し、迅速な人材確保を図る。また、従業員エンゲージメントを強化し、柔軟な働き方の提供やキャリアパスの明確化、ウェルビーイングを重視したプログラムを実施することで、従業員満足度向上を目指す必要がある。
(2023年5月2日発表)
2023年2月分
Summary
2月の米求人件数は993万件余りに減少し、市場予想を下回った。前月は1056万件(速報値1082万件)に下方修正された。
全雇用者に占める自発的離職者の割合となる離職率は2.6%にやや上昇した。自発的離職者は約400万人となった。
失業者1人に対する求人件数は1.67件に減少し、2021年11月以来の低水準となった。前月は約1.9件だった。
求人件数はビジネスサービスや医療、社会支援、運輸、倉庫、公益事業などで特に減少した。増加したのは建設と娯楽エンターテインメントだった。
Comment
人事コンサルタントとして、企業は戦略的な人材配置と採用プロセスの見直しを検討する必要がある。また、離職率の上昇は従業員の満足度やエンゲージメントの低下を示唆しており、従業員の保持に向けた取り組みが急務である。人事コンサルティングのテーマとして、雇用市場の変動に対応する柔軟な労働力戦略の構築と、離職防止策の強化が求められる。特に、従業員のキャリアパスの明確化や、ワークライフバランスの改善が重要である。これにより、企業は変動する市場環境の中で競争力を維持することができるであろう。
(2023年4月4日発表)
2023年1月分
Summary
1月の米求人件数は1082万件に減少したものの、市場予想を上回った。前月は1123万件(速報値1101万件)に上方修正された。
今回の発表には2018年1月に遡る年次改訂も含まれ、昨年のほぼ全てが上方修正され、3月は1200万件となり過去最高となった。
求人件数は建設や宿泊、飲食サービスのほか、金融・保険でも減少した。一方で運輸や倉庫、公益事業では増加。化学や衣料、食品加工といった非耐久財製造業でも求人は増えた。
全雇用者に占める自発的離職者の割合である離職率は、2.5%に低下し、2021年3月以来の低水準となった。自発的離職者は約390万人だった。
Comment
1月の米求人件数は1082万件に減少したものの、市場予想を上回る結果となり、労働市場の依然として強い需要を示している。特に、建設や宿泊、飲食サービス、金融・保険での求人減少が目立つ一方で、運輸・倉庫、公益事業、非耐久財製造業では求人が増加していることから、業種によって異なる雇用需要が明らかである。このような状況下で、人事コンサルタントとしては、業種別の労働需要に応じた戦略的な人材配置と採用戦略の柔軟性を高める提案が重要である。特に、求人が減少している分野では、既存の人材の能力開発とスキルの再評価が求められる。一方、求人が増加している分野では、競争力を維持するために迅速な採用プロセスの強化や、魅力的な報酬パッケージの導入が鍵となる。
(2023年3月8日発表)