雇用統計

米労働省から毎月発表される米国の雇用統計データに人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。

2024年10月分

Summary

10月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比1万2000人増となり、市場予想を大幅に下回った。前月は22万3000人増(速報値25万4000人増)に下方修正された。

10月は特に医療と政府部門で雇用が増加したが、他の業種ではほぼ横ばいないし減少となった。小売りや運輸・倉庫、娯楽・ホスピタリティーなどは全て減少した。これらは9月下旬から10月上旬にかけて南東部を襲った2つのハリケーンが影響した可能性が高い。

製造業の雇用は4万6000人減となり、2020年4月以来の大幅な落ち込みとなった。ボーイングの従業員3万3000人などストが影響した部分が大きい。

失業率は4.1%となり、前月から横ばいとなった。失業率は横ばいだったが、職を失った人は2月以来の大幅な増加となり、離職者数は減少した。労働参加率は小幅に低下。25歳から54歳では83.5%となり、4月以来の水準に下げた。

平均時給は前年同月比4%増だった。2022年の早い段階では6%近い増加率だった。

Comment

10月の非農業部門雇用者数が1万2000人増と市場予想を大幅に下回った背景には、ハリケーンやストライキの影響が大きい。製造業の大幅減少や小売、運輸・娯楽部門での雇用減少は、景気減速と一部地域・業種の不安定さを示唆している。さらに、労働参加率の低下と、失業率が横ばいながら職を失う人の増加は、企業にとってタレントプールの縮小と、求職者の採用コスト上昇のリスクを示している。人事コンサルタントとしては、採用・定着戦略の見直しが必要である。特に、柔軟な雇用形態の導入や従業員スキル開発を強化することで、不安定な労働環境に適応した持続的な人材戦略を提案すべきである。

(2024年11月1日発表)

2024年9月分

Summary

9月の非農業部門雇用者数は25.4万人増加し、失業率は4.1%で前月からほとんど変動がなかった。

主な雇用増加は、飲食サービス業、医療、政府、社会福祉、および建設業において見られた。飲食サービス業では6.9万人の雇用が増加し、過去12か月の平均月間増加数を大きく上回った。医療分野では4.5万人の増加があり、特に在宅医療サービスや病院での雇用増加が目立った。政府部門でも3.1万人の雇用が増加し、特に地方政府と州政府での増加が顕著であった。

一方で、製造業や小売業、運輸倉庫業などでは雇用の変化はほとんどなく、全体としては安定した動きを示している。

9月の平均時給は0.4%増加し、35.36ドルとなった。これは過去12か月で4.0%の上昇を示している。また、労働時間はわずかに減少し、全労働者の平均労働時間は34.2時間となった。

Comment

9月の非農業部門雇用者数は25.4万人増加し、特に飲食サービス業や医療、政府部門での雇用拡大が顕著であった。失業率は4.1%で安定しているものの、労働市場における産業間での雇用動向のばらつきが見られる。飲食サービス業や医療分野では人材需要が高まっている一方、製造業や小売業ではほとんど変化がない。このような状況下で人事コンサルタントは、成長産業向けの採用戦略を強化すると同時に、労働時間の減少や賃金の緩やかな上昇に対応した柔軟な労働条件の提案を行う必要がある。

(2024年10月4日発表)

2024年8月分

Summary

8月の非農業部門雇用者数は前月比14万2000人増で予想を下回った。ただ失業率は4.2%となり、前月の4.3%から小幅低下した。

7月の非農業部門雇用者数は11万4000人増から8万9000人増に下方改定され、6・7月分の雇用者数は計8万6000人減少した。

業種別では、建設が3万4000人増となり、全体の伸びを主導した。医療関連は3万1000人増加したものの、伸びは鈍化し、過去12か月の月間の伸び平均である6万人の約半分程度にとどまった。社会扶助は1万3000人増加したものの、過去1年間の平均月間増加数の2万1000人を下回った。金融、レジャー・接客も増加、政府も2万4000人増加した。一方、製造業は2万4000人減少。小売業でも1万1100人減少した。

時間当たり平均賃金は前月比0.4%上昇、前年比3.8%上昇となり、それぞれ前月の0.2%上昇、3.6%上昇から伸びが加速し、堅調な賃金の伸びが引き続き消費支出を通じ経済を支えていることがうかがわせた。

Comment

8月の非農業部門雇用者数は予想を下回る増加にとどまり、雇用市場は勢いを欠くものの、失業率は小幅に改善した。業種別では建設業が引き続き強い成長を示す一方、医療や社会扶助は鈍化しており、過去のトレンドに基づいた戦略的な人材配置が必要である。特に、製造業や小売業での雇用減少は、これらの分野の企業がスキルギャップ対策やリスキリングを進めるべき緊急性を示唆する。また、賃金上昇は引き続き堅調であり、人事コンサルタントとしては、給与体系や報酬戦略の見直しが優先課題となる。全体として、労働市場の分極化に対応した柔軟な採用と人材育成が求められる。

(2024年8月2日発表)

2024年7月分

Summary

7月の失業率は4.3%に上昇し、非農業部門の雇用は11.4万人増加した。失業者数は720万人に増え、一時解雇者は110万人に達した。長期失業者は150万人であり、全失業者の21.6%を占めた。労働力参加率は62.7%、就業者人口比率は60.0%で大きな変化はなかった。パートタイム就業者数は34.6万人増加し、経済的理由によるパートタイム就業者は460万人に達した。

非農業部門の雇用増加は平均の21.5万人を下回ったが、医療、建設、運輸倉庫業では増加が続いた。医療部門では5.5万人の雇用が増え、在宅医療サービスや病院での増加が顕著であった。建設業では2.5万人、運輸倉庫業では1.4万人の雇用増加が見られた。一方、情報部門では2万人の雇用減少があった。

政府部門の雇用は1.7万人増加したが、鉱業、製造業、小売業、金融活動、専門職サービス、レジャーやホスピタリティなど他の主要産業では大きな変化はなかった。平均時給は0.2%増の35.07ドルであり、製造業の平均労働時間は39.9時間に減少した。

全体として、雇用市場は緩やかな回復を示しつつも、一部の産業では厳しい状況が続いていることが報告されている。

Comment

非農業部門の雇用増加が11.4万人と低調だった一方で、医療、建設、運輸倉庫業は依然として堅調である。特に医療部門の雇用増加は、在宅医療サービスの需要拡大を反映しており、企業は人材育成と採用戦略を見直す必要がある。また、情報部門の雇用減少はDXの進展による影響と考えられ、スキルの再訓練が急務である。さらに、パートタイム就業者数の増加と平均時給の緩やかな上昇は、経済的理由による労働力の流動性を示唆している。人事コンサルタントとして、企業が競争力を維持するためには、柔軟な労働環境の整備と共に、労働者の多様なニーズに応える包括的な人事戦略の提案が求められる。

(2024年8月2日発表)

2024年6月分

Summary

6月の米国の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は6月に前月比20万6000人の増加となり、市場予想を上回った。前月は21万8000人増(速報値27万2000人増)に下方修正され、過去2か月分では計11万1000人下方修正された。

失業率は4.1%に上昇し、市場予想(4%)を上回った。

平均時給は前月比0.3%増となり、過去3年間の最低水準と並んでいる。前月は0.4%増だった。

雇用者数の伸びは、過去3か月平均では2021年初め以来のペースに減速しており、4-6月(第2四半期)の労働市場が当初予想よりも冷え込んだことを反映した。

労働参加率は62.6%に上昇した。25-54歳の労働参加率は83.7%となり、22年ぶりの高水準に上昇した。

6月は雇用者数増加の約4分の3が、ヘルスケアと政府部門によるものだった。製造業の雇用者数は8000人の減少となり、2月以来の大きな落ち込みとなった。

Comment

米非農業部門雇用者数は市場予想を上回る増加となったが、失業率は4.1%に上昇し、平均時給の増加も低水準にとどまった。労働市場の冷え込みを反映し、特に製造業での雇用減少が目立つ。人事コンサルタントとしては、労働市場の変動に対応するため、柔軟な雇用形態や人材確保戦略の提案が重要である。企業の長期的な人材戦略を強化し、競争力を維持するための取り組みが不可欠となる。

(2024年7月5日発表)

2024年5月分

Summary

5月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比27万2000人の増加となり、市場予想を上回った。前月は16万5000人増(速報値17万5000人増)に下方修正された。

5月の失業率は4%に上昇した。失業率が4%となるのはこの2年余りで初めてとなる。

5月の平均時給は前月比0.4%増、前年同月比4.1%増となった。

労働参加率は62.5%に低下した。一方で25-54歳は2002年以来の高水準に上昇した。

雇用は広範な業種で拡大。裾野の広さは昨年1月以来の水準となった。業種別では、ヘルスケア関連で6万8000人の雇用が創出され、全体の増加をけん引した。政府部門の雇用者数は4万3000人増加、レジャー・接客業は4万2000人増加、専門・ビジネスサービス部門では3万2000人増加した。一方、百貨店や家庭用家具小売店では小幅に減少した。

Comment

5月の米雇用報告は、予想を上回る雇用増加にもかかわらず、失業率の上昇と労働参加率の低下が示すように、労働市場の不均衡を浮き彫りにしている。インフレ圧力下での賃金上昇が続く中、人事コンサルタントは企業に持続可能な人材戦略の再考を促し、長期的な成長を支える柔軟な労務管理を提案する必要がある。

(2024年6月7日発表)

2024年4月分

Summary

4月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比17万5000人の増加となり、市場予想を大幅に下回った。前月は31万5000人増(速報値30万3000人増)に上方修正された。

4月の失業率は3.9%となり、前月から0.1ポイント上昇した。

平均時給は前月比0.2%増加し、市場予想を下回った。前年同月比では3.9%増加し、2021年6月以来の小幅な伸びにとどまった。

雇用の伸びは娯楽・ホスピタリティーと建設、政府で減速した。一方でヘルスケアと運輸、小売では雇用が増加した。

労働参加率は62.7%で横ばいだった。25-54歳の年齢層では83.5%に小幅上昇し、約20年ぶり高水準に並んだ。

Comment

非農業部門の雇用者数が市場予想を下回る一方で、失業率のわずかな上昇や平均時給の伸びの鈍化は、人事コンサルタントによる人事戦略の再評価の必要性を示唆している。特に、労働参加率の上昇が賃金抑制に寄与する可能性から、戦略的な報酬設計やタレントマネジメントが求められる。

(2024年5月3日発表)

2024年3月分

Summary

3月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比30万3000人の増加となり、市場予想を大幅に上回った。前月は27万人増(速報値27万5000人増)に下方修正された。

失業率は3.8%となり、前月の3.9%から0.1ポイント低下した。

平均時給は前月比0.3%増となり、前月の0.2%増から0.1ポイント上昇した。

3月の雇用増は、ヘルスケアや娯楽・ホスピタリティー、建設業がけん引した。雇用が増えた業種と減少した業種との比率を示す雇用DIは上昇した。

労働参加率は昨年11月以降で初めて上昇し、62.7%になった。25-54歳の年齢層では83.4%に低下したが、なお20年ぶりの高水準近くにある。

Comment

3月の米雇用者数はほぼ1年ぶりの大幅増となり、失業率は低下した。力強い労働市場が景気を押し上げていることを示す内容となり、金融当局が最初の利下げをさらに遅らせる可能性を高めたと考えられる。また、労働参加率の改善は労働市場の強さを示しており、企業は労働力を最大限に活用するための革新的な人事コンサルティングを必要としている。人事コンサルタントは企業の成長を支え、市場変動に対応するための革新的な人材戦略の提案が必要となる。

(2024年4月5日発表)

2024年2月分

Summary

2月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比27万5000人の増加となり、市場予想を上回った。前月は22万9000人増(速報値35万3000人増)に下方修正された。

2月の失業率は3.9%となり、前月(3.7%)を上回り、市場予想も上回った。労働市場に参加したもののすぐに職を得られない人が増えたことから失業率は上昇した。

平均時給は前月比0.1%増、前年同月比では4.3%増となった。

雇用の伸びは医療や娯楽・ホスピタリティー、政府部門などで特に目立った。

Comment

今回の雇用統計は、労働市場が徐々に減速していることを示す内容となった。雇用と賃金の伸びがやや落ち着いたことで、インフレ再燃リスクがそれほど高まらずに米経済が拡大し続ける可能性が示された。

(2024年3月8日発表)

2024年1月分

Summary

1月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比35万3000人増となり、市場予想を大幅に上回った。前月は33万3000人増(速報値21万6000人増)に上方修正された。

失業率は3.7%となり、前月から3.7%横ばいとなった。

平均時給は前月比0.6%増(前月0.4%増)となり、2022年3月以来の大幅な伸びとなった。賃金は労働時間の減少によって押し上げられた可能性が高い。1月分の調査が実施された週は、米国の多くの地域で厳冬が続き、経済活動が混乱した。悪天候のために就労しなかった労働者数は50万人を超え、ほぼ3年ぶりの高水準となった。

Comment

1月の米雇用統計は雇用者数が1年ぶりの大幅増となり、賃金の伸びも加速した。労働市場が予想外に再び勢いを増していることが示され、早期に米金融当局による利下げが行われる可能性は低下した。

(2024年2月2日発表)