雇用統計

米労働省から毎月発表される米国の雇用統計データに人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。

2025年4月分

Summary

4月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比17万7000人増となり、市場予想を大幅に上回った。前月は18万5000人増(速報値22万8000人増)に下方修正された。

業種別では医療(5.1万人増)、運輸・倉庫(2.9万人増)、金融活動(1.4万人増)、社会扶助(0.8万人増)が増加傾向を示した一方、連邦政府は0.9万人減少した。他の主要産業(鉱業、建設、製造業、卸売、小売、情報、専門職、レジャー・接客、その他サービス)は概ね横ばいだった。

失業率は4.2%となり、前月から横ばいだった。失業者数は720万人で前月比ほぼ変わらず。長期失業者(27週以上)は17万人増の170万人で、失業者全体の23.5%を占めた。労働参加率は62.6%、雇用人口比率は60.0%で、いずれも月間・年間ともに大きな変化は見られなかった。

経済的理由によるパートタイム就業者数は470万人で、前月比横ばいだった。時間給は全労働者平均で36.06ドル(前月比0.2%増)、生産・非管理職では31.06ドル(前月比0.3%増)だった。

平均労働時間は34.3時間、製造業では40.0時間(前月比0.2時間減)、残業時間は2.9時間で変化はなかった。

Comment

4月の非農業部門雇用者数は市場予想を大きく上回ったが、前月分は下方修正され、労働市場の勢いは依然として慎重に見極める必要がある。医療、運輸・倉庫、金融活動、社会扶助といったサービス関連分野が雇用をけん引した一方、他の主要産業は横ばいで推移し、連邦政府では雇用減少が見られた。失業率は4.2%で横ばいだが、長期失業者比率が23.5%に増加しており、労働市場の一部に慢性的な雇用課題が潜在していることを示唆している。
人事コンサルタントとしては、企業に対し、労働市場の好調な分野と停滞分野を明確に区分し、それぞれに応じた戦略を構築することを提案すべきである。成長分野では、迅速な採用プロセス、競争力のある報酬、キャリア開発の機会提供を通じて人材獲得を強化する必要がある。一方、長期失業者やパートタイム就業者が増加する背景を踏まえ、企業内でのリスキリングや職務再設計による新たな労働力活用策を検討すべきである。また、労働時間の安定や残業抑制が示される中で、生産性向上に資するマネジメント手法や柔軟な勤務体制の導入を進めることが、持続的な組織成長の鍵となるだろう。

(2025年5月2日発表)

2025年3月分

Summary

3月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比22万8000人増となり、市場予想を大幅に上回った。前月は11万7000人増(速報値15万1000人増)に下方修正された。失業率は4.2%(前月4.1%)に上昇した。

3月の娯楽・ホスピタリティー、小売、運輸・倉庫での雇用増は一時的要因を含んでいることを一部エコノミストは指摘している。このほか、ヘルスケアなどが大きく増加した。

3月は就業者数が増加に転じた。2月は約1年ぶりの大幅減となっていた。

労働市場に新たに参入したが職を見つけられない人の数は、8年ぶりの高水準となった。複数の仕事を掛け持ちする人が雇用者全体に占める割合は2009年以来の高い水準となった。自発的離職者の数は約1年ぶりの大幅な落ち込みとなった。

平均時給は前月比0.3%増。前月(0.2%増)から加速し、市場予想と一致した。前年同月比では3.8%増となり、前月(4%増)から鈍化し、昨年7月以来の低い伸びにとどまった。

Comment

3月の非農業部門雇用者数は22万8000人増と市場予想を大幅に上回ったが、内容を見ると一時的要因の影響が色濃い。娯楽・ホスピタリティーの回復は悪天候からの反動、小売業の増加はストライキ終結によるものであり、運輸・倉庫業での増加も関税措置前の駆け込み需要に起因している。一方、失業率は4.2%に上昇し、新規参入者の雇用難や複数就業者の増加、自発的離職の減少など、労働市場の構造的変化を示す兆候が顕在化している。平均時給は前月比0.3%増と加速したが、前年同月比では3.8%と鈍化傾向にある。人事コンサルタントとしては、短期的な雇用統計の好転に捉われず、中長期的視点からの人材戦略の再構築を企業に提案するべきである。まず、複数就業者や非正規労働力の活用が進むなかで、柔軟な雇用形態を取り入れつつ、キャリア開発や福利厚生の充実を通じて従業員のエンゲージメントを高める必要がある。また、経済政策や外的要因による雇用変動に備え、業務プロセスの見直しと人材配置の最適化を進めることが、将来的な労働市場の不確実性に対する強固な備えとなる。

(2025年4月4日発表)

2025年2月分

Summary

2月の非農業部門雇用者数は15万1000人の増加となり、市場予想を下回った。1月の非農業部門雇用者数は12万5000人増(速報値14万3000人増)に下方改定された。

失業率は4.1%と、1月の4.0%から上昇した。

業種別では、病院や介護施設など医療関連の雇用が5万2000人増、金融が2万1000人増、運輸・倉庫が1万8000人増、社会扶助が1万1000人増となった。一方で連邦政府が1万人減、小売は6000人減少した。その他の主要産業(建設、製造、卸売、情報、専門・ビジネスサービス、レジャー・ホスピタリティ)では大きな変動は見られなかった。

週平均労働時間は34.1時間となり、5年ぶりの低水準となった。経済的な理由でパートタイムで働く人は46万人増の490万人となった。増加数は2023年6月以来の高さだった。働く意思があるものの就職活動をあきらめた人や、フルタイムの仕事が見つからずパートタイムで働いている人などを含む、より広範な失業率は8.0%に大きく上昇し、2021年10月以来の高水準となった。

約38万5000人が労働市場から離脱した。労働力参加率は62.4%と、前月の62.6%から低下し、2年ぶりの低水準となった。経済の雇用創出能力の尺度とされる就業率は59.9%と、1月の60.1%から低下した。

Comment

2月の非農業部門雇用者数は15万1000人増となり、市場予想を下回り、労働市場の減速が鮮明となった。失業率は4.1%に上昇し、労働参加率も62.4%に低下するなど、労働市場の縮小傾向が見られる。さらに、週平均労働時間が34.1時間と5年ぶりの低水準となり、経済的理由でパートタイム勤務を余儀なくされる労働者も増加するなど、雇用の質の面でも懸念が強まっている。人事コンサルタントとしては、労働参加率の低下やフルタイム雇用の減少に対応し、企業が多様な労働力を活用できる環境を整備することが重要である。具体的には、パートタイム労働者やシニア層、育児・介護と両立を希望する労働者をターゲットにした柔軟な雇用制度の導入を提案する必要がある。また、労働時間の短縮が進む中で、従業員の生産性向上を支援するための研修プログラムやスキルアップ施策の強化が必要だ。さらに、医療や金融といった雇用が拡大している分野においては、競争力のある採用戦略を打ち出し、優秀な人材の確保を支援することが求められる。

(2025年3月7日発表)

2025年1月分

Summary

非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比14万3000人増となり、市場予想を下回った。前月は30万7000人増(速報値25万6000人増)に上方修正された。失業率は4.0%(前月4.1%)に低下した。

雇用は医療(4万4千人増)、小売(3万4000人増)、政府(3万2000人増)、社会福祉(2万2000人増)で増加した。一方で、鉱業・採掘・石油・ガス産業(8000人減)では減少した。その他の主要産業(建設、製造、卸売、運輸・倉庫、情報、金融、専門職・ビジネスサービス、レジャー・ホスピタリティ)では大きな変動は見られなかった。

平均時給は35.8ドルとなり、前月比0.5%増、対前年同月比4.1%と堅調に推移した。労働参加率、雇用人口比率、パートタイム就業者数は前月からほぼ変わらずだった。

Comment

1月の非農業部門雇用者数は14万3000人増となり、2024年の月平均に近い水準を維持しつつも、業種間でばらつきが見られる。医療・社会福祉、小売、政府部門が雇用増加を牽引した一方で、鉱業・採掘分野は減少し、製造業や金融、専門職・ビジネスサービスではほぼ横ばいとなった。賃金は前年同月比4.1%増と堅調で、失業率は4.0%に低下したものの、労働力参加率や雇用人口比率には変化がなく、労働市場は全体的に小康状態にあると言える。人事コンサルタントとしては、まず成長産業における人材確保戦略の強化が求められる。特に、医療・福祉分野では高い人材需要に対応するため、研修制度の充実や外国人労働者の活用を提案すべきである。一方で、採用が伸び悩む製造業や金融分野では、既存従業員のエンゲージメント向上策を強化し、人材流出を防ぐ必要がある。また、賃金上昇が続く中、企業は給与だけでなく、柔軟な労働環境の提供や福利厚生の充実を通じて、魅力的な雇用条件を整備することが重要である。

(2025年2月7日発表)

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