労働力調査(2023年)
総務省が毎月発表する日本の就業状況、失業者、失業率に関する雇用指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
2023年12月分
Summary
昨年12月の完全失業率は2.4%(季節調整値)となり、前月から0.1ポイント改善した。
12月の就業者数は6763万人(季節調整値)となり、前月に比べて12万人減少した。一方、完全失業者数は前月に比べて8万人減少し、169万人となった。
2023年平均の完全失業率は2.6%となり、前年と同水準だった。より良い条件の仕事を求める自発的な離職が増加していることが影響した。コロナ前の2019年(2.4%)には届いていないものの、就業者数(実数)は6747万人となり、前年に比べて24万人増加して、2019年に次ぐ過去2番目の高水準となった。
Comment
2023年12月の完全失業率が2.4%に改善したことは、企業の人事戦略においてポジティブな指標である。しかし、就業者数が12万人減少した点や、完全失業者数が前月比8万人減少した点には注意が必要である。特に、自発的な離職が増加していることから、従業員がより良い条件を求めていることが明らかである。人事コンサルタントとしては、企業に対してキャリア開発とスキルアップ支援、柔軟な働き方の導入、競争力ある報酬体系の見直し、ワークライフバランスの支援の施策を提案すべきである。人事コンサルティングのテーマとして、企業の競争力を高めつつ、従業員の満足度と生産性を向上させるための総合的な人事戦略を掲げる必要がある。特に、コロナ前の雇用水準に近づくためには、長期的な視点での人材育成と労働環境の整備が欠かせない。
(2024年1月30日発表)
2023年11月分
Summary
11月の完全失業率(季節調整値)は2.5%となり、前月から横ばいだった。
完全失業者数は177万人となり、前月から2万人(1.1%)増加した。「非自発的な離職」は7万人増加した一方で「自発的な離職(自己都合)」は1万人減少した。
就業者数は6775万人となり、前月に比べて26万人増加した。女性の就業者は3076万人となり、1953年以降で過去最多となった。
Comment
人手不足で失業者が増加しにくい状況が続いているが、追加的なコストとなる人員増に慎重になっている企業も少なくないと見られる。先行き不透明な経済環境下では企業が人員増に慎重になるのも無理はない。こうした状況下で人事コンサルタントとして顧客企業にどのような助言をすべきなのか悩むこともある。
(2023年12月26日発表)
2023年10月分
Summary
10月の完全失業率(季節調整値)は2.5%となり、前月から0.1ポイント改善した。改善は2か月連続となる。
男女別では、これまで女性の労働市場への参入が増加している。
10月の就業者数は季節調整値で6749万人となり、前月に比べて7万人減少した。
一方、完全失業者数は前月に比べて2万人減少し、175万人となった。
Comment
こうした状況は、人事コンサルタントにとって、企業の人材獲得戦略や雇用維持策を見直す絶好の機会である。人事コンサルティングは、特に女性の労働市場への積極的な参入を支援する政策やプログラムの設計に貢献し、企業のダイバーシティとインクルージョンの推進に重要な役割を演じなければならない。
(2023年12月1日発表)
2023年9月分
Summary
9月の完全失業率が季節調整値で2.6%となり、前月から0.1ポイント改善した。
就業者数は季節調整値で6756万人となり、前月に比べて6万人増加した。一方、完全失業者数は前月に比べて8万人減少し177万人となった。男性は4万人、女性は3万人それぞれ減少した。仕事に就かず職探しもしていない非労働人口は4075万人で10万人減少した。
Comment
完全失業率が2.6%に改善し、就業者数が増加したことは、労働市場の回復を示している。特に完全失業者数が減少し、男性と女性の両方で失業者が減少している点は、労働市場の健全性を裏付けている。一方で、非労働力人口も減少しており、労働参加率の上昇が見られる。このような状況下での人事コンサルティングでは、企業が人材を効果的に確保し、定着させるための戦略が重要である。人事コンサルタントとしては、労働市場の変動に迅速に対応し、労働力の最適な配置とスキル開発を支援するプログラムを提案することが求められる。
(2023年10月31日発表)
2023年8月分
Summary
8月の完全失業率は2.7%(季節調整値)となり、前月から横ばいとなった。
8月の完全失業者数は185万人で、前月から1万人増加した。内訳では「新たに求職」が2万人、「非自発的な離職」が6万人それぞれ減少した一方、「自発的な離職」が6万人増加した。
就業者数は6750万人となり、前月から0.1%増加した。男性は6万人減り、女性は9万人増加した。仕事に就かず職探しもしていない非労働人口は4085万人となり、前月から9万人減少した。
Comment
より良い条件の仕事を求めていったん離職する「自発的な離職(自己都合)」が増加しており、雇用情勢は堅調に推移している。売手市場だからか、人事コンサルティングで関与している顧客企業でも特に若年者の退職者が増加する傾向にある。
(2023年9月29日発表)
2023年7月分
Summary
7月の完全失業率(季節調整値)が2.7%となり、前月から0.2ポイント悪化した。完全失業率は4か月ぶりの上昇となり、市場予想を上回った。
就業者数は季節調整値で6745万人となり、前月に比べて10万人減少した。完全失業者数は184万人となり、前月に比べて11万人増加した。
Comment
非労働力人口に分類されていた女性が労働市場に参入したことが要因となり、7月の完全失業率が悪化した。総務省では、コロナ禍からの経済回復や最低賃金引き上げの動きをにらんで労働参加の機運が醸成された可能性があると楽観的に見ているが、人事コンサルタントの視点からは物価高で収入を得るために新たに職を求める動きが出ているのではないかと見ている。
2023年6月分
Summary
6月の完全失業率(季節調整値)は2.5%となり、前月から0.1ポイント低下した。完全失業率が改善したのは2か月ぶり。男性は2.8%となり、前月から0.1ポイント上昇し、女性は2.1%となり、前月から0.3ポイント低下した。
就業者数(季節調整値)は6755万人となり、前月から0.3%増加した。男性は14万人増の3707万人、女性は5万人増の3047万人だった。新たに職に就く人が増え、働く意思のない非労働力人口は4098万人となり、前月から6万人減少した。
Comment
6月の完全失業率は2.5%となり、前月から0.1ポイント低下した。特に女性の失業率が顕著に改善している。就業者数も前月比で0.3%増加し、新たに職に就く人が増えていることは経済の回復を示唆している。しかし、男性の失業率はわずかに上昇しており、ジェンダー間での雇用状況の違いが見られる。人事コンサルタントとしては、女性の雇用促進が進む中、男性の雇用安定策も併せて検討することが重要である。また、非労働力人口の減少は労働市場への参加意欲の高まりを示しており、企業は柔軟な働き方や研修制度を充実させることで、新規就業者のスムーズな職場適応を支援する必要がある。
(2023年8月1日発表)
2023年5月分
Summary
5月の完全失業率は2.6%となり、前月から横ばいだった。
就業者数は6745万人となり、前年同月比で0.2%増加した。内訳では男性3697万人となり、0.2%減少し、女性3047万人となり、0.7%増加となった。
会社などに雇われている雇用者のうち、正規の職員・従業員数は3655万人となり、前年同月比で0.8%増加し、2か月連続で増加した。非正規は2074万人で0.1%減となり、2か月連続の減少となった。
完全失業者数は188万人となり、前年同月比で1.6%減少した。
Comment
5月の雇用データは、完全失業率が2.6%で横ばいにとどまり、雇用市場の安定を示しているが、その中でも性別や雇用形態による違いが顕著となっている。女性の就業者数が0.7%増加し、正規雇用者数も2か月連続で増加している一方で、非正規雇用者数が減少していることは、雇用の質が向上していることを示唆している。これにより、企業は多様な人材の活用と安定した雇用環境の構築が求められる局面にあるといえる。人事コンサルタントとしては、企業が正規雇用を中心にした人材戦略を強化し、非正規から正規雇用への転換支援を進めることが重要だ。また、女性の就業増加をさらに促進するために、柔軟な働き方やワークライフバランスを考慮した制度設計の提案が必要となる。
(2023年6月30日発表)
2023年4月分
Summary
4月の完全失業率(季節調整値)は2.6%となり、前月から0.2ポイント低下して3か月ぶりに改善した。
完全失業者数は180万人となり、前月比7.7%減少した。次の仕事を探すなど自己都合で職を離れる「自発的な離職」が11%減少した。
就業者数は6741万人となり、前月より14万人増加して9か月連続の増加となった。製造業が3.7%、宿泊・飲食サービス業が2.2%前年同月比でそれぞれ増加した。非労働力人口は4079万人となり、14か月連続で減少した。
Comment
完全失業率の低下と就業者数の増加は、労働市場の健全な回復を示している。特に製造業と宿泊・飲食サービス業での雇用増加は、これらの業界の活性化を反映している。このような状況では、人事コンサルタントは企業に対して、適切な人材を確保し、効率的な人材管理を実現するための戦略的な人事コンサルティングを提供することが重要である。
(2023年5月30日発表)
2023年3月分
Summary
3月の完全失業率(季節調整値)は2.8%となり、前月から0.2ポイント上昇して2か月連続の上昇となった。完全失業者数は193万人となり、前年同月に比べ13万人増加した。
2022年度平均の完全失業率は2.6%となり、前年度から0.2ポイント低下して11年ぶりの悪化となった2020年度から2年連続で改善した。失業者数は前年度比13万人減少して178万人だった。
2022年度の就業者数は6728万人となり、前年度と比べ22万人増加した。休業者数は206万人となり、前年度と比べ5万人減少した。産業別の就業者が最も伸びたのは情報通信業で5.8%増の274万人だった。次いで宿泊業、飲食サービス業が3.5%増の386万人だった。減少幅が最も大きい金融業、保険業は3%減の161万人だった。
Comment
人事コンサルタントは、増加が見られる産業の人材確保に注力し、減少傾向の産業では戦略的な労働力再配置やリスキリングを支援する必要がある。柔軟な採用戦略と適切な再訓練プログラムにより、企業が変化する労働市場で最適な人材を獲得・維持できるようアプローチすることが求められる。
(2023年4月28日発表)
2023年2月分
Summary
2月の完全失業率(季節調整値)が2.6%となり、前月から0.2ポイント上昇して5か月ぶりに悪化した。
就業者数(季節調整値)は6714万人となり、前月に比べて30万人減少した一方、完全失業者数(同)は180万人となり、13万人増加した。完全失業者の内訳を見ると、自発的な離職は8万人増加、非自発的失業は3万人増加、新たに求職は3万人増加した。
Comment
完全失業率が2.6%に上昇し、就業者数が30万人減少するなど、労働市場の悪化を示している。自発的離職者の増加は、労働者がより良い雇用機会を求めている証左である。一方、非自発的失業の増加は経済の不安定さを反映している。人事コンサルタントとして、企業が人事コンサルティングを活用して労働市場の変動に対応した柔軟な人材戦略と職場環境の改善を図る提案をすることが求められる。
(2023年3月31日発表)
2023年1月分
Summary
1月の完全失業率(季節調整値)は前月から0.1ポイント改善して2.4%となり、2020年2月以来の低水準となった。
就業者数(季節調整値)が18万人増加した一方、完全失業者数(同)が4万人減少しており、より条件の良い職を探していた人が仕事に就いたとみられる。
就業者数は6689万人となり、前年同月比43万人増加し、6か月連続で増加した。完全失業者数は21万人減少して164万人となった。非労働力人口は65万人減少して4161万人だった。休業者数は219万人となり、30万人減少した。
Comment
完全失業率が2.4%と2020年2月以来の低水準に達し、就業者数は18万人増加、完全失業者数は4万人減少し、雇用状況が好転している。特に、就業者数が前年同月比で43万人増えた点は、経済活動の回復とともに労働市場が堅調であることを示している。人事コンサルティングの観点からは、適切な人材配置や採用戦略の見直しにより、企業がこの雇用改善の波に乗り、競争力を高めることが肝要である。
(2023年3月3日発表)