一般職業紹介状況(2023年)
厚生労働省が毎月発表している公共職業安定所(ハローワーク)における求人、求職、就職の状況をとりまとめた求人倍率などの雇用指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
2023年12月分
Summary
12月の有効求人倍率は1.27倍となり、前月から0.01ポイント低下した。
人の移動の活発化で宿泊・飲食業などの求人が増え、12月の有効求人数(季節調整値)は前月に比べて0.2%増となった。
一方、有効求職者数(同)は0.5%増となった。賃上げ機運の高まりや人手不足を背景により高い賃金水準への転職を希望するケースや、業務負担の増加で転職を希望するケースがみられるという。
厚生労働省は、有効求人倍率は低下したものの、有効求人数が増えており、これをもって雇用情勢がすごく悪化しているとまでは言えないとした。
同時に発表された2023年の有効求人倍率は1.31倍で、前年から0.03ポイント上昇した。2019年(1.60倍)以来の高い水準となったが、コロナ前の状態までには回復していない。
Comment
12月の有効求人倍率が1.27倍に低下したが、同時に有効求人数が増加していることから、雇用情勢は悪化していないと考えられる。しかし、賃上げ機運の高まりや業務負担の増加が転職希望者の増加を招いている現状は注視すべきである。人事コンサルタントとしては、企業が優秀な人材を確保・維持するための戦略的な賃金制度の見直しや、働き方改革の推進が急務である。また、採用活動においては、コロナ禍前と比較した労働市場の変化に適応するための柔軟な対応が求められる。
(2024年1月30日発表)
2023年11月分
Summary
11月の有効求人倍率(季節調整値)は1.28倍で前月から0.02ポイント低下した。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比で4.8%マイナスとなった。前年同月比の下がり幅は宿泊・飲食サービス業が最も高くマイナス12.8%で、製造業でも10.5%下がった。宿泊・飲食サービス業は、新型コロナウイルス禍から回復傾向にあった2022年11月の求人の伸びの反動が大きかった。
Comment
人事コンサルティングの観点からは、企業が労働市場の変動に対応した採用戦略を立て、長期的な組織力強化のために多様な人材の確保を図ることを提案する必要がある。
(2023年12月26日発表)
2023年10月分
Summary
10月の有効求人倍率は1.30倍となり、前月から0.01ポイント上昇し、10か月ぶりに前月を上回った。有効求人数(季節調整値)は前月からほぼ横ばい、有効求職者数(同)は同0.3%減少した。
10月の新規求人数(原数値)は前年同月比で1.8%減少した。産業別では「学術研究、専門・技術サービス業」が同3.0%増、「宿泊業、飲食サービス業」が同2.2%増となった一方、「製造業」が同10.6%減、建設業が同6.2%減、「卸売業、小売業」が同3.0%減などとなった。
厚労省では「雇用情勢は悪化している状況ではないが、大幅に改善しているわけでもなさそうだ。引き続き注視が必要だ」としている。
Comment
10月の有効求人倍率が1.30倍とわずかに上昇し、10か月ぶりに前月を上回ったことは、雇用市場の安定に向けた前向きなサインである。ただし、新規求人数の減少や産業別の求人動向には差が見られる。製造業や建設業、卸売業・小売業での求人減少は、これらの業界での雇用動向が依然として不透明であることを示唆している。人事コンサルタントの視点からは、これら業界の労働力不足を補うための再訓練プログラムの導入や、多様な人材採用戦略の策定が求められる。
(2023年12月1日発表)
2023年9月分
Summary
9月の有効求人倍率(季節調整値)は1.29倍で前月から横ばいだった。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比で3.4%減少した。原材料や光熱費が上がった影響を受け、製造業は12.7%減、建設業は8.1%減となった。宿泊・飲食サービス業は新型コロナからの消費持ち直しを背景に5.2%増加した。
Comment
有効求人倍率が前月と同水準を保持していることは、市場の一定の安定性を示している。一方で、新規求人倍率のわずかな下落や特定産業における求人の減少は、経済の部分的な不均衡を浮き彫りにしている。このような状況では、人事コンサルタントは各企業が直面する固有の人材課題に対してカスタマイズされた解決策を提供する必要がある。人事コンサルティングの専門知識を活用し、特に減少傾向にある製造業や建設業においては、労働市場の動向を踏まえた戦略的な人材確保と育成プログラムを策定することが企業の持続可能な成長に寄与すると考えられる。
(2023年10月31日発表)
2023年8月分
Summary
8月の有効求人倍率は1.29倍(季節調整値)となり、前月から横ばいとなった。有効求人数は前月から0.1%増加した一方、有効求職者数は0.2%減少した。
実質賃金の伸び悩みで兼業や転職をめざす動きが活発な一方で、原材料高による収益悪化で製造業や建設業で求人を抑える動きも見られた。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比1.0%増加した。新型コロナウイルス禍からの経済活動の正常化を背景に、外国人を含む旅行客が増加するなどして宿泊・飲食サービス業が9.8%増加した。原材料高などの影響を受ける製造業は7.5%減少した。
Comment
実質賃金の停滞や原材料コストの上昇が求人市場に複雑な影響を与えている。人事コンサルタントは、企業がこれらの課題に対応するための人事戦略を提案し、企業の適応力を高める支援をすることが重要だと認識している。
(2023年9月29日発表)
2023年7月分
Summary
7月の有効求人倍率(季節調整値)は1.29倍となり、前月から0.01ポイント低下した。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比で2.5%の減少となった。原材料費や光熱費高騰の影響を受けた製造業で11.4%減少、建設業では8.0%減少した。一方で新型コロナウイルスの5類移行をうけ外国人を含む旅行客が増加したことにより、宿泊・飲食サービス業が2.1%の増加となった。
厚生労働省では、足元では新規求人、新規求職申込件数ともに増加傾向にあり、雇用環境が大きく悪化しているわけではないという。物価高による各種コストの上昇が企業の採用活動に与える影響を引き続き注視していくとした。
Comment
7月の有効求人倍率が1.29倍に低下したことは、現在の経済状況と深く結びついている。特に製造業と建設業の求人減少は、原材料費や光熱費の高騰が企業の採用活動に直接影響を及ぼしていることを示している。これに対して、旅行客の増加により宿泊・飲食サービス業では求人が増加しており、業種間での求人動向に大きな違いが見られる。人事コンサルタントとして、企業が多様な経済変動に対応できる柔軟な人事戦略を構築することが求められる。コスト上昇や景気変動を見据えた採用計画の再構築が、今後の持続可能な成長に不可欠だ。
(2023年8月29日発表)
2023年6月分
Summary
6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.30倍となり、前月から0.01ポイント下がった。仕事を探す人が増加した一方、求人数は横ばいとなり、2か月連続で前月を下回った。
景気の先行指標とされる6月の新規求人数(原数値)は前年同月比2.1%減少した。新型コロナの5類移行で外出が活発になってきたことを受けて、宿泊・飲食サービス業が1.3%増加した。医療・福祉も0.9%増加した。
Comment
人事コンサルタントとして注目すべきは、宿泊業や飲食サービス業、医療・福祉などの一部産業で求人が増加している点である。これらの業界では、従業員の定着率向上やキャリア開発プログラムの充実が求められる。一方、製造業や建設業、教育・学習支援業での求人減少は、これらの業界における働き方改革や労働条件の見直しを進めるべきである。具体的には、製造業や建設業における労働環境の改善と柔軟な働き方の導入、教育・学習支援業における給与体系の見直しと職務の多様化が考えられる。これにより、各産業の特性に応じた人材確保と育成が促進され、持続可能な成長が期待できる。人事コンサルティングの役割として、これらの施策を通じて企業の競争力強化に寄与することが求められる。
(2023年8月1日発表)
2023年5月分
Summary
5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.31倍となり、前月から0.01ポイント低下した。低下は2か月ぶり。5月の有効求人数は前月比0.7%減少した。有効求職者数は前月から0.1%増えており、求人倍率の低下につながった。有効求職者数は同0.1%増だった。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比で3.8%増加した。新規求人数は宿泊・飲食サービス業で13.5%、卸売業・小売業で5.5%それぞれ増加した。労働時間規制の強化によってトラック運転手の不足が懸念される「2024年問題」を前に、運輸・郵便業も3.5%増加した。
Comment
有効求人倍率は1.31倍と低下し、雇用市場に微妙な変化が見られる。この低下は有効求職者数の増加が一因である。宿泊・飲食サービス業や卸売業・小売業の求人増加は、サービス業界の回復を示唆する一方で、2024年問題に向けた運輸・郵便業の求人増加も注目される。人事コンサルタントとして、これらの動向を踏まえた人材戦略の見直しが求められる。
(2023年6月30日発表)
2023年4月分
Summary
4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.32倍となり、前月から横ばいとなった。
景気の先行指標とされる新規求人(原数値)は84万1369人となり、前年同月比0.9%減少した。新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけ変更による期待感から、宿泊・飲食サービス業の求人は前年同月比で8.2%増加した。原材料費や光熱費の高騰で収益が圧迫されている建設業・製造業は人手不足感があるものの求人に踏み出せない状態が続いている。
有効求職者数も前年同月比3.4%減少した。物価高などの影響でリスクのある転職を避けたとみられる。
Comment
有効求人倍率が横ばいを保っている一方で、新規求人がわずかに減少しており、労働市場における複雑な動向が見受けられる。特に宿泊・飲食サービス業での求人増加は、感染症法の変更による業界の回復期待を反映しているが、建設業や製造業では高まるコスト圧力により求人が抑制されている状態が続いている。このような市場環境では、人事コンサルタントは企業に対して戦略的な人事計画の策定を提案することが重要だと考える。
(2023年5月30日発表)
2023年3月分
Summary
3月の有効求人倍率(季節調整値)は1.32倍となり、前月より0.02ポイント低下した。
景気の先行指標とされる新規求人(原数値)は3月に前年同月比0.7%増加した。生活関連サービス業が8.3%増、宿泊業・飲食サービス業が5.9%増だった。製造業は8.0%減、建設業が6.3%減だった。
2022年度平均の有効求人倍率は1.31倍だった。前年度から0.15ポイント上昇し、2年連続で前年度を上回った。2022年度の有効求人数は10.8%増加した。産業別でみると宿泊業・飲食サービス業や生活関連サービス業がけん引した。
Comment
2023年3月の有効求人倍率は1.32倍となり、前月より若干低下したが、新規求人は前年同月比で増加している。特に生活関連サービス業や宿泊業・飲食サービス業が顕著な伸びを示している。この状況を踏まえ、人事コンサルタントとしては、企業の求人活動の最適化と労働市場の動向分析を進める必要がある。製造業や建設業での求人減少傾向を受け、これらの業界においては労働力の確保やスキルの再教育が急務である。また、成長分野であるサービス業への労働力シフトを促進するための戦略も必要となる。人事コンサルティングにおいては、これらの課題に対応した包括的なソリューションの提供が不可欠である。
(2023年4月28日発表)
2023年2月分
Summary
2月の有効求人倍率は1.34倍(季節調整値)となり、前月から0.01ポイント低下した。有効求職者数は185万8599人となり、前月から1.6%増え、有効求人数の伸び率の0.8%を上回った。
新規求人数(原数値)は前年同月比10.4%増加した。産業別では「宿泊業、飲食サービス業」がインバウンド需要の増加などから37.2%増加した。このほか「教育、学習支援業」が同23.7%増、「卸売業、小売業」が同11.1%増、「医療、福祉」が10.3%増となった。一方で、建設業や製造業は0.2〜0.3%増にとどまった。
Comment
景気の持ち直しや賃上げへの期待感から求職の動きが広がり、有効求人倍率の低下につながったとみられる。人手不足感はあるものの、原材料の高騰などのため求人の増加に踏み切れない産業もあることが顕在化した。人事コンサルティングの関与先でも原材料費の高騰に頭を悩ませている経営者は多い。
(2023年3月31日発表)
2023年1月分
Summary
1月の有効求人倍率は0.01ポイント低下した。2020年8月以来の低下となったものの、コロナ禍からの経済正常化の動きのもとで求職者は増加した。有効求人数(季節調整値)は前月に比べて0.1%減、有効求職者数(同)は0.6%増だった。
新規求人数(原数値)は93万9104人となり、前年同月比4.2%増加した。産業別では「宿泊業、飲食サービス業」が同27.0%増と伸びた。このほか「運輸業、郵便業」が同4.0%増、「卸売業、小売業」で同3.8%増となった。一方で、原材料の高騰で生産を減らした製造業は4.0%減少した。
新規求人倍率は2.38倍となり、2か月連続の横ばいだった。
Comment
1月の有効求人倍率は0.01ポイント低下し、求職者の増加が見られる一方で、有効求人数は減少した。コロナ禍からの経済正常化が進む中、「宿泊業、飲食サービス業」や「運輸業、郵便業」などで新規求人数が増加しているが、原材料高騰の影響を受けた製造業では減少が見られた。人事コンサルティングとしては、各産業の需要変動に対応する柔軟な人材確保戦略が必要である。また、景気回復に伴い競争が激化する分野では、賃金や労働条件の改善が企業の競争力を左右するため、戦略的な人材マネジメントの導入が重要である。
(2023年3月3日発表)