毎月勤労統計(2022年)
厚生労働省が毎月発表している賃金、労働時間及び雇用の変動に関する雇用指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
2022年12月分
Summary
2022年12月の実質賃金は前年比0.1%上昇となり、9か月ぶりのプラスに転じた。
労働者1人当たり平均の名目賃金を示す12月の現金給与総額は前年比4.8%増の57万2008円となり、11月の同1.9%増からプラス幅が大幅に拡大した。ボーナスなど特別に支払われた給与が前年比7.6%増の30万2268円に増加したことが寄与した。
所定内給与も前年比1.8%増の25万0083円となり、11月の同1.5%増から伸長した。一方、所定外給与は前年比3.0%増の1万9657円となり、11月の同5.4%増からプラス幅が縮小した。
当時に発表された2022年暦年の実質賃金は前年比0.9%減となり、2年ぶりのマイナスとなった。
Comment
実質賃金の増加は労働市場における前向きな兆候である。特に名目賃金の増加は、企業の収益力向上を反映していると考えられる。このような環境では、人事コンサルタントは、適切な報酬設計と人材戦略を提案することが重要である。特にボーナスの増加が顕著な場合、その成果を持続させるためにも、人事コンサルティングを通じて労働者のモチベーションと生産性を高める施策が求められる。
(2023年2月6日発表)
2022年11月分
Summary
11月の毎月勤労統計(速報)によると、実質賃金は前年比3.8%低下となり、2014年5月以来8年6か月ぶりの大幅なマイナスとなった。実質賃金の減少は8か月連続となる。
ボーナスなど特別に支払われた給与が前年比19.2%減少したことが主な要因で、10月は同2.9%増だった。11月は製造業、運輸・郵便業、教育・学習支援などの業種で大きく減少した。
所定内給与は前年比1.5%増の24万円9550円となり、10月の同1.0%増と比べて伸びが拡大した。一方、所定外給与は前年比5.2%増の1万9566円と10月の同7.7%増からプラス幅が縮小した。
Comment
このような状況の中で、人事コンサルタントは経済環境の変動に柔軟に対応し、人事戦略を見直す必要がある。企業は、不確実性が高い市場環境下でも従業員のモチベーションを維持し、組織全体のレジリエンスを強化すべきである。
(2023年1月6日発表)
2022年10月分
Summary
10月の1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比2.6%減少した。7か月連続の減少となり、マイナス幅は2015年6月(2.8%減)以来、7年4か月ぶりの下落幅となった。
名目賃金に相当する1人あたりの現金給与総額は1.8%増の27万5888円と、10か月連続で増加した。基本給にあたる所定内給与は1.3%増、残業代などの所定外給与は7.9%増加した。一方で賃金の実質水準を算出する指標となる物価は前年同月比4.4%上昇した。
現金給与総額を就業形態別にみると、正社員などの一般労働者は1.9%増の35万7332円、パートタイム労働者は1.5%増の9万9556円だった。
Comment
物価上昇による実質賃金の減少は、従業員の生活費への圧力を示しており、企業は適切な給与調整を行うことが急務となっている。人事コンサルタントは、給与体系の見直しや物価変動への対策を提案し、従業員の満足度と企業の競争力を高める人事コンサルティングサービスを提供する必要がある。
(2022年12月6日発表)
2022年9月分
Summary
9月の1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比1.3%減少した。6か月連続のマイナスとなった。実質賃金の低下が6か月以上続くのは新型コロナウイルスの流行1年目の2020年3月〜2021年1月以来となる。当時は働く時間の減少から、名目賃金が落ち込んでいた。
9月の現金給与総額は27万5787円と2.1%増加した。現金給与総額を就業形態別にみると正社員など一般労働者は2.4%増、パートタイム労働者は3.4%増だった。全体で残業代などの所定外給与が6.7%増となり、大きく伸びた。
社会経済活動の正常化で働く時間が伸びており、1人当たりの総実労働時間は1.3%増の136.9時間となった。
Comment
9月の実質賃金の減少は、労働市場の現状を示す重要な指標である。特に物価上昇に対して賃金の伸びが追いつかない状況は、企業の人事戦略に再考を迫るものだ。人事コンサルタントは、変化する労働環境に合わせた柔軟な報酬制度や働き方改革の支援を通じ、持続可能な人材戦略を提案する必要がある。
(2022年11月8日発表)
2022年8月分
Summary
8月の1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比1.7%減少し、5か月連続のマイナスとなった。
名目の1人当たりの現金給与総額は27万9388円となり1.7%増加した。基本給に当たる所定内給与は24万7926円となり1.6%増加し、1997年6月(1.7%)以来25年2か月ぶりの増加率となった。飲食サービスの伸びが最も大きく、基本給では8.5%増の11万6405円だった。
名目賃金の伸びは物価の上昇ペースを下回る。賃金の実質水準を算出する指標となる物価は8月に3.5%上昇した。7月の3.1%より伸び幅が大きくなった。
Comment
実質賃金の減少が続いているものの、名目賃金と所定内給与の増加は、労働市場での一定のポジティブな動きを示している。特に飲食サービス業での基本給の大幅な増加は、業界の回復が進んでいることを示している。しかし、物価上昇が名目賃金の伸びを上回っているため、人事コンサルタントは、企業が従業員の購買力を維持し、モチベーションを高めるための賃金戦略を再検討することが必要である。
(2022年10月7日発表)
2022年7月分
Summary
7月の実質賃金は前年比1.3%減少し、4か月連続で前年比マイナスとなった。名目賃金を示す現金給与総額は同1.8%増加したが、消費者物価指数が同3.1%上昇したことで相殺された。実質賃金のマイナス幅は6月の0.6%から拡大した。
7月の現金給与総額は、労働者1人当たりの平均で前年比1.8%増の37万7809円となった。プラス幅は6月の2.0%から縮小した。所定内給与は前年比1.2%増の24万9813円、所定外給与は同4.7%増の1万8961円だった。
現金給与総額を就業形態別に見ると、正社員などの一般労働者は1.7%増の50万828円、パートタイム労働者は3.0%増の10万6167円だった。産業別の伸び幅は新型コロナウイルス禍からの持ち直しが進んできた飲食サービス業(13.0%増)が最も大きかった。生活関連サービス(5.7%増)、学術研究(5.4%増)が続いた。
Comment
7月の実質賃金は前年比1.3%減少し、物価上昇の影響が4か月連続で続いている。名目賃金は増加しているものの、消費者物価指数の3.1%上昇により購買力が減少している。この状況下で人事コンサルタントは、企業に給与体系の再検討やインフレ対応策の導入を促す必要がある。特に、新型コロナウイルス禍からの回復が進む産業での成長を活かし、柔軟な報酬戦略や福利厚生の拡充によって従業員の士気を高める取り組みが必要である。
(2022年9月6日発表)
2022年6月分
Summary
6月の実質賃金は前年同月比で0.4%減少し、3か月連続のマイナスとなった。
1人あたりの現金給与総額は前年同月比2.2%増の45万2695円となり、6か月連続で増加した。基本給を指す所定内給与は1.3%増、残業代などの所定外給与は5.8%増と堅調に伸びた。
現金給与総額を就業形態別に見ると、正社員などの一般労働者は2.5%増の60万8617円、パートタイム労働者は2.7%増の10万8730円だった。
産業別ではコロナ禍で落ち込んでいた運輸業・郵便業(11.8%増)や宿泊業・飲食サービス業(10.9%増)が伸び、全体を押し上げた。1人あたりの総実労働時間は1.2%増の142.4時間だった。宿泊業・飲食サービス業が11.9%増となり、大きく伸びた。
Comment
実質賃金の微減にも関わらず名目賃金の堅調な増加は、人材投資意欲の現れと見ることができる。特に運輸業や宿泊業などの回復が顕著な業界において競争力を維持するためには、効果的な賃金戦略と労働条件の最適化が必須となる。人事コンサルタントとして持続可能な人材管理の施策を設計し、業績回復を人事の側面から支援することが可能だ。
(2022年8月5日発表)
2022年5月分
Summary
物価変動の影響を除いた5月の実質賃金は前年同月比で1.8%減少した。新型コロナウイルス禍の2020年7月(1.8%減)以来の落ち込み幅となった。2020年の平均を100とした5月の実質賃金指数は85.2だった。
名目賃金に相当する1人あたりの現金給与総額は前年同月比で1.0%増の27万7016円となり、5か月連続で増加した。残業代などを含む所定外給与の伸びが大きく、5.5%増の1万8339円となり14か月連続のプラスだった。基本給を示す所定内給与も1.2%増の24万7975円と堅調な伸びを示した。ボーナスなどの「特別に支払われた給与」は7.0%減だった。
現金給与総額を就業形態別に見ると、正社員などの一般労働者は1.2%増の35万7047円、パートタイム労働者は1.9%増の9万7600円だった。
産業別ではコロナ禍で落ち込んでいた宿泊業・飲食サービス業が10.5%増と大幅に伸び、全体の押し上げ要因となった。製造業は1.4%減だった。
Comment
実質賃金の1.8%減少が新型コロナ禍以来の落ち込み幅を示している一方で、名目賃金は1.0%増加し、所定外給与も堅調な伸びを見せた。人事コンサルティングの視点から、企業はインフレと労働市場の変動に対応し、柔軟な賃金制度と福利厚生の充実を図ることで、持続的な人材確保と業績向上を目指すべきである。
(2022年7月5日発表)
2022年4月分
Summary
4月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で1.2%減少となり、4か月ぶりにマイナスとなった。実質賃金は3月も速報値ではマイナス水準だったが、確報値で前年同月比0.6%増加だった。
4月の1人あたりの現金給与総額は28万3475円となり、1.7%増加した。基本給を指す所定内給与は1.1%増加、残業代などの所定外給与も5.9%増加となり、堅調に増加した。
就業形態別で見ると、パートタイム労働者の所定外給与が15.6%と増加幅が大きかった。3月下旬に新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」が全国で解除され、飲食店などの営業制限がなくなったことが影響した。
総実労働時間は142時間となり、全体では0.9%の減少となったが、残業などの所定外労働時間は5.7%増加して10.7時間だった。産業別では特に飲食サービス業等が46.4%増の4.8時間だった。
Comment
実質賃金が前年同月比で1.2%減少し、4か月ぶりにマイナスに転じたことは、物価上昇の影響が労働者の購買力を圧迫していることを示している。このような経済環境下での人事コンサルティングでは、労働者の生活安定を図るための賃金構造の見直しや、長時間労働の是正を含む働き方改革の推進が求められる。人事コンサルタントとして、企業に対し従業員の健康管理と生産性向上の両立を図る施策を提案することが重要である。
(2022年6月7日発表)
2022年3月分
Summary
3月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で0.2%減少した。マイナスは3か月ぶり。
名目賃金にあたる1人当たり現金給与総額は1.2%増加して 28万6567円だった。基本給を示す所定内給与が0.5%、残業代など所定外給与は2.5%、それぞれ増加した。所定外労働時間が2.8%増加し、給与増に寄与した。ボーナスなど特別に支払われた給与は10.7%の増加だった。
現金給与総額を就業形態別にみると、正社員など一般労働者が1.5%の増加、パートタイム労働者は0.2%の減少となった。
給与総額の産業別は金融業・保険業や建設業の伸びが目立った。宿泊業・飲食サービス業も5.4%増加した。一方で製造業は1.1%減少となった。
Comment
3月の実質賃金が前年同月比で0.2%減少し、3か月ぶりのマイナスとなったことは、企業の人事戦略において重要な警鐘である。特に、名目賃金が増加している一方で、実質賃金が減少している現状は、インフレ圧力や労働市場の変動を反映していると考えられる。人事コンサルタントとしては、従業員のモチベーション維持と生活水準向上のために、賃金体系の見直しや、非金融的なインセンティブの導入を提案する必要がある。また、業種別の給与増減を分析し、特に製造業の減少に対しては労働効率の改善策やスキルアップ研修の実施を推進することが求められる。人事コンサルティングのテーマとして、業界特性に応じた柔軟な賃金戦略と労働環境の最適化を掲げるべきである。
(2022年5月9日発表)
2022年2月分
Summary
2月の1人あたりの現金給与総額は26万9142円となり、前年同月比で1.2%増加した。消費者物価指数の上昇率も拡大し、物価の影響を除いた実質賃金は横ばいだった。残業代など所定外給与は前年同月比5.8%増加して1万8651円、ボーナスなど特別に支払われた給与も4.7%増加して4719円となり、伸びが目立った。
総実労働時間は0.1%減少して130.7時間だった。残業など所定外の労働時間は増加したものの、所定内の労働時間が減少した。
現金給与総額を就業形態別でみると、正社員など一般労働者が1.2%増加の34万7971円、パートタイム労働者は1.3%増加の9万5196円だった。
Comment
2月の賃金データからは、名目賃金が増加しつつも、物価上昇による実質賃金の横ばいが見られる。所定外給与やボーナスの増加はポジティブな動きだが、総実労働時間の減少や所定内労働時間の縮小は生産性や労働者の疲弊を懸念させる要因である。企業は、持続可能な賃金の引き上げを図りつつ、労働時間管理の改善にも注力する必要がある。人事コンサルタントとしては、賃金制度の見直しと共に、労働時間の効率化を促進する働き方改革を提案し、従業員の働きがいと生産性を高める施策を推進すべきである。
(2022年4月5日発表)
2022年1月分
Summary
1月の物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比0.4%増加した。
名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は、前年同月比0.9%増の27万4172円となり、2か月ぶりに増加した。基本給にあたる所定内給与は0.4%増、ボーナスなど特別に支払われた給与は7.6%増、残業代などの所定外給与は4.4%増だった。残業代は残業時間が大幅に減少していた前年同月の反動が出た。
パートタイム労働者比率は31.54%となり、前年同月比0.31ポイント上昇した。上昇は10か月連続。時間あたり給与は同0.6%増の1243円だった。
Comment
1月の実質賃金はわずかに増加し、名目賃金の上昇も見られるが、物価変動の影響を考慮すると企業にはさらなる賃金調整が求められる。特にボーナスや残業代の増加が目立つが、これは前年の低水準からの反動と考えられる。人事コンサルタントとしては、長期的な賃金戦略の見直しを推奨する必要がある。パートタイム労働者の比率が上昇していることから、パートタイム従業員に対する公正な給与とキャリアパスの整備も重要なテーマである。
(2022年3月8日発表)