米求人・労働移動状況

米労働省から毎月発表される米国の求人・採用・解雇など雇用全般に関する調査結果に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。

2025年4月分

Summary

4月の求人件数は前月から19万1000件増の739万1000件となり、市場予想を上回った。3月分は719万2000件から720万件に上方修正された。求人数の増加は、3月の急激な減少に対する調整局面だったと考えられる。

業種別では、レストラン・バーで13万5000件減となったほか、製造業、金融・保険業、州・地方自治体の教育部門でも減少した。一方、トランプ米政権による連邦政府職員の採用凍結措置にもかかわらず、連邦政府では1万3000人増加した。

4月の求人率は4.4%と、3月の4.3%から上昇した。

4月の採用数は16万9000件増の557万3000件だった。建設業、専門・ビジネスサービス部門、宿泊・飲食サービスがけん引した。採用率は3.5%と、3月の3.4%からわずかに上昇した。

Comment

4月の米国求人件数の増加は、3月の急減からの調整的反発と考えられるが、業種間では明暗が分かれており、レストラン・バー、製造業、金融・保険、教育部門で求人数が減少した一方、連邦政府では採用凍結措置にもかかわらず求人が増加した。採用は、建設業、専門・ビジネスサービス、宿泊・飲食サービス分野が採用をけん引しており、採用率も3.5%に上昇した。
人事コンサルタントとしては、業種別の需給バランスに注目し、採用戦略の精緻化を企業に提案する必要がある。求人が減少している分野では、採用難の長期化を見据えたタレントプールの確保と、既存人材のリテンション施策の強化が求められる。一方で採用が活発な分野では、迅速な選考プロセスと魅力ある雇用条件の提示が競争優位につながる。さらに、求人・採用の回復傾向を受け、企業は人材配置の最適化や、中長期的な人材育成計画の再構築を通じて、組織の変動対応力を高めることが急務となる。

(2025年6月3日発表)

2025年3月分

Summary

3月の米国の求人件数は7,192,000件と前月から大きな変化はなく、前年同月比で901,000件減少した。求人率は4.3%となり、前月とほぼ同水準だった。業種別では、連邦政府で36,000件の減少が見られた。2月の求人件数は7,500,000件に88,000件下方修正された。

採用件数は5,411,000件となり、採用率は3.4%と前月と同じでだった。業種別でも大きな変動は確認されていない。

一方、離職総数は5,137,000件、離職率は3.2%と前月からわずかに減少した。自主退職は3,332,000件であり、退職率は2.1%で変化はほとんどなかった。運輸・倉庫・公益事業分野では49,000件の自主退職減が見られた。

解雇・免職件数は1,600,000件であり、率は1.0%で微減した。特に小売業で66,000件、連邦政府で11,000件の減少が見られたが、州・地方政府(教育部門除く)では17,000件の増加があった。その他の離職は247,000件で変化はほとんどなかった。

企業規模別では、従業員1~9人、5,000人以上の企業では求人、採用、離職率に大きな変動は見られなかった。

Comment

3月の米国求人件数は前月からほぼ横ばいであったが、前年同月比では90万件減少し、労働市場の需要減退傾向が続いている。採用件数や離職率も前月比でほぼ変わらず、企業の採用・離職動向に大きな変化は見られないものの、特に運輸・倉庫・公益事業での自主退職減や、連邦政府・小売業での解雇減少は業界特有の調整を示している。求人率が4.3%にとどまり、依然として企業の採用意欲が抑制されている状況がうかがえる。
人事コンサルタントとしては、採用需要の鈍化と離職率の安定を背景に、企業に対して既存人材の育成・定着に重点を置いた戦略を提案すべきである。特に、求人数が減少傾向にある今、採用競争力を補うためには、従業員のキャリアパス明確化、スキル開発、リスキリングの推進が不可欠である。また、離職が減少している運輸・倉庫・公益分野では、職場環境改善や柔軟な勤務制度の導入により、さらに定着率を高める努力が必要となる。大規模・小規模企業ともに採用・離職動向に大きな変動がない中で、人的資本の質的向上を目指す長期的視点の人事戦略が求められる。

(2025年4月29日発表)

2025年2月分

Summary

2月の求人件数は756万8000件に減少し、市場予想を下回った。前年同月比では87万7千件減少した。前月は776万2000件(速報値774万件)に上方修正された。

採用数は539万6千人、採用率は3.4%となり、前月と同水準だった。離職者数は526万1千人、離職率は3.3%となり、これも前月とほぼ同じであった。離職の内訳では、自発的な退職が319万5千人で、前年同月比では27万3千人減少したが、前月比ではほぼ変化がなかった。

解雇やレイオフは180万人で、前月からの変動は小さいが、業種別には小売業や不動産業、連邦政府での増加が確認された。一方、運輸・倉庫・公共事業部門では減少が見られた。その他の離職(退職、死亡、転勤など)は27万5千人で、前月から6万7千人減少した。

従業員規模別では、従業員1~9人の事業所においては自発的離職率とその他の離職率が低下したが、解雇・レイオフ率は上昇した。大規模事業所(従業員5,000人以上)では、各種比率に大きな変化は見られなかった。

Comment

2月の米求人件数は756万8000件と市場予想を下回り、前年同月比では約88万件の大幅減少となった。採用・離職率は前月と同水準で推移したが、自発的離職者数が前年同月比で27万人以上減少しており、転職市場の慎重姿勢が続いている。一方、解雇・レイオフは小売業や不動産業、連邦政府で増加し、特に小規模事業所では解雇率の上昇が目立っている。人事コンサルタントとしては、企業に対し、安定的な人材確保と雇用維持の両立を目指した戦略の再構築を提案するべきである。とりわけ、小規模事業所では限られたリソースの中で人材の流出と解雇増加に対応する必要があるため、業務効率化や従業員満足度向上を目的とした制度設計が不可欠である。また、求人数の減少傾向を受けて、企業間での人材獲得競争は一層厳しくなることが想定されるため、採用力を強化するためのブランディングや採用プロセスの迅速化が求められる。転職市場の冷え込みが進む中、社内の人材活用とキャリア開発の促進によって、組織の持続的な成長を支える人事戦略が今こそ重要である。

(2025年4月1日発表)

2025年1月分

Summary

1月の求人件数は23万2000件増加して774万件となった。昨年12月分は、前回発表の760万件から750万8000件に下方修正された。

1月の求人数の増加は小売業がけん引し、14万3000件増となった。金融部門では12万2000件、医療および社会福祉では5万8000件増加した。一方、専門・ビジネスサービス部門の求人数は12万2000件、レジャー・ホスピタリティー部門は4万6000件減少した。連邦政府もト3000件減少した。求人率は12月の4.5%から1月は4.6%に上昇した。

1月の解雇は3万4000人減少して163万5000人となり、4か月連続で減少して昨年6月以来の低水準となった。

Comment

1月の米求人件数は774万件と23万2000件増加し、特に小売業(14万3000件増)や金融(12万2000件増)が伸びをけん引した。一方で、専門・ビジネスサービス(12万2000件減)やレジャー・ホスピタリティー(4万6000件減)では減少が見られ、産業ごとの雇用需要の二極化が進んでいる。また、連邦政府ではトランプ政権による採用凍結の影響で求人数が減少した。求人率は4.6%に上昇し、労働市場の活性度は維持されているが、求職者の選択肢の偏りが懸念される。人事コンサルタントとしては、成長分野と縮小分野のギャップを埋める戦略が求められる。小売・金融・医療分野では、即戦力となる人材の確保を迅速に進めるため、効果的な採用プロセスの最適化とブランディングの強化が不可欠である。一方で、専門・ビジネスサービスやレジャー・ホスピタリティー分野では、雇用需要の変動に対応するため、従業員のリスキリングや異業種転職を支援する仕組みが必要となる。また、解雇件数が減少傾向にある今こそ、企業は従業員の定着戦略を見直し、キャリア成長機会の提供や職場環境の改善を通じて、長期的な人材確保に注力する必要がある。

(2025年3月11日発表)

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