米求人・労働移動状況

米労働省から毎月発表される米国の求人・採用・解雇など雇用全般に関する調査結果に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。

2024年10月分

Summary

10月の米求人件数は774万4000件に増加し、市場予想を上回った。前月は737万2000件(速報値744万3000件)に下方修正された。

求人件数の増加は、専門職・ビジネスサービスと宿泊・飲食サービスがけん引役となった。

レイオフ・解雇件数は16万9000件減の163万3000件となり、1年半ぶりの大幅な減少となった。

10月の失業者1人当たりの求人件数は1.11件となり、前月の1.08件から上昇した。業種別の求人件数は、専門・ビジネスサービスがけん引した。宿泊・飲食サービスや情報セクターで増加した一方、連邦政府では減少した。求人率は前月の4.4%から4.6%に上昇した。

10月の採用件数は26万9000件減の531万3000件だった。採用率は3.3%と、前月の3.5%から低下した。採用件数の減少は4地域全てで見られ、南部では10万6000件減となった。

Comment

10月の米求人件数は774万4000件に増加し、市場予想を上回ったが、採用件数は減少し、採用率も低下した。専門職・ビジネスサービスや宿泊・飲食サービスでの求人増加が顕著である一方、ハリケーンやボーイングのストライキが南部を含む地域の採用活動に影響を及ぼしている。これにより、求人率の上昇と採用率の低下という労働市場の二極化が浮き彫りとなった。人事コンサルタントは、特定産業の採用困難を解消するためのターゲット採用戦略を強化し、業界ごとのニーズに応じたオファーパッケージや採用プロセスの効率化を提案すべきである。

(2024年10月29日発表)

2024年9月分

Summary

9月の米求人件数は744万3000件に減少し、市場予想を下回った。前月は786万1000件(速報値804万件)に下方修正された。求人件数は過去2年の大半において減少傾向にあり、今回の統計では幅広い業界での減少が示された。9月求人件数の減少は、職種別ではヘルスケア・社会補助、政府機関、宿泊や飲食サービスで目立った。

9月のレイオフ件数は23年1月以来の高水準に増加した。自発的離職者の割合である離職率は低下し、新しい職を見つける自信が薄れていることを示唆した。

9月求人件数の減少は、職種別ではヘルスケア・社会補助、政府機関、宿泊や飲食サービスで目立った。

米金融当局が注視する失業者1人当たりの求人件数は1.1件となり、前月から横ばいとなった。2022年のピーク時には2件だった。

Comment

9月の米求人件数は744万3000件に減少し、予想を下回った。ヘルスケア、政府機関、宿泊・飲食サービス業といった主要分野で求人が減少し、雇用主が採用に慎重姿勢を示していることがうかがえる。レイオフ件数の増加や離職率の低下も相まって、転職に対する労働者の自信が低下している状況である。人事コンサルタントとしては、この環境下で企業に対し、従業員のリスキリングを促進し、キャリアパスを明示することで、エンゲージメント強化を図る施策を提案すべきである。

(2024年10月29日発表)

2024年8月分

Summary

8月の米求人件数は804万件に増加し、市場予想を上回った。前月は771万1000件(速報値767万3000件)に上方修正された。

求人件数は、建設業では2009年以来最大の伸び。州・地方自治体でも大きく増加した。

雇用率は3.3%に低下し、新型コロナウイルス禍の2020年を除けば、2013年以来の低水準に並んだ。小売りと運輸・倉庫で最も大きく落ち込んだ。

失業者1人当たりの求人件数は1.1件と、3年ぶり低水準付近にとどまった。2022年に記録したピークでは、失業者1人に対して2件の求人があった。自発的離職者の割合である離職率は1.9%に低下し、2020年6以来の低水準となった。

Comment

8月の米求人件数が増加し、労働市場の一部では活況を呈しているが、小売りや運輸業での落ち込みや離職率の低下が、労働者の新たな職を見つける自信の低下を示している。建設業と公共部門での求人が急増していることから、人事コンサルタントはこれら成長産業での人材確保に向けた戦略的提案が求められる。一方、FOMCの政策金利引き下げに伴う労働市場の変化を注視し、特にレイオフ率が低い状況下でのタレントマネジメントや従業員定着策の強化が重要である。企業にとって、変動する経済環境に対応した柔軟な採用方針の構築が不可欠である。

(2024年10月1日発表)

2024年7月分

Summary

7月の求人件数は767万3000件となり、前月からやや減少し、前年同月比では110万件減少した。特に医療・福祉業界では18.7万件の減少が見られ、地方自治体(教育を除く)や運輸業でもそれぞれ10.1万件と8.8万件の減少が報告されている。一方、専門職やビジネスサービスでは17.8万件の増加があり、連邦政府においても2.8万件の増加が見られた。

新規採用数は550万人となり、宿泊・飲食サービス業では15.6万人の増加があったが、連邦政府では8,000人の減少が確認された。全体の離職者数は540万人で、そのうち自主退職者は330万人、解雇や一時解雇は180万人となった。

また、解雇・一時解雇は宿泊・飲食サービス業で7.5万人、金融・保険業で2.1万人増加したことが報告された。

Comment

7月の米国の求人数は、弱含みの内容となった。そして、医療・福祉や地方自治体、運輸業の減少に対し、専門職やビジネスサービスの増加が見られるなど、業界間の動向に大きなばらつきが顕著である。人事コンサルタントとしては、業界ごとのニーズの変化に柔軟に対応する採用戦略が重要である。特に人材流動が激しい宿泊・飲食サービスや、増加が見込まれる専門職領域において、迅速な人材確保と定着策を提案する必要がある。

(2024年9月4日発表)

2024年6月分

Summary

6月の求人件数は818万4000件に減少した。前月は823万件(速報値814万件)に上方修正された。

6月は貿易、宿泊・飲食サービス、州・地方自治体で求人が特に増えた。一方、製造業では2年ぶりの大幅減となった。

雇用率は、新型コロナ感染がパンデミック(世界的大流行)となって以来の水準に低下した。娯楽・ホスピタリティーとプロフェッショナル・ビジネスサービスの分野で特に低下した。レイオフ率は2年ぶりの低水準となった。

自発的離職者の割合である離職率は2.1%と前月から横ばいとなり、2020年以来の低水準付近にとどまった。離職率の低さは、数年前と比べて労働者が新しい職を見つける自信が薄れていることを示している。

Comment

6月の米国求人件数は減少し、雇用市場の落ち着きを示している。このデータから、特に製造業での求人が減少しており、製造業の景気減速が懸念される。一方で、貿易やホスピタリティー業界での求人増加は回復の兆しと捉えられるが、全体の雇用率はパンデミック以降の低水準にある。人事コンサルタントとしては、企業に対し社員の定着戦略の強化を提案することが重要である。また、離職率の低さは労働者の転職意欲の低下を示しており、企業側もこれを踏まえた人材戦略の再構築が必要となる。

(2024年7月30日発表)

2024年5月分

Summary

5月の求人件数は814万件に増加して市場予想を上回った。前月は791万9000件(速報値805万9000件)に下方修正され、3年ぶりの低水準となった。

雇用率とレイオフ率は共に上昇し、雇用市場の流動性を示唆した。

米金融当局が注視する失業者1人に対する求人件数は前月と同じ1.2件となり、2021年6月以来の低水準にとどまった。

5月の求人件数増加は製造業や政府機関、医療関係がけん引した。一方、宿泊・飲食サービス業での求人減少が目立った。採用の回復をけん引したのは、専門職・ビジネスサービス業と建設業だった。

自発的離職者の割合である離職率は前月と同じ2.2となり、2020年以来の低水準となった。離職率の低さは、数年前と比べて新しい職を見つける自信が薄れていることを示唆している。

Comment

雇用市場の流動性が増し、失業率とレイオフ率の上昇も見られるが、失業者1人に対する求人件数が低水準にとどまっていることは、企業の採用意欲が限定的であることを示している。人事コンサルティングにおいては、企業が効果的に人材を確保し、適切に配置するための戦略を提供することが求められる。

(2024年7月2日発表)

2024年4月分

Summary

4月の米求人件数は805万9000件に減少し、市場予想を下回った。前月は835万5000件(速報値848万8000件)に下方修正された。

求人件数の減少は広範にわたった。医療では3年ぶりの低水準となり、製造業では2020年12月以来の低水準となった。

最近のデータは労働市場の減速を示しているが、その減速は人員削減ではなく、採用ペースの鈍化による緩やかなものとなっている。

雇用率とレイオフ率は共に前月から変わらずとなった。レイオフは歴史的な低水準にとどまり、雇用は減速傾向にある。これは、従業員の数が需要に見合った適切な水準にあると企業が判断していることを示している。

自発的離職者の割合である離職率は2020年以来の低水準にとどまった。

Comment

労働市場の減速は、歴史的な低水準のレイオフ率が示すように、人員削減ではなく、需要に見合った適切な人員配置への移行を意味する。米金融当局がインフレ抑制と需要調整を目指す中、失業者を増やさずに労働市場の安定を維持することが求められている。人事コンサルタントとして、企業には柔軟な労働戦略と適切な人材配置の重要性を強調したい。

(2024年6月4日発表)

2024年3月分

Summary

3月の米求人件数は848万8000件に減少し、市場予想を下回った。前月は881万3000件(速報値875万6000件)に上方修正された。

自発的離職者の割合である離職率は2.1%に低下し、2020年8月以来の低水準となった。労働者の間で新しい職や現在よりも賃金の高い職を見つける自信が低下し、転職を見合わせていることが示された。

採用レートは3.5%に低下し、新型コロナウイルスのパンデミック)初期に並ぶ低水準だった。低下は広範囲に広がっており、貿易・運輸で著しかった。レイオフも減少し、2022年末以来の少ない数にとどまった。

失業者1人に対する求人件数は1.3件に減少、21年8月以来の低水準に並んだ。

Comment

米国の求人市場の冷却が進む中、人事コンサルタントは企業の採用戦略を再検討する必要がある。特に採用率の低下や離職率の変動は、人材確保と保持のアプローチを見直す契機となる。人事コンサルティングを通じて、企業からはこうした市場動向を反映した効果的な雇用管理の方策の提案が求められていると考える。

(2024年5月1日発表)

2024年2月分

Summary

2月の米求人件数は875万6000件となり前月から若干増加した。前月は874万8000件(速報値886万3000件)に下方修正された。

労働市場が軟化しつつある兆候も見られる。求人件数は情報、医療、小売りで減少した、レイオフはほぼ1年ぶりの高水準となった。

また、自発的離職者の割合である離職率は2.2%で変わらず、2020年以来の低水準となった。

Comment

2月の米求人件数は前月からほぼ変わらずとなり、労働力の需要が比較的高い水準で安定しつつある状況が示された。

(2024年4月2日発表)

2024年1月分

Summary

1月の米求人件数は886万3000件に減少した。前月は888万9000件(速報値902万6000件)に下方修正された。

部門別では、1月の求人件数は貿易・運輸や小売り、政府で減少した一方、レジャー・宿泊や専門・事業サービス、ヘルスケアでは増加した。

求人活動は徐々に熱気が冷めつつあるが、労働市場は底堅い状況が続いており、求職者1人に対する求人件数は1件を超えている。ただし、2件だった2022年のピークからは、大きく下がっている。

1月の自発的離職者は約339万人となり、3年ぶりの低い数字だった。

Comment

1月の米国求人件数はわずかに減少したものの、レジャー・宿泊、専門・事業サービス、ヘルスケア部門では増加が見られる。この状況は、人事コンサルタントにとって、業界特有のニーズに合わせた採用戦略を構築する機会であると言える。労働市場の変化に対応し、企業が求人環境の冷え込みにも強い採用体制を築くためのサポートを提供する必要がある。

(2024年3月6日発表)