米求人・労働移動状況

米労働省から毎月発表される米国の求人・採用・解雇など雇用全般に関する調査結果に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。

2025年1月分

Summary

1月の求人件数は23万2000件増加して774万件となった。昨年12月分は、前回発表の760万件から750万8000件に下方修正された。

1月の求人数の増加は小売業がけん引し、14万3000件増となった。金融部門では12万2000件、医療および社会福祉では5万8000件増加した。一方、専門・ビジネスサービス部門の求人数は12万2000件、レジャー・ホスピタリティー部門は4万6000件減少した。連邦政府もト3000件減少した。求人率は12月の4.5%から1月は4.6%に上昇した。

1月の解雇は3万4000人減少して163万5000人となり、4か月連続で減少して昨年6月以来の低水準となった。

Comment

1月の米求人件数は774万件と23万2000件増加し、特に小売業(14万3000件増)や金融(12万2000件増)が伸びをけん引した。一方で、専門・ビジネスサービス(12万2000件減)やレジャー・ホスピタリティー(4万6000件減)では減少が見られ、産業ごとの雇用需要の二極化が進んでいる。また、連邦政府ではトランプ政権による採用凍結の影響で求人数が減少した。求人率は4.6%に上昇し、労働市場の活性度は維持されているが、求職者の選択肢の偏りが懸念される。人事コンサルタントとしては、成長分野と縮小分野のギャップを埋める戦略が求められる。小売・金融・医療分野では、即戦力となる人材の確保を迅速に進めるため、効果的な採用プロセスの最適化とブランディングの強化が不可欠である。一方で、専門・ビジネスサービスやレジャー・ホスピタリティー分野では、雇用需要の変動に対応するため、従業員のスキル再訓練(リスキリング)や異業種転職を支援する仕組みが必要となる。また、解雇件数が減少傾向にある今こそ、企業は従業員の定着戦略を見直し、キャリア成長機会の提供や職場環境の改善を通じて、長期的な人材確保に注力すべきである。

(2025年3月11日発表)

2024年12月分

Summary

12月の求人件数(季節調整値)は760万件で前月比55.6万件減少し、前年同月比では130万件の減少となった。特に、専門・ビジネスサービス(22.5万件減)、医療・社会福祉(18万件減)、金融・保険(13.6万件減)で顕著な減少が見られた。一方、芸術・娯楽・レクリエーション分野では6.5万件増加した。

採用件数は550万件で、前月からほぼ変わらず、前年同月比では32.5万件減少した。業種別では、金融・保険(4.8万件増)で増加が見られたが、その他の業種では大きな変動はなかった。

総離職件数は530万件で、前月とほぼ同水準であった。自発的離職は320万件で、前月と同程度ながら前年同月比では24.2万件減少した。退職率は2.0%で変化はなかった。輸送・倉庫・公益事業部門での自主退職は4.2万件減少した。一方、解雇・解雇件数は180万件で前月比ほぼ変わらず、輸送・倉庫・公益事業(8.7万件増)および鉱業・伐採(6,000件増)では増加した。

Comment

12月の米求人件数は760万件となり、前月比55.6万件減少し、特に専門・ビジネスサービス、医療・社会福祉、金融・保険分野での求人数の減少が顕著であった。採用件数や離職率には大きな変化が見られず、労働市場全体としては安定しているものの、求人減少は労働需要の鈍化を示唆している。特に、専門職や医療分野での縮小は、企業の採用戦略に影響を与える可能性がある。人事コンサルタントとしては、企業に対し、労働市場の変化を踏まえた人材確保の方針を見直すよう提案すべきである。採用が減少傾向にある分野では、優秀な人材を確保するために、報酬体系やキャリア開発機会を強化する必要がある。また、離職率が安定している中で、既存従業員のエンゲージメントを高める施策を講じ、流動性の低下に対応することが、今後の企業競争力を左右する要素となるだろう。

(2025年2月4日発表)

2024年11月分

Summary

11月の米求人件数は809万8000件に増加し、市場予想を大幅に上回って、6か月ぶりの高水準となった。前月は783万9000件(速報値774万4000件)に上方修正された。

今回の求人件数増加は、ほぼ全てが専門職・ビジネスサービスと金融・保険によるものだった。専門職・ビジネスサービスはほぼ2年ぶり高水準となった。一方、宿泊・飲食サービスと製造業では求人数が減少した。

レイオフ件数は低水準でほぼ横ばいだったが、雇用率は低下し、2020年4月以来の低水準に並んだ。

自発的離職者の割合である離職率は1.9%に低下し、コロナ禍初期以来の低水準に並んだ。離職率の低下は業界全体でかなり広範囲にわたった。これは、新たな職を見つける自信を失っている人が増えていることを示している。

失業者1人当たりの求人件数は1.1件となり、コロナ禍前の水準と一致した。2022年のピーク時には2件だった。

Comment

インフレや金利上昇で不透明感が増す米国経済において、高度専門職の求人は依然旺盛である一方、離職率の低下が示すように求職者の流動性は縮小傾向にある。このような局面では、人事コンサルティングが果たす役割は重要だ。企業は人事コンサルタントの知見を活用し、専門人材の最適配置や報酬制度の見直し、オンライン研修など柔軟なキャリア開発の導入を図るべきである。これにより、優秀な人材の確保と長期的な定着を実現し、経営の持続可能性を高めることが可能となる。さらに、従業員の満足度向上と組織へのロイヤルティ確立に向け、柔軟な働き方や職場環境の整備も不可欠となる。

(2025年1月7日発表)

2024年10月分

Summary

10月の米求人件数は774万4000件に増加し、市場予想を上回った。前月は737万2000件(速報値744万3000件)に下方修正された。

求人件数の増加は、専門職・ビジネスサービスと宿泊・飲食サービスがけん引役となった。

レイオフ・解雇件数は16万9000件減の163万3000件となり、1年半ぶりの大幅な減少となった。

10月の失業者1人当たりの求人件数は1.11件となり、前月の1.08件から上昇した。業種別の求人件数は、専門・ビジネスサービスがけん引した。宿泊・飲食サービスや情報セクターで増加した一方、連邦政府では減少した。求人率は前月の4.4%から4.6%に上昇した。

10月の採用件数は26万9000件減の531万3000件だった。採用率は3.3%と、前月の3.5%から低下した。採用件数の減少は4地域全てで見られ、南部では10万6000件減となった。

Comment

10月の米求人件数は774万4000件に増加し、市場予想を上回ったが、採用件数は減少し、採用率も低下した。専門職・ビジネスサービスや宿泊・飲食サービスでの求人増加が顕著である一方、ハリケーンやボーイングのストライキが南部を含む地域の採用活動に影響を及ぼしている。これにより、求人率の上昇と採用率の低下という労働市場の二極化が浮き彫りとなった。人事コンサルタントは、特定産業の採用困難を解消するためのターゲット採用戦略を強化し、業界ごとのニーズに応じたオファーパッケージや採用プロセスの効率化を提案すべきである。

(2024年10月29日発表)

2024年9月分

Summary

9月の米求人件数は744万3000件に減少し、市場予想を下回った。前月は786万1000件(速報値804万件)に下方修正された。求人件数は過去2年の大半において減少傾向にあり、今回の統計では幅広い業界での減少が示された。9月求人件数の減少は、職種別ではヘルスケア・社会補助、政府機関、宿泊や飲食サービスで目立った。

9月のレイオフ件数は23年1月以来の高水準に増加した。自発的離職者の割合である離職率は低下し、新しい職を見つける自信が薄れていることを示唆した。

9月求人件数の減少は、職種別ではヘルスケア・社会補助、政府機関、宿泊や飲食サービスで目立った。

米金融当局が注視する失業者1人当たりの求人件数は1.1件となり、前月から横ばいとなった。2022年のピーク時には2件だった。

Comment

9月の米求人件数は744万3000件に減少し、予想を下回った。ヘルスケア、政府機関、宿泊・飲食サービス業といった主要分野で求人が減少し、雇用主が採用に慎重姿勢を示していることがうかがえる。レイオフ件数の増加や離職率の低下も相まって、転職に対する労働者の自信が低下している状況である。人事コンサルタントとしては、この環境下で企業に対し、従業員のリスキリングを促進し、キャリアパスを明示することで、エンゲージメント強化を図る施策を提案すべきである。

(2024年10月29日発表)

2024年8月分

Summary

8月の米求人件数は804万件に増加し、市場予想を上回った。前月は771万1000件(速報値767万3000件)に上方修正された。

求人件数は、建設業では2009年以来最大の伸び。州・地方自治体でも大きく増加した。

雇用率は3.3%に低下し、新型コロナウイルス禍の2020年を除けば、2013年以来の低水準に並んだ。小売りと運輸・倉庫で最も大きく落ち込んだ。

失業者1人当たりの求人件数は1.1件と、3年ぶり低水準付近にとどまった。2022年に記録したピークでは、失業者1人に対して2件の求人があった。自発的離職者の割合である離職率は1.9%に低下し、2020年6以来の低水準となった。

Comment

8月の米求人件数が増加し、労働市場の一部では活況を呈しているが、小売りや運輸業での落ち込みや離職率の低下が、労働者の新たな職を見つける自信の低下を示している。建設業と公共部門での求人が急増していることから、人事コンサルタントはこれら成長産業での人材確保に向けた戦略的提案が求められる。一方、FOMCの政策金利引き下げに伴う労働市場の変化を注視し、特にレイオフ率が低い状況下でのタレントマネジメントや従業員定着策の強化が重要である。企業にとって、変動する経済環境に対応した柔軟な採用方針の構築が不可欠である。

(2024年10月1日発表)

2024年7月分

Summary

7月の求人件数は767万3000件となり、前月からやや減少し、前年同月比では110万件減少した。特に医療・福祉業界では18.7万件の減少が見られ、地方自治体(教育を除く)や運輸業でもそれぞれ10.1万件と8.8万件の減少が報告されている。一方、専門職やビジネスサービスでは17.8万件の増加があり、連邦政府においても2.8万件の増加が見られた。

新規採用数は550万人となり、宿泊・飲食サービス業では15.6万人の増加があったが、連邦政府では8,000人の減少が確認された。全体の離職者数は540万人で、そのうち自主退職者は330万人、解雇や一時解雇は180万人となった。

また、解雇・一時解雇は宿泊・飲食サービス業で7.5万人、金融・保険業で2.1万人増加したことが報告された。

Comment

7月の米国の求人数は、弱含みの内容となった。そして、医療・福祉や地方自治体、運輸業の減少に対し、専門職やビジネスサービスの増加が見られるなど、業界間の動向に大きなばらつきが顕著である。人事コンサルタントとしては、業界ごとのニーズの変化に柔軟に対応する採用戦略が重要である。特に人材流動が激しい宿泊・飲食サービスや、増加が見込まれる専門職領域において、迅速な人材確保と定着策を提案する必要がある。

(2024年9月4日発表)

2024年6月分

Summary

6月の求人件数は818万4000件に減少した。前月は823万件(速報値814万件)に上方修正された。

6月は貿易、宿泊・飲食サービス、州・地方自治体で求人が特に増えた。一方、製造業では2年ぶりの大幅減となった。

雇用率は、新型コロナ感染がパンデミック(世界的大流行)となって以来の水準に低下した。娯楽・ホスピタリティーとプロフェッショナル・ビジネスサービスの分野で特に低下した。レイオフ率は2年ぶりの低水準となった。

自発的離職者の割合である離職率は2.1%と前月から横ばいとなり、2020年以来の低水準付近にとどまった。離職率の低さは、数年前と比べて労働者が新しい職を見つける自信が薄れていることを示している。

Comment

6月の米国求人件数は減少し、雇用市場の落ち着きを示している。このデータから、特に製造業での求人が減少しており、製造業の景気減速が懸念される。一方で、貿易やホスピタリティー業界での求人増加は回復の兆しと捉えられるが、全体の雇用率はパンデミック以降の低水準にある。人事コンサルタントとしては、企業に対し社員の定着戦略の強化を提案することが重要である。また、離職率の低さは労働者の転職意欲の低下を示しており、企業側もこれを踏まえた人材戦略の再構築が必要となる。

(2024年7月30日発表)

2024年5月分

Summary

5月の求人件数は814万件に増加して市場予想を上回った。前月は791万9000件(速報値805万9000件)に下方修正され、3年ぶりの低水準となった。

雇用率とレイオフ率は共に上昇し、雇用市場の流動性を示唆した。

米金融当局が注視する失業者1人に対する求人件数は前月と同じ1.2件となり、2021年6月以来の低水準にとどまった。

5月の求人件数増加は製造業や政府機関、医療関係がけん引した。一方、宿泊・飲食サービス業での求人減少が目立った。採用の回復をけん引したのは、専門職・ビジネスサービス業と建設業だった。

自発的離職者の割合である離職率は前月と同じ2.2となり、2020年以来の低水準となった。離職率の低さは、数年前と比べて新しい職を見つける自信が薄れていることを示唆している。

Comment

雇用市場の流動性が増し、失業率とレイオフ率の上昇も見られるが、失業者1人に対する求人件数が低水準にとどまっていることは、企業の採用意欲が限定的であることを示している。人事コンサルティングにおいては、企業が効果的に人材を確保し、適切に配置するための戦略を提供することが求められる。

(2024年7月2日発表)

2024年4月分

Summary

4月の米求人件数は805万9000件に減少し、市場予想を下回った。前月は835万5000件(速報値848万8000件)に下方修正された。

求人件数の減少は広範にわたった。医療では3年ぶりの低水準となり、製造業では2020年12月以来の低水準となった。

最近のデータは労働市場の減速を示しているが、その減速は人員削減ではなく、採用ペースの鈍化による緩やかなものとなっている。

雇用率とレイオフ率は共に前月から変わらずとなった。レイオフは歴史的な低水準にとどまり、雇用は減速傾向にある。これは、従業員の数が需要に見合った適切な水準にあると企業が判断していることを示している。

自発的離職者の割合である離職率は2020年以来の低水準にとどまった。

Comment

労働市場の減速は、歴史的な低水準のレイオフ率が示すように、人員削減ではなく、需要に見合った適切な人員配置への移行を意味する。米金融当局がインフレ抑制と需要調整を目指す中、失業者を増やさずに労働市場の安定を維持することが求められている。人事コンサルタントとして、企業には柔軟な労働戦略と適切な人材配置の重要性を強調したい。

(2024年6月4日発表)

2024年3月分

Summary

3月の米求人件数は848万8000件に減少し、市場予想を下回った。前月は881万3000件(速報値875万6000件)に上方修正された。

自発的離職者の割合である離職率は2.1%に低下し、2020年8月以来の低水準となった。労働者の間で新しい職や現在よりも賃金の高い職を見つける自信が低下し、転職を見合わせていることが示された。

採用レートは3.5%に低下し、新型コロナウイルスのパンデミック)初期に並ぶ低水準だった。低下は広範囲に広がっており、貿易・運輸で著しかった。レイオフも減少し、2022年末以来の少ない数にとどまった。

失業者1人に対する求人件数は1.3件に減少、21年8月以来の低水準に並んだ。

Comment

米国の求人市場の冷却が進む中、人事コンサルタントは企業の採用戦略を再検討する必要がある。特に採用率の低下や離職率の変動は、人材確保と保持のアプローチを見直す契機となる。人事コンサルティングを通じて、企業からはこうした市場動向を反映した効果的な雇用管理の方策の提案が求められていると考える。

(2024年5月1日発表)

2024年2月分

Summary

2月の米求人件数は875万6000件となり前月から若干増加した。前月は874万8000件(速報値886万3000件)に下方修正された。

労働市場が軟化しつつある兆候も見られる。求人件数は情報、医療、小売りで減少した、レイオフはほぼ1年ぶりの高水準となった。

また、自発的離職者の割合である離職率は2.2%で変わらず、2020年以来の低水準となった。

Comment

2月の米求人件数は875万6000件と前月からわずかに増加したが、情報、医療、小売りでの減少やレイオフの増加が、労働市場の軟化を示唆している。また、離職率が2.2%で低水準を維持していることは、労働者が転職に慎重になっていることを示しており、企業の人材獲得競争が一時的に緩和されつつあることがうかがえる。人事コンサルタントとしては、企業に対し、優秀な人材を確保・定着させるための長期的な戦略の見直しを提案すべきである。特に、労働市場の軟化を活用し、戦略的な採用を進める好機と捉えるべきである。また、離職率の低下に伴い、従業員のエンゲージメントを高める施策が重要となる。賃金だけでなく、スキルアップの機会提供やキャリアパスの明確化、柔軟な働き方の導入を進めることで、企業の競争力を強化できるだろう。

(2024年4月2日発表)

2024年1月分

Summary

1月の米求人件数は886万3000件に減少した。前月は888万9000件(速報値902万6000件)に下方修正された。

部門別では、1月の求人件数は貿易・運輸や小売り、政府で減少した一方、レジャー・宿泊や専門・事業サービス、ヘルスケアでは増加した。

求人活動は徐々に熱気が冷めつつあるが、労働市場は底堅い状況が続いており、求職者1人に対する求人件数は1件を超えている。ただし、2件だった2022年のピークからは、大きく下がっている。

1月の自発的離職者は約339万人となり、3年ぶりの低い数字だった。

Comment

1月の米国求人件数はわずかに減少したものの、レジャー・宿泊、専門・事業サービス、ヘルスケア部門では増加が見られる。この状況は、人事コンサルタントにとって、業界特有のニーズに合わせた採用戦略を構築する機会であると言える。労働市場の変化に対応し、企業が求人環境の冷え込みにも強い採用体制を築くためのサポートを提供する必要がある。

(2024年3月6日発表)