労働力調査
総務省が毎月発表する日本の就業状況、失業者、失業率に関する雇用指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
2024年10月分
Summary
10月の完全失業率(季節調整値)は2.5%となり、前月から0.1ポイント上昇した。男女別では、男性の完全失業率は2.8%、女性は2.1%だった。
完全失業者数は171万人で、前月比3万人の増加となった。内訳を見ると、「非自発的な離職」は2万人増加した一方、「自発的な離職(自己都合)」は4万人減少し、「新たに求職」は2万人減少した。
就業者数は6798万人となり、前月に比べ16万人増加した。雇用者数は6152万人で、前月比28万人の増加となった。正規の職員・従業員数は3687万人で2万人増加し、非正規の職員・従業員数は2136万人で41万人増加した。
非労働力人口は4020万人で、前月比17万人の減少となった。また、男性の就業者数は3697万人、女性は3099万人で、いずれも前月から増加した。雇用形態別に見ると、正規雇用は安定して増加傾向を維持しており、非正規雇用も前月比で増加に転じた。
Comment
就業者数と雇用者数が堅調に増加している一方で、完全失業率が2.5%に上昇し、非自発的離職者の増加が見られる。この状況は、正規雇用が安定的に増加する中で非正規雇用が急増していることと関連している可能性がある。非正規雇用の増加は企業の柔軟な雇用政策の現れだが、雇用の安定性やキャリア形成に対する懸念をもたらすこともある。人事コンサルティングの視点では、企業には雇用形態を超えた人材育成とキャリアサポートの強化が求められる。特に、非正規雇用者がスキルを活用しキャリアを築けるよう、職業訓練やキャリアパス設計の支援が重要である。また、完全失業率の上昇に対しては、潜在的な労働力を活用するための採用プロセスの多様化や、離職防止のための職場環境改善が有効であろう。
(2024年11月29日発表)
2024年9月分
Summary
9月の完全失業率(季節調整値)は2.4%となり、前月から0.1ポイント低下した。2か月連続で改善し、8か月ぶりの低水準となった。
就業者数は前年同月から0.4%増の6814万人だった。女性は43万人多い3108万人と過去最多だった。就業者数の増加は26か月連続となったが、男性は16万人減少して3706万人だった。
また、非正規の職員・従業員数が34万人減少した一方、正規は3692万人と59万人増加した。このうち女性は1328万人となり、ともに比較可能な2013年以降最多となった。
完全失業者数は前年同月から5%減少の173万人となり、2か月連続で減少した。勤め先の倒産やリストラ、定年を含む「非自発的な離職」が2万人減少した。就業率は0.4ポイント上昇し62.0%だった。
Comment
9月の完全失業率が2.4%まで低下し、特に女性の就業者数が過去最多を記録したことは、労働市場が堅調に推移していることを示している。正規雇用が大幅に増加した一方で非正規雇用が減少していることから、企業が安定的な人材確保に向けた雇用形態の見直しを進めている傾向が伺える。人事コンサルティングの観点からは、この流れを活かし、柔軟な働き方の導入をさらに推進し、特に女性やシニア層の人材がキャリア形成を図れるようなサポート体制を強化すべきである。
(2024年10月29日発表)
2024年8月分
Summary
8月の完全失業率(季節調整値)は2.5%となり、前月比0.2ポイント低下した。完全失業者数は172万人となり、前月に比べ15万人減少した。内訳では、「非自発的な離職」が6万人減少し、「自発的な離職(自己都合)」も11万人減少した一方、「新たに求職」は2万人増加した。
就業者数は6791万人となり、前月に比べ25万人増加した。雇用者数は6138万人で、前月比34万人の増加となった。正規の職員・従業員数は3650万人で15万人増加、非正規の職員・従業員数は2128万人で21万人増加している。
非労働力人口は4021万人で、前月比11万人減少した。男女別では、男性の完全失業率は2.5%で前月比0.2ポイント低下し、女性も同様に2.4%で0.2ポイント低下した。
Comment
8月の完全失業率の低下と就業者数の増加は、企業の採用意欲が高まっていることを示している。特に、正規雇用と非正規雇用の両方で増加が見られる点は、労働市場の多様性と流動性を示している。一方で、新たに求職者が増加していることから、転職市場の活性化も進んでいると考えられる。人事コンサルタントとしては、優秀な人材の獲得戦略や、非正規社員のキャリアパス設計、また柔軟な働き方への対応が今後の課題となるだろう。企業は、多様な雇用形態に対応するための包括的な人材マネジメントを強化すべきである。
(2024年10月1日発表)
2024年7月分
Summary
7月の完全失業者数は187万人(季節調整値)となり、前月比で11万人増加している。完全失業率は2.7%となり、前月から0.2ポイント上昇した。失業の内訳を見ると、「非自発的な離職」が1万人減少した一方で、「自発的な離職(自己都合)」が7万人増加し、新たに求職を始めた人も1万人増加している。
就業者数は6766万人であり、前月比20万人の減少となった。特に雇用者数が6104万人で、前月比15万人減少しており、これは正規の職員・従業員数が3635万人と17万人減少、非正規の職員・従業員数が2107万人で7万人減少したことに起因している。
非労働力人口は4032万人で、前月比2万人増加したが、大きな変動は見られなかった。全体として、就業者数の減少と失業者数の増加が目立つ結果となっている。
Comment
7月の労働力調査が示す就業者数の減少と完全失業者数の増加は、日本経済が依然として不透明な状況にあることを示唆している。この状況下で、人事コンサルティングの重要なテーマとして、社員の定着率向上やメンタルヘルスケアの強化が挙げられる。特に、非自発的な離職が減少する一方で、自己都合による離職が増加していることから、職場環境やキャリアパスの見直しが必要である。さらに、失業率の上昇は、ダイバーシティ推進の観点からも対策が求められる。企業は柔軟な働き方の導入やスキルアップ支援を強化し、人材の多様性を活かす戦略を検討する必要がある。
(2024年8月30日発表)
2024年6月分
Summary
6月の完全失業率(季節調整値)は2.5%となり、前月から0.1ポイント低下し、5か月ぶりに改善した。男女別にみると、男性は2.6%となり、前月に比べ0.3ポイント低下した。一方で、女性は2.4%となり、前月に比べ0.1ポイントの上昇した。
完全失業者数(季節調整値)は176万人となり、前月に比べ6万人(3.3%)の減少となった。内訳をみると、「新たに求職」は4万人(7.8%)の減少、「自発的な離職(自己都合)」は1万人(1.3%)の減少となった。一方で、「非自発的な離職」は2万人(4.5%)増加した。
就業者数(季節調整値)は6786万人となり、前月に比べて25万人増加した。完全失業者数は、前月に比べて6万人減少し176万人だった。
Comment
完全失業率は2.5%に低下し、特に男性の失業率が顕著に改善した。人事コンサルティングにおいては、ジェンダー別の雇用政策や労働環境改善に向けたアプローチが求められる。全体として、労働力人口の拡大が続いているため、長期的な人材育成と定着戦略が重要である。企業はこの状況を踏まえた戦略的な人事施策を検討すべきである。
(2024年7月30日発表)
2024年5月分
Summary
5月の完全失業率は季節調整値で2.6%となり、4か月連続で横ばいだった。企業の人手不足感と、より良い条件を求める人の転職・求職活動により、失業率は低位安定している。
5月の就業者数は季節調整値で6761万人となり、前月に比べて10万人増加した。完全失業者数は、前月に比べて1万人減少して182万人となった。総務省は、自己都合で自発的に離職した人が減少した一方、就業者数が増えていることから「より良い条件を求めていったん離職した人が自分の希望通りの仕事にたどりついたと言えるのではないか」との見方を示している。
正規の職員・従業員数(実数)は3675万人、このうち女性が1314万人だった。いずれも比較可能な2013年1月以降で過去最多となった。
Comment
このような状況下での人事コンサルティングでは、優秀な人材の確保と定着を目指す企業に対し、柔軟な働き方やキャリア開発支援の強化を提案することが求められる。人事コンサルタントは、労働市場の動向を的確に把握し、企業戦略に合致した人材マネジメントの方針を導く役割を果たす必要がある。
(2024年6月28日発表)
2024年4月分
Summary
4月の完全失業率は2.6%(季節調整値)となり、前月と同水準となった。
4月の就業者数は季節調整値で6751万人となり、前月から9万人の減少となった。雇用者数は6096万人で前月から4万人の減少となった。
完全失業者数は、前月に比べて1万人増加し183万人となった。自己都合による離職、勤め先や事業の都合などによる非自発的な離職がそれぞれ減少した一方、今まで非労働力人口にカウントされていた人たちが仕事を探し始めた。
正規の職員・従業員数(実数)は3666万人で、比較可能な2013年1月以降で過去最多となった。
Comment
4月の労働力調査は、経済の緩やかな回復と雇用市場の動向を如実に示している。完全失業率が横ばいである一方、非労働力人口からの参入が増加し、正規雇用が過去最多となったことは、企業の人材戦略の再構築が急務であることを示している。人事コンサルタントとして、これを踏まえた柔軟かつ長期的な人材、雇用戦略の提案が必要となる。
(2024年5月31日発表)
2024年3月分
Summary
3月の就業者数は6726万人となり、前年同月比27万人の増加し、20か月連続の増加となった。雇用者数は6080万人で44万人の増加となり、25か月連続して増加が続いている。
正規職員・従業員数は3602万人で11万人増加、非正規職員・従業員数は2131万人で30万人増加と両者とも増加している。産業別では「医療、福祉」や「サービス業」が増加している。
就業率は61.2%となり0.4ポイント上昇し、15~64歳の就業率も78.7%と0.5ポイント上昇している。
完全失業者数は185万人となり8万人減少し、完全失業率は2.6%で前月と同率だった。非労働力人口は4081万人で29万人減少しており、市場は全体的に回復傾向にある。
Comment
3月の就業者数の増加や就業率の上昇は、人材確保の戦略の再考を促しており、特に正規・非正規雇用の増加傾向は多様な雇用形態への対応策の必要性を示している。人事コンサルティングにおいては、これらのデータを基に効果的な人材管理と配置の提案が求められる。
(2024年4月30日発表)
2024年2月分
Summary
2月の完全失業率(季節調整値)は2.6%と前月から0.2ポイント悪化した。失業率が上昇するのは7か月ぶりとなる。
2月の就業者数は季節調整値で6783万人となり、前月に比べて22万人増加した。完全失業者数は前月に比べて12万人増加し、182万人となった。
非労働力人口が前月に比べて24万人減少しており、総務省では「仕事をしておらず探してもいなかった人が労働市場に流れてきている可能性がある。求職活動が活発になっているかもしれない」とした。
Comment
2月の完全失業率が0.2ポイント上昇し、7か月ぶりに悪化したことは注目に値するが、同時に就業者数が22万人増加していることから、労働市場は依然として活況を呈していることを示している。非労働力人口の減少は、これまで就職活動を行っていなかった人々が労働市場に参加し始めたことを示しており、求職活動が活発化してい る可能性が高いです。この動向は、労働市場が活性化している兆候と捉えられるため、人事コンサルタントの視点からは企業に適材の確保と職場環境の整備を促したい。
(2024年3月29日発表)
2024年1月分
Summary
1月の完全失業率は2.4%(季節調整値)となり、前月から0.1ポイント改善した。
1月の就業者数は季節調整値で6761万人となり、前月に比べて3万人減少した。一方、完全失業者数は前月に比べて2万人減少して170万人となった。内訳では、「非自発的な離職」は3万人減少、「自発的な離職」は1万人減少し、「新たに求職」は2万人増加した。
総務省は「非自発的な離職」の中でも倒産やリストラなど勤め先の都合で離職した人が減っており、雇用環境は「悪くない」としている。
Comment
人手不足によって企業が労働者を確保する動きが出ていることが完全失業率が改善した要因だと考えられる。人事コンサルティングで関与している企業の実態を見ていると、人手不足の状況にあることは間違いないが、それよりも人材不足の方が深刻そうだ。
(2024年3月1日発表)