雇用統計(2020年)

米労働省から毎月発表される米国の雇用統計データに人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。

2020年12月分

Summary

昨年12月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比14万人の減少となり、市場予想を下回った。前月は24万5000人増から33万6000人増へと上方修正された。

失業率は6.7%となり、前月から変わらずとなった。

娯楽・ホスピタリティーの雇用は大きな打撃を受けたものの、12月には多くの業界で雇用が増加し、経済的な痛みは比較的抑制されていたことも示めされた。建設業の雇用は5万1000人増、製造業では3万8000人増加した。小売りは12万500人増、専門職・ビジネスサービスは16万1000人増加した。

2020年通年では雇用は937万人減少した。1939年の統計開始後で最大のマイナスとなり、マイナス幅は大不況とその影響が続いた2008年と2009年の合計を上回った。

27週間以上にわたって職探しをしている長期失業者は小幅増の396万人だった。

民間雇用者数は9万5000人減(前月は41万7000人増)、州・地方政府の雇用者数は約5万1000人減だった。

Comment

12月の米国の非農業部門雇用者数は減少し、市場予想を下回る結果であったが、特定の業界では雇用増加が見られた。この状況は、人事コンサルタントにとって、業界ごとの変動に敏感であることの重要性を示している。人事コンサルティングは、組織がこれらの不確実性に柔軟に対応できるような戦略を提供する必要がある。

(2021年1月8日発表)

2020年11月分

Summary

11月の非農業部門雇用者数が前月比24万5000人増となり、前月の61万人増から伸びが大幅に鈍化し、市場予想を下回った。

業種別では小売業で3万5000人減少した。通常は11月に季節雇用が増えるが、今年は新型コロナの影響を受けた。一方、運輸・倉庫業は14万5000人増加し、雇用者数全体の伸びの5分の3近くを占めた。また、専門職・企業サービス、金融、ヘルスケアでも雇用が増加。建設業と製造業はそれぞれ2万7000人増加した。

失業率は6.7%となり、前月の6.9%から改善した。しかし、コロナ禍で発生した「雇用されているが休職中」の人の扱いが引き続きデータのゆがみとなっている可能性がある。

労働参加率は0.2ポイント低下して61.5%となった。女性の参加率が低下したためで、今回の景気後退では、女性が仕事に就く割合が高い業種への影響が大きい。

半年以上仕事がない人は390万人となり、38万5000人増加した。長期失業者は11月の失業者全体(1070万人)の36.9%を占めた。経済的理由によりパートタイムで働く人は670万人で横ばいだった。

時間当たりの平均賃金は前月比で0.3%上昇した。労働時間は週平均で34.8時間と横ばいだった。

Comment

人事コンサルティングの観点から見ると、業界による雇用の不均一性は企業が柔軟かつ効果的な人事戦略を取る上で重要な考慮事項となる。特に女性の労働参加率の低下は、女性が多く就労する業種の特性と経済状況に即した人材管理策の必要性を示しており、人事コンサルタントはこれらのデータを基に、適切な対策を企業に提供する役割が求められている。

(2020年12月4日発表)

2020年10月分

Summary

10月の非農業部門雇用者数が前月比63万8000人増となり、前月の67万2000人増から伸びが鈍化した。雇用者数はコロナ前の2月時点でのピーク水準を1010万人と大幅に下回っている。

失業率は6.9%となり、前月の7.9%から大幅に改善した。ただ、コロナ禍で発生した「雇用されているが休職中」の人の扱いが引き続きデータのゆがみとなっており、これを除くと失業率は約7.2%だった。

10月時点で、半年以上仕事がない人は360万人となり、120万人増加した。経済的理由によりパートタイムで働く人は38万3000人増加し、670万人に達した。

時間当たりの平均賃金は前月比で0.1%、前年比で4.5%上昇した。労働参加率は0.3%ポイント上昇して61.7%となったが、それでもまだ2月時点の水準を1.7%ポイント下回っている。

業種別では、娯楽・宿泊の雇用者数が27万1000人増加し、全体の伸びの4割強を占めた。4月以降では480万人増えたものの、2月時点の水準をなお350万人下回っている。専門職・企業サービスは20万8000人、製造業は3万8000人、建設業は8万4000人増加した。

Comment

非農業部門の雇用者数が前月よりも伸びが鈍化していること、特に娯楽・宿泊業の雇用が大幅に増加しているものの、依然としてパンデミック前の水準には達していない点が注目される。これは、人事コンサルティングの専門知識を活用し、業種ごとにカスタマイズされた復興戦略を策定する必要があることを示している。特に、長期間仕事がない人の数が増加していることや、経済的理由によるパートタイム労働者の増加は、戦略的な人材管理と緊急対応策の設計が求められる状況だ。人事コンサルタントは、これらの挑戦に対応するための具体的なソリューションを提供し、企業が変化する労働市場環境に適応し続ける支援を行う責任がある。

(2020年11月6日発表)

2020年9月分

Summary

9月の非農業部門雇用者数が前月比66万1000人増となった。伸びは前月の148万9000人から大幅に減速した上に、市場予想の85万人も下回った。

雇用者数は6月に478万1000人増加した後、鈍化傾向が続いており、コロナ禍前の水準と比較すると、なお1070万人の雇用が失われている。

失業率は7.9%となり、8月の8.4%から改善した。しかし、コロナ禍で発生した「雇用されているが休職中」の人の扱いが引き続きデータのゆがみとなっており、こうした人を除くと、失業率は約8.3%だった。

時間当たり平均賃金は前月比0.1%増だった。労働参加率は前月の61.7%から61.4%に低下した。女性が56.1%から55.6%に低下した。

民間部門の雇用者数は政府関連を除き全ての業種で増加した。政府は21万6000人減だった。娯楽・ホスピタリティーは31万8000人増と、全体の増加分の約半分を占めた。

ただ、大手企業は人員削減計画を示しており、失業者が今後増加する公算は大きい。ウォルト・ディズニーは米国のテーマパーク部門を中心に約2万8000人を削減すると発表、アメリカン航空とユナイテッド航空も、政府による航空業界支援策の失効に伴い、計3万2000人超の人員削減に着手する方針を示している。

Comment

9月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が66万1000人増加したものの、増加ペースは前月から大幅に減速し、市場予想も下回った。失業率は7.9%に改善したが、労働参加率は低下し、特に女性の労働参加率が顕著に落ち込んでいる。さらに、コロナ禍前の水準と比較すると依然として1070万人の雇用が失われており、大手企業による大規模な人員削減が予想されることから、今後の失業率上昇が懸念される。人事コンサルタントとして、企業にはこの不安定な状況に対応するため、労働力の再構築と柔軟な労働環境の提供が求められる。特に、女性や休職中の労働者の再雇用を促進するために、リスキリングプログラムやキャリア支援が重要となる。

(2020年10月2日発表)

2020年8月分

Summary

8月の非農業部門雇用者数(季節調整済み)は前月比137万人増となった。8月の増加幅には、国勢調査のため臨時に雇用された23万8000人が含まれる。

失業率は先月の10.2%から8.4%に低下した。

今回の雇用統計で懸念されるデータは、恒久的に職を失った人の数が50万人余り増えて341万人となったことだ。

8月はさまざまな業種で幅広く雇用が増加した。小売りは約24万9000人増となり、伸びは前月を上回った。プロフェッショナル・ビジネスサービスは19万7000人増、運輸・倉庫は約7万8000人増となった。

一方で、レストランなどの娯楽・ホスピタリティー分野は17万4000人増となり、前月(62万1000人増)から大きく減速した。製造業は2万9000人増となり、伸びは市場予想を大幅に下回った。

平均時給は前月比0.4%増となった。前年同月比では4.7%増加した。

Comment

こうした状況下、人事コンサルタントとしては、臨時雇用の影響を考慮し、恒久的な雇用創出に向けた戦略が必要である。人事コンサルティングの観点から、特に娯楽・ホスピタリティー分野の減速を受け、業界ごとの特性に応じた柔軟な人材配置と再訓練プログラムの導入が求められる。また、恒久的失業者の再就職支援と、労働市場全体の安定化を目指した包括的な施策が急務である。

(2020年9月4日発表)

2020年7月分

Summary

7月の非農業部門雇用者数が前月から176万3000人増となった。伸びは市場予想を上回ったものの、過去最大となった前月の479万1000人からは大きく鈍化した。

7月の失業率は10.2%となり、6月の11.1%から改善した。ただ、コロナ禍で発生した「雇用されているが休職中」の人の扱いが依然かく乱要因となっている。7月中旬時点で何らかの失業手当を受けていた人は少なくとも3130万人に上った。

時間当たり平均賃金は前月比0.2%増となり、市場予想の0.5%減に反して増加した。労働参加率は61.4%だった。

雇用統計の内訳を見ると、政府機関を除く全てのセクターで雇用が減速した。娯楽・宿泊は59万2000人増となり、非農業部門の雇用者数の伸びの約3分の1を占めた。食品サービス・飲料店は50万2000人増、先月は290万人の伸びだった。過去3か月では増加しているものの、2月以降では依然260万人減少している。小売りは25万8000人増で2月以降では91万3000人減少しており、7月の伸びの約半分は衣料・アクセサリー店が占めた。

Comment

米非農業部門雇用者数はコロナ禍からの回復が続いているが、前月の急増に比べて伸びは鈍化した。失業率は依然として10.2%と高い水準にある。人事コンサルタントとしては、娯楽・宿泊や食品サービス・飲料店のような特定セクターでの回復が顕著である一方、小売業の回復が不十分である点に注目すべきである。人事コンサルティングの観点からは、長期的な人材育成と迅速な雇用戦略の調整が不可欠である。

(2020年8月7日発表)

2020年6月分

Summary

6月の非農業部門雇用者数が前月から480万人増となり、市場予想を上回り、1939年の統計開始以降で最多となった。

6月の失業率は11.1%と、5月の13.3%から改善した。

今回の統計には、6月にカリフォルニアやフロリダ、テキサス州などで始まった新型コロナ感染者数急増の影響は含まれていない。

平均時給は前月比1.2%減少した。低い賃金の職種で雇用が増加したことを反映した。6月は前年同月比では5%増となった。低賃金の労働者は、前年の水準をなお大きく下回っている。週平均労働時間は34.5時間に減少した。前月は34.7時間だった。

雇用は6月に幅広い分野で拡大し、小売、製造、建設、教育などが堅調に増加した。レストランやバー、ジム、歯科医院などの営業再開に伴い、一時解雇されていた従業員が職場に復帰したことが雇用の伸びにつながった。レジャー・接客業では210万人増。全体の増加数の約5分の2を占めた。

Comment

人事コンサルティングにおいては、以下の点に注力するべきである。まず、低賃金労働者に対するスキルアップとキャリアパスの提供が不可欠である。これにより、経済の不確実性に対する個々の労働者の耐性を強化することができる。次に、企業は柔軟な労働環境とリモートワークの導入を進めるべきである。これは、パンデミック後のニューノーマルに対応し、従業員の健康と安全を確保するために重要である。さらに、多様性と包摂性を推進し、組織全体のレジリエンスを高める施策が求められる。

(2020年7月2日発表)

2020年5月分

Summary

5月の非農業部門雇用者数は前月比250万9000人増となり、市場予想に反しプラスに転じた。4月は約2070万人減と、1930年代の大恐慌以降で最大の落ち込みを記録していた。

失業率は13.3%となり、戦後最悪だった4月の14.7%から改善した。

5月は幅広い業種で雇用が持ち直した。大きな打撃を被ったレストランのほか、小売りやヘルスケアも改善した。一方、政府職員は2か月連続で雇用が減少した。

就業者数はなおコロナ危機前の水準を約2000万人下回る。失業者数は2月以降9.8ポイント上昇し、失業者数は1520万人増加している。

また、5月の就業者増加分の5分の2をパートタイム就業者が占めたほか、白人層の失業率が14.2%から12.4%に低下する一方、黒人層では16.8%へと小幅上昇するなど、回復が一様でない様子も示された。

Comment

5月の非農業部門雇用者数は市場予想を上回り、プラスに転じたものの、雇用の回復は一様ではなく、依然としてコロナ危機前の水準を大きく下回っている。人事コンサルタントとしては、レストランや小売り、ヘルスケアなど幅広い業種での回復傾向を注視しつつ、パートタイム就業者の割合や雇用回復の不均等性にも注目する必要がある。人事コンサルティングでは、柔軟な雇用戦略や多様な人材を取り入れた採用計画の助言・提案が必要となる。

(2020年6月5日発表)

2020年4月分

Summary

4月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月から2050万人減となり、1930年代の大恐慌以降で最大の落ち込みとなった。

3月の非農業部門雇用者数は70万1000人減から87万人減に改定された。

失業率は14.7%となり、第2次世界対戦後に記録した1982年11月の10.8%を上回り、戦後最悪となった。

労働参加率は60.2%と2.5%ポイント低下し、1973年1月以来の低水準となった。

時間当たり平均賃金は4.7%増となり、増加率は3月の0.5%から大きく加速した。低賃金であることが多いレジャー・接客業で多くの雇用が失われたことで押し上げられた。

Comment

4月の米国雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比で2050万人減少し、失業率は戦後最悪の14.7%に達するなど、1930年代の大恐慌以来最大の危機を示している。特に、レジャー・接客業での雇用喪失が著しく、労働参加率も60.2%に低下し、1973年以来の低水準となった。これらのデータは、パンデミックによる経済的打撃が深刻であることを物語っている。人事コンサルタントとして、企業には厳しい労働市場の現実に即した対応が求められる。特に、今後の再建に向けて、リモートワークや柔軟な労働形態の導入を通じて、企業が迅速に業務を再開できるようにすることが重要である。また、スキルギャップの解消を目指したリスキリングやアップスキリングの支援を行うことで、労働力の質を向上させることが求められる。

(2020年5月8日発表)

2020年3月分

Summary

3月の非農業部門雇用者数は前月から70万1000人減となり、前月の27万5000人増(改定)からマイナスに転じ、市場予想を大幅に超える落ち込みとなった。

失業率は4.4%となり、前月の3.5%から悪化した。0.9%ポイントの上昇は、1か月の上昇としては1975年1月以来最大となる。

賃金の伸びは安定的だったが、過去の数値との見方が多い。時間当たり平均賃金は0.4%増だった。3月の前年同月比は3.1%増となり、2月の3.0%増を上回った。

週労働時間は34.2時間となり、2月の34.4時間から減少した。特にレジャー・接客業では1.4時間縮小した。労働参加率は62.7%となり、0.7%ポイント低下した。

部門別の雇用者数では、レストランやバー、映画館などを中心にレジャー・接客業が45万9000人減、ヘルスケア・社会支援業は6万1000人減、専門職・企業サービス業は5万2000人減となった。建設業は2万9000人、鉱業は6000人、製造業は1万8000人、それぞれ減少した。

Comment

このような危機的状況において、人事コンサルタントとして企業に提案すべき施策は以下の通りである。まず、雇用維持のための緊急対応策を導入し、従業員の不安を軽減することが重要である。特にレジャー・接客業や製造業などでの雇用減少に対して、労働力の再配置やスキルアップのための研修プログラムを提供し、労働者の再雇用を促進することが求められる。また、リモートワークやフレックスタイムの導入を進めることで、労働環境の改善と生産性の向上を図るべきである。さらに、賃金の安定を維持するための給与体系の見直しや福利厚生の充実を行い、従業員のモチベーションを高める施策が必要である。

(2020年4月3日発表)

2020年1月分

Summary

1月の非農業部門の雇用者数が前月から22万5000人増となり、市場予想を大幅に上回った。一方で、2018年4月から2019年3月までの雇用者数が51万4000人分下方改定された。

失業率は3.6%となり、前月から0.1ポイント上昇した。

労働参加率は0.2ポイント上昇して63.4%となり、2013年6月以来の高水準だった。

労働市場の引き締まりに伴い賃金は安定的に伸びている。時間当たり平均賃金は0.2%(7セント)増だった。12月は0.1%増加していた。1月の前年同月比は3.1%増となり、12月の3.0%増から加速した。

建設業が4万4000人増となり、2019年1月以来、1年ぶりの大幅な伸びだった。輸送・倉庫業は2万8000人増で、宅配便業者や配達人の雇用が伸びた。娯楽・観光は3万6000人増加した。

一方、製造業は1万2000人減少した。12月は5000人減少していた。製造業は米中貿易摩擦によって最も打撃を受けている。政府部門は1万9000人増だった。

Comment

1月の米国労働省の雇用統計は、非農業部門で市場予想を上回る増加を記録し、労働市場の引き締まりと賃金の安定的な伸びが示された。人事コンサルタントは、建設業や輸送・倉庫業、娯楽・観光業での雇用増を受け、これらのセクターに特化した戦略的な人材管理と育成の重要性を強調すべきである。一方、製造業の雇用減少は米中貿易摩擦の影響を反映しており、この業界における人事コンサルティングが特に重要である。このように、コンサルタントは各業界の動向を把握し、企業のニーズに合わせた人事戦略を提供する役割が求められる。

(2020年2月7日発表)