一般職業紹介状況(2020年)
厚生労働省が毎月発表している公共職業安定所(ハローワーク)における求人、求職、就職の状況をとりまとめた求人倍率などの雇用指標に人事コンサルタントの視点からコメントを付けて掲載しています。
2020年12月分
Summary
2020年12月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から横ばいの1.06倍となった。
雇用の先行指標とされる新規求人倍率は2.07倍となり、前月から0.05ポイント上昇した。正社員の有効求人倍率は前月比0.01ポイント上昇して0.81倍だった。
2020年平均の有効求人倍率は1.18倍となり、前年比0.42ポイント低下した。下げ幅はオイルショックの影響があった1975年以来45年ぶりの大きさとなった。
2019年は1.60倍で過去3番目の高水準だったが、2020年は2014年(1.09倍)以来の水準に低下した。働く意欲のある有効求職者数は6.9%増加して182万人に達したのに対し、企業からの有効求人数は21%減少して216万人になった。
2020年の休業者は春の緊急事態宣言の発令後に大幅に増加した。昨年4月に597万人と過去最大に増加し、6月まで高水準が続いた。2020年平均の休業者数は前年から80万人増して256万人となり、比較可能な1968年以降最大となった。
厚生労働省が全国の労働局やハローワークを通じて集計した結果、新型コロナに関連した解雇・雇い止めにあった人数(見込みを含む)は1月22日時点で8万3千人超となった。残念ながら弊社の人事コンサルティングの関与先でもギリギリの状況に陥る企業が出てきている。
Comment
多くの産業で新規求人が大幅に減少した中で、建設業の求人が増加したことは注目すべき現象である。この時期は、新型コロナウイルスの影響による経済的変動が顕著であり、特に対面サービス業が大きな打撃を受けている。このような状況において、人事コンサルタントは企業の持続可能な人材戦略を策定するための重要な役割を果たす必要がある。人事コンサルティングを通じて、労働市場の急激な変化に対応するための戦略的なアプローチを提案し、企業が適切な人材を確保し維持するための支援を行うことが求められる。
(2021年1月29日発表)
2020年11月分
Summary
11月の有効求人倍率は、1.06倍となり、前月から0.02ポイント上昇した。
一方、企業からの新規求人は前年同月比で11か月連続の減少となった。
有効求人数は211万6356人となり、前年同月比で58万5728人(21.7%)減少した。このうち、11月に出された企業からの新規求人は70万8540人となり、前年同月比で19万3098人(21.4%)減少した。新規求人の前年同月比減少は11か月連続となる。
新規求人の減少を産業別でみると、宿泊業・飲食サービス業は34.7%、情報通信業は33.4%、生活関連サービス業・娯楽業は32.9%、卸売業・小売業は27.4%などとなっている。
有効求人倍率を都道府県別でみると、最も高いのは福井県で1.51倍、次いで岡山県で1.43倍、島根県で1.38倍となっている。一方、最も低かったのは沖縄県で0.71倍、神奈川県で0.75倍、滋賀県で0.84倍となっている。
厚生労働省は「経済活動を再開する動きが広がり、求人数は若干増加したため、有効求人倍率は改善したが、企業からの求人が減少する傾向は変わっていない。感染は再び拡大していて、求人数にどこまで影響が出るのか注視する必要がある」としている。
Comment
2020年11月の有効求人倍率が1.06倍に上昇した一方で、新規求人の前年同月比減少が11か月連続で続いていることは、パンデミックが経済活動に深刻な影響を及ぼしている証左である。特に宿泊業・飲食サービス業や情報通信業、生活関連サービス業・娯楽業で顕著な減少が見られる。人事コンサルタントとしては、これらの変動を的確に捉え、企業の戦略的な人材配置や採用プランの見直しが不可欠である。さらに、企業の持続的成長に寄与するため、人事コンサルティングの視点から柔軟で先見的な施策を提案し、雇用市場の不安定さに対応していくことが求められる。
(2020年12月25日発表)
2020年10月分
Summary
10月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.01ポイント上昇の1.04倍となった。上昇は2019年4月以来1年半ぶりとなり、求職者の増加率を求人数の増加率が上回った。
雇用の先行指標とされる新規求人倍率は1.82倍となり、前月比で0.20ポイント低下した。新規求人(原数値)は前年同月比で23.2%減少した。宿泊・飲食サービス業(38.2%)や生活関連サービス・娯楽業(35.4%)、卸売業、小売業(32.6%)、製造業(29.4%)で減少幅が大きい。
正社員の有効求人倍率は前月から0.01ポイント上昇して0.79倍だった。
有効求人倍率を都道府県別でみると、最も高いのは福井県で1.49倍、次いで岡山県で1.44倍、島根県で1.36倍だった。一方、最も低かったのは、沖縄県で0.66倍、神奈川県で0.75倍、滋賀県で0.81倍だった。
Comment
2020年10月の有効求人倍率が1.04倍に上昇したことは、求人数の増加が求職者数の増加を上回った結果である。しかし、雇用の先行指標である新規求人倍率は1.82倍に低下し、新規求人数が前年同月比で23.2%も減少している。特に宿泊・飲食サービス業や生活関連サービス・娯楽業など、接触型産業での大幅な減少はパンデミックの影響を明確に示している。人事コンサルタントは、これらの動向を踏まえ、各企業のリスク管理戦略と人材配置の見直しを支援し、より柔軟で先見性ある人事コンサルティングを提供する必要がある。
(2020年12月1日発表)
2020年9月分
Summary
9月の有効求人倍率(季節調整値)は1.03倍となり、前月から0.01ポイント低下して6年9か月ぶりの低水準となった。
非正規雇用者数が前年同月比で123万人減少して2079万人となり、7か月連続で減少した。これで非正規雇用者の減少は1月から9か月連続となった。
9月は企業からの有効求人が前月から0.1%減少し、働く意欲のある有効求職者は0.8%増加した。有効求人数(原数値)は約200万人となり、前年から25.5%減少し、約70万人減少した。
雇用の先行指標となる新規求人(原数値)は前年同月比で17.3%減少した。減少幅では生活関連サービス・娯楽業(32.9%)や宿泊・飲食サービス業(32.2%)、卸売業・小売業(28.3%)、製造業(26.7%)が大きかった。建設業は5.9%増加した。
Comment
有効求人倍率が6年9か月ぶりの低水準となり、特に非正規雇用の減少が顕著であった。新規求人が大幅に減少する中、企業は採用活動に慎重な姿勢を見せている。生活関連サービスや宿泊・飲食サービス業での求人減少が深刻である一方で、建設業が増加した点は注目に値する。人事コンサルタントとして、これらの変化に迅速に対応し、各業界の特性を踏まえたコンサルティングを提供することが重要である。
(2020年10月30日発表)
2020年8月分
Summary
8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.04倍なり、前月から0.04ポイント低下して6年7か月ぶりの低水準となった。有効求人倍率の低下は1月から8か月連続となる。
8月は企業からの有効求人が前月比0.9%増加したものの、働く意欲のある有効求職者は4.7%増加した。
雇用の先行指標となる新規求人(原数値)は前年同月比27.8%減少した。減少幅では宿泊・飲食サービス業が49.1%、生活関連サービス・娯楽業が41.0%と大きかった。製造業38.3%、情報通信業34.6%、卸売業・小売業34%など幅広い産業で大きく落ち込んだ。
新型コロナに関連した解雇・雇い止めにあった人数(見込みを含む)は9月25日時点で6万923人だった。製造業と飲食業でそれぞれ1万人前後に達した。
Comment
有効求人倍率の低下は、雇用市場の縮小を示しており、多くの産業で新規求人が大幅に減少している。特に宿泊・飲食サービス業や製造業での求人減少が顕著である。このような状況では、人事コンサルタントは企業に対して、不確実な市場環境に適応するための戦略的な人事計画を提案することが重要である。
(2020年10月2日発表)
2020年7月分
Summary
7月の有効求人倍率(季節調整値)は1.08倍となり、前月から0.03ポイント低下した。2014年4月以来、6年3か月ぶりの低水準となった。
有効求人倍率の低下は今年1月から7か月連続となる。7月は企業からの有効求人が前月から2.5%増加したものの、働く意欲のある有効求職者も6%増加した。
雇用の先行指標となる新規求人(原数値)は前年同月比で28.6減少した。製造業が40.9%、卸売業・小売業が33.4%、宿泊・飲食サービス業が44%減少した。
また、厚生労働省が全国の労働局やハローワークを通じて集計し結果によると、新型コロナウイルスに関連した解雇・雇い止めにあった人数(見込みを含む)は8月28日時点で4万9467人と5万人に迫っていることがわかった。
Comment
有効求人倍率が1.08倍に低下し、6年3か月ぶりの低水準となったことは、新型コロナウイルスの影響を強く反映している。特に製造業、卸売業・小売業、宿泊・飲食サービス業での新規求人が大幅に減少している。企業は求人を増加させる一方で、有効求職者も増加していることから、労働市場の競争が激化している。人事コンサルタントとして、企業がこの厳しい環境下で適切な人材を確保するためには、リモートワークの導入や柔軟な働き方を推進し、従業員の安心感を高めることが重要である。
(2020年9月1日発表)
2020年6月分
Summary
6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.11倍となり、前月から0.09ポイント低下した。
6月は有効求人が前月から1.9%減少し、有効求職者は5.4%増加した。政府による緊急事態宣言が5月下旬に全国で解除されたことを受けて、職探しを再開する動きが活発になった。前月と比較した新規求職者の伸び率は18.2%で過去最大となり、求人倍率を押し下げた。
景気の先行指標となる新規求人(原数値)は、前年同月と比べて18.3%減少した。製造業が34.2%減、生活関連サービス・娯楽が34.8%減、宿泊・飲食業が29.4%減など大幅減が続く業種がある一方、建設業では2.6%増と半年ぶりに増加に転じた。
新規求人(季節調整値)は2か月連続で前月比増となった。宣言解除後に求人を再開する動きが出てきた。
Comment
人事コンサルタントとして企業に提案すべき事項は多岐にわたる。まず、有効求人倍率の低下と新規求職者の急増は、コロナ禍からの経済再開に伴う雇用市場の不安定さを示している。特に製造業、生活関連サービス、宿泊・飲食業の求人減少は顕著であり、これらの業界では雇用調整が必要となる一方、リスキリングや新たな雇用機会の創出が求められる。建設業の求人増加はポジティブな兆候であり、他の業界でも回復の兆しが見え始めている。企業は柔軟な雇用戦略を採用し、緊急事態に対応したリモートワークの導入や、従業員の健康管理の強化を図るべきである。また、新規求人の減少を踏まえ、既存の人材の活用とスキルアップを促進するための人材開発プログラムの導入が急務である。労働市場の変動に対応するためのプロアクティブな人事戦略が、企業の持続的成長を支える鍵となる。
(2020年7月31日発表)
2020年5月分
Summary
5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.20倍となり、前月から0.12ポイント低下し、2015年7月以来、4年10月ぶりの低水準となった。
5月は有効求人が前月から8.6%減少し、有効求職者は0.7%増加した。
雇用の先行指標となる新規求人(原数値)は前年同月比で32.1%減少した。製造業が42.8%、卸売業・小売業が35.9%、宿泊・飲食サービス業が55.9%減少した。建設業は11.3%、医療・福祉は17.9%減少に止まり、他の産業と比べると減少幅は小さかった。
新型コロナに関連した解雇・雇い止めにあった人数(見込みを含む)は6月26日時点で2万8173人だった。
Comment
5月の有効求人倍率が1.20倍と大幅に低下し、2015年7月以来の低水準となったことは、新型コロナウイルスの影響が深刻であることを如実に示している。特に、製造業や宿泊・飲食サービス業などでの新規求人の急減は、これらの業界が直面している厳しい状況を反映している。一方で、建設業や医療・福祉分野では減少幅が比較的小さく、相対的に安定した需要が続いている。人事コンサルタントとしては、まず企業が直面する急激な環境変化に対応するため、雇用の見直しや一時的な雇用調整策を講じることが不可欠である。特に打撃を受けている業界では、柔軟な働き方や短期雇用契約の導入などで雇用を維持する方策が求められる。
(2020年6月30日発表)
2020年4月分
Summary
4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.32倍となり、前月から0.07ポイント低下し、2016年3月以来、4年1か月ぶりの低水準となった。
4月は有効求人数が前月から8.5%減少しただけではなく、有効求職者数も前月から3.4%減少した。
景気の先行指標となる新規求人は前年同月比で31.9%減となり、2009年5月以来、約11年ぶりの下落幅となった。製造業が40.3%、卸売業・小売業が34.8%、宿泊・飲食サービス業が47.9%減少するなど、全ての産業で減少した。
厚生労働省は全国の労働局やハローワークを通じて、新型コロナに関連して解雇、雇い止めにあった人数(見込みを含む)を集計し、5月27日時点で1万4829人だった。4月27日時点では3391人で、1か月で1万2千人近く増加した。
Comment
4月の有効求人倍率は1.32倍と前月から低下し、コロナ禍の影響で新規求人が大幅に減少した。製造業や宿泊・飲食サービス業など、全ての産業で求人が減少しており、特に宿泊・飲食サービス業は47.9%減という深刻な状況である。このような厳しい雇用環境下で、人事コンサルタントとしては、企業の人材戦略を見直すことが急務である。特に、企業が持続可能な運営を維持するためには、柔軟な労働力の再配置やリスキリングが必要である。また、解雇や雇い止めに直面した労働者に対しては、再就職支援プログラムの強化が求められる。さらに、厚生労働省やハローワークと連携し、迅速かつ効果的な雇用支援策を展開することが重要である。
(2020年5月29日発表)
2020年3月分
Summary
3月の有効求人倍率(季節調整値)は1.39倍となり、3か月連続の低下となった。1.4倍を下回ったのは3年半ぶりとなり、厚生労働省は新型コロナウイルスの感染拡大の影響が出始めているとしている。
新規の求人は、製造業、宿泊業、飲食サービス業をはじめほとんどの業種で減少し、全体では前年同月比で12.1%の減少となった。産業別に見ると、新規求人が最も減少したのは製造業で前年同月比22.8%の減少となった。次いで宿泊業、飲食サービス業が19.9%、派遣会社などのサービス業が18.1%、旅行会社や映画館などの生活関連サービス業・娯楽業が16.6%、それぞれ減少した。
一方、新たに職を求める人も3%減少した。
Comment
3月の有効求人倍率が1.39倍に低下し、3か月連続の下降傾向を示したことは、新型コロナウイルスの感染拡大による経済的影響が、早くも求人市場に現れていることを示している。特に製造業や宿泊業、飲食サービス業での新規求人の大幅な減少は、これらの産業が直面する困難を浮き彫りにしている。一方で、職を求める人も減少しており、労働市場全体が停滞し始めている様相が見受けられる。人事コンサルティングの観点からは、企業がこのような厳しい環境に適応するために、柔軟な雇用戦略を導入する必要がある。特に、需要の急減に対応するための一時的な雇用調整やリスキリングの支援が重要である。また、感染拡大による不確実性に対応するため、リモートワークの推進やデジタル化の支援といった、中長期的な人材戦略の見直しも重要なテーマとなる。
(2020年4月28日発表)
2020年2月分
Summary
2月の有効求人倍率は1.45倍(季節調整値)となり、前月から0.04ポイント低下し、2年11か月ぶりの低水準となった。
新型コロナウイルスの感染拡大で自粛ムードが広がるなか、企業の採用意欲は急低下している。
雇用の先行指標となる新規求人は主要産業全てにおいて前年同月比で減少した。製造業は24.7%減となり、業種別で最も減少幅が大きかった。生活関連サービス・娯楽業の減少幅も大きく18%減となった。
Comment
人事コンサルタントとしては、このような状況下でも柔軟な雇用戦略が求められる。企業は、短期的な採用抑制の中でも将来的な人材確保に向けて採用プロセスの見直しや、リスキリング・再訓練プログラムの導入などで労働力の最適な活用を図るべきである。
(2020年3月31日発表)
2020年1月分
Summary
1月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.08ポイント低下して1.49倍となった。
厚生労働省は雇用情勢について「改善が進む中、求人が求職を大幅に上回っている」と実に7年3か月ぶりに下方修正した。前月までは「着実に改善」としており、今回から「着実」を削除した。
雇用の先行指標となる新規求人は主要産業全てで減少し、前年同月に比べ16%減少した。特に落ち込みが大きかったのは製造業で26.1%減、宿泊・飲食サービス業も20.6%減少した。
Comment
1月の有効求人倍率が1.49倍に低下し、厚生労働省が7年3か月ぶりに雇用情勢を下方修正したことは、労働市場の変調を示唆している。求人が求職を依然として上回っているものの、新規求人が主要産業全てで減少し、特に製造業や宿泊・飲食サービス業での落ち込みが顕著である。この傾向は、企業の採用意欲が減退し、経済の不透明感が広がっていることを反映している。人事コンサルタントとしては、企業がこのような経済環境に対応するための柔軟な人材マネジメント戦略の見直しの提案が急務である。特に、景気後退のリスクに備えた人材リソースの最適化や、コスト効率を重視した採用・配置の見直しが求められる。
(2020年2月28日発表)