ブランディング会社の人事制度

ブランド戦略とクリエイティブの連携、顧客との共創を重視したブランディング会社の人事制度を提案します。職種ごとの役割や成長段階、プロジェクトへの貢献を踏まえた等級制度・人事評価制度のあり方を解説します。

創造性と専門性を、ブランド価値を生み出す組織の力に

ブランディング会社では、ブランド戦略の構想力、クリエイティブの実現力、顧客との共創力を結びつけることで、独自の価値を生み出します。

AI・デジタル技術の進化や価値提供領域の拡大によって事業環境が変化する中、個人の創造性・専門性を組織の総合力へと転換し、持続的なブランド価値の創造を支える人事制度が、企業の成長を支える重要な経営基盤となります。

変化するブランディング事業と人事制度の新たな役割

ブランディング会社を取り巻く環境は大きく変化しています。生成AIは市場調査や情報分析、アイデアの探索、デザイン制作などへの活用が進み、業務の進め方や専門人材に求められる能力にも変化をもたらしています。

また、ブランドデザインやコミュニケーションの開発に加え、事業戦略との接続や顧客体験の設計、ブランド価値の継続的な向上へと、価値提供の領域を広げる動きも見られます。

こうした変化の中では、与えられた課題に対して優れた成果物を制作するだけでなく、顧客企業の事業や市場を深く理解し、課題の本質を見極め、新たな価値を構想する能力が一層重要になります。

AIは情報処理や制作の可能性を広げる一方、ブランドの独自性を見いだし、人の感情や価値観を理解して方向性を判断する役割には、人間の洞察力や創造力が欠かせません。

人事制度にも、専門スキルや業務遂行能力に加え、戦略的思考、創造的な課題解決、専門領域を横断する協働、新しい技術への適応などを成長と評価の基準に取り込む視点が必要です。

ブランド価値の創造を支える人材と組織

ブランディング事業では、顧客の事業や市場を深く理解してブランドの本質的価値を見いだし、戦略を具体的な表現や顧客体験へと展開する力が問われます。

その実現には、ブランドストラテジストやブランドコンサルタントによる戦略構想、アートディレクターやデザイナー、コピーライターによる具現化、プロデューサーやプロジェクトマネージャーによる顧客との合意形成やプロジェクト推進など、異なる専門能力の連携が必要です。

一人が複数の役割を担う場合もありますが、重要なのは、専門領域を超えてブランドの方向性を共有し、一貫した価値を生み出すことです。また、経営者や一部のキーパーソンに戦略立案、顧客対応、品質判断などが集中している場合は、組織の成長に合わせて、こうした役割を次世代の人材へ広げることも課題となります。

人事制度では、求める能力や役割、成果責任を明確にし、個人の専門性と組織的な協働を、継続的にブランド価値を創造する力へと結びつけます。

専門性と役割を明確にする等級制度

ブランディング会社には、ブランド戦略、クリエイティブ、プロデュースなど、専門性や成果の生み出し方が異なる職種が存在します。

職種ごとに等級制度を細分化しすぎると、成長段階や役割水準の整合性を確保しにくくなります。一方、全社員に画一的な役割を設定すると、専門職それぞれの特性が十分に反映されません。

そこで、全社共通のグレード体系を基本とし、職群や職種に応じて役割・責任を具体化する方法が考えられます。

例えば、次の4職群を基本に整理できます。

職群 主な対象職種 役割・成果責任の方向性
ブランド戦略・コンサルティング ブランドストラテジスト、ブランドコンサルタント、プランナー 本質的な課題の発見、ブランド戦略の構想、戦略提案の品質
クリエイティブ・デザイン プロデューサー、プロジェクトマネージャー、アカウント担当 顧客との共創、プロジェクトの品質・進行・収益性、関係者の連携
コーポレート・サポート 人事、総務、経理など 事業運営基盤の整備、経営管理、人材・組織の成長支援
※ 職群構成は一例です。企業の事業領域や組織構成、兼務の状況などに応じて調整します。

成長段階と複線型キャリアを明確にする

等級制度では、各段階に求められる「人材イメージ」「役割」「期待行動」「成果責任」を定義します。

例えば、担当業務を自立して遂行する段階から、専門領域の中核を担う段階、複数領域を統合して成果を牽引する段階へと、成長に伴う役割・責任の広がりを明確にします。

また、上位グレードでは、組織やチームを率いるマネジメントと、高度な専門性によって事業価値を高めるスペシャリストの複線型キャリアを設ける方法が有効です。

ブランド戦略の高度化を牽引する専門人材や、クリエイティブの品質と独自性を高める人材が、管理職にならなくても相応の役割と処遇を得られる体系を検討します。

グレードは役職や勤続年数ではなく、担う役割と期待される成果責任の水準を基本に設定し、社員が次に目指す成長の方向を理解できる仕組みとします。

ブランド価値への貢献を捉える人事評価制度

ブランディング会社の人事評価では、完成したデザインや納品物の品質だけでなく、顧客の課題を捉える洞察力、ブランドの方向性を構想する力、専門領域を統合する力などを適切に評価する必要があります。

ただし、創造性や戦略的思考力を抽象的な能力として評価するだけでは、評価者の主観に左右されやすくなります。

そこで、成果を生み出す過程で発揮した行動と、実際に生み出した成果・貢献を区分し、行動評価と業績評価を組み合わせる方法を基本とします。

評価区分 評価の対象 主な評価の観点
行動評価(全社共通) 価値創造に共通する行動 課題の本質を探る姿勢、協働、改善・挑戦、顧客志向
行動評価(職群別) 専門領域に応じた行動 戦略的な仮説構築、創造的な表現の探求、顧客との合意形成など
業績評価(プロジェクト) 担当プロジェクトでの成果・貢献 戦略提案の品質、コンセプトとの整合性、担当成果物の品質、進行・収益への貢献
業績評価(役割達成) グレードに応じた継続的な役割の達成 専門領域の品質向上、後進育成、ナレッジ共有、組織能力の向上

例えば、ブランドストラテジストでは、顧客の本質的な課題を探る調査・分析や仮説検証の行動と、その結果として提示した戦略の妥当性・独自性を区分して評価します。

クリエイティブ職では、新しい表現を探求する行動と、ブランドコンセプトに即した成果物の品質を区別します。

また、ブランド認知度の向上や顧客企業の事業成果は、中長期的に表れる場合があり、外部要因にも左右されます。そのため、個人の業績評価では、本人の責任範囲で確認できる成果や貢献を中心とし、長期的なブランド指標はプロジェクトの振り返りや組織学習にも活用することが適切です。

評価項目は必要以上に細分化せず、職種特性に応じた評価基準と具体的な判断材料を設定することで、専門的判断と評価の納得性を両立させます。

なお、クリエイターの人事評価制度の考え方については、「クリエイターの人事評価制度」でも解説しています。

顧客との共創・プロジェクトへの貢献を評価する仕組み

ブランディングのプロジェクトでは、戦略策定、コンセプト開発、デザイン、コミュニケーション設計などに異なる専門人材が関わります。プロジェクト全体の成果を参加者全員に一律に反映するのではなく、各人の担当役割と責任範囲に応じて貢献を評価します。

例えば、戦略担当は課題設定や提案の妥当性、クリエイティブ担当はブランドコンセプトとの整合性や表現品質、プロジェクト推進担当は顧客との合意形成や品質・進行・収益性の管理などを評価対象とします。顧客との共創では、要望への対応だけでなく、専門的な判断に基づく提案や対話を通じて、より適切な方向性を導いたかも重要な判断材料となります。

評価に当たっては、プロジェクト開始時に目的、期待成果、各人の役割・責任を共有し、終了時に提案資料、成果物、レビュー記録などの事実に基づいて貢献を確認します。

複数プロジェクトへの参加については、担当期間、関与度、責任の大きさなどを踏まえて評価を集約します。また、プロジェクトの難易度や顧客側の事情にも配慮し、評価者間で判断基準を共有します。

プロジェクト評価と行動評価、役割達成度評価の対象を整理し、同じ成果や貢献の重複評価を避けることで、評価の一貫性を確保します。

ブランド戦略と共創ノウハウを組織の力に変える

ブランディング会社の競争力を高めるには、個人に蓄積されたブランド戦略の立案手法、顧客との共創ノウハウ、品質判断の基準などを、組織全体で活用できる状態にすることが重要です。

プロジェクトの振り返りや事例共有、専門領域を横断したレビュー、後進育成を通じて知見を蓄積し、こうした取り組みをグレードに応じた役割や成果責任にも組み込みます。

AIを活用した調査・分析やアイデア探索、制作プロセスの改善で得られた知見や手法も、組織内で共有・発展させ、新たな価値創造につなげます。

持続的成長を支える人事制度の構築

ブランディング会社では、組織の成長段階に応じて人事制度に求められる役割も変化します。組織が比較的小規模な段階では、社員の役割分担や評価が経営者や一部の責任者の判断に依存する場合があります。まずは、社員に期待する役割・成果責任と評価基準を明確にし、組織の拡大に応じて、職群別の役割定義やプロジェクト評価、次世代リーダーの育成などを充実させます。

制度は過度に複雑化せず、全社共通のグレード体系と評価の基本構造を整え、組織の成長に応じて柔軟に発展させることが大切です。社員にとってのわかりやすさと、評価者が無理なく運用できる仕組みを両立させます。

また、等級制度・人事評価制度・賃金制度の整合性を図り、役割・責任に応じた処遇と、評価結果を昇給・賞与に反映する仕組みを明確にします。

モアコンサルティンググループでは、企業の経営理念や価値観、事業戦略、組織文化、将来の成長構想を踏まえ、各社の特性に適した人事制度をオーダーメイドで設計します。

ブランド戦略の構想力、クリエイティブの実現力、顧客との共創力を組織全体で高め、個人と組織の成長を持続的なブランド価値の創造へとつなげることが、これからのブランディング会社における人事制度の役割だと考えています。

モアコンサルティンググループでは、破壊的変化の中で成長を志向する企業に向けて、 未来志向の人事コンサルティングサービスを提供しています。 社員一人ひとりの潜在力を引き出し、従来の業界常識を超えるイノベーションにつながる人材の育成と組織づくりを支援します。

人事制度の設計全般については人事制度コンサルティングを、 人事制度と一体不可分の関係にある人事評価制度については 人事評価制度コンサルティングもご覧ください。