ゲーム制作会社の人事制度の考え方
ゲーム制作会社では、職種によって成果の現れ方が異なり、「評価者によって判断基準が違う」「専門性やプロジェクトへの貢献が正しく評価されない」といった不満が生じることがあります。また、成長やキャリアの道筋が見えにくいことが、クリエイターの育成・定着に影響する場合もあります。
ゲームデザイナー、プログラマー、アーティスト、UI・UXデザイナー、サウンド、ディレクターなど、多様な専門人材が連携して一つのタイトルをつくり上げるゲーム制作では、個人の専門性だけでなく、作品全体の品質やゲーム体験への貢献を適切に捉えることが重要です。
こうした課題に対応するには、全社共通の成長基準と職種ごとの役割・専門性を整理し、個人の行動や成果、プロジェクトへの貢献を適切に評価する仕組みが必要です。
当社では、各社の制作体制や組織文化、成長段階を踏まえ、専門性の成長とタイトルづくりへの貢献を結び付ける等級制度・人事評価制度などの構築を支援します。
変化の激しいゲーム業界と人事制度の役割
ゲーム業界では、開発技術や制作ツールの進化、生成AIの活用、ユーザーニーズの多様化、グローバル市場の拡大などによって、ゲーム制作の方法や人材に求められる役割が大きく変化しています。
特にゲーム制作では、企画、技術、表現、進行などが相互に影響し合います。新しい技術を導入するだけでは競争力にはつながらず、それを作品価値へと転換し、異なる専門職が協働しながら新しいゲーム体験を生み出す力が重要になります。
人事制度には、現在の能力や実績だけを評価するのではなく、社員が新しい知識や技術を取り入れ、より難易度の高い課題や役割へ挑戦していく成長の方向性を示すことが求められます。
タイトルづくりにおける役割の成長を示す等級制度
ゲーム制作では、職種ごとに求められる専門性は大きく異なります。しかし、社員の成長を専門スキルの高さだけで捉えると、タイトル全体への影響力や、より大きな役割を担えるようになったかという成長を十分に表すことができません。
そこで等級制度では、専門性だけでなく、担当する仕事の難易度、課題解決力、プロジェクトにおける役割、周囲への影響力、成果責任などを含めて成長段階を整理します。
成長段階を共通のグレードで示す
例えば、職種ごとの違いを超えて、次のような成長段階を共通のグレードとして示す方法があります。
- 基本的な知識・スキルを身につけ、担当業務を遂行する段階
- 自立して業務を遂行し、一定の成果を生み出す段階
- 難易度の高い業務や主要な役割を担う段階
- 専門領域やチームを牽引し、周囲の成果にも影響を与える段階
- 複数領域やプロジェクト、組織全体に広く影響を与える段階
実際のグレード数や定義は、会社の規模や組織構成に応じて設計します。重要なのは、職種ごとの専門性を尊重しながらも、会社として共通する「成長の階段」を明確にすることです。
クリエイターと技術者の成長を支える複線型キャリア
ゲーム制作会社では、高度な専門性を持つクリエイターやエンジニアが、必ずしも組織管理を担う管理職を志向するとは限りません。
そのため、一定の成長段階以降では、組織やプロジェクトを率いるキャリアと、高度な専門性を活かして価値を生み出すキャリアの双方を用意することが有効です。
マネジメントとエキスパートの2つの成長方向
- マネジメントキャリア:チームやプロジェクトを統括し、意思決定、人材育成、組織成果などに責任を持つ
- エキスパートキャリア:高度な専門性を活かして難易度の高い課題を解決し、作品品質や技術水準を高め、組織へ広く影響を与える
両者を同等のキャリアとして位置付けることで、「管理職にならなければ成長できない」キャリア構造を避けることができます。
クリエイターや技術者が専門性を高め続けながら、より大きな役割や処遇を目指せる仕組みは、専門人材の成長と定着の両面で重要です。
タイトル開発への成果・貢献を捉える人事評価制度
ゲーム制作では、多くの仕事がタイトルやプロジェクト単位で進みます。そのため、評価制度でも、年間を通じた職務遂行だけでなく、担当したタイトルの中でどのような役割を担い、どのような成果・貢献を生み出したかを捉えることが重要です。
ただし、プロジェクトの成果は個人だけで決まるものではありません。タイトルの規模や開発フェーズ、担当した役割、難易度などによって成果の現れ方も異なるため、売上や納期などの結果だけで個人を評価することには限界があります。
異なる3つの観点から評価する
例えば、評価制度を次の3つの観点に整理することができます。
- 行動・成長:日常の仕事における取り組み方、専門性の向上、協働、課題解決など
- プロジェクトへの成果・貢献:担当タイトルやプロジェクトで果たした役割、成果、品質向上への貢献など
- 継続的な役割・組織貢献:所属組織で担う役割、人材育成、ナレッジ共有、標準化、業務基盤の整備など
このように性質の異なる評価を組み合わせることで、短期的なプロジェクト成果だけに偏らず、社員の成長や組織の中長期的な発展も評価に反映することができます。
職種特性を踏まえて、作品づくりへの貢献を評価する
ゲーム制作では、職種によって作品への貢献の仕方が異なります。ゲームデザイナー、アーティスト、プログラマー、ディレクター、プロジェクトマネージャーなど、それぞれが異なる専門性や役割を通じて、一つのタイトルづくりに貢献します。
評価制度では、こうした職種特性を踏まえながらも、プロジェクトへの成果・貢献については共通する観点から捉えることで、職種を越えた評価の一貫性を確保します。
一方、日常の行動や専門性については、成果の出し方や役割特性が近い職種をグルーピングし、共通する評価軸と組み合わせることで、それぞれの職種特性を反映します。
全職種に共通する評価の考え方と、職種特性に応じた評価を組み合わせることで、公平性と納得感のある評価制度につなげることができます。
個人の専門性をタイトル全体の品質につなげる
ゲーム制作では、一人ひとりの高い専門性が重要である一方、最終的な価値はタイトル全体としてユーザーに届けられます。
そのため、個人のアウトプットだけでなく、他職種との連携、制作工程上の課題解決、品質向上への働きかけ、チームへの知識共有なども重要な貢献となります。
特に専門性の高い社員には、自ら高い成果を生み出すことに加え、知識や経験を周囲へ広げ、チーム全体の制作力を引き上げる役割も期待されます。
人事制度を通じて、個人の専門性からチームの成果へ、さらにタイトル全体の価値へと貢献を広げていく成長を示すことが重要です。
技術進化とクリエイティブ力を高める学習・知識共有
ゲーム制作に必要な技術や表現手法は絶えず進化しています。ゲームエンジンや制作ツール、生成AIなどの活用が広がる中、社員が継続的に学び、自らの専門性を更新していくことが重要になります。
ただし、新しい技術を習得すること自体が目的ではありません。技術を活用して制作効率を高めたり、新しい表現を実現したり、作品品質を高めたりすることによって、初めて組織の競争力につながります。
また、個人が獲得した知識を社内で共有し、制作ノウハウや技術的な知見を蓄積することも重要です。レビュー、勉強会、後進育成、ナレッジ共有などを通じて、個人の学びを組織の制作力へと転換していくことが求められます。
制作体制の変化に対応できる柔軟な人事制度
ゲーム制作会社では、タイトルの規模や開発フェーズによってプロジェクト体制が変化し、組織の成長に伴って必要な職種や役割も変わっていきます。
そのため、人事制度を特定の職種構成や開発体制に合わせて細かく作り込みすぎると、事業や組織の変化に対応しにくくなる可能性があります。
共通するグレードや評価の基本構造はできるだけシンプルに保ちながら、職種やプロジェクトの特性を必要な部分に反映し、組織の成長に応じて柔軟に見直せる制度とすることが重要です。
ゲーム制作会社の持続的な成長を支える人事制度へ
ゲーム制作会社の競争力は、多様な専門性を持つ社員がそれぞれの強みを高めながら、職種の枠を越えて協働し、新しいゲーム体験や高い作品品質を生み出せるかどうかによって大きく左右されます。
人事制度は社員を査定するためだけの仕組みではありません。社員の成長の方向性を示し、専門性や創造性を高め、タイトルや組織への貢献を適切に評価することで、個人の成長と会社の成長を結び付ける経営基盤となります。
モアコンサルティンググループでは、ゲーム制作会社の職種構成、タイトル・プロジェクト型の働き方、専門人材のキャリア、事業や組織の成長段階などを踏まえ、等級制度・人事評価制度・賃金制度を一体的に整理し、各社の実情に応じた人事制度設計を支援します。
モアコンサルティンググループでは、破壊的変化の中で成長を志向する企業に向けて、 未来志向の人事コンサルティングサービスを提供しています。 社員一人ひとりの潜在力を引き出し、従来の業界常識を超えるイノベーションにつながる人材の育成と組織づくりを支援します。
人事制度の設計全般については人事制度コンサルティングを、 人事制度と一体不可分の関係にある人事評価制度については 人事評価制度コンサルティングもご覧ください。