変化に強く、成長を続ける組織づくりの基盤
ゲーム業界における変化と人事制度の重要性
ゲーム業界は、技術革新やユーザーニーズの変化が非常に速く、かつてないほど多様な進化を続けています。近年ではNFT・ブロックチェーンを活用したWeb3ゲーム、生成AIの導入、サブスクリプション型サービスやクラウドゲーミングの普及など、従来型ビジネスモデルや開発体制に抜本的な見直しが迫られています。
一方、Z世代以降のユーザーは「面白さ」だけでなく、共感性や社会的意義、世界観など多様な価値観を持つようになり、作品やゲーム制作会社に対してこれまで以上に多面的な評価を求めています。さらに、グローバル市場の拡大、AI・クラウドなど先端技術の台頭により、ゲーム制作会社は絶えず迅速な意思決定と変化対応力を問われています。
このような環境でゲーム制作会社が持続的な成長を遂げるには、時代や組織の成長段階に応じて柔軟かつ戦略的に進化する人事制度が不可欠です。当社が提案する人事制度設計は、「社員の挑戦と専門性の深化が組織の成長を牽引する」という思想を一貫して中核に据えています。単なる制度整備にとどまらず、社員一人ひとりの可能性と熱意を組織全体の成果へとつなげる仕組みづくりを目指します。
熱意と達成感を育む制度の理想像
ユーザーに楽しさや感動、ユーザー同士の交流やつながりをもたらすには、まず制作現場の社員が達成感や充実感、誇りを持って仕事に取り組むことが欠かせません。社員が自律的に挑戦し、専門性と創造性を高めながら最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を整えることが、ユーザーの期待を超える作品づくりの原動力となります。
当社が目指す人事制度は、戦略的な視点に立脚し、単なる評価・報酬制度の枠を超えて「社員が誇りを持ち、一流を目指し続けられる組織」を実現することです。人事制度は目的化するものではなく、社員の潜在力を引き出し、ゲーム制作会社の価値向上を支える“自律的挑戦のための仕組み”と位置付けています。個々人の成長が着実に成果へと結びつき、その積み重ねが組織全体の持続的な発展へとつながる制度設計を重視しています。
制度目的の再定義:「創造性 × 品質 × 進行管理力」
ゲーム制作の競争優位を生む三要素
ゲームビジネスの競争優位は、以下の三要素に集約されます。加えて、持続可能な開発体制の構築も長期的な競争力の基盤となります。
- 独創的なゲーム体験の創出:世界観・ゲーム性・IP価値を高める斬新な企画力
- 卓越した実装クオリティの追求:グラフィック・演出・パフォーマンスの水準向上
- タイトな開発スケジュール管理とコスト最適化:アジャイル開発でマイルストーンを厳守し、収益性を高める
人事制度はこれら要素を「成長ループ」として循環させ、「社員の学習速度とチーム協働力がタイトル価値と収益を押し上げる」構造を、設計原理の最上位に据えています。
制度が目指すべき最上位目的
人事制度の最上位目的(制度が達成すべき最終成果)は、「タイトル価値の最大化」と「社員の持続的成長」を同一の仕組みで同時に実現することにあります。個々人のスキル進化とチームのコラボレーションが作品の品質・収益に反映され、さらに成果が次の成長を呼び込む好循環(成長ループ)を人事制度全体で創出します。
等級・キャリアパス :「6 ラダー × デュアル」構造
専門領域別のキャリアパス設計
ゲーム制作に関わる主要な専門領域を6つのラダー(職群)に分類し、それぞれにスペシャリスト/マネジメントの2系統キャリアパスを明示します。役割ごとの専門性や貢献領域を整理し、昇格の主要指標や各ラダーの特徴を明示することで、評価の透明性と専門職としての成長可能性を両立。社員の志向や能力に合わせて多様な成長ルートを描ける構造です。
また、全等級において「成果責任」「専門スキル」「学習・改善行動」の3軸を数値化し、専門性と組織貢献の両面から評価します。
ラダー | 主な職種 | 昇格主要指標 | 特徴 |
---|---|---|---|
プロデュース/PM | プロデューサー・ラインP・PM | 予算差異、納期遵守、ユーザーKPI、粗利率 | スケジュール&利益責任を可視化。運営型タイトルでは LiveOps※1 成果も評価 |
ゲームディレクション&シナリオ | クリエイティブディレクター・シナリオライター | タイトルNPS※2、レビュー評価、IP整合性※3 | 企画ピッチ・プロトタイピングの通過率を昇格要件に追加 |
エンジニアリング &プログラミング | クライアント/サーバー/オンラインSRE | コード品質指数、障害復旧時間、FPS指標※4 | 最新エンジン・クラウド技術の導入を加点。OSSコントリビューションを評価 |
アート&テクニカルアート | 2D/3D/VFX/UI・UX | アセット品質、リテイク率、制作効率 | PBR ワークフロー※5やドローン/フォトグラメトリ技能を要件化 |
サウンド&オーディオ | 作曲・効果音・Voice Over・実装 | 音響品質、納品リードタイム、実装バグ率 | Dolby Atmos 等資格・ミドルウェア熟度を評価 |
QA&データアナリティクス | QA設計・自動化・ゲームデータ分析 | バグ発見率、リリース後クラッシュ率、LTV伸長率※6 | テスト自動化率、リアルタイムKPI解析力を重視 |
評価制度:「成果 × 品質 × 成長 × コンプライアンス」
4領域によるバランス評価
評価制度は、すべての職群・職種に共通して適用できる4領域の評価フレームワークを採用しています。「成果」「品質」「成長」「コンプライアンス」という4つの領域に代表KPIを設定し、役割や開発フェーズに応じて柔軟に比重を調整できる設計です。専門性とプロジェクト貢献の双方を正当に評価できる仕組みです。
評価領域 | 代表KPI | 比重 | 備考 |
---|---|---|---|
財務・制作成果 | 予算差異、DAU/ARPU、粗利率 | 30 % | プロデューサー系40% |
クリエイティブ品質 | メタスコア、ユーザーレビュー、リテイク率 | 25 % | ディレクション職40% |
成長・学習 | 新技術導入、技術共有会開催、資格取得 | 25 % | 全職共通 |
コンプライアンス/ESG | 著作権遵守、CO₂ 削減、労務違反ゼロ | 20 % | 違反は即減点 |
チームと個人の成長を支える仕組みと価値観の共有
グロースマインドセットに基づく人材育成
「グロースマインドセット」とは、自身の成長を追求し、課題にも前向きに取り組む姿勢です。この思考が社内に根付くことで、社員が受け身ではなく自発的に課題を発見し、素早く解決策を導き出す力が養われます。人材育成の仕組みは企業パーパスやMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)と日々の行動・判断を自然に結び付け、組織全体の成長の基盤となります。
技術習得とナレッジシェアの推進
ゲーム業界では継続的なスキルアップと知識習得が不可欠です。当社の人事制度は、社員が主体的に最先端技術やトレンドを学び、その知見をチーム内外で積極的に共有する文化を推進しています。たとえば、研修や社内勉強会、ナレッジ共有プラットフォームなどの制度を整備することで、日常的な技術習得や知識共有の行動を積極的に後押しします。さらに、こうした学びやシェアの取り組みを評価・昇進・報酬にもきちんと反映させることで、組織全体で継続的に学び合い、成長し続けるサイクルを生み出しています。
多職種協働と課題解決文化の醸成
ゲーム制作は多様な職種が連携し、チームで成果を出す現場です。職種間の垣根を越えた理解や信頼を重視し、チームワークやコラボレーション能力の向上を評価します。チーム貢献度や協調性も制度的に評価ことで、現場主導の協働意識を全社に浸透させ、ゲーム制作会社としてより大きな成果を生み出し、組織全体の持続的な成長へとつなげます。
また、課題解決を推進する企業文化の醸成も重視します。社員が課題を前向きに捉え、創造的かつスピーディに対応することが個人と組織の成長を加速します。上司や同僚との対話、失敗からの学び、挑戦を称える風土づくりを大切にし、“行動を促す仕組み”として人事制度を運用しています。
成長循環の創出と持続的な発展
努力や貢献が正当に評価される働きがいのある環境を整えることで、社員のモチベーションは高まり、イノベーションを生む好循環が生まれます。こうした成長サイクルを組織全体で実現することこそが、時代を超えて持続的発展を続ける企業の本質的な強さです。
当社は各社の戦略や組織文化に適合する最適な人事制度設計を行い、実践的な施策と運用支援を提供しています。多様な職種の連携や先端技術の活用、チームワークを最大限に活かす人事制度を通じて、ゲーム制作会社の持続的な成長をこれからも力強く支援してまいります。

人事制度の設計全般について詳しく知りたい方は、人事制度コンサルティングの総合案内ページをご覧ください。
また、人事制度と一体不可分の関係にある人事評価制度について詳しく知りたい方は、人事評価制度コンサルティングの総合案内ページをご覧ください。