転換期を迎えたアパレル業界と人事制度の進化
ファッションは時代を映す鏡であり、アパレル業界はその最前線に立っています。近年、EC市場の拡大やデジタル技術の進化により、顧客の購買行動や価値観は大きく変化し、SDGs達成に向けたサステナブルファッションへの関心も急速に高まっています。AIやビッグデータを活用したトレンド予測や在庫管理、バーチャル試着といった新技術の導入により、ビジネスモデルの転換が進み、グローバル市場展開の可能性も広がっています。
こうした変化に対応するには、デジタルスキルとグローバル視野を備えた人材が不可欠です。EC戦略の強化、サプライチェーンの見直し、サステナブル素材の開発といった取り組みも求められており、柔軟な発想とクリエイティビティを備えた人材の育成がこれまで以上に重要となっています。
私たちモアコンサルティンググループは、社員一人ひとりの「ポテンシャル」を「成果」へと転換し、企業全体の成長を力強く支える人事制度の構築をご支援する人事制度コンサルティングを提供しています。ここでは、アパレル業界における人事制度のあるべき姿について、その考え方と制度設計のポイントをご紹介します。
人事制度の本質的な役割とは
経営環境は絶えず変化しますが、人々が求める「楽しさ」や「感動」、「人とのつながり」は時代を超えて普遍的な価値を持ちます。アパレルビジネスにおけるブランド力、顧客体験、そしてホスピタリティは、まさに“人”によって創り出されます。
企業の競争力の源泉は、そこで働く社員の情熱、創造力、行動力です。そのため、人事制度には、社員の成長を促し、誇りを持って働ける環境を提供するという、極めて重要な役割があります。
社員にとって「最高の会社」であるためには、社員の努力や貢献が正当に認められ、グロースマインドセットを育むことができる制度設計が必要です。それこそが、事業の未来を決定づける確かな基盤となります。
人事制度の再定義:「ブランド価値 × 収益性 × サステナビリティ」
アパレル業の競争優位は、以下の三つの領域に集約されます。
- ブランドストーリーとCX(顧客体験)創造力
- トレンドに即応する開発・供給網の敏捷性
- サステナブル素材や労働環境といった社会課題への対応力
これらをバラバラに捉えるのではなく、「学習」と「創造」が循環する“成長ループ”として制度設計に反映し、「社員の成長速度がブランド価値と財務成果を押し上げる」という因果関係を最上位の概念とします。

等級・キャリアダラー:5ラダー×デュアル構造
アパレル業界における職種の多様性に対応するため、5つの職群(ラダー)に基づいたキャリアラダーを設計します。各ラダーには、専門スキルを磨き続ける「スペシャリスト」と、組織運営を担う「マネジメント」の2つのコースを設定し、それぞれの特性に応じた評価と成長支援の仕組みを整備します。これにより、多様な価値観や志向を持つ社員が、自らの強みを活かしながら主体的にキャリアを形成できる環境を実現します。
- デザイン&マーチャンダイジング:デザインの採用率や販売消化率、サステナブル素材の使用比率などが指標となり、成果をシーズン単位で可視化します。
- 生産・SCM:リードタイム短縮率や歩留まり、CO₂削減量などが評価され、さらに調達先や縫製工場のCSR対応も加点要素とします。
- 店舗運営:CXスコア、UPT(1人当たり購買点数)、在庫差異率などが共通指標として用いて、アルバイトも含めた評価が可能です。
- EC&マーケティング:オムニチャネル売上比率、コンバージョン率、SNSのフォロワー成長率などを用いてデジタル人材の発掘と抜擢を推進します。
- ブランド戦略:IRR(投資収益率)、協業案件数、メディア露出量などを重視し、コラボ企画やIP活用の取り組みを評価対象します。
各ラダーにおける等級要件は、「成果に対する責任」「職務に必要な専門スキル」「日々の学習と業務改善への取り組み」などの観点から、具体的な数値や行動指標に基づいて設定されます。これにより、社員は自身のキャリアパスを明確に描くことができ、評価の納得感や将来への展望を描きやすくなります。
評価制度:「成果 × ブランド価値 × 成長 × ESG」
職種別に最適化された評価指標
アパレル業の各職種の特徴をふまえた柔軟な評価制度の構築を目指します。評価は大きく以下の4領域に分けて、それぞれの職務内容に応じて評価のウェイトを調整できるようにします。
- 財務成果:売上総利益やROI(投資収益率)などが評価されます。
- CX/ブランド価値:NPS(顧客推奨度)やSNSでの反応率、再来店率といったブランドとの接点指標を活用します。
- 成長・学習:資格取得や提案の採用件数など、社員の成長意欲と実践を反映した指標を評価します。
- ESG・コンプライアンス:サステナブル素材の使用比率や廃棄削減、労務違反ゼロといった指標を設定し、特にゼロトレランス規定により、重大なコンプライアンス違反があった場合には、たとえ業績が優れていても評価の対象から除外します。
なお、デザイン職では「CX/ブランド価値」の評価比重が高められ、SCM職では「財務成果」や「ESG」の比重が大きくなります。このように、職種の役割に応じた柔軟な評価設計により、個人の貢献と企業価値の両立を図ります。
定量・定性の両面からのアプローチと独自ツールの活用
また、納得性の高い評価制度を実現するためには、定量評価と定性評価のバランスが重要です。モアコンサルティンググループでは、独自に開発した評価ツールを活用し、多角的かつ的確な人材評価を可能にしています。
行動特性評価「スキル評価」では、業務遂行に必要な行動特性を具体的に可視化し、「業務タイプ別人事評価」では業務特性に応じて業務をクリエイティブ系、アルゴリズム系などに分類して評価します。「ポテンシャル評価」によって将来的な成長性や挑戦意欲を測定し、「影響力評価」では業績だけでなく、周囲への働きかけや影響の大きさを評価指標に加えます。
これらのツールを活用することにより、社員一人ひとりの強みや努力が的確に反映される評価制度を構築することができ、エンゲージメントの向上と人材の最適配置に貢献します。
一流を育む組織文化と成長基盤の整備
私たちは、ポテンシャルをすぐにパフォーマンスへ転換できる組織文化の醸成を重視しています。
- グロースマインドセットを育む制度設計
- 自律的な学習と改善を称える風土の構築
- 「一流の人財」を多数輩出する長期戦略
直面する課題をエネルギッシュに解決する力を持つ企業は、顧客からも社員からも選ばれ続ける存在となります。創造性にあふれ、自律的に動ける“活力ある組織体質”こそが、アパレル業界における未来の競争優位を形づくります。
人と組織の未来を見据えて
アパレル業界における成長とは、真の成長とは、単なる売上の拡大にとどまらず、企業の「ブランドが社会から信頼されること」と「社員が働くことに誇りを持てること」が両立している状態を指します。そのような持続可能な成長を実現するには、社員の「一流への挑戦」を制度によって後押しし、努力や貢献が正当に報われる仕組みの構築が不可欠です。
ご相談は無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。私たちの人事制度コンサルティングは、貴社のビジネスに最適な人事制度の設計と導入をサポートいたします。
人事制度の設計全般について詳しく知りたい方は、人事制度コンサルティングの総合案内ページをご覧ください。
また、人事制度と一体不可分の関係にある人事評価制度について詳しく知りたい方は、人事評価制度コンサルティングの総合案内ページをご覧ください。