第17回:本領を生かす

「経営コンサルタントは黒子として経営者をサポートする存在。然るに第一線を退くまでは黒子に徹すべし」という、今となっては誰の言葉なのか、誰から言われたのかさえも定かではないコンサルタント像を頑なに守り続けて、弊社を創業して早いもので27年が経過しました。

この間、企業の成長に少しでもお役に立てればと考え、松下幸之助翁の「本領を生かす」という言葉を座右の銘として、その時々の流行の人事制度や評価制度に迎合することを潔しとせず、「オリジナリティ」に拘りを持ってコンサルティング業務に従事してきました。

私は学生時代に数学や物理の公式を素直に適用すれば難なく解ける問題について、公式によらずに正解を導き出せる方策を考えて結構な時間を使って試行錯誤したりすることがありました。物理の試験問題で自分なりのロジックで正解に辿り着いているのに、その過程が通常のアルゴリズムと異なることから不正解とされたこともありました。今となって思えば時間を無駄遣いしていたのではないかという思いもありますが、こうした少し変わった考え方、性格のお陰で特に自分が興味を持ったものについては自然に「オリジナリティ」を追求するようになっていました。

その後、松下幸之助翁の「本領を生かす」という言葉と出会い、そうした考え方、性格が自分の本領と自覚するようになったと思います。

創業から今日までは、バブル崩壊後の日本経済の失われた30年が主戦場となりましたが、この間には1990年代後半の山一証券の経営破綻に端を発した金融危機や2007年のリーマンショック、2011年の東日本大震災等、最近では新型コロナウィルスのパンデミック等、振り返ってみると色々なことがありました。

弊社もこうした経済の荒波に揉まれて、山あり谷ありでシリアスな時期もありました。特にリーマンショック時の潮が引くように一気に人事コンサルティングの需要が引いて行った時には、それまでに経験したことのない大きな喪失感を味わいました。

それまでも弊社は「オンリーワン」 を志向してコンサルティング活動を続けていましたが、リーマンショック時の経験が弊社のこのコンサルティング・バリューをより一層明確に方向付けしたといっても過言ではありません。

その後、弊社ではその時々の経営環境や未来予測を基に、企業のニーズを汲み取りながら「グッドライフデザイン人事制度」「期待貢献人事制度」「成長主義人事制度」等の新しい人事制度のコンセプトやクリエイティブスキル評価」「新型業績評価」「ポテンシャル人事評価等の新しい評価ツールについての提案を続けてきました。

同時に、半ば自己満足になってしまいますが、弊社に依頼頂くクライアントの期待を少しでも超えたいとの思いから、一つ一つの案件に真摯に向き合いコンサルティング業務を遂行してきました。もちろん、全てが成功裏に終わったわけではりませんが、一つ一つの案件に真摯に向き合ってきたつもりです。

そして、ここ数年のデジタル革命の急速な進行、地政学的リスクの高まり、新たな段階に移行した脱炭素化のうねり、新型コロナウイルスのパンデミックは、経営環境に破壊的な変化を及ぼしました。これまでとは比べものにならないほど急速に変化する経営環境に対応して、企業が競争力を高め競争に勝ち残っていくためには、人材のアップスキリングやリスキリングも含めた成長が必要不可欠となります。人材の成長に限界はありませんので、人材の成長を加速する新しい仕組み(人事制度、評価制度等)のニーズが非常に高まっていることを実感しています。

こうした歴史の大きな転換点に遭遇できたことを幸運と捉え、ワクワク感を持って「本領を生かす」を座右の銘に一層精進し、弊社のコンサルティング・バリューをより一層強固なものとして確立して、ひと味違った形で企業の成長や社会に貢献できれば本望だと考えています。