賃金制度の設計・見直し

等級制度や人事評価制度と連動した賃金制度の設計・見直しを支援します。基本給・年収レンジ、昇給・昇格ルール、賞与・インセンティブ、諸手当、移行措置を整理し、役割や貢献を反映した分かりやすく柔軟な仕組みを構築します。

役割や貢献を適切に反映する賃金制度

賃金制度は、社員が担う役割や責任、人事評価結果を基本給・昇給・賞与に反映するとともに、採用・定着、人材育成、人件費管理を支える重要な仕組みです。

基本給や賞与の決まり方が分かりにくい、同じグレード(等級)でも賃金に大きな差がある、評価結果と昇給額の関係が不明確といった状態では、社員の納得感が得にくく、制度の運用も属人的になりやすくなります。

当社では、会社の価値観、事業特性、人材戦略、現行賃金の分布、人件費方針などを踏まえ、グレード制度、人事評価制度と一貫性のある賃金制度を設計します。

賃金制度で明確にする主な内容

賃金制度では、単に基本給の金額を定めるだけでなく、賃金の決定基準や、評価結果、成長、役割の変化を昇給・昇格・賞与に反映するルールを明確にする必要があります。

基本給・年収レンジ
各グレードや職種について、基本給または年収の下限・標準・上限を設定します。
昇給ルール
人事評価結果やグレード内の賃金位置に応じて昇給額または昇給率を決定し、昇給原資の範囲内で調整するルールを設けます。
昇格時の賃金
上位グレードへ昇格した際の基本給や年収の変更方法を定め、グレード間の賃金逆転や不均衡を防ぎます。
賞与・インセンティブ
全社、部門、個人の業績をどのように賞与に反映するかを整理します。必要に応じて、特定の成果に対するインセンティブも設計します。
諸手当
役割、職務、勤務地、勤務形態などに応じた手当について、支給目的と対象を明確にし、必要性を見直します。
移行措置
制度変更によって賃金が急激に変動しないよう、調整給、経過措置、段階的移行などのルールを設けます。

分かりやすく運用しやすい賃金制度の基本原則

賃金制度は、必要以上に複雑にせず、社員にとって分かりやすく、継続的に運用できる仕組みにすることが重要です。当社では、次の基本原則を踏まえて制度を設計します。

  • グレードや人事評価制結果と賃金の関係が明確である
  • 基本給、昇給、賞与の決定ルールが分かりやすい
  • 社員間の納得性と社内バランスに配慮されている
  • 市場の賃金水準や採用環境を必要に応じて反映できる
  • 人件費を管理しながら、業績変動にも対応できる
  • 制度変更や役割変更に柔軟に対応できる

すべてを細かく規定しすぎると、制度が複雑になり、運用負担が大きくなります。組織規模や人事体制に応じて、必要なルールに絞り込むことが重要です。

事業環境の変化に対応できる賃金制度

事業環境や人材市場が大きく変化する中では、賃金制度にも、業績変動への対応力、役割・貢献との連動、社員の成長を処遇に反映する仕組みが求められます。

  • 人件費を適切に管理しながら、業績変動に対応できる柔軟性
  • グレードや人事評価結果と賃金の一貫性
  • 社員の成長や役割拡大を昇給・昇格に反映する仕組み
  • 職種や人材市場の違いを必要に応じて反映できる設計

固定的な賃金テーブルを維持するだけではなく、事業や組織の変化に応じて、賃金レンジや運用ルールを見直せる仕組みにしておくことが重要です。

賃金制度設計の進め方

Step1:現状分析

まず、現行賃金の分布と制度運用の実態を確認し、課題と改善方針を整理します。

  • 賃金分布の分析
    グレード別・職種別の基本給、年収、賞与、昇給額などを分析し、ばらつきや逆転、レンジ逸脱の状況を確認します。
  • 役割・評価との関係の確認
    グレード、人事評価結果と賃金の関係を確認し、制度上の基準と実際の処遇にずれがないかを整理します。
  • 外部水準との比較
    必要に応じて、職種や地域などを踏まえた外部の賃金水準を参考にし、自社の採用競争力や処遇方針を検討します。
  • 人件費の確認
    現在の人件費総額や構成を確認し、今後の人員計画、昇給、昇格を踏まえた人件費方針を整理します。

Step2:基本給・年収レンジの設計

現行賃金の分布、グレードごとの役割・責任、外部の賃金水準、自社の支払能力や人材戦略などを踏まえ、基本給または年収のレンジを設定します。

レンジには、下限・標準・上限を設ける方法や、一定の幅を持たせる方法があります。各グレードの役割水準と賃金水準が対応するように設計するとともに、グレード間の重なり方や昇格時の接続も確認します。

Step3:昇給・昇格ルールの設計

人事評価結果を昇給にどのように反映するかを整理します。評価結果だけでなく、現在の賃金位置やグレード内での成長段階を考慮する方法もあります。

  • 評価ランクごとの昇給額・昇給率
  • レンジ下位・中位・上位での昇給差
  • レンジ上限に到達した社員の扱い
  • 昇格時の基本給・年収の変更方法
  • 降格や役割変更時の処遇ルール

昇給原資に応じて運用できるよう、固定額だけでなく、昇給率やポイント方式を用いることも可能です。

Step4:賞与・インセンティブの設計

賞与は、全社業績、部門業績、個人評価などをどのように組み合わせるかを整理します。

業績連動を強める場合でも、短期的な数値成果だけに偏らないよう、役割達成、プロジェクトへの貢献、組織運営、人材育成などを反映する方法があります。

営業職など特定の職種については、賞与とは別にインセンティブを設けることもできますが、基本給との役割分担や過度な成果偏重に留意する必要があります。

Step5:諸手当の整理

各手当の支給目的、対象、金額、基本給との関係を確認し、継続するもの、基本給へ統合するもの、廃止・見直しするものを整理します。

手当を増やしすぎると、賃金構成が分かりにくくなり、制度変更や異動時の運用も複雑になります。制度全体をシンプルに保つ観点から見直します。

Step6:シミュレーションと移行措置

必要に応じて、新制度を社員データへ適用し、賃金分布、人件費、昇給・昇格時の変化を確認します。

  • グレード別・職種別の賃金分布
  • 新レンジを下回る社員・上回る社員の人数
  • 評価結果別の昇給額
  • 昇格時の賃金変化
  • 制度導入後の人件費総額
  • 将来の昇給・昇格を想定した人件費推計

制度変更による影響が特定の社員層に偏る場合には、調整給、経過措置、段階的な移行などを検討します。

主な賃金レンジ・賃金テーブルの設計例

賃金テーブルの形態は一つではありません。企業の人材戦略、職種構成、評価制度、現行賃金、人件費方針などを踏まえ、適切な方式を選択します。

グレード別レンジ方式

各グレードについて、基本給または年収の下限・標準・上限を設定する方式です。役割や成長段階に応じて、一定の幅の中で賃金を決定できます。

グレード別に基本給の賃金レンジを設定するイメージ

評価連動型のシングルレート方式

グレードと評価結果の組み合わせに応じて、次期の基本給を決定する方式です。毎期の評価結果に応じて基本給を改めて設定するため、「洗い替え方式」とも呼ばれます。

評価結果が賃金へ直接反映される分かりやすさがある一方、評価によって基本給が変動するため、適用対象や運用ルールを慎重に設計する必要があります。

評価結果に応じて基本給を決定するシングルレート方式のイメージ

職種別レンジ方式

職種ごとの役割、専門性、人材市場の違いを踏まえて、職種別に基本給または年収のレンジを設定する方式です。

専門職など、市場水準が他職種と大きく異なる場合に活用できます。ただし、職種を細分化しすぎると運用負担が増えるため、職群単位で設定する方法もあります。

職種別に基本給レンジを設定するイメージ

基準年収・賞与配分方式

各グレードの基準年収と年収バンドを設定し、年収に占める基本給と賞与の構成を整理する方式です。

全社・部門・個人の業績評価結果に応じて賞与を配分することで、一定の安定性を保ちながら、業績や貢献を処遇に反映できます。

基準年収と賞与配分を組み合わせた賃金制度のイメージ

成長や期待貢献を反映する賃金制度

賃金は、過去の評価結果だけでなく、現在担っている役割や、今後期待される責任・貢献を踏まえて決定することも重要です。

社員の成長や役割拡大が処遇に適切に反映されることで、次に目指すべき役割やキャリアの方向性を示しやすくなります。

例えば、グレード内での成長を昇給に反映し、上位グレードに求められる役割や成果責任を担えるようになった段階で、昇格に伴う賃金の見直しを行う仕組みが考えられます。

期待貢献給(期待年俸)

期待貢献給は、過去の評価結果だけでなく、次期に担う役割や期待する貢献水準を踏まえて、基本給または年収を設定する考え方です。

役割変更や責任範囲の拡大を処遇に反映しやすく、会社が社員に期待する役割や成果を明確に伝えることができます。

ただし、将来への期待だけで賃金を決定するのではなく、グレード、役割、現行賃金、過去の実績、社内バランス、外部水準などを総合的に確認する必要があります。

期待貢献人事制度

既存の賃金制度を見直します

賃金制度は、事業や組織の成長、職種構成、人材市場、最低賃金、採用環境などの変化によって、導入時の設計と実態にずれが生じることがあります。

当社では、現行の賃金データ、グレード制度、人事評価制度、昇給・賞与ルール、人件費の状況などを確認し、制度と運用の両面から課題を整理します。

賃金制度の課題例

  • 基本給や年収の決定基準が明確になっていない
  • 同じグレードでも賃金に大きな差がある
  • 役割や責任と賃金水準が対応していない
  • 評価結果と昇給額・賞与額の関係が分かりにくい
  • 昇給が積み上がるだけで、レンジ上限が機能していない
  • 昇格しても賃金がほとんど変わらない
  • 職種ごとの市場水準の違いに対応できていない
  • 諸手当が増え、賃金構成が複雑になっている
  • 制度変更時の移行ルールが整っていない
  • 将来の人件費を把握できていない

コンサルティングの進め方(例)

  1. 現行賃金、グレード、評価、賞与、手当の確認
  2. 賃金分布、人件費、昇給実績の分析
  3. 賃金制度の基本方針と支給基準の整理
  4. 基本給・年収レンジの設計
  5. 昇給・昇格・賞与ルールの設計
  6. 諸手当、移行措置、例外ルールの整理
  7. 人件費シミュレーション
  8. 社員向け説明資料、運用ルールの作成
  9. 導入・運用定着の支援

※実際の支援内容や進め方は、企業の課題やご要望に応じて異なります。

モアコンサルティンググループでは、破壊的変化の中で成長を志向する企業に向けて、 未来志向の人事コンサルティングサービスを提供しています。

人事制度の設計全般については人事制度コンサルティングを、 人事制度と一体不可分の関係にある人事評価制度については 人事評価制度コンサルティングもご覧ください。