人事制度(不動産)
広範な職種の社員を擁することで、部門間でバラバラとなっていた人事制度を、社員のベクトル合わせや柔軟な組織運営のために統一感のある人事制度に改定した不動産会社(社員数250名)の成功事例をご紹介します。
依頼の背景と課題
この不動産会社は、分譲マンションの開発・管理から注文住宅、賃貸物件の仲介など、事業分野を次々に拡大してきました。その結果、広範な職種の社員を抱えるようになり、社員一人ひとりの業務内容が多様化しました。このような状況下で、社員のベクトルを合わせ、会社としての一体感を取り戻すことが課題となっていました。
具体的な課題としては、以下の点が挙げられます:
- 部門間でバラバラな人事制度:各部門が独自に人事制度を運用しており、評価基準や賃金体系が統一されていませんでした。
- 職種間の公平性の欠如:多様な職種の社員が在籍する中で、職種ごとに異なる評価方法や賃金水準が適用されており、公平性を担保することが難しくなっていました。特に、歩合給の有無や手当の差異が社員間の不満を生んでいました。
- 人材活用の柔軟性不足:事業環境の変化に迅速に対応するためには、部門間での人材異動や配置転換が必要ですが、人事制度の不統一により、それが円滑に行えない状況でした。
- 社員のキャリア開発の制限:部門ごとに人事制度が異なるため、社員が自分のキャリアパスを明確に描くことが難しく、モチベーションの低下や離職のリスクがありました。
これらの課題を解決するため、統一感のある人事制度を導入し、社員のベクトル合わせと柔軟な組織運営を実現する必要がありました。
人事制度設計のポイント
グレードの統一と簡素化
- 基幹職と一般職の2つのコースを設定:全社共通のキャリアパスを提供するために、基幹職と一般職の2つのコースを設定しました。基幹職は将来の幹部候補として、組織の中核を担う人材を育成します。一般職は専門性やサポート業務に特化した役割を担います。
- フラットなグレード設定:組織の階層を極力フラットにし、意思決定の迅速化と社員の自主性を促進しました。各グレードに求められる役割やスキルを明確化し、昇進・昇格の基準を統一しました。
- キャリアパスの明確化:社員が自分のキャリアプランを描きやすいように、昇進・昇格の要件やプロセスを明確にしました。これにより、社員のモチベーション向上とエンゲージメント強化を図りました。
評価制度の統一と公平性の確保
- 業務スキルのレベルの標準化:スキル評価の業務スキルの設問において、グレードごとに職種間のレベルを標準化しました。その上で、各職種の特性を反映した評価項目を設定し、職種固有の能力も適切に評価できるようにしました。
- 目標管理(MBO)の導入:会社目標、部門目標、個人目標の連鎖を重視した目標管理制度を導入しました。これにより、社員一人ひとりが会社のビジョンや戦略と自分の業務を結びつけて理解し、目標達成に向けた行動を促進しました。
- 自己PR制度の導入:社員が自分の成果や取り組みを積極的にアピールできる自己PRの場を設け、評価者との認識のギャップを埋め、公平な評価を実現しました。
- 評価プロセスの透明化:評価基準や評価方法を全社員に公開し、公平性と納得感を高めました。また、フィードバック面談を定期的に実施し、社員の成長をサポートしました。
賃金制度の統一とシンプル化
- 諸手当の見直しと統一:部門ごとにバラバラだった諸手当を見直し、必要な手当を整理・統合しました。これにより、シンプルで分かりやすい全社共通の賃金体系に移行しました。
- 職種別の賃金レンジ設定:職種ごとに市場価値や業務内容を考慮した賃金レンジを設定し、公平な給与水準を確保しました。これにより、職種間の賃金格差を是正し、社員の不満を解消しました。
- 業績連動型賞与の導入:会社業績により原資を決定し、部門業績と個人業績に基づいて賞与を分配する業績連動型賞与制度を導入しました。これにより、社員の成果に応じた報酬を提供し、モチベーションを高めました。
- 賃金テーブルの透明化:賃金決定の基準やテーブルを明確にし、社員に公開することで、納得感を高めました。
反映ルールの明確化
- 総合評価による昇給額の決定:スキル評価と業績評価の総合評価に基づき、基本給の昇給額を決定するルールを設定しました。これにより、評価結果が昇給に直結する仕組みを構築しました。
- 昇格ルールの明確化:一般職の昇格ルールは累積ポイント制を採用し、一定の評価ポイントを蓄積することで昇格のチャンスを得られるようにしました。基幹職の昇格ルールは評価の再現性をベースに、継続的に高い成果を出す社員を昇格対象としました。
コンサルティングの成果と効果
人事制度を統一したことにより、以下のような成果が得られました:
- 会社への帰属意識の向上:これまで部門への帰属意識が高かった社員たちが、統一された人事制度の下で会社全体の目標や価値観を共有するようになりました。これにより、組織全体の一体感が高まり、社員のエンゲージメントが向上しました。
- 柔軟な組織運営の実現:人事制度の統一により、部門間の異動が容易になり、環境変化に対応した柔軟な組織運営が可能となりました。これにより、人材の最適配置やスキルシェアが進み、組織全体のパフォーマンスが向上しました。
- 社員のキャリア開発の拡大:社員は自分のキャリア開発の選択肢が広がり、異なる部門や職種にチャレンジできるようになりました。これにより、社員の成長意欲が高まり、組織内での人材育成が促進されました。
- 評価制度への信頼性の向上:職種ごとに業務スキルの評価項目を設定したことで、評価制度への信頼性が高まりました。社員は自己評価やフィードバックに丁寧に対応するようになり、自分の強みや課題を正確に把握できるようになりました。
- 業績向上と顧客満足度の改善:社員のモチベーション向上や組織の一体感強化により、業績が向上しました。また、部門間の連携強化により、顧客に対して総合的なサービス提供が可能となり、顧客満足度も向上しました。
本事例は、事業拡大に伴い広範な職種の社員を抱えるようになった不動産会社が、人事制度の統一と見直しを行うことで、組織の一体感を高め、柔軟な組織運営と社員のキャリア開発を実現した成功例です。当社は、このような取り組みを通じて、企業の課題解決と持続的な成長をサポートしております。
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