人事制度（士業）

依頼の背景と課題

創業から数年で社員数50名規模の事務所へと急成長したこの士業事務所では、業務のスキルマップを整備し、予算の付与と1on1ミーティングによる人材育成、予算の進捗・達成状況のフォローを行っていました。そのため、業務遂行能力の育成と評価はある程度できていると自負していました。

しかし、想定を超えるスピードで中途入社を中心に社員が増加した結果、様々なバックグラウンドや考え方を持つ人材が集まるようになりました。この多様性は組織にとっての強みである一方、組織としての一体感や価値観の共有が課題となっていました。

また、昇給や昇格のルールが曖昧であるため、社員のモチベーションやキャリアパスの明確化に支障をきたしていました。組織の持続的な成長を図るためには、社員全員が同じ方向を向き、共通の価値観を持って業務に取り組むことが重要です。

そこで、以下の課題解決が必要とされました：

• 人事制度の整備：昇給や昇格のルールを明確化し、公平で納得感のある評価制度を導入する。
• 会社の価値観の浸透：社員一人ひとりに会社の価値観を理解・共有してもらい、組織の一体感を醸成する。
• 組織文化の強化：多様なバックグラウンドを持つ社員が協力し合い、相乗効果を生み出す組織文化を構築する。

人事制度設計のポイント

グレード制度の導入

• フラットなグレード設定：現行の役職をベースに、組織の階層をシンプルに設定しました。これにより、社員が自分の現在の立ち位置と将来のキャリアパスを明確に理解できるようになりました。
• エキスパートグレードの設定：専門職処遇のために、エキスパートグレードを新設しました。これにより、高度な専門知識やスキルを持つ社員がマネジメント以外の道でキャリアアップできるようになりました。
• 昇進・昇格基準の明確化：各グレードに求められる役割やスキル、成果を具体的に定義し、昇進・昇格の基準を明確化しました。

評価制度の導入と強化

• 会社の価値観を反映したスキル評価：経営理念や企業文化をスキル評価の基準に取り入れ、社員が会社の価値観を日々の業務で実践できるようにしました。
• 目標管理とプロジェクト評価の併用：目標管理（MBO）による個人の業績評価に加え、プロジェクトベースの業績評価を導入しました。これにより、個人の成果だけでなく、チームやプロジェクトへの貢献度も評価対象としました。
• 360度評価の検討：上司だけでなく、同僚や部下からのフィードバックも評価に反映させ、公平性と納得感を高める取り組みも検討しました。

賃金制度の見直し

• 洗替え方式の基本給の導入：評価結果に基づき、基本給を見直す洗替え方式を採用しました。これにより、成果や貢献度が賃金にダイレクトに反映される仕組みを構築しました。
• 業績連動型賞与の導入：業績評価により変動する賞与制度を導入し、会社の業績や個人・チームの成果に応じて報酬が変動する仕組みを整えました。
• 賃金テーブルの透明化：賃金決定の基準やテーブルを明確にし、社員に公開することで、公平性と納得感を高めました。

反映ルールの明確化とメリハリのある報酬体系

• 賞与の配分ルールの設定：賞与はチーム業績と個人業績に連動するメリハリのある配分ルールを設定し、チームワークと個人の成果を両方重視しました。
• 昇格ルールの設定：評価の再現性をベースに、昇格の基準を明確化しました。これにより、継続的に高い成果を出す社員が正当に評価される仕組みを構築しました。
• 評価プロセスの透明化：評価方法や基準、結果のフィードバックを徹底し、社員が自分の評価を理解しやすいようにしました。

コンサルティングの成果と効果

会社の価値観をベースとしたスキル評価の導入により、社員一人ひとりが会社の価値観を深く理解し、日々の業務で実践するようになりました。これにより、組織としての一体感が高まり、社員のエンゲージメントが向上しました。

また、士業という特性上、個人の知識や能力が重視されがちでしたが、スキル評価（行動評価）の導入により、周囲との協調やコミュニケーションの重要性が認識されるようになりました。その結果、チーム内での情報共有や助け合いが活発化し、自発的な組織市民行動が増加しました。

さらに、評価制度と賃金制度の見直しにより、社員のモチベーションが向上し、生産性の向上や顧客満足度の向上につながりました。昇給や昇格のルールが明確になったことで、社員は自分のキャリアパスを具体的に描くことができるようになりました。

これらの取り組みにより、組織全体のパフォーマンスが向上し、持続的な成長の基盤が整いました。多様なバックグラウンドを持つ社員が協力し合い、相乗効果を生み出す組織文化が醸成されました。