第12回:人事制度で意欲向上(2)
モチベーションが向上する人事制度には○○主義かどうかは余り関係ないかも知れません。なぜならば、社員が今までよりも行動したくなるような状況・条件を会社として提供するということに尽きるからです。
ここでポイントとなるのは、今までよりも行動したくなるかどうかです。経営サイドから見た場合、意欲→行動→成果の回数が今までよりも増えれば、全体的な成果は上がるはずですので、「誰が」とか「何か」などの個別性に関しては余り真剣に注目していません(スタープレーヤーやその予備軍がいれば別です)。
経営サイドから見て「意欲がない」のは論外であり、低い状態なら意欲向上策を打ち出して、できるだけ大勢のメンバーがその策に乗じて良い成果に繋がるようにマネジメントすれば良いと考えるのですが、御存知のようにモチベーション・コントロールにはそれなりのスキルが必要です。
また、個人からすると意欲には2種類あり、意欲の程度にも大きな個人差があるので、全員が同じように反応して、意欲→行動→成果に結びつくとは限りません。その2種類とは「意欲A:仕事に対するやる気」と「意欲B:良い成果を出すためのやる気」です。
意欲A:仕事に対するやる気
- 意欲Aは個人の仕事そのものに対する興味の度合いや職場の環境、働き方、個人の事情などの様々なことに影響を受けます。意欲Aは低くても仕事によっては成立する場合があり、また高くても成果に大差がない場合もあります。
- 例えば定型業務や他者との接触が少ない仕事、ルーチンワーク、工夫を必要としない作業、意欲の低さが仕事のクオリティに影響しない、仕事ぶりや成果に対する適切な評価がない、あるいは個人の処遇に結びつくような評価がない場合などは、何もしなければ自然に意欲が低下する状況にあります。
- 効率の観点からは非効率、業務効率の観点からは後退ですが、低い状態でギリギリ安定していると変化や刺激を望まない傾向が定着し、業績低迷、ミス、事故等の大きなきっかけがないと誰も意識改革をしようなどとは思いません。
- 意欲Aはとにかく下がらないように自己管理し、組織的には早い段階で修正するなどして「集団で低下」しないような方策をとります。
意欲B:良い成果を出すためのやる気
- 意欲Bは会社の施策や処遇に関するルール(賃金、評価など)をきっかけに、個人の自己実現欲求(出世、自己表現、プライド、自信等)や競争心、向上心などから生まれます。意欲Bは低い時と高い時の行動範囲と行動量が格段に違うので、高ければ高いほど、長く続けば続くほど良い結果に結びつきます。
- しかし、意欲Bの発現と維持は気力・体力・知力を要するものであり、個人の性格やストレス耐性などが大きく影響することから、誰にでも「ある・できる」とは言い切れないかも知れません。いわゆる一種の「才能」というものです。現場レベルで見て誰にその才能があるのか、またその才能が開花しやすいかどうかなど、早い段階で見極める力がマネジメントサイドに必要です。
- ちなみによく口にするフレーズで「やる気はあったが、良い結果には結びつかなかった」というものがありますが、これはやる気があってかなりやったけれどダメだったのか、やる気があったけれどそこそこにしかやらなかったからダメだったのかで大きな違いがありますので、混同しないように気をつける必要があります。
ところで、会社の現状は別として、理想は意欲Aも意欲Bも高いレベルでキープされている状態ですが、前述したように意欲Aと意欲Bはちょっと別物なので、その辺をよく考えて、ズバリ!人事制度のコンセプトとして、
『意欲Aを上げて、あわよくば意欲Bも引き出そう』と考えるか、
『意欲Bにフォーカスして別世界に突入してみよう』と考えるかです。
今、会社にとって本当に必要なのはどちらなのか、良く観察するべきですが、おそらく経営サイドの感覚では、もう察しがついていることでしょう。目的を明確に持った人事制度なのでどちらのコンセプトを選んでも、もれなくモチベーションは向上します。