第11回:人事制度で意欲向上(1)
「社員のモチベーションを向上させる効果的な方法はありませんか。」と最近よく聞かれます。「最も効果的な方法は人事制度をリニューアルすることです。」とお答えしています。この「効果的」には「効率的」というニュアンスも含まれています。
なぜ、人事制度を新しくすると社員のモチベーションが向上するのか。理由は人事制度が「働く」ことに対する考え方や「働き方」に最も強く影響するからです。
モチベーションが上がらない、あるいは低下していると感じるのは、以下のような事象が複数同時に起こっているからです。
- 以前と比べて、社員に元気がない、オフィスに活気がない、空気がよどんでいる。
- 皆楽しそうに見えるが、良い意味での緊張感、当事者意識が薄い。
- ネガティブな発言が増え、レスポンスも遅くなった。
- 現場でのミスやトラブルが増えた。
- 市場競争力のあるプランが出てこない。
- 属人的な仕事がいつの間にか増えている。
- 作業効率が下がったままで改善しない。
- 個人の力が目立たない、スターがいないなど全体的に平凡である。
- 行動範囲が狭い、行動量が少ないなど動きが鈍い。
- 業績が下がり続けている。
これらの事象は、それぞれに原因や問題があり、その結果として表出しているので、課題を発掘して解決すれば良いのですが、そんな単純なものばかりではありません。
また、「○○がダメ」なのではなく「モチベーションが低下している」と感じるのは、「スキルやポテンシャルがあるのにやる気がないから上手くいかない」と思えることが、あちらこちらで見受けられるからであり、「以前はそうではなかった」からモチベーションが低下したと感じるのです。
また、モチベーションが低下した原因、あるいは上がらない原因というのも結構複雑なことが多く、根本的な解決は「ビジネス的に難しい」のが現実です。矛盾もあります。だからこそ、既に表出しているわかり易い事象を何とかして、全体を好転させようと考えるわけです。
個別に課題化して解決できれば良いと思いますが、課題解決にも強い意志と意欲が必要なので、全体的に意欲が下がっている状態では現場や個人の力だけでは動かせないことも多く、良い結果に繋がりにくいと思います。
そこで、複数の課題をある程度まとめて、最大公約数的に、しかも少しドライに解決するとしたら、「人事制度をリニューアルする」方法が手っ取り早く面倒くさくない、といったところでしょうか。
実は、課題自体は常に形を変えて存在するものなので、Aを解決するとBで問題が生じるなど、いつでも矛盾を抱えるものなのです。そして最もシビアな問題は、それこそ「いつやるんだ」、「今でしょ」が実行できるかできないかなので、優先順位を考えるといつでも同じような課題が残留しているということになるのです。
「人事制度」という枠の中には、グレード、賃金、評価などのフェーズがありますから、それぞれのフェーズで「モチベーション向上策」や「本質的な課題解決策」を自然な形で盛り込むことができます。「Aが解決したらBに問題が生じたけれどCもDも解決した」ということが一連のコンセプトの中で可能なのが、人事制度設計の良いところです。
つまり、経営的に見ても、現場サイドで見ても、明確な目的を持つ人事制度は「結果的に最も効果的で、今後も良い状態を持続できる方法」ということができるのです。
それでは、モチベーションの向上する人事制度とはどんなものなのでしょうか。