第6回:人事制度改革で何が変わる

「人事制度を変えたところで、別に何か変わるとは思えないけど。」
「人事制度だけ変えても、中身(従業員)が同じじゃ、結局変んないよね。」
「従業員が少ないから、特に人事制度なんか無くても、毎日見ていればわかるんだよね。」
おっしゃるとおり、ごもっともです。

経営者の方から、人事コンサルティングについてのお問い合わせやご相談を頂く中に、なぜか、時々、開口一番でこの様なお話があることがあります。

「だったら、いちいち相談して来るんじゃねぇ!けえった、けえった!!」と江戸っ子の方なら言いそうですが、私は江戸っ子ではないので、一応、お話は最後まで聞くことにしています。

一見、人事制度改革に関しては、消極的に思える発言ですが、そこは取り敢えず相談してきているのですから「何かある」わけです。そして、話を進めていくうちに、「なるほど、それはなかなか難しいものがありますね。何とかしたいですよね。」と共感することもしばしばです。

例えば、過去に人事コンサルティングで大金をかけて導入した人事制度が使いにくかったり。あるいは何となく最適ではなく、運用できていなかったり。現場において、手間や時間がかかるという理由で、丁寧に運用されず、結果、あちこちから不平不満が出たり。また、問題の根っこが「人事制度」ではなく「人」そのものであったり。まあ、会社ですから、生きていますから、当然様々な問題がいつも起きているわけです。

私が言うのも何ですが、人事制度を改革すれば、すぐに期待していた効果が出たり、必ず問題が解決するわけではありません。元々、経営上の課題は複合的な要因が複雑に絡み合って「課題化」されているわけですから、個別の問題解決にはプライオリティがつきもので、Aを解決するならBは未解決、Cは先送りといった経営上の判断が常に下されているわけです。

さて、これらの問題を「人、物、金」の「人」という括りで考えた場合にはどうでしょうか。前回の「人事制度改革ニーズ」をご覧下さい。「AもBもCも解決したい、できるかもしれない。そうだ、解決するのは「人」だ、必ずできる。」と思えてくるのです。他の経営上の課題、例えばシステムや生産などの問題とは明らかに違うことがお分かりでしょう。人は人に可能性を感じ、期待するものなのです。

そして、イメージで言うと、その「可能性と期待」を枠にするのが人事制度なのです。

「会社」は、従業員が集団で目標達成に向かって行動を起こす場所です。成長する会社であるためには、従業員一人ひとりにとって、自分の立ち位置と役割がはっきりしていて、明確な目標と公正な評価が存在し、さらに自分自身がスキルアップしている、できるという実感が必要です。

これは理想ですが、その理想を目指すことは会社を成長に導くことになるので、着実な方法として「人事制度改革」があるわけです。人事制度=可能性と期待の枠というと人を枠の中に収めるような限定的な印象を持たれているかもしれませんが、その枠は、時代や企業風土、求める在るべき姿によって、大きさも質も形も自由に変えていけば良いと思います。

さて、人事制度改革で何が変わるのか?何が期待できるのか?とりあえず、何でも希望してみてはいかがでしょうか。