第4回:ニュービジネスのタイミング
私は1990年代の前半、日本で初めて「アウトソーシング」という概念を前面に押し出した給与計算関連のビジネスを立ち上げました。今でこそ、アウトソーシングという言葉は、ビジネス用語として普通に使われていますが、当時はアウトソーシングという言葉も、給与計算関連ビジネスも、日本においては全く定着しない位の勢いで、営業先からは「自社でできる仕事をわざわざ外に出すわけがないです!」などときっぱり断られていました。
100戦100敗の日々が続く中、アウトソーシングは新しいビジネスの概念だから、給与計算関連ビジネスは新しいビジネスの分野だから、面白そうだという理由で、マスコミに取り上げられたり、あちらこちらから講演等の依頼は増えるものの、一向に受注は取れず・・・。
何のために大勢の人を前に「アウトソーシングビジネス」を語っているのか正直不安な時期もありました。こうした取材、講演会、飛び込み営業の日々が続く中、少しずつ外資系企業や国内の中小企業から受注が取れるようになりました。(この頃のお客様のニュービジネスに対するご理解には本当に感謝しています。)
私は日々の営業兼アウトソーシング啓蒙活動の中で、あることに気がつきました。それは、企業の人事部門が給与計算業務を行う中で、最も時間と手間を割いていることで、どの企業にも共通していること」でした。そこで、私はその時間と手間を省くことを提案することを思い立ち、どうせなら新しい仕組みも作ってしまえと考え、通信回線を使って、IDカードデータと給与計算データを自動的にリンクさせるというサービスを開発しました。
これは当時、画期的なもので、このサービスをきっかけとして、アウトソーシングは「経営効率化に貢献する新たなビジネス」として拡がり始めました。アウトソーシングがビジネスとしてのカテゴリーを獲得した瞬間でした。
ビジネスの立ち上げにおいて、重要なことは沢山あります。感覚や思い込み、忍耐、フィールドマーケティング、時代性、投資、顧客ニーズなど・・・。そしてタイミングです。
このタイミングとは、偶然或いはやって来るものではなく、世の中のタイミングに合わせるか、もしくは自分で創るものです。
ビジネスは最先端が良い時と、2番手、3番手が良い時があります。もちろん、1番にこだわるなら自分でタイミングを創るしかありません。今、新しいビジネスを考えているなら、「タイミング」について一考してみて下さい。